サンドゾーン、遺跡で大冒険!

 脚本:米村正二 演出:えんどうてつや 作画監督:梨澤孝司
★あらすじ

 新たなゾーン、サンドゾーンへやってきたタイキたち。
 そこでスコピオモンの襲撃に遭ったタイキたちは、脱出した先でバグラ軍三元士のひとり・ブラストモンに遭遇します。
 一難去ってまた一難、逃げまくるクロスハートを助けたのはトレジャーハンターを自称するリボルモンでした。

 バグラ軍の追跡をかわしつつ、ついに宝のあるという隠し部屋へ辿り着く一行。
 現れた番人・ファラオモンはこの世に光をもたらす者ならば、それを証明せよと襲いかかってきます。
 強敵でしたが、タイキはこれが一種のテストであると看破。逆に攻撃を中止することで答えと変えました。
 実は示し合わせていたリボルモンとファラオモン。悪意のないものとは戦わない、と語るタイキにコードクラウン、
 そして新たにデジメモリ四枚を託すのでした。

 その頃、めぐりめぐって遺跡の外に飛び出したブラストモンと、ネネ&キリハが戦っていました。
 キリハの新たな戦士・サイバードラモンも登場し、状況は混迷の一途を辿りはじめます。
 さらにバアルモンまでもが現れて……




★全体印象

 一ヶ月ぶりの12話です。
 休みがなかった場合は15話が放映していたはずなので、いかに長いこと休止していたかわかろうというもの。
 製作体制的には多少余裕ができたかもしれませんが、今日が再開日だということを忘れているファンもいそうです。

 脚本は米村氏。9話からさほど間をあけずの登板です。演出には一話以来となるSDのえんどうたつや氏。
 作画の梨澤氏はかの中鶴氏や貝澤氏などと同期のベテラン。最近でもガイキングやビックリマン、マイハム組など
 本作メインスタッフにゆかりの深い番組で作監を歴任しているようですね。

 さて、遺跡を舞台に冒険というテーマらしく次から次へ状況が変わる本編。
 深く考える前にどんどん場面が変わってゆくのと、さすがのSDクオリティで演出がいいため、けっこう楽しめます。
 お話には穴というかよくわからないところがあるんですが、とりあえずそれが重要な回ではないでしょう。
 ところどころに「インディ・ジョーンズ」のオマージュが散見されるのはもはやお約束といったところ。

 その一方でゾーンの成り立ちやデジメモリの復活など、新たな設定もいくつか判明しています。
 デジタルワールドの分裂には、どーやら人間の営みが何か関わってそうですね……現実世界に話が及ぶフラグでしょうか。

 上で書いたとおり、新デザインのサイバードラモンが出し抜けに登場した回でもあります。詳しくは後述。
 



★各キャラ&みどころ


・タイキ

 戦術というか、ヒラメキの人でした。ゴーグルがキラリと光る演出のオマケつきです。君は江戸川コナンか。
 が、状況への巻き込まれ方が超強引なのでその段階ではどっちかというと間抜けに見えました。
 もしかしてと思ったら、やはり米村脚本でしたというオチ。うーむ…

 それにしても、リボルモンがファラオモンと仲間だなんていつ気づいたんでしょう。
 振りがわかりづらいので、超能力でも発揮したみたいな展開でした。いや、何かあるなと視聴者はわかるんです。
 しかし、たったあれだけで視聴者じゃない彼がファラオモンとの繋がりまで看破するというのは…さすがに。
 それとも、ホンの段階では何かあったんでしょうか?


・アカリ&ゼンジロウ

 驚き役として機能してますが、それ以上の重要な役割は果たしていません。
 この二人の描写については、三条氏にほとんど丸投げされてるような状態ですね。アイランドゾーンでもマグマゾーンでも、
 タイキに比べると全然目立ってなかったし……その隙間がない流れだったのも確かですけれど。

 ゼンジロウの高所恐怖症設定が復活していたのには「ああ、あったねそういう設定」と思う反面「?」と感じたりも。
 いや、だって11話で城壁を滑り降りたタイキを普通に追いかけたりしてたし…もう克服してるようでもあるので。
 アレに関しては三条氏のほうが設定を忘れていたか、または省かれただけかもしれませんけど。

 それにしても7話といい、米村脚本ではアカリが無駄に色気を出している気がします。何故なんでしょう。
 よくよく見るとドルルモンの背中に乗ってたり、少しずつ関係の進展はアピールしてるんですが。


・シャウトモン

 全篇目立ってますが、実はこれといって特筆するほどのことはしてません。
 なにしろキャラが多いアニメなんで、うっかりすると彼でも状況をクリアするだけで精一杯になるようです。


・クロスハートの仲間たち

 ジジモンが解説役としてひさびさに出番を増やしました。
 ゾーンの成り立ちについても何か知ってるみたいなので、これだけでも存在感を確保できたと思います。
 後半手前の寒いボケは正直要らなかったけど。

 他にはドルルモンのセリフと活躍が多め。得意のドリルに留まらず、イヌ科らしく感覚が鋭いところも発揮しています。
 米村氏のお気に入りでしょうか。一応マグマゾーンの主役級だったし。

 ゼンジロウが回収していた宝石は何かの仕込みですかね。普通は何かあると考えるのが自然ですが、さて……


・シャウトモンX4

 対ファラオモン戦で登場。
 しかし実体がなく、エネルギーを跳ね返すファラオモンに苦戦し、最後には剣を引いています。見せ場は次回以降かな。
 別にX4Kになんなくてもバーニングスタークラッシャーは使えるんですね。

 というか、ナイトモンやバステモンたちは本当に一緒に来てるんでしょうか。完スルーされてて忘れるところでした。


・リボルモン

 自称トレジャーハンターとして登場。かなり小柄で、シャウトモン程度の背丈しかありません。
 テンガロンハットが容易にインディ・ジョーンズを連想させますが、武器は当然鞭ではなく銃です。
 どこからともなくホルスターが現れたり消えたりするあたりは、さすがにデジモンというか、デジタルワールドというか。

 でも、実はまだ素性がよくわからないんですよね。
 トレジャーハンターというのが嘘であの遺跡の番人というのが本当なのか、肩書き自体は本当なんだけど
 ファラオモンの意志を知り、相応しい者が現れるまで宝を守っていたのか、どっちなんでしょう。
 イメージ的には後者なんですが……

 声は皆川純子氏。「テニスの王子様」の越前リョーマをはじめ、多くの少年役をこなしてきた人気声優のひとりです。
 実績を考えればタイキをアテていてもおかしくないほどの人といってよいでしょう。
 「反逆のルルーシュ」ではコーネリア・リ・ブリタニアというクールな女性戦士を演じてて印象の幅が増したものですが、
 今回はまた初めて聞くタイプの演技。声優さんの技量というものが窺えます。


・ファラオモン

 コードクラウン及びデジメモリの番人として登場。
 進化前に相当するマミーモンは「02」「ゼヴォ」でかなり美味しい役をもらってるんですが、こちらはアニメ初登場です。
 それというのも究極体なので、おいそれと出張ってこられないからでしょう。
 進化段階の縛りがないうえにかなりフリーダムな配役をしている本作において、ようやく日の目をみることとなりました。
 しかも、実質主人公たちの味方という結構おトクな立ち位置です。

 その正体は霊のような存在であり、実体がないため物理的な攻撃はいっさい通じません。
 本編の描写を確認するかぎり、ファラオモンとしての体は単なる幻にすぎないようです。しかし幻覚と侮るなかれ、
 敵の攻撃を杖で受け止めてそのまま跳ね返すこともできるようです。普通に戦って倒すのは至難の業といえるでしょう。
 戦う必要がないとタイキが気づいたことで、その意志を認めてコードクラウンを託してくれました。

 ファラオとはすなわち、王の称号と伝えられています。
 かつては彼も遺跡の王であり、今でも王家の宝を守り続けていた、ということなのでしょう。
 デジタルワールドのことですから「最初っから遺跡として現れた」なんてオチかもしれませんけど。


・ブラストモン

 一話からシルエットで出ていたバグラ軍最高幹部のひとり。
 ポジションとしては、どう見てもお笑い&パワー担当です。戦闘力はデタラメに高いんですが、頭が致命的に悪い典型例。
 岸尾氏のメガトロンな演技とアドリブが拍車をかけてます。

 とはいえ、橋から自爆気味の墜落に陥っても意に介さず地上に脱出してきたり、キリハとネネの二人を相手にしても
 大したダメージを受けたようには見えません。まさに体力の塊。タクティモンの方が強いというけど、
 この頑丈さを見せられた後ではそんな序列は何の慰めにもなりますまい。少なくとも防御力で下回ってるようには見えません。

 攻撃力についても転がってきたビッグマメモンを逆に正面から砕いてしまったり、部下たちですら驚愕するものがあります。
 また意外に芸達者で、全身をドリルのように回転させて地中を掘り進んだり、両腕からエネルギーブラストを放出させて
 見た目以上のスピードで突進することもできるようですね。あまり小回りはきかないようですが…

 宝石を好むという一面もありますが、愛でるのではなく食うためというのがこのデジモンらしいところ。
 取り込んだ宝石によっては、体の照りやツヤが違ってくる模様。最も上等な食材は、言わずと知れたダイヤモンドです。
 やっぱり意外に脆かったりするんだろうな。


・スコピオモン

 アニメ初登場。ブラストモンの部下として砂漠の地下を徘徊しています。
 頭目だけちょっと色が違い、体格も少しいいようですね。同種でこうした個体差を出すのはわりと珍しいです。
 同じ種で「年齢差」がある例はこれまでも何度かあったんですが……

 クロスハートと直接刃を交えるケースはほぼ無く、トラップに押しつぶされたりホーリーエンジェモンに放り出されたり、
 スパロウモンにボコられていたりと、どちらかといえば悲惨な目に遭ってばかりいます。
 得意の毒針を使うチャンスはあるでしょうか……


・イビルモン

 ブラストモンの部下。スコピオモンが実働部隊なら、こっちは秘書か執事連という風情です。
 役割もブラストモンのエネルギー源である宝石の確保から主人の体の掃除まで、直接身のまわりにかかわるものばかり。
 強烈なボケをかますブラストモンへ、失礼にならぬ程度のツッコミを入れる役でもあります。
 なにかと気苦労が多そうだ……

 そんな次第で、実はテイマーズの次ぐらいに喋ってるイビルモンだったりします。
 使い魔っぽい印象はこっちの方が強いですね。


・ビッグマメモン

 02以来の登場。遺跡のトラップそのものとして現れました。巨大な体躯で全てを押しつぶすその姿は、まさに巨大鉄球。
 気分はインディー・ジョーンズ…といいたいところですが、宇宙刑事ギャバンも推したいところではあります。
 タイキはこの罠を逆に利用する形で、追っ手のスコピオモンたちを何体か倒しました。

 最後は規格外の体力を誇るブラストモンに真っ正面から打ち砕かれ、短すぎる出番を終えています。
 番人たるファラオモンやリボルモンとの関係は不明ですが、少なくとも後者は彼の存在を知っていたようですね。


・ホーリーエンジェモン

 デジメモリの初期五枚、最後のひとつとして登場しました。櫻井孝宏氏の声で技名を叫びます。
 櫻井氏も、10年を経てまさかホーリーエンジェモンを演じることになるとは思わなかったことでしょう。

 必殺のヘブンズゲートは、「01」においてピエモンへの実質的トドメとなった強力な技です。
 しかし今回は少し弱いというか慈悲深いというか、対象を別のところへ転送するにとどまっているようですね。
 とはいえ、敵の一団を効率的に排除できるという点ではなかなか使えると言っていいんじゃないでしょうか。
 応用すれば、味方を移動させる脱出技としても使えそうです。

 デジメモリにも今回から新たな設定が付与され、ゾーンを経ればまた使えるようになりました。
 とりあえず一度使ってしまうと、そのゾーンではもう出せないということだけ抑えておけばよいでしょう。


・ネネ

 クロスローダー持ち=ジェネラルとして、遂に具体的な動きを見せはじめました。
 タイキの動きが想定外っぽいところからみて、サンドゾーンに来ていたのは普通にコードクラウンが目的でしょうか。
 そのうえデジメモリもあるとなると、これは争奪戦が始まるかもしれません。

 いずれにせよその先、真の目的についてはいまだ謎のままです。今後しばらくは台風の目になりそう。
 つうか、腕の中のアレって喋るんですね。まさかアレが一番強いなんてオチじゃないだろうな。


・スパロウモン

 ネネのパートナー。圧倒的スピードと火力でスコピオモン軍団を圧倒していました。
 続くブラストモン戦でもその疾さで翻弄しており、ダメージは与えられぬものの、その進撃を大いに煩わせています。
 メイルバードラモンなどと同様、デジクロスせずとも高い戦闘力を誇っているようですね。わかってはいたけど。

 飛行のカットでは数瞬、謎の演出が入ります。
 姿を消しているのか、それとも一瞬ながら自らを光に変えることができるのか……


・モニタモン

 タイキの動向をネネに伝えてました。
 いつの間にかどこへでも入り込む隠密性と、瞬時に情報を伝えられるネットワーク力がやはり脅威です。
 これが原因でブラストモンにもコードクラウンの存在が露見することとなり、事態がどんどんややこしくなることに…
 味方になれば非常に頼もしいと思うんですが、果たしてどうなるかな。


・キリハ

 ネネとタッグを組んで登場。11話ラストの後に何があったのでしょうか。
 そのうち語られることもあるのでしょうが……今のところは、ネネにうまいこと使われてるようにしか見えません。
 基本的に搦め手ができないタイプだと思うので、ネネみたいな人物とは相性が悪いでしょうね。
 戦士としては有能でも、それ以外はもうひとつといいますか……

 このままだと、ネネに煽られてタイキと直接対決という流れもあり得ますね。


・ブルーフレアの戦士たち

 サイバードラモンが唐突に現れました。キリハの隠し球だったのか、それともネネに託されたものか……
 どっちにしろ、これでどんなデジモンを連れているか完全にわからなくなったことになります。後付け上等。

 メイルバードラモンは相変わらず移動力として重宝されているようですね。このへんは本家バードラモンと同じだ。


・バアルモン

 ラストシーンに登場。
 次回ではかなり目立つようですね。これで素性もハッキリしそうだな。誰かの手の者か、それとも今はただの無頼なのか……


・デジタルゾーン

 クロスローダーを使ってゾーン移動するとき通る空間では、デジモンたちは体を長いこと維持できないようです。
 だからクロスローダーの中に入ってるそうですが、じゃあドルルモンたちはどうやってアイランドゾーンに来たんでしょう。
 自然に繋がった通路と、クロスローダーを使って開けた通路にはなんらかの差があるということなのでしょうか?
 もっとも、アニメ版には自然通路など出たことがないんですけど。漫画版でさえセリフでしか説明されてませんし……

 ジジモンは「並みのデジモン」と言っていたので、もしかしたらデジクロスしてれば平気なのかな。




★名(迷)セリフ


「宝探しは男のマロンだ! いや、ロマンだ!」(ゼンジロウ)
「線路は続かないよ! ここまでだ!」(ゼンジロウ)

 セリフで魅せるタイプの話じゃないせいもあって、今回は岸尾無双です。のっけからこの調子ですし。
 君はバンブルビーか何かですか。面白いけど。


「抱きしめられた! まさか、オレのことが…好きなのかぁー!?」(ブラストモン)

 そんなわけねーだろとツッこむ暇もないほど高速で炸裂したネタです。思わず噴いてしまいました。
 ブラストモンがああいうヤツなので、新サイバードラモンの無機質な不気味さがかえって際立っていたようにも見えます。



★次回予告

 どうやらリリスモンまで来るようです。もうシッチャカメッチャカだ。
 ブラストモンはとりあえずネネやキリハたちが相手してくれるようですが、バアルモンもいるので気が抜けません。
 シャウトモンたちを操っているのは、やはりバアルモンの技でしょうか。そして、何故彼の側にエンジェモンが…?
 そして女神とは誰のことなのか。次回もかなりの密度になりそうです。