デジタルワールドから緊急連絡 クルモンが…
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脚本:前川淳 演出:梅澤淳稔 作画監督:山室直儀 |
★あらすじ
留姫を探すタカトたち。
目印である旗のところまで戻るのですが、その旗がなくなっていました。しかし、クルモンが来ていたこともわかったのです。
クルモンも自分たちを探している……希望を得たタカトたちは、探索を続けてゆきます。
そのころ、究極体の力を得たインプモン=ベルゼブモンはパワーを試すため、クリサリモンの群れに挑んでいました。
成熟期の集団を蹴散らし、完全体の攻撃を受けてもダメージを受けぬ自らの強靭な体に狂喜するベルゼブモンは獲物を容易く葬り去り、
ついにテイマーズを倒すため動きはじめます。
地下の森にいた留姫とレナモンは、水難に巻き込まれながらもクルモンと合流することに成功していました。
さらに流れへ乗ってもとの世界にもどり、タカトたちとも再会することができたのです。
が、そこにベルゼブモンが現れました。彼はテイマーズを倒すと宣言し、銃を向けてきます。それがデーヴァとの契約。
その時、にわかに嵐が巻き起こりました。リアルワールドでシャッガイが暴走した影響です。
嵐にまぎれてベルゼブモンは去り、かわりに現れたチャツラモンによってまたしてもクルモンが連れ去られてしまいます。
現場に復帰した山木室長のおかげで嵐はおさまったものの、ジェンとテリアモン、そしてタカトはどこかに飛ばされてしまいました。
パートナーと別れ別れになってしまったタカトの運命は……!?
★全体印象
ずっと欠番になってしまっていた30話です。タイトルに出る絵はタカトたちの設定画。
ここまで来たら皿まで食ってしまおうというわけで、書くことにしました。
当時はまだ感想のスタイルが確立してなかったため形式がぜんぜん違うんですが、敢えて慣れてるこっちへ合わせます。
リアルタイムではない以上、どのみち浮いた内容になるのはわかりきってますからね。
しかし改めて見てみると、やっぱり雰囲気が出てますね。
今回の場合、とりわけ出色だったのが留姫たちのいたデジノームの戯れる森。あの空気は他シリーズに無いものです。
地下に森があり、その真上に水とは無縁そうな荒れ地があるあたりの唐突感もデジタルワールドらしい。
いきなり津波が起こったのは、今思うとシャッガイによって乱れたデータの影響ってやつなんでしょうか。
こうして振り返ると、テイマーズでは戦いと同時に世界を描くことへの拘りをもって製作されていたことを思い出します。
デジタルワールド編はまさにその真骨頂。急展開を迎える34話までの間、たっぷりと時間を取って世界を見せてくれます。
キャラクターたちも他シリーズとはひと味違い、世界観に沿うかたちで生まれている印象ですね。
惜しむらくは、この路線が本来のターゲットに受け入れられたとは言いがたいことですが……
キャラよりも上述の世界観、そしてストーリーを重視したのが地味に映るきらいもあったんでしょうか?
残念だなあ。いつかまたウルトラマンのように、小中さんの描くデジモンももう一度見てみたいものです。
この30話は、そんなテイマーズ初の究極体として現れたベルゼブモンが初めてその力の片鱗を見せるお話でもあります。
ただ山室作画の美麗さこそ光っているものの、どっちかというと動より静を重視した演出の影響であんまりアピールできてないような。
ダブルインパクトだってフツーに銃を撃ってるだけで、まわりのクリサリモンが勝手に消し飛んでるように見えるし。
見た目だけだとインフェルモンの技のほうが強そうなぐらいでした。実際には逆なんですが。
さらに今回は、しばらく燻っていた山木室長がひさびさに復帰するエピソードでもあるんですね。
けれどもお話そのものはほとんど進んでないし、単体で見てもうろうろ歩き回ってるだけで起伏には乏しかったりします。
いちおうベルゼブモンとの対面もしてるんですけど、あまり緊張感のあるものではないし。
テイマーズ側も進化はするけどレナモンだけで、しかも実際にバトルをしたわけではない。うーん……
02あたりからバトルのないお話はちらほらとあったんですが、このシリーズになってより顕著になってますね。
これも、バトルと同様に世界描写、冒険の雰囲気を大事にするという方針によるところが大きいのでしょう。
フロンティアでほぼ毎回バトルがあったのは、おそらくこの反動みたいなものですね。
★OP&ED
ひさしぶりに見ましたが、他シリーズとはちがった意味で最高です。
歌がすばらしいのはもちろんのこと、絵の質とマッチングもたまりません。何度見ても飽きないです。
★各キャラ&みどころ
・タカト
これといって目立った行動はとってないんですが、それでもこの子が主役だとわかる描かれ方。
留姫がいないのもあって、ジェンと二人体制で音頭を取っているようです。自分がどうするか決めることはできても、
仲間を引っ張ってゆくタイプの主人公じゃありませんから当然なんですが。
そんな彼もやっぱり男の子、時には激しい闘争心を見せることもありました。
子供らしくというべきなのか、モチベーションや感情のぶれが非常に大きいのも特色でしたっけ。
いきなり極端へ走るように見えがちなのも、感情のコントロールがまだ下手だから、なのかもしれません。
未熟、という意味でギルモンとは共通点があるのですね。本来の性格が温厚で好戦的じゃないところも同じ。
平常心を保てていさえいれば、むしろ冷静な部類に入るテイマーだと思うんですが……
・ギルモン
穴堀りが大得意で鼻が犬なみに効く成長期デジモン。
忘れられがちですが、もともとはアグモンをモチーフにタカトが考えた彼オリジナルのデジモンなんですよね。
そのわりにデュークモンはロイヤルナイツ所属なんですが……この話は長くなるから自重しよう。
今回目立っていたのは、その鋭敏な嗅覚でした。
彼のこの能力、穴堀りと同様にシナリオ上でかなり便利に使われていた記憶があります。
デジモンの敵意を感じると闘争本能をむき出しにする側面もありましたが、回を追うごとに緩和されていきました。
タカトとの長いつきあいで成長し、本能の制御をできるようになったってことなんでしょう。
しかし小中さんも、このギルモンをあのデュークモンにどう進化させるかは悩んだに違いありません。
作品コンセプトのひとつに掲げられていた「デジモンの極端な擬人化の否定」にむしろ真っ向からブチ当たる設定ですもの。
フロンティアでさらに逆走していきましたっけ。
まあ擬人化やってる私が言っても説得力0なんですが。
・ジェン
とにかく熟考熟考また熟考な若年寄。性急さへの恐れが常に窺える少年でした。
この回でも、おなじみの熟考ポーズを惜しみなく披露してくれています。慎重派で穏健派、でもそれだけに判断は確か。
リーダー型ではないけど、テイマーズの面々が彼の思考力を頼りにしていたのはたしかでしょう。
拳法の使い手であるところからみても、本来はもうちょっとアグレッシブな性格なんでしょうが理性でそれを制御してますね。
その考えがテリアモンとの付き合い方にもよく出ていましたが、ときには反駁されることもありました。
危機に陥った誰かを救うために、柔軟な判断をも身につけてゆく過程がひとつの課題だったんですね。
といっても最初からかなり完成されたキャラなせいもあって、メインに立ってるわりにすごく控えめな人です。
そのぶん小春への態度など、崩れるときは顕著な崩れ方をしてました。実はあんがい短気だったりするのかもしれません。
・テリアモン
ジェンの頭の上で愛嬌を振りまきまくっています。今回もぞんぶんに愛らしさを発揮してました。スルー気味だったけど。
可愛らしいといえばクルモンもそうなんですが、中の人の声質差もあってうまいこと差別化されてますね。
クルモンが自分のペースに相手を巻き込むタイプなら、こちらは相手のペースに巻き込まれず、自分を保つタイプですから。
なるほど、ある意味でジェンのめざす境地に立ってる子なのかな。
相互補完という意味でいうなら、丈とゴマモンにもちょっと近いのかもしれませんねえ。
その他テントモンあたりともウマが合いそうです。……なんか、前にもこんなこと書いたような気がしてきたぞ。
とはいえ理性的な拳法少年とマイペースなマスコット風デジモンという取り合わせは、まさにテイマーズ独自のもの。
このあたりも、まず世界観ありきでキャラクターを作る方針が活かされた結果なのではないかと思います。
男児モノのメインにこの系列を持ってくるというのは果たしてどーだったんだろうという感想も持ってしまうんですが。
・留姫
男児モノで女性キャラ由来を売るという、野心的なコンセプトで生み出された人物。
タカトやジェンとはやや異なり、キャラとしてのイメージのほうを優先して造形されてるのかもしれません。
服装もタカトやジェンにくらべるとちょっぴり浮世離れしてますし。リョウほどじゃないけど。
性格もタカトやジェンとは違ってやや問題児ぎみな、コミニュケーション能力の不足が目立つ子でした。
攻撃的、というのはたぶん他人とどう接触したらいいか判らないことからくるガードポーズみたいなもので、
カードゲームに興じていたり孤高を気取ってたのもそんな自分を糊塗し、格好よく演出するための構えだったんでしょう。
とまあ、そんなふうにしたり顔で自分を分析されるのが我慢ならない娘なのだと思います。
だから母親やリョウといった、妙にフレンドリーな相手を敬遠しがちなのかもしれませんね。
またはそのフレンドリーさに、むしろ自分と同様のポーズを感じるからとか。いわゆる近親嫌悪かな。
それは裏を返せば、彼女が本質的に繊細で傷つきやすいという事実を証明するもの。
クールさは母親ゆずりの玲瓏が表面的に醸し出すもので、ホントはフツーの女の子なのだと思います。
今回のクルモンと再会したときの笑顔など、ふとした瞬間にそれが垣間見えていました。
どうして心に鎧をまとうようになったのかは、父親が不在というところに鍵があるのでしょう。どう見てもパパっ子だし。
この造形、大人のその筋の人には受けが良かったようですが男児にとってはどーだったんでしょうね?
・レナモン
そのデザインと落ち着きがある優雅な立ち居振る舞いから、波長が合ったファンに絶大な支持を得たデジモンです。
今でもいろんな人に描かれる機会が多い、そこにいるだけで絵になる希有な存在ですね。
パートナーの留姫とは違い、そのクールさは戦闘経験にも裏打ちされた確かなもの。
でもだからといって冷酷非情などではないことは、インプモンへの態度などですでに示されています。というよりも、
戦って勝利し、データを得て強くなること以外の他者への接し方を知らなかっただけなのかもしれません。
ここらへんに留姫との共通点が見えてきます。
留姫はレナモンにとって、そんな自分に新しい生き方を示してくれた大切な人なのでしょう。
そう考えるといくら敵を倒してロードしても進化できなかったのは当然で、留姫の本当の望みはそれじゃなかったからなんですね。
ともに生きたいという、しごく単純でいて目に見えない願いこそ、進化の鍵でした。
進化してゆくたびに優雅さへ加えて懐の大きい優しさを感じさせる姿になっていったのも、むべなるかな。
サクヤモンは留姫とレナモンの本質を昇華し、結晶させた結果現れた姿なのかもしれません。
それにつけても留姫とクルモンを救出するときの動きといい、頼りになるなあ。
進化なしで成熟期に勝ったことも何度となくあるし、スペックの底がえらく高いところで落ち着いてます。
成長期でこれなんだから、そりゃ自分は最強だって言いたくもなるってもんだ。
他方、進化したインプモンをほぼひと目でそれと見分けたりもしていました。
匂いがどうとかじゃなく、気配とか雰囲気とか、そういうのでわかったんでしょう。いちばん気にかけてましたから。
・加藤さん
つい名字プラスさん付けで呼びたくなる人。
彼女もつまりは留姫と近い、普段からポーズを取っている子だったんですが、加藤さんの場合それが非常に上手い。
上手すぎてむしろ後付け設定みたいに見えてしまったのは、テイマー化が急遽決まったせいでしょうか。
さておき、そんな加藤さんですから留姫とも当初から結構うまいことやってます。
同性ということもあって、唯一「留姫ちゃん」と呼ぶことを許されているぐらいのもの。これはたぶん、
天然っぽく見えても相手との距離のはかり方を無意識に計算して動いていて、不用意に踏み込まなかったからかな。
留姫にとっては接しやすい相手だったのでしょう。ギャグに使われてたけど、客商売をやってるお陰ですかね。
だからこそ、彼女が抱えていたものに気がついたときの留姫のショックが活きてくるのですね。
きっと加藤さんにとってはタカトだけではなく、留姫も大親友としてかけがえのない存在になっていくのだと思います。
ジェンとだけはいまいち接点が少ないんで、おたがいにどう思ってるかわかりづらいんですが。
・レオモン
加藤さんへの第一印象が「この娘、だいじょうぶか?」だった人。
よく考えてみたら、まるっきり別の意味でぜんぜん大丈夫じゃない娘さんだったわけですが。
勇猛にして知的、解説役もこなし、勇者であると同時に、このテイマーズにおいては父性の象徴でもありました。
いうなれば、加藤さんにとっての理想の父親像でもあったってことですね。これは非常にわかりやすい仕掛け。
彼とパートナー関係を結ぶことは、加藤さんにとって疑似親子の関係を結ぶにひとしかったわけです。
イメージはまったく違うけど一種のクェス・パラヤ状態。
もちろん度量の大きいレオモンのことですから、そんな加藤さんによく応えていましたけど……どこまで判ってたのかな。
今度量って書きましたけど、うまくいってたように見えたのはそのレオモンの度量のおかげだったのかなあ……
なんて思ったりもするんですね。最初から最後まで、どこかに加藤さんの一方通行があったのかなあ、と。
となるとやっぱり、彼は加藤さんのパートナーになった瞬間に死ぬしかなかったのかもしれません。
時間さえかけられれば、また新しい展望が待っていたんじゃないかとは思うんですけどね。
・ヒロカズ
この期におよんでまだパートナーを得てない人。そりゃ、レオモンも声をかけてあげたくなるわな……
ケンタなんて参戦できたのがやっと4クール目になってからですから、まだマシなほうなんですけど。
熱血漢というよりは、マイペースなお調子者といったほうがしっくり来る性格。
でも一度は避けるようになったタカトに歩み寄ったり、手書きのブルーカードを託したり、恐怖を振り切ってタカトを援護したり、
いい場面もたくさん貰ってます。友達がいのあるヤツ、と言えばいいのかな。
というか、アホなことやってるように見えて精神年齢は実のところ高めだと分析してるんですけど、如何なもんでしょう。
そういえば、当初から仲間入りする予定だったのは彼だけと聞いたことがあります。
その通りに進んでたら、もうちょっと活躍できたんでしょうが……実質的見せ場は、次の31話が最大のものでした。
今回はケンタとつるんでお気楽トークを繰り返しているだけです。
・ケンタ
この期におよんでまだパートナーを得てない人その2。ヒロカズ以上のマイペースです。
当時の感想ではふたりを称してボンクラーズと呼んでいましたっけ。正直すまんかった。
でも彼はなあ……外見も性格も、ホントに地味だからなあ……単体ならまだしも、ヒロカズと常にいっしょなのがまずい。
ヒロカズのほうがアピール度があるんで、どうしてもそのおまけみたいになってしまうというか……
パートナーを得たきっかけも恐ろしくあっさりしてて、そのために一話を使うという手間すらかけてもらえなかったし。
それでも注目に値するのは、全アニメシリーズ中数少ない素で究極体のパートナーを得た子であるという特異性です。
こんな人は他に大門博士ぐらいしかいません。目立たなかっただけで、実はものすごいテイマー……なのかも。
・クルモン
このへんに来るとだいぶ自発的行動が目立ってきてますね。
自分がなぜここにいるのか、何がしたいのかさえわからず、ただフラフラしていた序盤からすると大きな進歩でしょう。
40話では、みずからの意志で進化の力を発現させるまでになっていきます。
この30話で特筆すべきは、激流に流された留姫を蔦に結びつけた枯れ枝で助けたシーンでしょうか。
短い時間にあの手でどうやって結んだのだろうというより、誰かを助けたという事実のほうに驚いた記憶があります。
こうした積み重ねが、49話での加藤さんへ向けた言動につながってゆくのですね。
単なるパワーエンジンだったはずのこの子が心を手に入れ、他者と関わり、学び、変わる。
心がなく、ただ識ることしかしないデ・リーパーは、だからテイマーズにとって絶対に負けられない敵だったのでしょう。
・ベルゼブモン
まるで新しいオモチャを手に入れた子供のように、究極体の力を堪能していました。
脚本が前川氏ですし、実質的には彼のお話でもあったのかもしれません。
思い返すと、たしかに彼は「パートナーになろうとしたけど、なれなかったデジモン」なのだと納得できます。
新しい生き方が確かにあると気づいていながら、そこで挫折したせいでどこか歪んでしまった。自分にはもうこれしかないと、
自身へ言い聞かせるように力を求めていったのです。もともと強いデジモンじゃなかったから、よけいにその思いが強い。
ドロップアウトしたなんて思いたくなかったんでしょう。
レナモンが彼を気にかけるのは、どこか他人とは思えないからなのかもしれません。
パートナーとの関係がもしも破綻した場合、彼みたいになる確率がいちばん高そうなのはレナモンという気がしますし。
ギルモンもすごく危ないんですが、この場合はやはりレナモンのほうが適任でしょうかね。
なまじっか希望を見てしまうと、裏切られたときの怒りと絶望も大きくなるものです。
デーヴァはそれを利用したのでしょう。
・チャツラモン
ベルゼブモンのそばで常に目を光らせていたようです。
せっかく力をあたえた彼がちゃんと契約を履行するかどうか、見届ける役目をおおせつかっていたのでしょう。
もともと、誘い込む役目を果たしてもいましたし。
それゆえか、ベルゼブモンが去った直後にテイマーズの目の前に現れ、分断工作を実行することもできたようです。
やり方が非常にコスいんで印象は良くないものの、それだけにやっかいな相手だったのも確か。
タオモンの結界を無効化したりもしていたし、実力的にも決してあなどれないものがあったと思います。
直撃じゃなかったとはいえ進化すらしてないテリアモンを倒せなかったりと、攻撃力にはおおいに疑問がありますが……
まあそのぶん知能が高いし、上で書いたように物理的以外の特殊能力に優れているのかもしれません。
奇襲が多いところから、姿や匂いまでも消して行動できる可能性もありますね。
・クリサリモン
ベルゼブモンが狩りの相手に選んだデジモン。ものすごい数で群れていました。
あのわけのわからない群れ方こそ、デジモンの異生物感をあらわすさりげない演出ではないでしょうか。
とはいえ、ダブルインパクトの前にはほとんど無抵抗のまま爆砕。多少なりともバトルをするのは、完全体になってからです。
・インフェルモン
近くにいたクルモンの影響で、複数のクリサリモンが合体進化した存在。
フロンティアのデジモンたちはこれを自前でやってたので、デジコードが媒介として代わりをつとめていたのかもしれません。
とはいえ映画で見せたような高速移動や防御形態はなく、口からヘルズグレネードを一発撃っただけ。
完全にベルゼブモンの噛ませ犬でした。強さをアピールするためにはうってつけの系列だったのは確かですが、
当時はけっこうショックを受けた記憶があります。あのインフェルモンが噛ませ犬だなんて! と。
それにしても、ベルゼブモンはよくこいつらの名前を知ってましたね。
ひょっとしたら、目をよく凝らすことでそいつの名前までわかってしまったりするんでしょうか?
Dアークに映し出されているのは、それがデータベース化されて映し出されたものなのかもしれませんね。
デーヴァやベルゼブモンがサーチしづらいのは、スーツェーモンの加護があるから?
・山木室長
新宿半壊の責任を取ってというより、自身のあり方を見つめなおすためにヒュプノスを離れていたように見えます。
この人がもうちょっと早く復帰してたらぜんぜん違う話になってたかもしれませんね。今回はそんな流れでした。
まあベルゼブモンの存在がある以上、どっちみち簡単には逃げられっこないんですが。
仕事面で有能な反面、プライベートでは生活力不足という印象を持ったのもたしかこの回。
これはこの手の人にはありがちなことというか、多忙すぎて適当にしたり他人まかせにしたりしているうちに
それが当たり前みたいになっちゃったんでしょう。
むしろ以前の傲慢だった頃なら「そんなことは他人まかせにするのが当然」と感謝もしてなかった気がします。
あれが本人の自宅かはわかりませんが、せっかくの広い家も持て余していそう。
けれど少なくとも今は、人というものが他者との関わりのなかで生きているものだと意識しているはずです。
それを教えてくれたのが人間ですらないデジモンと心を通わせ、未知のデジタルワールドへ果敢に飛び込んで行ったテイマーズの、
その全力の生き方だったのでしょう。
そして彼だってまだまだ、いや、いよいよこれから本気を──大人の本気を出せる年齢。
デジタルワールドからの連絡は、室長の心に何かを灯したのですね。
もう一度、自分にできることを全力でやってみたい。嫌悪とも対抗意識とも違う、文字通り胸に燃えたぎるような気持ち、勇躍の想いを。
セリフは無かったけど、私にはそう感じられました。
・鳳麗花
そんな室長の世話を焼いていた人。
仕事面では部下ですが、プライベートではあきらかに彼女のほうが優位に立っています。
むろん室長の直属なぐらいですからオペレーターとしての能力もお墨付きなのでしょうが、彼女の場合はそれに加えて
明らかに高い生活力があり、しかも仕事のあいまに体を動かして女性としての自分を磨くことも忘れていません。
つまり彼女のほうが大人なので、ああなるのは一種必然。世話好きっぽい性格が作用しているにしても、です。
室長と恋人どうしかどうかは、議論の分かれるところ。
けれど少なくとも前半までの段階じゃ、室長のほうからまともなアプローチがあったとはちと思えません。
もしそうだとしても、「これからなる段階」なんじゃないでしょーか。
・黒眼鏡
室長がいない間、ヒュプノスを管理していたと思われる男。
まともに出てくるのはたぶんここだけなので、「誰?」という印象をちょっと持ちます。サングラスで顔わかんないし。
昔の小説にならって「黒眼鏡一号」と呼びたくなってしまいますね。
室長のことは「お前」と呼んでたりします。同期か、はたまた友人か。
単なる穴埋めキャラだとは思いますけど、ちょっと想像力を喚起させられる人物ですね。
・背広
ヒュプノスに干渉して、シャッガイを無理矢理動かそうとした政府筋の人間。
出自は国家機密庁……ではなくて、ヒュプノスの直接上位にあたる省庁のメンバー、でしょうか。
たしかそれは文部省と聞いてますが……この頃はまだ、文部科学省じゃなかったはず。
いずれにせよ、彼らの短絡的な強権発動によってシャッガイが再起動され、それが遠因となってテイマーズはまた離れ離れになりました。
もしあの時点でリアルワールドに帰還していたらベルゼブモンの攻撃をそこで受ける羽目になったかもしれないだけではなく、
水野さんに会うこともデ・リーパーの存在を知ることもなかったので、結果的には悪いことばかりじゃなかったのですが。
レオモン死亡という大きなチェックポイントは、どういう流れでも起こりえることなのでここでは語りません。
これ以降、政府からの直接介入は無くなることになります。
わけのわからない事はわけのわからない事をやっている連中にまかせようという方針になったのかな。
失敗すれば全責任を押し付けられるかわり、やりやすくなったというところでしょうか。
・鎮宇パパ
シャッガイがらみでチラッと出て来てました。そばには小春もいます。
思えばこの人ほどに目立ったメインキャラの父親は、他に大門博士ぐらいしか知りません。イメージはぜんぜん違うけど。
★名(迷)セリフ
「そうでも言わないと、あの二人があまりに救われないと思ってな……」(レオモン)
ヒロカズとケンタをフォローした真意について、加藤さんに。
これには加藤さんもしばし絶句。しかしながら、誰かに勇気を与えるのも勇者の仕事というわけですか。
「じゃあ、旗を持ってった犯人はクルモンだったクルー♪」(テリアモン)
耳をギュッと抱えてクルモンのマネ。仕草じたいは可愛らしいですが何ともツッコミづらい言動です。
そして誰一人ツッこむことなく、話題をもとに戻しました。この空気がテイマーズって感じ。
「ボクタチハゲンキデス マツダタカト」(メール文面)
テイマーズから山木室長に届いたメール。今回の表題にあたるものです。これが室長の魂に火をつけました。
それにしてもこの30話のサブタイトルはなんというか、すごく変だと思います。インパクトとわかりやすさはあるんですが、
タイトルとしてはどうなのよ、というか……
そういえばレスキューフォースも内容はいいとして、サブタイトルは微妙すぎるものばかりでした。
カッコよさより理解のしやすさという方針なのでしょうね。テイマーズの場合もそうなんでしょう。
★次回予告
ガードロモン参戦。アンドロモンとして戦うのはここだけです。
いまのところ、デジモンシリーズ最後の浦沢脚本でもありますね。そのせいか、ちょっとデジアドっぽい話でした。
ヒロカズ以外をデジアドキャラに差し替えても通用しそうな気が……