タイキ、女神の戦士!

 脚本:伊藤睦美 演出:細田雅広 作画監督:八島喜孝

★あらすじ

 ブラストモンと激闘を繰り広げるキリハ&ネネ。
 様子を見に来たタイキたちを、バグラ軍の死神・バアルモンが襲います。クロスローダーを弾かれていきなり危機に陥りますが、
 戦いの中で謎の女神像を目にしたバアルモンはなぜかクロスローダーを拾わせ、正面からの戦いを望みます。
 しかし勝負の最中ブラストモンの技に巻き込まれ、タイキが地の底へ落ちてしまいました。

 地下でふたたびあの女神像を目撃するタイキ。彼に反応して像が輝いたとき、側にバアルモンの姿がありました。
 女神の声を聞いたとしてタイキを助け、廃墟と化したサンドリアの街を先導するバアルモン。彼はかつてこの街の戦士でした。
 そして堅い守りと結束力を誇った女神の戦士団を全滅させたのもまた、バアルモン本人。
 何者かに操られて襲いかかる仲間たちを反射的に迎え撃ち、気づけば師・エンジェモンをも手にかけていたのでした。
 以来、彼は血塗られた手のまま殺し屋となり、仲間を殺し合わせた者を探し続けていたのです。

 ようやく地上に出たところで、いきなりシャウトモンたちが襲ってきました。
 その額に浮かぶマークを見たとき、バアルモンの表情が変わります。全てはリリスモンの手下、イーバモンの仕業。
 真に殺すべき標的を見つけ、銃を向けるバアルモンですが、リリスモンの爪がその体を抉る!

 果たしてバアルモンの運命は……!?



★全体印象

 13話です。
 今回からまたまた少し構成が変わり、3話あたりから最初に出ていたロゴとその読み上げがなくなって
 のっけから過去のあらすじへ入るようになりました。クロスローダーが発売した影響で、ミニコーナーも変わってます。
 デジモンデータコレクションと称し、デジモンたちのデータを読める音を流していました。今回はファラオモン。

 脚本は前回から一転して、伊藤陸美氏。どうやら三部構成はそのままですが、1ゾーンにつき脚本担当一人、
 という図式は崩れたことになります。意外に早かったな……次回も伊藤氏担当なら、半ば以上伊藤ゾーンになりますけど。
 伊藤氏はこれまで女児アニメであるプリキュアに書いていたのですが、ここへ来て突然のデジモン登板です。
 休止期間を経て、何らかのテコ入れが表面化してきたのでしょうか? 仕事ぶりは悪くない人なので、期待したいところ。
 演出は細田氏で、作監はおなじみの八島氏。今回はわりと担当パートがわかりやすいです。

 お話のほうはかなりの急展開で、頭を整理するのがちょっと大変でした。
 ブラストモン及びキリハ、ネネは顔見せレベルでさっさと退場し、バアルモンの過去話へと一気にシフトしてゆきます。
 そこで展開された設定についてはデジモン的に考えて、当て身投げ狙ってんじゃねえかってぐらいツッコミ待ちなんですが
 クロスウォーズではよくあること。もうだいぶ慣れました。
 どういう経緯で次回タイトルの内容になるのか、ひとまず楽しみにさせてもらいましょう。




★各キャラ&みどころ


・タイキ

 前回がヒラメキの人なら、今回は器のでかさを見せつけた感じ。
 二度も自分を殺そうとしたバアルモンを普通は疑いそうなもんなんですが、この子は普通じゃないからなぁ。
 経緯が全然違うとはいえ、元バグラ軍であるドルルモンをあっさり受け入れたのが地味に効いてます。

 ただシナリオが急展開だらけなので、振り落とされないようにするのが精一杯という状態。
 バアルモンが心変わりをしていなかったらヤバい局面が何度かありました。それでもわりと平気なあたりは、
 まさに天運としか言いようがありません。そりゃ女神の戦士に選ばれるってなもんです。
 なんせあの崖から落っこちても無事なんだもんなあ。アレクサンダー大王か、君は。

 仲間に襲われても倒すことを選ばず、何とか助けようとする姿勢はバアルモンの心に何かを刻んだようです。
 それが次回、どう関わってくるのか目が離せませんね。


・アカリ&ゼンジロウ

 前回以上に見せ場がなく、驚いたり逃げ回ったりしてるだけです。
 これだけ味方キャラが多いと、スポット次第でどうしても空気が出るもんですが彼女たちは戦闘力もあまりないからなあ。
 今回のようなエピソードでいるだけ状態になるのも、仕方ないことかもしれません。

 とはいえ、そろそろドラマ面以外でもう一つパンチが欲しいのも事実。何かあるとは思うんですけどね…


・クロスハートの仲間たち

 上のような話なんで、彼らもやや空気です。というか中盤はろくに出てきやません。
 一応X4が出ることは出たんですが、前半はバアルモンと少し太刀合わせしただけ。
 後半のイーバモン戦ではバルカンを披露して勝利してますが、あんまりメインな扱いではありません。
 14話に期待しましょうか。


・リボルモン

 成り行き上、クロスハートと一緒に行動してました。そのまんま一緒に操られてます。
 同行してるってことは、やっぱり現地人じゃないんでしょうね。雰囲気も合わないし、やるべき事が終わったんで
 事態が落ち着いたらまたトレジャーハンター稼業に戻るか、クロスハートに合流することになるでしょう。


・ギルモン

 デジメモリ使用により登場。この姿で本編に出るのは久し振りです。
 今回は珍しいことにバトルではなく、ロックンロールブレイカーにより道を空け、且つ落盤を予防する役回りでした。
 マリンエンジェモンに続き、わりと必然性のある登場となっています。この機転にはバアルモンも感心していました。

 あれは同時に、自らバアルモンへ歩み寄るタイキの大きさを示した場面でもあります。
 大きすぎる気もするけど、彼は一話からこんなもんだ。


・バアルモン

 あー…
 一話からの行動の理由が、よーやっとわかりました。よく見たらちゃんと繋がってたんです。

 バグラ軍にいた理由を踏まえて見ると、三元士の側をウロウロしていたのも至極納得がいくんですよね。
 サンドゾーンを襲っていたのはバグラ軍。女神の戦士団ほどの手練を操るとなれば、三元士の差し金である可能性大。
 周辺で情報を集めていれば、何か手がかりが見つかるかもしれないというわけです。殺しは生き延びるための手段。
 根っからの戦士ではあるようですが、通り名ほど殺しが好きなわけじゃなかったようですね。

 最近リリスモンの側をうろつきはじめたのは、性格や好んで採る作戦的に一番怪しいと睨んでのことかもしれません。
 ひとつひとつその手の裡を確かめていると思しき描写が11話にありましたが、アレもその一環というわけだ。
 というより、10話と11話は単なる初顔合わせではなくて仕込みだったんですね。

 とはいえ「殺らなければ殺られる」という考えから、相当すさんだ少年?時代を過ごしてはいる模様。
 腕一本で生き延びてきた戦災孤児か何かで、エンジェモンに拾われたってところですかね。
 そういう背景があると考えれば、女神に答えてもらえないと思い込んでいた説明もつくというものですが……

 名前の由来と思われる豊穣神バアルは、やはり古代の砂漠で崇められていた神様です。
 それが殺し屋の汚名を着せられ、しかもそれがリリスモンの仕業というのは、いろいろ興味深いところ。

 ところで声は櫻井氏と聞いているのですが、あんまり識別できません。
 回想ではなぜかアムロみたいな喋り方をしてますが、こっちは岸尾氏の演じ分けでしょう。
 奇しくも直前の「トランスフォーマーアニメイテッド」で古谷徹しゃべりを披露してくれていましたし。
 たぶん若井おさむより上手いぞ、あれ。


・女神の戦士団

 女神に誓いを立て、サンドゾーンを守護してきた屈強な戦士たち。
 どうやらその戦闘力は極めて高いものがあり、バグラ軍を相手に互角以上の戦いを繰り広げていたようです。
 しかしバグラ軍の卑劣な策略の餌食となり、バアルモンを覗いて全滅の憂き目に遭いました。
 この設定を聞いてなぜか「メロウリンク」を思い出しましたが、全然違いますね。

 戦士長はエンジェモン。旗下にシルフィーモンやカラテンモンがおり、その時点で頭がクラクラしてきます。
 そ、そこはせめてホーリーエンジェモンかセラフィモンにしてくれ……といいたいところですが前者はデジメモリ。
 後者は出すとしたら温存組に入りそうなのでこういう人選になったのでしょうか。
 それにしても、ローブを着たカラテンモンやシルフィーモンたちからはなんとも珍妙な印象を受けます。
 バアルモンはともかく、エンジェモンが素のままなんでよけいに変。神官モードのホリエンなら統一感出たんだがなあ。

 ともあれ、なんだかんだ言ってバアルモンは末っ子として彼らに良くしてもらってたのでしょうね。
 他の全てをかなぐり捨ててまで復讐鬼となったことが、逆にそれを証明している気がします。
 ただ彼が一番憎んでいるものは、状況のせいとはいえ本能的に手を下した自分自身かもしれませんが……

 ちなみに、エンジェモンの声は小林通孝氏。同デジモンを演じた男性では恐らく最も年配です。
 かつては「熱血最強ゴウザウラー」で中島先生を演じた人でもありました。先生か……


・女神像

 戦士団が崇めていた正体不明の女神像。
 前回でアレが出たときから「これは何かあるかな?」と感じていたんですが、やっぱり何かありました。

 その外見は神官モードのベルゼブモンでしかも♀という、どう反応すりゃいいんだろうという代物。
 魔王としてのベルゼブモンがあの姿なら、こっちは魔のものとして貶められる前のバアル神が元ネタですかね。
 バアルモン自身はそんなバアルの荒々しい側面を体現している感じです。
 メガテンみたく合体したりして……いや、まさかな。


・リリスモン

 イーバモンを使って戦士団を操り、互いに殺し合わせた張本人。実行犯がイーバモンなら、彼女は首謀者というところです。

 非道ながら直接的戦術で進軍するタクティモン、確かめるまでもなくひたすら力で押せ押せであろうブラストモンと異なり
 とにかく謀略を好む側面がまた強調されました。元が元なんで悪役の似合うことといったらありません。
 …というか、現状だとタクティモンのキャラ立ちが一番弱いような…正統派悪役だからなんでしょうけど。

 バアルモンとの契約はまだ続いてたんですね。
 しばらく丸投げ状態だったところへ、報告を受けて業を煮やした感じでした。
 あんまり時間が経ったようには見えませんが、アイスデビモンへの態度を見るかぎり気が短いのかもしれませんな。

 そっからの登場がワープ同然なのは、ワープのあるこの世界観的に気にしちゃいけないことなんだと思います。
 描写されたことはありませんが、三元士ともなればゾーン移動なんて軽いもんでしょうし……

 そんな謀略家ですがさすがに三元士、本気を出すとバアルモンですら瀕死に追い込まれてしまいます。
 って、あれ? ナザルネイルって右手だったような……それとも、あれは単なる毒手なんでしょうか。
 でもアカリが平気な顔をしてるところから考えて、毒は任意で出し入れできそうです。じゃないと困りそうだし。


・イーバモン

 リリスモンの手下。なにげにアニメ初登場です。
 言葉はしゃべりますが自我は薄く、リリスモンの命ずるまま敵を操って戦わせました。
 元ネタが宇宙人というわりにはオカルトな術を使うもんです。それとも一種のクラッキングですかね。
 だとすると、人間には効かないのかもしれません。

 プラネットデストロイヤーを使う場面では背後が宇宙っぽくなりました。君は剣崎順か。弾かれたけど。


・スコピオモン

 リリスモンの乗り物として登場。
 ブラストモンが帰っても残っていたところをみると、現地調達員ってやつなのかもしれません。
 スパロウモンと戦ってた連中はどこに行ったんでしょう? 全滅したのか、逃げたのか……


・トゥループモン

 バグラ軍の一般兵士ですが、サンドゾーンにはほとんど派遣されてません。
 しかし、どうやらリリスモンに命じられてバアルモンの動向を追っている者も何人かいるようです。
 それにしても喋れたとは知らなんだ。


・コドクグモン

 廃墟のサンドリアをうろついている子虫連中。超ひさしぶりのアニメ出演です。
 というか、今まではデジアド以外で見たことがありませんでした。図鑑にも載ってなかったし……
 おかげで成長期なのか幼年期なのかさえわかりゃしない。

 バアルモンにとって、彼らは思い出の場所を我が物顔で荒らす害虫以外のなにものでもないのでしょう。
 気配を感じ次第射殺しているところから、その存在に怒りを感じていることがわかります。


・ブラストモン

 圧倒的パワーと防御力でサイバードラモン&スパロウモンと戦ってましたが、あっさり帰ってしまいました。
 必殺のダイヤモンドマシンガンは、どうやら連続で射てない弱点がありそうです。撃ったあとは装甲も劣化してそうな。
 それ以上に、あの気まぐれで自分の体の輝きを最重要視する性格にはつけいる隙が多そうです。
 イビルモンはどうやら、彼の直属にあたる様子。いっしょに帰ってましたし。

 とりあえずキャラは立ったので、今後の活躍?に期待ですね。
 エンシェントボルケーモンと被ってる気もしますが、ヤツはもう死んだので問題ないでしょう。


・ブルーフレア&トワイライト

 どうやら、フツーにコードクラウンを探しに来ただけのようです。
 タイキが得たと知るや、こっちもさっさと帰ってしまいましたが……今は戦わなくていいってことなのでしょうか。
 コードクラウンをタイキに集めさせておいて、後でまとめて分捕るというならわからんでもありませんが。
 でも、ネネの狙いってそれだけなのかなあ……キリハは何故協力する気になったんでしょう。

 スパロウモンが思いっきり分身してましたね。あれが残像なのか、ホントに分身してるのかは不明ですが。
 あとサイバードラモン、お前喋れたのかよ。つうか前回のゼロ距離攻撃はなんだったんです。敵はピンピンしてるぞ。




★名(迷)セリフ


「正々堂々と戦う理由ができた……」(バアルモン)

 女神の御前だから、ですね。
 殺し屋として血塗られた復讐の道を歩んできた彼ですが、それでもまだ女神への憧憬と信仰は厳然と残っているのです。
 その女神が見ている以上、恥じるような戦い方はできないというわけですか。
 少し後の場面で見せた像の前を去るときの礼にも、その姿勢が顕著にあらわれていると感じます。

 実際このときのバアルモンは銃を使わず、あくまで剣を使ってX4と戦ってました。
 大きさの対比など「え?」と思う場面もあるんですが……X4が意外と小さいのか、彼がでかいのか。


「こんな輝きのないボディで戦うことなど……できまへん!」(ブラストモン)

 これが単に自尊心からくる言葉なのか、水晶弾を撃った直後では不利だからなのか、あるいはその両方か……
 それによって対処法が見えてくるかもしれません。
 語尾や喋り方がまったくもって一致しないのは、それ自体がキャラ立ちとみるべきでしょう。


「そう言われると、なんか放っとけなくなるんだよな……」(タイキ)

 俺のことに構うなと言うバアルモンに対して。自分をガチで殺そうとした相手であってもこれだからなあ。
 そいつのために何ができるかは重要じゃなく、手を伸ばすことそのものが大事だという考えなわけですし。
 次回もバアルモンのために奔走しそうです。




★次回予告

 バアルモンを救うために現れたという謎のピラミッド。
 彼に秘められた謎はまだあるようです。いかにしてベルゼブモンが現れるのか、楽しみですね。
 さらにムゲンドラモンも登場とは、またまた派手なお話になりそうです。水があったのでチビカメモンの出番もありそう。

 X4Kがいるってことは、やっぱりナイトモンたちも来てるってことか……忘れた頃にバステモンも出そうだ。