タイキ、騎士になる!

 脚本:三条陸 演出:三塚雅人 作画監督: 高橋晃
★あらすじ

 第四のゾーン、レイクゾーンへやってきたタイキたち。
 ここもすでにバグラ軍の進攻を受けており、あちこちに氷の像が。アイスデビモンの手勢に凍らされたのです。
 タイキは敗れて氷の海に沈んだナイトモンを見つけ、クロスローダーの力で助けだしました。
 経験上、一瞬でも放っておけないと思えば行動に移してしまう少年なのです。

 ナイトモンは命の恩人であり、アイスデビモンを追い払ったタイキをバスティア城主・バステモンの騎士団長に推挙します。
 城には同じく騎士候補として、キリハも来ていました。どこかに隠されたコードクラウンを取りにきたのです。
 初めて間近でキリハに接したタイキは、ライバルの新たな一面を垣間見、何かを感じました。

 やがて、ふたたびアイスデビモンの氷結軍団が攻めてきます。
 キリハが力を示してコードクラウンを手に入れるべく、前線で大暴れを始めますが……それは陽動作戦でした。
 氷に隠れて城内に潜入したアイスデビモンが、バステモンを捕らえようとします。
 それを阻止したのはクロスハートでした。タイキが途中で敵の作戦に感づいていたのです。

 逆に追い詰められたアイスデビモンは、部下を吸収して巨大化。さらに、暗殺者バアルモンまで現れます。
 が、戻ってきたキリハがバアルモンとやり合う形となり、はからずも共闘が実現。
 バリスタモンが凍らされて合体不能になるなど苦戦しますが、ドルルキャノンとナイトモンの活躍で凌ぎます。
 バステモンを苦手としていたキリハは、いつのまにか城を去っていました。

 この一件ですっかりタイキに参ってしまったバステモンは、彼を騎士として受け入れることにします。
 ところが、突っ走りすぎたタイキが遂にぶっ倒れてしまいました。彼抜きで進攻をどうやって凌ぐのか!?

 そしてすでに、アイスデビモンの上に立つリリスモンが次の一手を打っていたのです……
 



★全体印象

 10話です。騎士は「ナイト」と読みます。
 今回は11話と合わせた1時間スペシャル。軽い名場面集とプレゼント企画も挿入されてます。

 脚本にはシリーズ構成の三条氏が再登場。作画も5話の高橋氏で、ローテが二巡めに入ったことがわかります。
 演出についてはこれまた元プリキュア組である三塚雅人氏が初登場し、層の厚さをまたひとつ増してくれました。
 本作のスタッフ数は過去最大といってよいと思います。それだけ力が入っているということなのでしょう。

 お話のほうも何か急激に面白くなっており、7〜9話の低空飛行ぶりがウソのような出来映え。
 状況の違いもあるのでしょうが、久々にアカリやゼンジロウ、チビカメモンも存在感を示しています。
 仲間入りしたばかりのドルキュー組は地味めですが、まあ前回までを思えばこんなもんと言えるでしょう。
 戦闘ではドルルキャノンで活躍してましたし。

 気がかりだったバステモン@河西智美さんについても、なんとか許容範囲の仕上がり。
 キリハやバアルモンに別の顔や具体的な動きがあるなど、敵側サイドの駆け引きも見逃せません。
 もしかして今までで一番面白い回じゃないでしょうか? 11話はまだ見てませんが、こっちも期待したいですね。




★各キャラ&みどころ

・タイキ

 1話で示された伏線というか、過去話がここで明かされました。
 おおむね予想していた通りの内容ですが、放っておいた友達が「死ぬ」ところまで行ってなかったのは意外でした。
 いや、死にかけたわけですからタイキ的には充分トラウマになったはずですが……あの年代に半年は大きいですし。

 デジモンの「音」を感じるという彼(またはジェネラル)ならではの能力も、久々にいかんなく発揮されています。
 アレを見た瞬間に、なぜか三条脚本だとわかったんですよね。一話以来だったからでしょうけど。
 ナイトモンやバステモンを助ける場面でも侠気や勘の鋭さを発揮しており、高スペックぶりを再アピールしてます。
 その見せ方もあまり無理がない(無茶はしたけど)というか、嫌みがありません。
 とりあえず彼とその周辺については、シリーズ構成に任せておいて大丈夫そうですね。流石というべきか。

 キリハとの会話は、後につながりそうな要素がいろいろ見えてくる場面だと思います。
 いずれ共闘する未来があるなら、そのときも彼がなんとなくいい感じに纏めてくれそうな気がしますね。


・アカリ
 
 事が直接タイキに絡むと、さすがに輝きが増しますね。
 合間に現実世界を恋しがる描写も抜け目なく入っており、彼女たちが本来はどこに属するのか思い出させてくれます。
 細かいようでも、ああいうのを重ねてゆくことで厚みってものが出てくるんですよね。
 タイキが倒れたシーンでは、一話以来のクッションフォローも見せてくれます。投げたのがシャウトモンなのはご愛嬌。

 それにしても、携帯の画像が歪んでいたのは何を意味しているのでしょうか?
 デジタルワールドの問題が現実世界にも影響を与えつつある、という伏線……?


・ゼンジロウ
 
 キリハに何かを感じたタイキへツッコミを入れ、過去話を引っ張り出すのが今回の主な役目でした。
 さりげにバリスタモンが一緒なのはポイントです。ちょっと特徴的な物言いも何だか久々に強調された印象。
 さらに、次回はタイキの代理という大役を任されるのだとか。大きな転機になりそうです。


・シャウトモン
 
 実はそんなに出番があるわけじゃないんですが、随所に彼らしいアピールがあるので存在感は確保してます。
 今回はこのへんのバランスが非常に優れており、スタッフが本作のノリを掴んできたことがわかりますね。
 お得意の口上も途中までですが披露してました。

 今回はドルルキャノンを除いて単体での戦闘がメインでしたが、なにげに技が非バンクばっかりです。
 ちょっと特殊な状況が多かったので、それに合わせる形でしょうか。
 よく見りゃバンク職人の富田氏が原画に入ってるし。

 でも、タイキがいろいろ話したとき側にいなかったのは何故なんでしょう?
 コレも後に繋がるのかな。


・クロスハートの仲間たち

 最近、バリスタモンが空気から少しずつ主張を強めてる気がしてなりません。良いことだ。
 タイキの過去話を聞いたことにより、さらに友情値をアップさせた様子でした。
 次回はゼンジロウが目立つので、その分だけ彼にも見せ場があるかもしれません。

 ドルキュー組は上で書いたとおり、前回までと比べ抑えめの出番。でもドルルモンはちゃんと働いてます。
 キュートモンの方は……まあお察しくださいとしか。現状は救護班しかできませんしね。

 その他、チビカメモンの出番がありました。何かえらい久々な印象を受けるのは私の気のせいでしょうか。
 逆にスターモン組の出番は無しでしたが、これも次回で補填されそう。


・ドルルキャノン
 
 X3以上になれなかったので、ピンチヒッター気味の登場。前回と違って状況に意味があります。
 強化されたエンシェントボルケーモンやアイスデビモンを怯ませたところからみて、かなりの威力です。
 射撃に特化してるぶん、攻撃力にドルルモンの能力の大半を注げるのかもしれません。


・ナイトモン
 
 バスティア城の守備隊長として登場。
 状況はわかりませんが倒されて死にかけていたところをタイキに救われるという、たいへん縁深い登場をしてます。
 これだけ見ると仲間になりそうな気さえするんですが、立場上難しいかな?

 性格は騎士のテンプレというか、善人なんだけど四角四面で妙に押しが強い、勢いで動くタイプ。
 しかし実力は本物であり、部下をまじえての「チェックメイトブレイク」はアイスデビモンをも退けたほど。
 クロスローダーに救われた影響もあるのかもしれないですが、彼が決めることになるとはビックリでした。
 もちろん、いい意味でです。こんなに扱いのいいナイトモンは初めてですよ。いや、マジで。

 これまでの同種を思い返してみましょう。

 01:出番なし
 02:ダークタワーデジモンとして登場、黒ウォに一撃で倒される。世界篇に顔出し。どっちも無言。
 テイマーズ:幽霊の城でうろうろしていた。無言。
 フロンティア:ロードナイトモンの手下というか捨て駒。中身が空っぽで何度やられても再生。無言。
 セイバーズ:ロイヤルナイツ率いる一般兵。強めのザコ扱い。無言。

 ええと……なんかもう、かける言葉が見つかりません。
 それだけに、今回の扱いには快哉を上げたいところですね。やっと君の出番が来たんだと。

 声はてらそままさき氏。キンタロスの人です。
 いいヤツだけど思い込みの激しい性格にはピッタリの声といえるかもしれません。


・ポーンチェスモン白
 
 ナイトモンの部下たち。名前どおり、バスティア城の一般兵です。
 セイバーズ時代と違って喋りまくるほか、なぜかバイザーを上げており、可愛らしい目を見せてくれてます。
 そのため、ずいぶん違った印象を受けますね。ナイトモンとの取り合わせは違和感ゼロだけど。

 バイザーはナイトモンとの連携技のときだけ閉まるようになっており、その時は大活躍しました。
 なぜか同種の黒は姿が見えません。夜間専用とか特殊部隊だったりして。

 バスティア城には他にトイアグモンがおり、アイスモンに対抗する形で砲撃手をつとめています。
 パンダモンもいるんですが、こっちの役割は不明。


・バステモン
 
 レイクゾーンを治めるバスティア城の城主。
 しかし大変マイペースな性格かつ、一日の三分の二を寝て過ごすというので事実上、当主の役割を果たせてません。
 部下が忠義者のナイトモンたちでなかったら、一体どうなっていたことか……

 そんな困った性格を「可愛らしい」の一言で帳消しにしてしまう、いわゆる憎めない人です。
 本来のバステモンは非常にズル賢く、むしろリリスモンに進化することもあるんですが面影はまるっきりありません。
 良くも悪くも意外なキャラ付けです。アニメ初登場ということで、強いイメージがついてないのは救いですが。

 この手の人物らしく大変惚れっぽいところがあり、タイキに頬ずりしてアカリを激昂させてます(悪気ゼロ)。
 無意識のうちに人を振り回すあたりは、ある種魔性の女と言えるかもしれませんな。
 ……アレが全部演技だったら、それこそ設定通りです。

 声はAKB48の河西智美さん。
 専門職ではないので滑舌と声量はかなり怪しく、ジェネラルを「ぜねらる」と言ったりしますが
 とりあえず可愛らしく演じることだけは余念がない印象なので「そこがいい」と言えなくもありません。
 実際、絵と込みでかなり可愛く仕上がってると思います。


・アイスデビモン
 
 レイクゾーンの侵略を担当していたバグラ軍幹部。悪魔系らしく、直属の上司はリリスモンです。
 しかし戦果はいまいちのようで、リリスモンに尻を叩かれていました。いや、これは比喩ですよ?

 氷にまぎれて城に忍び込むという作戦はなかなかのもので、力より頭を使うタイプに見えます。
 しかしマッドレオモンなどと同様に部下を取り込んでパワーアップすることができ、そうなれば強敵。
 どうもあの能力、バグラ軍幹部ならすべからく備えてるものみたいですね。
 彼ららしい力といえますが、最初に予想したコードクラウンが関係しているという推測はハズレでした。

 声は高戸靖広氏。どっちかというとヘタレかオカマ役が光るバイプレーヤーです。
 そのせいか、過去のどの同種よりも弱そうに見えます。実際はそうでもないはずなんですが……
 リリスモン絡みの描写がアレだったからなあ。


・アイスデビモン部隊のみなさん
 
 一般兵としておなじみなトループモンの他、砲撃手としてアイスモンがいます。アイスモンは確かアニメ初登場。
 氷結系軍団だというのに、なぜかユキダルモンの姿がありません。マグマゾーンで出たからかな?
 基本的には薙ぎ倒されたり吸収されたりする不憫な方々ですが、画面をハデにする役割は見逃せません。


・リリスモン
 
 アイスデビモンの上役。言わずと知れた三元士のひとりです。
 これだけセリフが多いのは初めてですが、改めて聞くとやっぱり桑島氏ですね。演技としては耳慣れませんが。
 あの方はやっぱり高音域の方がメジャーですし……個人的に。

 セリフ廻しはいかにも悪女然。威厳はありませんが、大ボス系ではないのでまあこんなもんでしょう。
 知謀に長けてそうなイメージだったんですが、バアルモンへの反応をみると単純なところもありそうです。
 というか、プライドを良い意味で刺激してくれる相手へは甘いのかもしれません。
 その後で「みんな役立たず」と切り捨てていたので、それもお試しってヤツだったわけですが。

 それにしても、メディアに登場するリリスモンはどれも結構カルい口調ですね。
 魔王然としてるのはアナザーミッション版ぐらいでしょうか。あの時は甲斐田ゆき氏が演ってたんだったかな?


・バアルモン
 
 リリスモンへ暗殺の依頼を貰いにきました。何を考えているのか全く不明な人物のひとり。
 三元士から何故あんなに嫌われているのか、実はその理由もハッキリしてません。殺し屋だから、では弱い。
 事によるとバグラモン直々の密命を受け、三元士の監察官も兼任してる可能性すらあります。
 だとしたら、少なくともタクティモンとリリスモンは薄々それに感づいているのかもしれません。

 それにしても、得物が銃だとは……ますますあのデジモンとの関係が疑わしくなってきました。
 でもあんなに派手なのは暗殺って言うんでしょうか。暗殺者じゃなくて殺し屋だからいいのかな。


・タクティモン&ブラストモン
 
 とりあえず別のゾーンを侵略しているようです。計画が手広いぶん、あまり自由には動けないようですね。
 岸尾氏の若本喋りはなんというか、日々磨き加減を増しているような気がしますね。ギャグ的な意味で。


・キリハ
 
 ライバルとして登場しつつお助けマンだった彼ですが、そろそろ違う一面を見せはじめました。

 彼にタイキが何かを感じたことと、その直後に回想が始まったことは無関係じゃないような気がしています。
 ぶっちゃけ、タイキには彼が「オレは大丈夫だ」と周囲を拒絶しているように見えたのかもしれません。
 強さが全てだと信じ、強くなければ駄目だと思い込み、独りでも強くなれるようにならねばと気を張っているような。
 そうなった原因も、やっぱり過去に原因があるんじゃないかと思っています。

 戦い方は敵のど真ん中に突っ込んでいって無双するという、相変わらずの武闘派。
 タイキとの対照を考えると、実は単に細かいことを考える前に突っ込んでゆく猪突猛進型なのかもしれません。
 小細工なんて意味ねー! 最後にものを言うのは力やー! と。だが、人それを脳筋と言う。
 タイキの勧誘に使う材料も徹頭徹尾力だけだからなあ、彼……

 しかしネネといい、バステモンといい女性には甘いというか、弱いようですね。
 柔和な表情も少し増えており、ファンも増やしたと思います。


・メタルグレイモン
 
 初登場。メイルバードラモンとグレイモンのデジクロスで出現します。
 漫画版を除くと、この名を持つデジモンがライバルキャラに使われるのは初めてだったり。

 技名はトライデントアームにギガデストロイヤーと、面影の純度は100パーセント。
 しかし前者はともかく、後者のシーケンスが全然違います。アレはギガデストロイヤーというより、
 どっちかというとライジング・レイな気がする……単なるフルバーストじゃねえかは禁句。

 同名でも、ここまでイメージが違うのか……
 トランスフォーマーのごとく、周期ごとにリボーンして姿が変わる方式になったのでしょうかね。
 もし進化したら、ひょっとしてウォーグレイモンに……?




★名(迷)セリフ

「そんな遺言みたいな頼みごと、ごめんだ!!」(タイキ)

 誰かを守って倒れたものがいる。そこに助けられる可能性がある。
 そんなとき、絶対に諦めないし放っておかないのがタイキという男です。それを改めて確認させてくれるセリフ。
 普段は冷静でも、この土壇場で発揮する熱さこそが彼の最大の特色であり、また魅力なのですね。
 シャウトモンのさりげない擁護が光ります。

 …でもラストでぶっ倒れたのって、絶対あの寒中水泳のせいですよね。それだけじゃないとは思うけど。


「だから思ったんだ。ほっとけないと一瞬でも思ったら、絶対にほっといちゃいけないんだって」(タイキ)

 上のようなセリフの原点を語った場面で。
 これも大変彼らしいセリフといえます。これだけ行動原理がハッキリしていると、他の方もやりやすいでしょう。
 いずれキリハと本気でやりあうときも来るでしょうが、力ではともかく精神力では負ける気がしません。

 直後にゼンジロウが彼のことを思わずフルネームで呼んでいます。何かがそうさせたのでしょう。
 ここいらも次回へ繋がるんでしょうね。




★次回予告

 ちゃんとした予告はありませんが、どうやらゼンジロウだけでなくアカリにも何かが起こるようですね。
 タイキが倒れたことで話がどう転がるのか、続く11話が楽しみです。