つながる心 復活のベルゼブモン

 脚本:前川淳 演出:梅澤淳稔 作画監督:浅沼昭弘
43話です。タイトル通り、今回の主役はインプモン=ベルゼブモン。


■銃声
冒頭。
ADR-03たちを攻撃する光、ちらちらと映るそれらの影、空気をふるわせる銃声と、夜のなかに繰り広げられる異質なるものたちとの戦いが、妙にリアルに描かれていました。
見慣れた都庁とあいまって、なんとも異様な光景に見えます。



■ディスコミュニケーション
タカトたちの前に大挙してあらわれたのはADR-02。おもに偵察を任務とするサーチャーですね。情報体ではあると思いますが、劇中のセリフからさっするところ、デジモンとは根本的にちがうようです。

最大のポイントが目。見ようによってはかわいいと言えなくもないけれど、ここに一番ちがいを感じました。

デジモンの目には、なんらかの『意志』を感じることができます。
あのディアボロモンも自制心こそないものの、あきらかに意志を持っていましたし、40話では、デ・リーパー戦の助っ人になってくれましたからね。暗黒デジモンたちにしても、『邪悪な意志』というものを持っていたはずです。
しかし、彼ら(?)ADRシリーズには、それさえも感じられません。
彼らの目は、ただの情報端末にしかすぎないのです。
番号で呼ばれ、画一的なフォルムでただ命令を実行するためだけに存在するのでしょう。

そこにあるのはほぼ完全なディスコミュニケーションであり、和解の余地など欠片も見あたらないほどでした。
つまり一番恐ろしい敵というのは、心がない存在なのですね。
死への恐れも、我を忘れることも誰かの言葉に感化されることも無く、学習だけはうまいわけです。

いろいろな表情を見せてくれたインプモンとは、あまりに対照的でした。



■学校で仮眠
ADRシリーズからひとまず逃れ、教室で仮眠をとるタカトたち。なんか和んでます。
まあ基本的にみんな、あれこれ考えて眠れなくなるほど、年を取っているわけではありませんからね。
だから何でもできるのでしょう。

それにしてもこの教室で仮眠というシチュエーションは、妙に冒険心をくすぐるものがあります。



■まつだベーカリー
ガスと水道はともかく、食材までそのまんま残ってましたね。こりゃ一体どういうことでしょう?
あのお父さん腕はたちそうですから、そのへんをおろそかにするとも思えないのですが……。
いや、待てよ。
もしかしたら、こういう事態になるのを見越してお父さんが置いていったのかも?

と、ここまで考えたところで室長のセリフが頭に浮かびました。

『やはりここだったか』


こう言うのもなんですが、タカトの行動パターンを読めるほど、室長が彼のことを知っているとは思えません。むしろ親御さんたちのほうが、よっぽど室長と言葉をかわしているでしょう。
で、お父さんが万が一のため、食材の予備をそのまま店に置いてきたこと、新宿でまた何かあったらタカトはきっとそこを拠点にするだろうことを、室長に伝えていたとしたら?
あるいはデ・リーパー事件の直後に、そう連絡していたとしたら?
室長の言葉が容易に合点いくじゃないですか。

なんかいろいろ想像できます。当たってるといいな。




■レナモンツッコミ

「わたし、朝はご飯とおみそ汁のほうが……」
「留姫!」(びしい)


なかなか鋭いツッコミです、レナの姐御。場の空気を読めってことでしょうか。
1話とか見てると信じられんやりとりだ。今さらながら。




■みんなでパン焼き
こういうの見ていると、なんだかんだでみんな馴染んできてるんだなあ、と思います。とくに、また引き合いに出しちゃいますが留姫。人前で髪を下ろすなんて、しなかったはずなんですけどね。
たとえパンを焼くためだとはいっても。

せっかちに焼きかげんをたしかめるテイマーズには、素直に子供らしさを感じました。
それにしてもレナモンまで……(笑)



■山木室長Inまつだベーカリー
浮いてます(笑)
逆に何かとけ込んでいるのが鳳オペレーター。さすが常連。



■趙先生

『姿かたちなどは単なる器にすぎん。それに、おぬしには邪悪なものを感じなかったのでな』


経験豊富とはいえ、みんなが恐れるインプモンへ自然に接するあたり、大物です。
なにが悪でなにが正義か以上に、相手が本当はどんな存在で、なにを求めているのかを見る。口で言うのは簡単ですが、きっと、とても難しいことのはず。
それができる趙先生ですから、李家のみんなが頼りにしているんでしょう。
鎮宇さんのあの拳法の腕は、この人直伝といったところでしょうか。

おっと、完全体と素手でわたりあったジェンも忘れちゃいけませんね。



■自衛隊とデ・リーパー
正式に自衛隊も出動してますね。文字通りの自衛隊。インダラモンやヴィカラーラモンの時もいたはずですが、ここまで前面に出てきたのは初めて。ここに山木室長が加わると、なにやら怪獣映画の様相を呈してきます。
ああそうか、雰囲気的にレギオン襲来なんだ。
う〜ん、ADR-02あたりに至近距離から拳銃をバスバス撃ち込んでくれないものでしょうか(^_^)
あるいは誘導して一網打尽にしたりとか。

じゃあテイマーズがガメラで最後は元気玉?



■朽ちる都庁
…なんだかそのうち音をたてて倒壊しそうです。時期的にやばい。



■シンクロ率上昇中!
タカトはおろかジェンや留姫も、デジモンたちと同調をはじめました。ここまでハッキリ出たのははじめて。こうなるとテイマーというよりスタンド使いです。
ダメージを受けるたびにテイマーまで痛がっていては、フォローするどころじゃないのでは……。
合体進化の弊害でしょうか。



■アイとマコ
どんな子たちか、実はほとんどわかっていなかったのですが、思ったよりずっと印象がよかったです。
というよりインプモンがいなくなったことで、ちょっとだけ大人になったのでしょう。

結局、だれが悪いわけでもなかったのかもしれません。



■インプモン=ベルゼブモン


『……なんだかよくわかんねーけど…ありがとよ! 恩に着るぜ!』
『……なんにもしやしねえよ』
『…許すに、決まってんだろ……』
『ば、ばかやろう! 恥ずかしいこと、すんじゃねえよ…』
『ありがとよ…アイ、マコ!』

『お前らに信じてもらわなくてもかまわねえよ。
オレを信じて待っている…パートナーのために、オレは戦う!』

『行くぜ…アイ、マコ! デススリンガー!』



まちがいなく今回の主役です。堕ちるところまで堕ちて、一皮むけました。
兆候はあったのです。留姫に見せた表情とか、趙先生とのやりとりとか。
それでも決して甘えることをしない彼は、涙を隠して背中で語っていました。その意地っ張りなほどのプライドが彼の個性であり、それをもう一度取り戻したとき、真の孤高の魔王が誕生したのです。
苦戦するメガログラウモンらを助けに、タカトたちの頭上を飛びゆく姿は、鳥肌が出るほどかっこよかったですよ。
思わずデビルマンの歌を思い出してしまいました。


現実世界(ひとのよ)にアイがある、現実世界に夢がある。この美しいものを、守りたいだけ。
嗚呼ベルゼブモン、今日もどこかでベルゼブモン。




■ベルゼブモン追記
というわけで、ベルゼブモンは敵役にはなっても悪役にはならない、微妙なポジションを演じてくれました。悪感情を抱かずにすんだ時点で、個人的に成功したキャラだと思っています。
もちろんそれと引き替えに、レオモンが命を落とすハメになったわけですが。

…しかし悔やまれます。黒ウォもこれくらいかっこよく描かれてくれていれば……。
いや、もう言いますまい。

それにしても彼をあっさり許しちゃうテイマーズ、あんたらいい人だ(笑)



■加藤さん
あれのどこが加藤さんやねん。タカト、君の目は節穴か?(T_T)
怖すぎます……。



■総括
今回はとにかくインプモンでした。前半の、なにか憑き物が落ちたかのような表情がいいんです。
ブラストモードは以前とは一転、かなりかっこよく見えましたし、何よりあのおもちゃの銃の演出がうまい。
形は違えどアイとマコもあの銃をなかだちにして、ベルゼといっしょに戦っているんですね。
心強い味方が増えました!



■次回予告
さて、次回は小中・山室・今村さんらの最強トリオで構成されます。かなり見応えがありそう。
そして新キャラですか。新キャラ………

ええっ! もう44話なのに新キャラ!?