ダストゾーン、グランドロコモンの大スクラップ都市!
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脚本:米村正二 演出:貝澤幸男 作画監督:梨澤孝司 |
★あらすじ
闇に捉えられ、見知らぬ部屋に放り出されたタイキ。そこにはダークナイトモンの姿が…
タイキを試すかのように、ネネがいるという謎の暗黒球に触れさせるダークナイトモン。が、何の反応もありません。
ダークナイトモンはさして失望した様子もなく、彼を放り出しました。そこは高い塔の上だったのです。
仲間のフォローで助かったタイキでしたが、休む間もなく追い剥ぎ集団に襲われました。
クロスローダーを強奪されて途方にくれかけるタイキたち。そのとき、ピノッキモンが話しかけてきます。
動けなくなっていた彼を助けたタイキは、このダストゾーンに蔓延する悪徳について聞きだしました。
ゾーンは強大なグランドロコモンに支配されており、糧を得るため旅人を襲っては機械類を献上していたのです。
ピノッキモンの案内でガーベモンらのアジトに乗り込むタイキたち。
ところが、今度はピノッキモンがクロスローダーを奪って逃走します。グランドロコモンが何より求める機械こそ、
クロスローダーなのでした。それを差し出せば、ダストゾーンから出られると思っていたのです。
しかし、グランドロコモンは自身のスピードを利用して自分だけダストゾーンを脱出する魂胆でした。
これを知って必死に食らいつくピノッキモン。彼を救ったのはタイキと、そしてダストゾーンの仲間たちでした。
今一度仲間を信じる気持ちを取り戻したピノッキモンの奮闘により、クロスローダーが奪還されます。
シャウトモンX4により、グランドロコモンはあえなく倒されるのでした。
一件落着…誰もがそう思ったとき、突然ダークナイトモンが現れます。その側に仕えるのは、何とキリハ!
★全体印象
20話です。もし3クールであれば半分が過ぎたことになりますね。
脚本は12話以来となる米村氏。作監も同じく12話の梨澤孝司氏です。演出はおなじみの貝澤氏。
このままいけば、クロスウォーズはデジモンシリーズで最も作画・演出平均の高い作品ということになりそうですね。
02の頃を考えるとスタッフも増えてるんで、当然といえば当然ですけど。
お話のほうも米村氏がクロスウォーズのノリに慣れてきたのか、幸いなことに12話以上の出来映え。
相変わらずセリフで説明しすぎてるところはあるものの、今回は描写も伴ってるので気になりません。
ピノッキモンを味方キャラに据え、ああいう人物像に仕上げたところも素直に感心したいです。
その分、ものすごい勢いでネタキャラ化しているキリハに「……」となるばかりなのですが。
今に始まったことじゃありません。ネネと組んだのがケチの付きはじめで、いまいちカッコ良くないまま
ダークナイトモンにお株を奪われまくっている気がしてならんのですよね。
なまじっか漫画版の描写が良かっただけになぁ……これって構成上の事故なんでしょうか、故意なんでしょうか。
それでも全体的な面白さには意外と影響してないあたりに、今のクロスウォーズの勢いを感じはしています。
今後の展開しだいではさらに盛り上がりそう。
★各キャラ&みどころ
・タイキ
どうやら闇と呼べるものを一切持ってないようです。大輔以来の暴走知らずになりそうですね。
というかパートナーより前に彼本人が別の意味で暴走してる気がしないでもないですが……それも毎回。
ある意味、生きたいように生きてるんですよね。ひたすら利他的なのが他と一線を画してますけど。
いずれにせよ、今回に限っては一度クロスローダーを分奪られて結果的によかったかもしれません。
そのおかげで結果的にガーベモンらを味方につけ、ピノッキモンをも味方につけることができたのですから。
言ってみればケガの功名ってやつです。わけもわからず迎撃して追っ払っていたとしても
グランドロコモンに勝つ事はできたでしょうが、味方を得ることは難しかったかもしれません。天運かな。
・アカリ&ゼンジロウ
目立ってるというほどじゃありませんが、後半のチェイスシーンではトレイルモンの補助をする場面があります。
細かくてもこういう描写があれば、できることをできる範囲でやってるんだなと思えるんですよね。
その積み重ねは後でかならず効いてくる。
・クロスハートの仲間たち
シャウトモンとドルルモンが頭ひとつ抜けてる以外は平均的な出番です。ただしメイン格のみ。
ドルルモンの仲間入りを描いただけあり、米村氏的にはやはりドルルモンが扱いやすいのかもしれませんね。
状況が状況だけに、デジクロスしての戦闘はすぐ終わります。X4が強いというより敵が意外と弱かった。
あれ? そーいえば、ベルゼブモンはどこ行った? 迷ってたりして……
まあ、出さなくても収拾がつくならひとまず出さないというのもひとつの選択肢ではあるのかな。
・ピノッキモン
目先のことに惑いがちだけど本質的には悪いヤツじゃないという、ピノキオを地でゆく性格になりました。
ウソを武器に使うのかと思ったら別にそんなことはなかったどころか、原典の設定を利用して
素直になれないけど本心バレバレという、誤用表現的に言えばツンデレな人物として仕上げられています
(使い勝手がいいのか、この表現って『素直になれない』部分だけが完全に一人歩きしてますね)。
よく考えてみれば単に元ネタに近い性格にしただけなんですが、このキャラを味方にしたことに意味がある。
デジモンキャラとして、どうやらひとつの壁を越えたようです。おめでとう、元ダークマスターズ。
まあ、ルーチェモンあたりと違って設定の時点で魔王ってわけじゃないからできたことでしょう。
そのぶん強さはごく一般レベルまで落ちてましたが、グランドロコモン相手に粘る描写もありました。
声は難波圭一氏。今や大ベテランです。
かつて「星矢」でアフロディーテやポセイドンといった美形キャラをこなし、他ならぬ三条氏原作である
「ダイの大冒険」ではポップを演じてました。近年なら何と言ってもモエルンバ。
今回は割とナチュラルな演技で、逆に新鮮だったりします。
・追い剥ぎの方々
トレイルモンを足に、大多数がトイアグモン及びメタルマメモンで構成された一団です。リーダーは恐らくガーベモン。
クロスローダーを分捕ったときの鮮やかな手際からは、手慣れ具合を感じさせてくれました。
とはいえ実のところは生活のため、必要に迫られて追い剥ぎをやっていただけだったようです。
人から分捕るほうが楽とか最初からそーゆー考えでもない限り、まあ理解はできますね。
彼らではグランドロコモンを排除するなど思いもよらないでしょうし、クロスハートの存在は衝撃だった模様。
クロスローダーを返しかけたあたりで既にその一端がハッキリと見えます。
ピノッキモンのことは仲間として本気で心配しており、事実エピソード序盤では探してるっぽい描写がありました。
それはピノッキモン自身も否定しておらず、ただ助けてもらう=借りを作ることを警戒していたようです。
よほどひどい裏切りに遭ったことがあるのか、仲間を作りたがらなかったというところでしょうね。
・グランドロコモン
ダストゾーンでも最も悪辣で、最も利己的な支配者。その悪徳が伝染のように住民へも広がっていました。
自分だけ良ければそれでいいという考えのもと街を踏みつぶし、ゾーンを脱出しようとします。
走り続けることで別の場所への道を開くという設定は「暴走デジモン特急」を彷彿させるものがありますね。
ただ、あの時とは違って操られてるわけでもなんでもない完全な悪役ですけど。
ある意味、キャラ的にピノッキモンと真逆の変容を遂げてますな。
最後はX4に自らの技を跳ね返され、あっけなく爆死。まさに自業自得を地でゆく最期でした。
声は佐々木望氏。「幽遊白書」の浦飯幽助など熱血少年もこなしましたが、いつしか黒いものを肚に秘めた
悪役もこなすようになった人です。声優のマルチメディア活動では、草尾氏とともに黎明期を支えたひとり。
近年だと「マジレンジャー」のワイバーンが印象的でした。アレも悪役だ。
でもグランドロコモンに起用された決め手はなんだったんだろう。わりと本気で不明です。
ボス(特にゲスト)にはベテラン級を、という方向性には何ら食い違うものじゃありませんけど。
・ハグルモン
クロスローダーを利用し、グランドロコモンにゾーン移動の能力を付与していました。
生半可では使えないはずのクロスローダーをあんな風に利用できるあたり、かなり高い技術があるようです。
その見返りとして共にゾーンを脱出する共犯者、あるいはグランドロコモン自身の分身なのかもしれません。
しかしその野望は叶うことなく、相棒に先んじてブリットハンマーの露と消えました。
・キリハ
このキャラはいったいどこまでアホの子になってゆくんでしょう。
慣れない駆け引きを言い出したと思ったら簡単に見透かされ、ダークナイトモンに言われるまま闇の球に触れて
白目むいて失神→まんまと力を与えてしまった上に操られる、と目もあてられない大活躍です。
前回はそれでもカッコいいところを見せたのに台無し。ある意味、さすがは米村脚本といえますね。
あの白目失神でなんかこう、名実ともにネタキャラの位置を確固たるものにした気がします。
「今までのオレとは違う!」→腰抜かしてドアップで恐慌、の仮面ライダーギャレン=橘さんすら思い出しました。
おかしい…漫画版ではかなりカッコよかったのに……どうしてこうなった。
まあ個人的見解になりますが、嫌われるよりは生暖かく見守られるほうがまだマシですからね。
デッカードラモンが仲間入りしたばかりなんだし、挽回を期待しましょう。
・ダークナイトモン
いつになくマントが翻ってるお方。
キリハがデッカードラモンを手に入れるなら問題ないと言っていたのは、ああいうことだったんでしょうか。
闇を心に持つ者なら、その気になれば操ることができるから同じことだ、という。
タイキを潰そうとしているのは要するに、自分の意のままには決してならないからかな。
暗黒球が反応しなかったときもあんまり残念そうじゃなかったし、最初から期待してなかったのかも。
正面から叩こうとするあたりには自信と、彼なりの美学みたいなものが垣間見えます。曲がりなりにも騎士か。
そして今回で一連の目的も見えました。「ダークネスローダー」です。見るからに悪そうな響き。
これを作り出すためにヘブンゾーンで闇を集めたりしてたんですね。他でも暗躍してるはずです。
問題はそれを誰に持たせるつもりなのか。個人的にはユウと読んでますが、ネネかもしれない。
どう転んでも、あの姉弟が縦軸に大きく絡んでくるのは間違いないでしょうね。
それにしても「隠れている」という表現が気になります。あそこが彼の本来の根城ってことでしょうか。
だとすると、彼ほどの強者が隠れねばならないほどの相手がどこかにいるということですかね。
普通に考えればバグラ軍でしょうけど……強さはともかく、数はものすごいですし。
こうなると、いまだ姿を見せぬバグラモンとの関係も気になります。まだまだ謎が多い。
・スカルグレイモン&スカルサタモン
ダークナイトモンの側に控えていた二体。モチーフからすると、ダークさん直属?
作画がよいせいか、なんだかえらくカッコよく、恐ろしげに見えます。
ってか、今までどこにいたんでしょう。謎だ。
★名(迷)セリフ
「勝つためには手段は選ばない。オレたちは似た者どうし……だろ?」(キリハ)
ある意味そうかもしれませんが、搦め手もおおいに使うダークナイトモンと強さのみにこだわる彼とでは
やはり相容れないと思います。事実、この前トワイライトのやり方に異を唱えたばかりではないですか。
というか、鼻が伸びなくてもダークナイトモンを油断させるための嘘だとバレバレです。駆け引きがヘタだなぁ。
それが彼らしさといえば彼らしさなんですが。
「お前はこのゾーンに信じられるヤツがいない、って言ってたよな?
それは、お前が仲間を信じようとしなかったからじゃないのか? お前はもっと仲間に頼ってもいいんだ。
そう…苦しいときはいつでも仲間を信じて…!」(タイキ)
ピノッキモンを諭して。説明っぽいですが、タイキのセリフで挙げるならやっぱりこれかなと。説得力あるし。
タイキが仲間に力を貰えるのは、何よりもまず彼自身が仲間のために動いてるからですものね。
まるで見てきたみたいな物言いなのは、一種の経験則ですかね。
「タイキ! お前を信じるぜ!」(ピノッキモン)
タイキを守ってクロスローダーを奪還、投げ渡したときのセリフです。
飾り気の無いシンプルな言葉ですが、手にしたものを一度は己だけのために、二度目は誰かのためにという状況、
そしてそれを大きなアクションで強調する演出によって印象が深まっていました。結構好きなシーンです。
★次回予告
ダークナイトモンの私兵、リリスモン、キリハを交えた大乱戦。リリスモンは便乗か、それともダークさんの差し金か。
態勢の立て直しには、ダストゾーンについてよく知っているピノッキモンが大いに役立ってくれそうな予感。
そして直接対決がないままタイキにぶん殴られるキリハ。彼の明日はどっちだ。
スパロウモンもいるようですが、肝心のネネはいったい何処に……?