ヘブンゾーン、楽園の罠!
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脚本:吉田玲子 演出:芝田浩樹 作画監督:直井正博 |
★あらすじ
リリスモンの手によって、ヘブンゾーンに放り出されたタイキたち。
そこは芸術を愛するデジモンが集う楽園のように平和な場所でしたが、警察の取り締まりが過剰なまでに厳しく
些細な罪で厳罰を処される恐怖に支配されたゾーンでもあったのです。
悶着に巻き込まれたタイキたちを庇ったのは、大統領候補のルーチェモンでした。
いったんは制度への印象を改めようとした一同ですが、ドンドコモンが無実の罪で疑われ、囚われるに至り
強行手段を使って脱出せざるを得なくなります。しかし、スラッシュエンジェモンに阻止されてしまいました。
スラッシュエンジェモンは天使警察長官であり、強権をもってゾーンを監視する現役大統領なのです。
刑が迫った時、堪りかねたルーチェモンが釈放を訴え、さらに一人のキュピモンが真犯人として名乗り出ました。
やっと開放されたものの、とても刑に値しない罪で処刑されようとしているキュピモンを見て遂にタイキが爆発。
これにルーチェモンも同調し、住民の溜まりに溜まった鬱憤も爆発するに至りました。
激怒したスラッシュエンジェモンの刃の前に、さしものX4も苦戦を強いられます。
そこにベルゼブモンが登場。彼とのデジクロスで圧倒的なスピードを得たシャウトモンX4Bにより、
スラッシュエンジェモンは敗北。キュピモンも開放され、新たな大統領としてルーチェモンが選ばれるのでした。
しかし、そこに新たな影が迫ろうとしていたのです……
★全体印象
15話です。
脚本へ6話以来となる吉田玲子氏が登板。作画の直井氏と芝田氏ももうお馴染みです。
デジアド以来の伝統&安定のコンボですな。
本編は私的にミスリードの嵐。
次にダークナイトモンが出ますし、フツーに見ればこれでヘブンゾーンの騒動はひと段落なはずなんですが
騒動の中心近くにいるルーチェモンがとんでもない前科持ちなんで、どうしても終わった気になれません。
まして、吉田玲子さんといえばフロンティアでルーチェモン復活回を書いた方ではありませんか。偶然か必然か。
加えて随所に挿入されるシャッコウモンの存在感が、むやみに不安を煽ってくれます。
彼(?)が誰の味方なのか、確たるものがありません。強いて言えばスラッシュエンジェモンのスパイ……
ではない、ということが当面ハッキリしたぐらいでしょうか。
彼がどこに属する存在かで、話がいかようにでも転がっていきそうな気がするんですよね。
戦闘では意外なほど早く、X4Bが登場。
てっきりダークナイトモン戦で使うのかと思っていたら、出し惜しみってものをしませんね。
というか、この状態からどうやってX5へ繋げてゆくんでしょうか。
全体的に再登場・初登場デジモンが多く、得した気分になるお話でした。
でもユニモンやペガスモンがいるのに、ネフェルティモンがいないのは何故なんでしょう。
選挙ポスターがじわじわ来ます。
★各キャラ&みどころ
・タイキ
騒動を起こした皆を止めようとするあたりはリーダーでしたが、あそこでキュピモンを救おうと声を上げた場面では
大将という感じがしました。あそこで叫ぶ彼だからこそ、シャウトモンたちも阿吽の呼吸で加勢するわけですね。
たとえ結果的に自分が損をする可能性があっても、誰かを放っておけない。これってヒーローの条件ですよ。
その分、普段からあんまり無軌道なことはしない子だったりもします。
正確に言えば、無茶をするべき時をわきまえているというか……ある種、やはりオトナな所があるのでしょう。
今回のようなお話の場合、ですから意外と書くことがないんですよね。当たり前のことは書いてるけど。
とはいえ、あれだけ癖の強いメンバーが集まってるクロスハートです。
彼がこういう性格でなきゃ、到底纏め切れないということなのかもしれませんね。
・アカリ&ゼンジロウ
今回は本当に驚き役。特筆すべきことは何もしてません。
この二人はやっぱり三条回でないと輝けないのかもしれない。デジモン主体のアニメだから仕方ないけど。
本作はただでさえキャラが多いわけですし……
・クロスハートの仲間たち
シャウトモンがメイン格らしく細かいところで目立っていたほか、ドンドコモンが大フィーチャーされました。
といっても騒動を起こしたり、無実の罪に問われたりするトラブルメーカーな扱いですが……
それでも、こんなに目立ったり喋ったりするのは珍しいです。というか初めて。
普段から単なる賑やかしなんで、こんな時ぐらいしか注目されないのかもしれません。良かったね…と言うべきか?
ベルゼブモンは単体じゃ今のところ最強の仲間なんで、平時は空気を読んで別行動してるようです。
再登場がやたら早かったのには噴きましたが、羽根とともに現れるキザな演出にも噴きました。フェニックス一輝か。
でも、タイキとは見えない絆でしっかりと結ばれているようです。それを確認するような場面もありました。
身ひとつでゾーン移動ができるとなると、かなり使い勝手の良い助っ人になりそう。
ところで、バリスタモンは意外に芸術家肌のようですね。意外ですが、新たな側面が増えてくれました。
アイランドゾーンの頃より仲間は増えてるのに、しゃべる頻度が増えてます。
・シャウトモンX4B
早くも登場したベルゼブモンとのデジクロス。玩具にもなってるれっきとした販促形態です。
その特徴はケンタウロスのような下半身四つ足。これによって、地上では無類のスピードを発揮できるようですね。
攻撃力と防御力では互角だったので、速度で上回った時点で勝負はついていました。
X4Kは攻撃力と防御力を上げるであろうデジクロスですから、確かにあの場面ではあまり意味がなかったはずです。
・ルーチェモン
…どうしよう。
今のところ、どっからどう見ても善意のデジモンなんですが……素直に信じられない私がいます。
というか、ああまで善人だとたとえルーチェモンでなくても疑いたくなってしまう。残念ながら。
そう思う理由はいくつもあります。
第一に、リリスモンと同じ七大魔王のひとりであるフォールダウンモードの前身であること。
これに声優さんが男性である事実を考え合わせると、後の展開を邪推したくなってしまいます。
第二に、登場のタイミングがあまりに良すぎること。第三に、シャッコウモンの出自をミスリードしたこと。
第四に、ドンドコモンが罪へ問われたときその場にいなかったこと。
しかし、これらは全て否定材料があります。
第一は仮にもベルゼブモンが仲間にいる以上説得力がありませんし、声が男性なのも偶然かもしれません。
登場だって他にどこで出すんだよというレベルですし、直後には痛い目に遭ってます。
シャッコウモンだって、そもそも誰の味方かまだわかりません。彼はあくまで噂を語っただけです。
第四の要素にしたところで、そもそもキュピモンが真犯人だと知って驚いてたではありませんか。
もろもろ抜きにしても、あの状況を利用してうまいこと大衆を味方につけたと見ることはできます。
しかし、政をやろうって者があそこに乗っかれないようじゃ逆に話にならない気もするんですよね。
故郷を思ってのことなら、ある程度仕方ありませんよ。
何はともあれ、ひとまず判断を保留します。個人的には擁護もしたいんですが、転がる余地がありすぎ。
ああいうルーチェモンは新鮮なんで、できればあのキャラで通してほしいなあ。
しばらくはネタバレ見ないで悶々としていよう。
そうそう、中の人が松野太紀さんだったのにはモノスゲー驚きました。
まさかの男性な上、まさかのアグモン。前作の主役です。選定基準をぜひ知りたい。
・スラッシュエンジェモン
ヘブンゾーンの天使警察長官兼、大統領。一見とてもそうは見えない流れでしたが、ルーチェモンの政敵です。
そのわりに候補の印が緑のままだったのは、よーするに消極的支持者ばかりってことですな。
そう考えると「何故わかってくれない」という焦りのようなものはあったのかもしれませんが……
たぶん断罪→切断→全身刃物、という連想でああいう役になっただけあり、斬るか斬らないかの二極端な性格でした。
よく見ると、冤罪だとわかれば脱獄は見逃す側面もあるんですが極端すぎて何の救いにもなっていません。
倒されることはなかったので、まだ何か役割があるのかもですけど……何でしょうね。何もないかもしれない。
考えを改めるとか、そういうシーンが追加されるぐらいな気もします。
戦いではデジクロスするまで、終始X4を圧倒。この時点で生半可なバグラ軍幹部より強いです。
羽根を畳んでの全身大回転は、バーニングスタークラッシャーにも押し勝つほどのパワーがありました。
彼の強さが今までゾーンを守ってきたのだと考えれば、確かに死んでしまわれちゃ困る存在ではあるんですよね。
声は檜山修之氏。これまた偶然にも、フロンティアでセラフィモンを演じていた方です。天使率高いな。
シャウトモンX4との戦いはなにげにウォーグレイモン対ブラックウォーグレイモンでしたね。
・ヘブンゾーンのみなさん
ピッドモン、プッチーモン、バクモン、ハーピモン、キュピモン、プットモンがいわゆる一般人扱い。
ピッコロモンとガーゴモン、ユニモン、ペガスモンが警察要員です。特にユニモンとペガスモンが懐かしい顔ぶれ。
これだけのメンツなのに、なぜかテイルモンとネフェルティモンはいませんでした。あとで出す気なのか、それとも…
このうち最も目立ってたガーゴモン警部は、中の人も佐藤正治氏という大ベテランですがデザインが大幅アレンジ。
頭にサイレン乗っけてトレンチコートにサングラスという、へたすっと別デジモン扱いにされそうな扮装ぶりでした。
でもホワイトスタチューを見れたのは収穫です。ホントにあんな技なんかい。
・シャッコウモン
「小さッ!」が第一印象でした。
突然出てきたと思ったらタイキを助け、そのあと物陰から見てるだけだった人。
警察のスパイという噂があるようですが、劇中にそれを裏付けるシーンはありません。
それではいったい誰の味方なのか。ちょっと検証してみましょう。
1.実はクロスハートの新メンバー
個性ならピカイチですし、けっこうあり得る路線です。まだその材料はありませんが、
あれだけ妙なアピールをしておいて本当にどこかの勢力の手下だったら、それはそれで見たまんますぎます。
2.実はバグラ軍のスパイ
見たままですが、噂通りではない扱い。
次回にリリスモンが出るようですし、その接点としての役割があるのかもしれません。
…でも基本的に神聖系はバグラ軍所属じゃないんだよなぁ、今のところ……
3.実はルーチェモンのスパイ
この線も考えたんですが、いまいち根拠が弱いです。
だいたい、自分のスパイならわざわざ警戒させるような事は言わないでしょう。意味がないですから。
ああ見えて本当は悪いヤツじゃないよ、なんて言ったんならまだ邪推のしようはあるんですが…
ルーチェモン自身、まだ判断がつきかねる状態ですし。
4.実はネネのスパイ
ありそうでいて、やっぱり根拠が弱いパターン。
そもそもスパイならモニタモンがいるので、彼(?)にやらせる意味がありません。
ただし「擬装」という路線もありといえばありです。
5.実はやっぱり警察のスパイ
大穴。ただ、失意のスラッシュエンジェモンが考えを変えるキッカケになる、という役割も考えられます。
というかこのパターンの場合、それぐらいしかできることが見当たりません。
…こうしてひとつずつ見てゆくと、最もあり得るのは新しい仲間、なんですね。
ありていに言って、否定材料の無い役割がこれしか無いです。というわけで、当面は1を推しときましょう。
ルーチェモンがああいう役割なら、同行するとは考えにくいわけですし…そう見れば、あの小ささも根拠です。
★名(迷)セリフ
「オレはいつでもお前のそばにいるさ…」(ベルゼブモン)
えらい早い再登場に噴いてしまいましたが、よく見たらなかなかいいセリフです。ストーカー宣言とか言っちゃダメ。
警戒心が強いのは前世の癖でしょうか。でも、一体何を調べてたんでしょう。
「わかんねーもんはみんなアートかよ!」(シャウトモン)
シャッコウモンの謎のセリフをアートだと騒ぐスターモンに。
スターモン的にはアートが何やらツボだったようですが、もっとツボだったのはたぶんバリスタモンでしょう。
それにしても、意外と深いツッコミな気がします。本人に自覚があるかどうかはさておき。
「騒音? タイコはオレの魂だ!」(ドンドコモン)
プッチーモンたちの演奏に飛び入り参加したのを咎められて。体自体が太鼓な君に言われると説得力が違いすぎます。
まあ、この場面に限ると彼も空気を読めてないんですが、事情の説明なしに高圧する警察も相当のもんですね。
「カツ丼じゃあ、ないんだな…」(タイキ)
取調室でデジノワ丼を出されたときのセリフ。お約束ですが、調べてみたら勘違いの蔓延と知ってびっくりしました。
本来は人情から出た特別な計らいのはずなのに、取り調べには必ずカツ丼が出ると思い込まれてたんですね。
実はガーゴモン警部も意外と人情家だったりするのかもしれませんが……なんせ短絡的だからなあ。
ところで、デジノワ丼ってことはご飯が入ってるんでしょうか。それとも単に山盛りのデジノワってだけ?
「わが警察に口答えすることこそ罪なのだ!」(スラッシュエンジェモン)
わりとわかりやすい「ダメだこいつ」系のセリフです。
今までゾーンを守ってきた実績がなまじあるもんですから、ある種始末におえません。
これが正しいのだという独善で動くのは日本の場合、天使キャラのお約束ですが…その典型的な例ですね。
果たして挽回の機会はあるんでしょうか。
「力で心を縛るヤツは気に食わん…! オレがクロスすれば、あいつの速さに対抗できる!」(ベルゼブモン)
よくあるセリフと思わせて、けっこう実感のこもった言葉でした。
力のみでは掴めないものがあると知り、仲間の心を操られた経験のある彼からすれば、そりゃ気に入らないでしょう。
まして、女神の戦士たちは強権などなくても立派にサンドゾーンを守っていたはずなのです。
それにしても、なんで自分がデジクロスしたときの能力を知ってたんでしょうか。
★次回予告
遂にダークナイトモンが登場。
封印されているというコードクラウン絡みの話になってゆくのでしょうが、それだけとも思えません。
鍵はシャッコウモンが握っているというか、その出自と動向で話の方向が決まると思います。