夢見る力こそ 僕たちの未来
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脚本:小中千昭 演出:梅澤淳稔 作画監督:出口としお |
最終回です。静かな気持ちで迎えました。
■アリ地獄作戦
テリアモンに仕込まれていたシャッガイを使い、光速を越えた運動で極地ブラックホール現象を起こし、時間を逆行させてデ・リーパーを退化させること。それがオペレーション・ドゥードルバグの正体でした。理論上、テイマーズたちに影響はなかったはずなのですが、究極進化体を計算しきれなかったことが仇になり、デジモンたちまで退化するハメになってしまいます。
結果、退化しきる前にデジタルワールドへ戻す以外なくなりました。
ジェンは知っててやったのか、と問いますが、お父さんは可能性を恐れていただけで、知っていたわけじゃなかったと思います。
いくら理論で裏づけしても危険に変わりはないし、計画に一番重要な役目をはたすセントガルゴモンの中には、息子がいるのですから。
ただ成功しさえすれば、最低でも子供たちは助かるだろうこと。それは知っていたのかもしれませんね。
けれど、もしそんな事態になったら、きっとジェンや子供たちはつらいことになるだろう。そう想像したから怖かったんだと思います。
そんな鎮宇さんの想いがわかったからこそ、ジェンも父を赦すことができたんですね。
子供たちにとって理不尽な別れになってしまいましたが、では他に何か方法があったのかといえば、なかった、というのが現実でしょう。
何しろデ・リーパーはあまりにも強大です。最強クラスの究極体が3体そろっていても足止めがせいぜい。クリムゾンモードでさえ、加藤さんを助けに行くだけで精一杯でした。オペレーション・ドゥードルバグがなければ、事態をひっくり返すことはできなかったはずです。
ではテイマーズの戦いは無駄だったのかというと、そうではないでしょう。
計画の柱になったセントガルゴモン。必死に戦ったサクヤモンとジャスティモン。グラニと融合し、ADR-01をうち砕いたデュークモン。ゾーンから彼らを救出したヒロカズたち。加藤さんを守ったクルモン。だれが欠けても、みんなで帰ることはできませんでした。
つまり彼らの戦いは、クリムゾンモードがニセ加藤さんを倒し、デ・リーパーの暴虐を否定した時点で勝利に終わっていたのです。
少年漫画的なカタルシスは少ないにせよ。
あれは、加藤さんの最後の闇だったのでしょう。
■テイマーズという物語
厳しいお話です。夢見ることが大事だとは言っても、夢が必ずかなうとは言ってくれませんでした。
タカトら子供たちは出会いに喜び、自分の変化にとまどい、戦うことに迷い、時には別れを経験し、弱さを越え、大きくなっていきました。
けれど何度奇跡を起こしても、100パーセントの結果を出すことができなかったのです。どうしようもない現実が、彼らとデジモンたちとの間に大きく横たわったのでした。
最後の最後になって、私自身が厳しさを痛感している状態です。
しかし突き放してはいますが、決して希望がないわけではありません。
レオモンの死を乗り越えた加藤さんは、クルモンと新しい絆を作りましたし、父親も彼女を心配してくれています。
インプモンの想いも加藤さんに届きました。テイマーのアイとマコはそんなインプモンの心意気を知り、Dアークを得ました。
そしてタカトはデ・リーパーに最後まで抵抗してみせ、生身に戻りながらも加藤さんを救出したのです。留姫、ジェン、リョウ、ヒロカズ、ケンタ、小春も、いずれは再び最高の友とめぐり会うでしょう。
そう、まだ何も終わってはいないのです。
■私の印象
シビアなお話、というのが第一印象でした。デジモンたちは弱肉強食の掟にしばられているし、テイマーたちははじめ彼らに振り回されたり、利用することしか考えていなかったり。一方では、デジモンをすべて消去しようとするヒュプノスの存在がありましたから。
ただ、どの子供たちもあまりしゃっちょこばらず、自分の気持ちや冒険心を第一に行動していたので、前2作にくらべ年相応でしたね。大義名分を前面に出していたのは、むしろ大人たちのほうだったと思います。
さて、34話以降にお話はターニングポイントを迎えます。レオモンの死を境に子供たちは絆を再確認していきました。同時に、長ずるなかで変わっていった自分をかみしめる事になります。当初は希薄だったパートナーや親との心のつながりが、より確認された時期といえましょう。
そこへ邪魔しに出てきたのがデ・リーパー。せっかくいい感じになってきたのに、そんな絆は必要ないというのです。ただひとり、絆を失いかけた加藤さんが利用されてしまいました。
私は40話代あたりから、テイマーズのテーマは『関わることと変わること』だと考えているので、デ・リーパーはその点、申し分のないラスボスだったと思います。惜しむらくは、敵としてのデザイン的な魅力が皆無だったことでしょうか。わざとかな?
ただ彼らも原初へ退化したものの、消えたわけではないので、ひょっとしたら次は心を手に入れることができるかもしれません。
ここにもちょっと希望があると思ってたりします。甘いかな?
このへんでトータル評価にうつりましょう。
1話の印象がすごく強い番組でテイストも全然違うので、かなり期待しながら見ていたおぼえがあります。14話でメガログラウモンに進化したときには『こりゃ凄い』と素直に思いました。その後少しまったりしたものの、デジタルワールド編突入から3クール目まではほとんどハズレなし。どのお話もかなり楽しめました。
4クール目になると敵がデ・リーパーに絞られたことと、同勢力にあまり魅力がないことが原因でややだれてしまった感ありです。ここはちょっと残念ですが、親との協力、自分の反芻、ベルゼブモンとジャスティモンの参戦、グラニの登場とイベントは盛りだくさん。捨ての回が実はない構成でした。まあ、もう少し短くすることはできたと思いますけど。
かように、全体的な構成バランスでは前2作を越えていたと思われます。作画平均レベルも同じく。初期はともかく、後期になればなるほど脚本が統一されてきたのも好印象でした。
ただし、気になった点がふたつ。
ひとつはカードスラッシュです。放映前はこれがメインになるとの触れ込みでしたが、戦術的な生かされかたがほとんど見られず、戦いの合間に使っているだけの印象でした。効果的に使われたのはわずかに31話くらいというのが……。
バンクが必要以上に長いのもテンポの阻害につながっています。17話などはほとんどギャグにしか見えませんでした。
そのうえ、3クール目後半には究極進化が登場し、事実上、バトル中にカードを使うことが不可能になっています。使われたカードで印象に残っているのはグラニを実体化させたブルーカードに、50話のレッドカードくらいのものでしょう。デヴァイスカードも焼け石に水。
カードの売り上げには貢献したかもしれませんが、ドラマ的にはかなり失敗だったと考えています。
もうひとつはカタルシスの不足。
それが持ち味と言われればおしまいですが、ここでこうなるだろうという『ツボ』をことごとく外した作りのドラマでした。
たまの事ならいいんですが、連続することも多くてあれれ? と思うことも多々。
最終回など、当然あると思っていたクリムゾンモードの大活躍やベルゼブモンの再登場がなかったですし。
そういう意味ではサービスが足りなかったかも。ちょっと大人向けかな?
ああそうそう。不足といえば。ひとつだけ言いたいことがありました。
アリスあのまんま放置かい!
結局なんだったんでしょうね、彼女?(^ ^;
あともうひとつ。
よりによって最終回の作監が以下略!
とほほ……。
■最前線
というわけで、フロンティア予告です。さすがに一話の作画はずば抜けている。さてはそのために犠牲になりましたか最終回?
どのキャラの声もだいたい予想通りですが、泉の声はちょっとほえほえ気味で意外。ぽっぷだから当然か。
どんなお話になるんでしょう? 楽しみではあります。