トーマ決意のバーストモード |
脚本:横手美智子 演出:深澤敏則 作画監督:伊藤智子 |
ふたたび襲いくるナイトモン軍団。湯島所長もついに完全体・シャウジンモンを登場させ自家用機の防衛にあたる。
遅れてトーマも参戦したが、ロイヤルナイツの一人・ロードナイトモンが現れた。凄まじいスピードとパワーの前に追い詰められるトーマたち。
ついには、リリーナにも危機がおよぶ。間一髪、庇いに回ったトーマは初めて父の弱さと本音を目にした。
父の悔恨と苦悩に幼き日の自分を重ね合わせたトーマは、妹のためだけでなく父のためにも、家族のためにも絶対に負けられぬと決意を固める。
その決意が嵐のようなデジソウルへと変わり、ミラージュガオガモンの姿をより強く、より激しく変えてゆく。バーストモードの発動だ!
烈星の一撃が、ついに最強騎士団・ロイヤルナイツの壁を打ち砕く。かくて、ロードナイトモンは斃れるのだった。
後を湯島所長にまかせ、トーマはデジタルワールドへ出立した。
大を助け、争いと災いを止める手段を見つけてノルシュタインの家族を守るために……。
★全体印象
42話です。
今回はほぼ完全にトーマが主役でした。なんせ大が出てきません。
これまではたとえトーマメインであっても、大が本編にまったく出てこないというケースは無かったはずなので、
きわめて珍しいことです。まあ次もそうなる可能性はあるんですが。
このお話で、今まで語られずにいたトーマの過去が濃縮大放出されています。バーストモードのために温存してたのか。
それでもなおパートナーとの出会いが描かれず、ドラマにおけるガオモンはハッキリ言って蚊帳の外。
つまりこれはそういうことなのかな、と思いました。詳しくは下記で。
さて今回にかぎらず、セイバーズでは各人のドラマや心理の流れをあまり丁寧に追っているとはいえません。
誤解されにくい表現を選ぶなら、構成の中にまんべんなく仕込んで視聴者側へ意識させるようなタイプではありません。
必要なときにドカッと上乗せして、あとは引っ張らないようにしているんでしょう。
活劇や怒涛のストーリーを徹底的に強調するために、引き算として描写を差っ引いているのです。
…今思えば大がああいう細かいところを気にしない人物なのも、そこらへんを鑑みれば都合がいいんですよね。
とはいえ、合間あいまにやるべきことはやっているので「人物が何を考えているのかわからない」ということはなく、
わからないときは遅かれ早かれ「意図的に隠している」と気づけるので、きちんと計算はされていると思います。
というわけで思ってた以上にドラマ部分が多く、戦闘シーンは短め。
もう少しロードナイトモンが目立つのかと思ったらそんなこともなくて、割にあっさりしたものでした。
作画は伊藤さんなので安定しています。
横手脚本は今回もトーマがらみでした。この人物はほぼ大和屋氏と横手氏で完成させていったことになります。
そういえば、結局山口氏がトーマメインを書くことはなかったな…これが最後にして最大のメイン回でしょうし。
★CM
一月アタマからしばし流れていたのは、サンバースト&ムーンライトのプレ告知のようなものだったみたいですね。
次回作が無く、アニメ展開がお休みになるというウワサも流れていますが、そうだとしてもこの2作があるので楽しみです。
それに確かな手ごたえがあった一年なので、前シリーズが終わったときよりは希望が持てる流れ。
三年待ったのです。次が少しぐらい後になったところで、どうということはありませんよ。私的にはね。
ちなみにもう予約は済ませました。スパロボWとかぶってしまうのが問題ですが、両方とも遊ぶ予定です。
まずはサンバーストからかな?
★各キャラ&みどころ
・大&アグモン
今回はお休み。前回のあらすじと予告くらいにしか出てきません。
まあ、今までが出ずっぱりだったのです。たまにはライバルに全部任せるのも漢ってもんでしょう。
・淑乃組&イクト組
ナイトモン軍団相手に防衛戦を繰り返す場面がみられますが、出番は短めのアバンのみで終了。次回に期待がかかります。
ちなみに隊長はパートナーがいないこともあって、出てきていません。
・トーマ
今回の主役。まごうことなき主役です。
過去篇が一気に補填されたうえに、バーストモードも会得しての完勝を飾りました。
ここのところずっと何かと損な役回りでしたが、盆と正月がいっぺんに来たかのような大活躍で穴を埋めてくれています。
34話ではホントごめん。
そして予想通りというか、お母さんとフランツパパとの間柄はいろいろとややこしかったようで。
留学生…ということは、ふとしたキッカケから見初められてトーマが生まれたのでしょう。どうりで若かったわけだ。
それとも日本にいたということは、フランツパパはトーマが生まれてたってこと自体知らなかったのでしょうか。
いずれにせよ、お母さんが亡くなって間もなくノルシュタイン家に引き取られたようですが、アレですかねやっぱり。
東洋人の血が混じっているプラス、「下賎」の生まれであろうトーマママから生まれたことが問題視されたのでしょうか。
ハッキリ言葉に出されてはいませんが。
心の中にしまわれていた一番大切な思い出が、母親のものだったのも頷ける話ですね。
「お前は何者でもない」と宣告されたに等しいのですから、荒れてとんでもない不良になってもおかしくない環境です。
そうならなかったばかりか、天才と称されるまでに登りつめた背景には唯一、心を許せたであろうリリーナと、
そして思い出の中の母親。これが大きなウェイトを占めていたはずです。
トーマは「強くならなければならなかった」のですね。
自分が誇るに足る母親から生まれた存在だということを、まわりに証明するためにも。
そして今度こそ、守るべき大切なものをこの手で救うためにも。
ガオモンとの関係は、そんな彼にとってわざわざ描き直すべきものではなかったのかもしれません。
・ガオモン→ミラージュガオガモン→同バーストモード
主役の相方…ですが、ドラマからは外されています。
でも上に書いたとおりトーマとの信頼関係は確かなもので、これに関しては揺らいだことがありませんでした。
彼らふたりは最初から完成されている関係で、よけいなドラマや言葉などいらないものだったのではないでしょうか?
今まで見てきた経緯からすると、どうもそんな結論へ導かれる気がします。
31話あたりだけ見ると、むしろトーマに依存しているとさえ思えてしまうほどに「マスター」「マスター」なんですが、
35話の発言まで来るともう見るからに出来上がってます。彼らはつまり一心同体。
主従関係と一口に言いますが、彼らの間柄はそれを越えた強いものとしてすでに確立されていたのでしょう。
あとはトーマの心ひとつだったのです。
バーストモードになると、流麗なイメージだった元とはうって変わって荒々しく力強い姿に変わります。
必殺技のフルムーン・メテオ・インパクトに至ってはとんでもない力技。大切なものを傷つける全てを打ち砕くという、
鉄と化したふたりの意志が具現化したかのようです。打ち合ったロードナイトモンの技も豆腐と同然でした。
これで、ロイヤルナイツ相手でも引けを取らないはずです。
それでもオメガモンには苦しめられるのだろうなと思ってしまうのは性か……。
いまだ一言もないあたりがよけい恐ろしいですオメガモン。
・湯島のおっちゃん
要所要所で年長の余裕を発揮しているほか、ついに完全体を披露しました。
じゃあ今までは手を抜いていたのかと思われがちですが、多分そうじゃないんだろうと思います。
老齢ということもあって、一度完全体に進化させると次に進化できるようになるまで時間がかかったりとか、
ガワッパモンから段階を経てデジソウルを上げていかないと進化不能(=聖なる都のときはまだその前段階だった)
だとか、いろいろ理由は考えられます。だからこそ、今後のため部下たちの成長をうながそうとしたのではないでしょうか。
ゲームだとジャンボガメモン出してきましたがそのへんは忘れてください。
といいつつ、クライマックス付近で普通にジャンボガメモンを出してきたらどうしようかと思うこの頃。
なにしろセイバーズですから。
・ガワッパモン→シャウジンモン→カメモン
ナイトモン軍団を相手に八面六臂の奮戦を見せていますが、いかんせん完全体なうえにメイン格でもないので
ロードナイトモンが出てくるとあっというまに戦闘不能にされてしまいました。
オペレーターズといい、本気を出したとたんにかませ犬にされるケースが非常に多いことが端的にわかる場面。
これはメイン格にすらいえて、ライラモンが出たと思ったら次の相手がメルクリモンだったり、
出たてのミラージュガオガモンがロトスモンに大苦戦したり、ヤタガラモンが出た次の回でバイオデジモンに秒殺されたり
枚挙にいとまがありません。最近では「出たはいいけどやっと横並び」なレイヴモンが挙げられます。
…これも強敵をバンバカ出す方針ゆえの弊害ですな。
初期クールで連戦連勝だった事実が、本当に例外中の例外になってしまいました。
というか今思い返すと、とても同じ番組とは思えません。当時は一話完結だったし。
・フランツパパ
いわゆる板挟みというヤツでしたか。もっと怖いグランマが本国にいたとは…。
トーマママを迎えに行けなかったのも、グランマに止められていたからでしょうし。
かといって家をほっぽり出して駆けつけるわけにもいかなかった、と。むしろママに止められていた気さえします。
そんなわけなので、トーマを引き取ったのも不憫に思ったから、というのが第一の理由かな。
少なくともあの時点では、必ずしも単に世継ぎとして担ぎ出そうなんて打算のみが働いてたように見えません。
それにたとえ立場は悪くとも、あのまま日本に置いておくよりは良いと思ったでしょうし。
トーマの前でつねに肩肘を張っていたのも、家長として弱さやつらさを見せないようにするため、ですか。
たとえ反感を持たれるとしても、他にどうしようもなかったでしょうし…何より、ママを守れなかった負い目もある。
だから線を引くことで、その負い目から逃げていたところもあったのでしょう。
そんな彼がはじめて息子に面と向かって流す涙は、トーマに何事かを感じ取らせたようです。
きっと悟ったのでしょう。ああ、この人も僕と同じ苦しみを…母を守れなかった悲しみを抱いていたのだ……と。
そのとき、トーマは初めて本当の意味でノルシュタイン家の人間になれたのかもしれません。
・リリーナ
女の子のうえに病弱ということで、グランマからいきなり駄目出しされたのが人生の端緒。
トーマは初めのうち、事によると同情からリリーナを構っていたと言えなくもないと思います。
けれどもそれが、いつしか本当の情愛に変わるまでに長くはかからなかったはず。
トーマは、彼女と母親を重ね合わせてるように思われます。
目の前で何ひとつしてやることもできず、大好きな母親の命が消えてゆくのを見ているしかできなかったあの時。
日に日に弱っていくリリーナに、母へ落ちた死の影をかいま見たとしても不思議ではありません。
リリーナ自身も、父よりはトーマにより親しみを抱いているようです。
遠ざかってゆく兄の背を見て、どこに力が残っていたのかと思われるほどの勢いで跳ね起き駆け寄ろうとする姿に、
それが端的にあらわれていると思いました。まるで兄がこの世のすべてであるかのような態度です。
…なんだか話が怪しくなってきたな。
いずれにせよ、死に直面した彼女はトーマとミラージュガオガモンによって事なきを得ました。
かつて届かなかった命に手を差し伸べられたという意味で、トーマにとり極めて重要な事象だったと思います。
・ロードナイトモン
上で書いたとおり、どちらかといえばトーマの過去篇といえる内容なので登場はかなり遅いです。
シャウジンモンを一蹴し、ミラージュガオガモンも通常のままではまるで歯が立たないほどの強さを誇っていてさすがにロイヤルナイツなのですが、
主役を張ったことがないせいか、バーストモードが出たとたんに全くいいところなしで退場してしまいました。犠牲者第1号。
圧倒されて覚えてろーと逃げだしリベンジを狙うケースもあり得たのですが、残りのストーリー的にそんな余裕は無かったようです。
疾さのスパイラルマスカレードと重い一撃・アージェントフィアーの二大必殺技は健在。
しかし、バーストモードにはまったく通用しませんでした。主軸を張るひとりであろうクレニアムモンが押されていた形態なのですから、
それより強いとは思えぬ彼が勝てるはずもありません。フロンティアでついたやられ役イメージはやはり大きかったか…。とほほ。
声は置鮎氏にかわり千葉進歩氏。セイバーズではアナザーミッションにおいて、レナモンをアテていた方です。
あのときは美味しい役でしたが今回は完全な当て馬。とはいえ、名のある声優さんのひとりなので適当なキャスティングではありません。
しかしこうなると、デュークモンのみが特別出演になりそうな気がしてきました。後はオメガモンがどうなるか。
・デュナス&アルフォースブイドラモン
どうやら日本以外で活動しているようです。 ブレスオブワイバーンが昔日のまんまでなんか和みました。
DATSアメリカやDATS中近東(あるのかなそんなの)が戦っているのでしょうか。この状況じゃ、DATSもなにもないでしょうが。
アルフォースブイドラモンは、なんかこのままあまり出番が無いような気がしてきました。
彼も主役級、それもオメガモンより強い扱いを受けたことがある個体なので簡単に負けさせるわけにはいかないでしょうし、
本格的なバトルをやらせないままに大きな状況を発動させ、うやむやにしてしまうかもしれません。
ここは出ただけでも喜ぶべきなのでしょうが……せめて喋ってほしいなあ。メジャー級の人を呼んできてくれないとイヤですよ?(ワガママ)
まあ、そのかわりにやられ役としてロードナイトモンや(多分)次回のドゥフトモンがいるのでしょうけど。
ロイヤルナイツといってもピンキリということですね。
・ナイトモン
イグドラシル軍の一般戦闘員というのが今作の位置付けみたいです。
フロンティア44話でもロードナイトモンが繰り出していましたが、アレの発展版みたいなものでしょう。
バカスカやられてるようですが雑魚とはいっても完全体なので、それなりに堅いはず。
設定では忠義に篤い性格で、敵か味方かは彼らの主人しだい。このあたり、今作のロイヤルナイツとまさに一致します。
使いやすいのか01以外の全作に出てきますが、いずれにおいても無口で機械兵士のような扱いなのが特徴。
しかもだんだん扱いの格が下がっていっているような……。
★名(迷)セリフ
「…何とかします。リリーナのために。
だけどそれは、僕がノルシュタイン家の人間だからじゃない!」(トーマ)
トーマの行動はその多くがリリーナのためであると同時に、いくらか父への当てこすりもあったでしょう。
家の都合で勝手に振り回されている自分やリリーナは不幸で、父は手を差し伸べてくれないと恨みさえ抱いていた。
だから慎ましくとも幸せに暮らしている大門家の皆に親しみをおぼえたり、立派な父を持つ大を羨んだりしたのですね。
けれど、ノルシュタイン家の血を受け継いで生まれ落ち、家名を継ぐ宿命を背負った事実からは逃げがたい。
それら全てを捨てることもまた人生の選択ではあるでしょうが、逃げが入ってて大人の漢と言いがたい面もあります。
受け入れて背負い立ち、そのうえで家族をしっかりと守るのが本当に強い男なのでしょう。
そして苦しんでいたのは自分ひとりではなかった。父は手を差し伸べたくてもできずにいただけだった。
ここにも、自分への情を秘めている家族がいた…そのことに気づいたから、最後のあのセリフへ繋がるのでしょうね。
「…ん? 何のことじゃ? …これから、じゃよ」(湯島のおっちゃん)
黙って守護の槍を振るう。大人の男がここにまたひとり。
かっこいいぜ湯島のおっちゃん。
「おにいさま…! 行かないで! おにいさま!!」(リリーナ)
物心つく前、最初に優しく接してくれたであろう兄。リリーナにとってどれほど大きな存在だったことか。
トーマが日本に行ってしまった後、彼女はどんなに寂しい思いをしたことでしょう。
そして今度もまた、兄が遠くへ行ってしまう気がする。手の届かない遠くへ……その想いが生命の大車輪を回したのか、
なにげに立って走っていました。いわゆるクララ状態。
生きる意志というのも、彼女の治療には必要だったのかもしれません。
「…僕が、あなたを守ります。絶対に守りますから…! リリーナにも、指一本触れさせません…!」(トーマ)
「イエス、マスター」(ミラージュガオガモン)
目の敵のようにしていた父を、家族として受け入れた瞬間です。
そしてすでに、トーマの意志はガオモンの意志。一心同体、最後の枷がはずれた彼らを止められるものは、
もはやこの場に存在しないのです。
「ロードナイトモン! もうお前の好き勝手にはさせない! トーマ・ノルシュタインの名にかけて、お前を倒す!!」(トーマ)
ノルシュタインの名、それは進化の証。
数分前までの彼ではもはや無いということを、ロードナイトモンは後で思い知ることになります。
「これが僕の…バーストモードだ!!」(トーマ)
本来なら「僕らの」というべきなのでしょうが、一心同体である彼らにはふさわしくない言葉、なのかもしれません。
ガオモンにとっては「私の」であり「マスターの」進化なのでしょうから。
「…大丈夫です。僕は…ノルシュタイン家の人間ですから」(トーマ)
前半と対をなすセリフ。
背負って立つべきものを受け入れた彼の父に対する顔は、これまで見たことも無いほど穏やかなものでした。
フランツパパもやっと肩の荷が降りた心地かもしれません。
「待ち受けるより立ち向かう、か……」(湯島のおっちゃん)
若いもんはええのう。
なんだか、そんな風に言ってるようにも見えました。
でもいきなり守備放棄していいの? …とは思ったものの、根本的解決にはやはりイグドラシルを止めることが第一ですし、
ロイヤルナイツと互角以上にやれる者が複数入り込んだとなれば、向こうが逆に守備へ回らざるをえないかもしれません。
さてこの行動、吉と出るか凶と出るか。
★次回予告
イグドラシルの言ってることがだんだん無茶苦茶になってきました。
そしてドゥフトモン登場。名前のわりには細っこいヤツです。いたんだ、こんな奴。
でもなんか雑魚っぽいなあ…主役張った経験のないロイヤルナイツはどうしても不利ですね。
さておき、めずらしく淑乃が包丁をふるう場面もあるようなので楽しみです。
そしてあのピヨモンは…もしかして!?