落ちこぼれモニタモンズ、がんばる!
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脚本:吉田玲子 演出:芝田浩樹 作画監督:高橋晃 |
★あらすじ
コードクラウンの入手失敗を受け、夜襲を企むバグラ軍。
が、その情報はネネのモニタモンズを通してクロスハートに筒抜けでした。そこで可能なかぎり敵の目を引きつけ、
その間に姫を救出する作戦が立てられます。問題は、どのようにチームを分けるか……
名乗り出たのは意外にも、ゼンジロウでした。ネネに恰好いいところを見せようというのです。
制止したドルルモンがそのまま同行することになり、里の落ちこぼれモニタモンズも参加となりました。
かくて陽動作戦がはじまり、別働隊もまたモニタ城へ潜入します。
しかし蓋を開けてみれば、ゼンジロウも落ちこぼれモニタモンズもドルルモンの足手まといになってばかり。
諦めかけたとき、落ちこぼれモニタモンズを通して陽動組の奮闘がゼンジロウの目に飛び込んできます。
奮起したゼンジロウはドルルモンの巻き上げた竜巻に乗り、落ちこぼれモニタモンズらと共に天守閣へと突入。
時を同じくしてネネのモニタモンズも一斉に行動を起こし、姫の救出に成功するのでした。
が、ムシャモンを引きつけることになったゼンジロウと落ちこぼれモニタモンズは大ピンチ。
それでも退かないゼンジロウの姿がモニタ城を通して皆に伝わり、スパロウモンで先行したネネが割って入ります。
クロスローダーが黒から白へ変わり、遂にクロスハートと心を同じくした彼女によってデジクロスが発動。
落ちこぼれモニタモンズ三体合体によるハイビジョンモニタモンが、ムシャモンを圧倒します。
そこへタイキたちも馳せ参じ、X5の必殺技がバグラ軍を一気に薙ぎ倒すのでした。
自信を得た落ちこぼれモニタモンズが仲間に加わり、コードクラウンもネネによってタイキに託されます。
すっかりいつもの調子に戻ってネネにデレデレするゼンジロウでしたが、姫様=ババモンに惚れられて
追いかけ回される羽目に……何はともあれ、クロスハートの絆はより強く固まったのでした。
★全体印象
24話です。
脚本は前回に続いて吉田氏。連続で担当するのはアイランドゾーンの時以来ですね。
作画は安定してますが演出がなごみ系なのは話の雰囲気がそうさせるのでしょうか、それとも芝田氏の素でしょうか。
決めたのはX5ながら、ほぼゼンジロウが主役のお話です。
はじめの動機こそ不純でしたが、これまでの描写にある通り一度腹を括れば頼りになるヤツですからね。
そういえばドルルモンとはあまり会話してなかったので、ここで大量に補完されたことになります。
あくまでタイキを買って仲間入りしたドルルモンにとっても、認識を新たにする良い機会になったわけですね。
上に書いたとおり、X5は出ますがバトル自体は地味なものが多いというか、地味な演出が多いです。
それより、ゼンジロウや落ちこぼれモニタモンズの奮闘を主体に楽しむべきお話でしょう。
小回りがきく取り合わせなので、今後もなにかと出番があるかもしれません。
またネネがいろいろと完全に裏返ったのか、仲間として視覚的にもわかりやすい脱皮を果たしました。
このシノビゾーン篇はネネの仲間入りを軸に、アカリとゼンジロウの描写を補完したエピソードといえます。
シリアスそうな次エピソードを控えてのインターバルというだけに終わってはいません。
細かいツッこみどころはいっぱいあるんですが、無視するか想像で補えるレベルでしょう。
★各キャラ&みどころ
・タイキ
今回も相変わらずのジェネラルっぷりを発揮しています。
本当に他人をおだてるというか、盛り立てるのが上手い。またまた無意識にゼンジロウを動かしているし。
人に信じてもらうにはまず自分が信頼するべきといいますが、それを地でいっている子です。
見せ場はX5ともども凝縮されてて短いので、ゼンジロウへ大幅に譲った形ですね。
・アカリ
前回目立ってたこともあり、今回はとても控えめ。タイキの脇でツッコミを入れてるぐらいです。
短いけど、ネネの完全仲間化を喜びで迎えた場面は印象的でした。
・ゼンジロウ
アイランドゾーンやレイクゾーンでも示されていましたが、今回もやるときはやる男です。
ただ動機が不純だったのと、タイキが側にいない状態で仲間も少なかったので最初は弱気でしたね。
このところタイキに頼りっきりだったのも地味に効いてる感じ。
後半ではスターソードを振るってコテモンを倒し、本気じゃないだろうとはいえムシャモン相手に鍔迫り合う
マサルの兄貴もかくやな活躍をします。さすがにあの規格外ほど頼りにはなんないけど。
最後はネネの乱入とハイビジョンモニタモンの登場に助けられましたが、妥当なところだと思います。
アレでムシャモンにまで一矢を報いるのはいくらなんでもやり過ぎなので、このへんがベストでしょう。
彼はアカリ同様一般人代表ですが、タイキの奥さんにしてネネの友人という立ち位置も兼ねる彼女とも違い
全面的にギャグメーカーであり、ムードメーカーであり、リアクション大王でもあります。
そんな彼がここぞという場面で奮起する瞬間にこそ、強いヒーローの戦いとはまた違う感慨があるのでしょう。
・ネネ
うーむ、白はこっちだったのか。じゃあユウはジェネラルじゃないのかな? それとも別の色が……?
ともあれすごくわかりやすく仲間入りですよということで、ここに項目を移すことにしました。
突然色が変わったようにも見えますが、あれは前回に輪をかけての利他的行動。
ひょっとしたら、自ら提案して先行したのかもしれないのです。それが何かを導いたのでしょう。
タイキへコードクラウンを託す表情にも、すでに蟠りはありません。懸念は弟のことだけ。
セリフを額面通りに受け取るなら、弟がらみで別行動を取る可能性も匂わせていますね。
しかしそれも「離れていても心はひとつ」な流れでかなり緩和できそうです。
そう考えてしまえれば、ジェネラルが二人いるというのは実のところ極めて有利なのかもしれません。
今回のようにタイキを現場指揮に残して単身急行し、味方デジモンを合体パワーアップできるのですから。
戦略・戦術ともに柔軟な展開ができるようになったわけですね。分散戦の場合は特に。
時折顔があからさまな富田絵になるのはご愛嬌。
・クロスハートの仲間たち
しばらくは陽動作戦ということで、デジクロス無しの戦いを強いられました。X2の登場すら無し。
メイン以外は、ナイトモンとモニタモンズだけです。意外と寂しい展開でそこはショボーン。
モニタモンズは今回で完全に仲間入りしたことになります。
もともと悪役という感じも敵役という感じもしなかったので、むしろ違和感がありません。
でも赤のほうはともかく、緑のほうは分散してても優秀なんですね。過去にも示されてはいたことですし。
メインどころで特に目立っていたのは、やはりドルルモンでしょう。
上で書いた通りゼンジロウとは全然話をしておらず、どう思っているのかもわからなかったのですが、
タイキに比べてかなり軽く見ていたことがハッキリしました。キュートモンと仲良しなアカリより確実に下。
でも、今回のことでかなり印象を改善させたようですね。
ってか、あの流れだったらベルゼブモンが出てきてもおかしくなかったんですが…どこ行ったんだホントに。
もう五回も出てないんですけど。しかも誰一人ツッこまねえし。
これだけ出てこないとなると、何か理由があるとしか思えないんですが……なんでしょうね。
ちなみに今回、出られるメンバーはほとんど総出で戦ってましたがキュートモンは立ってるだけでした。
まあ負傷者が出ないと待機してるしかないんですが……治癒能力自体をたまに忘れそうになります。
両親と巡り会う日はいつになるのでしょうか。
・ハイビジョンモニタモン
…ああ、赤が三体集まって三倍強いぜということか。今気づきました。
落ちこぼれモニタモンズがネネによってデジクロスを果たし、強力なパワーを手に入れた姿です。
通常のモニタモンを遥かに凌ぐ戦闘力を持ち、それまで全く歯が立たなかったムシャモンをも圧倒するほど。
X5が捕縛された際にも得意の雷撃で助けており、破格の大活躍です。すげえな、デジクロスって。
これが姫様なんだろうかとトンチンカンな予想をしてましたが、終わってみればこっちの方が自然でした。
そうだよな、落ちこぼれたちがデジクロスした姿だと考えるのが妥当だよな。
なにげにしっかりとしたバンクもある上タイキの側にいるので、まだまだ活躍場面はありそうです。
・インプモン
先制攻撃ぎみのデジメモリで登場。伝説扱いか…いや、確かに昔の番組ではメイン格だったので間違ってはいませんが。
というかベルゼブモンの進化前なんですけど、たぶんツッこんではいけないのでしょう。
結果だけ見ると、あんまり役に立ってはいません。
・長老と姫
長老は前回でとりあえず役目の大半を終えたため、今回はいるだけでした。
姫はオチ担当。姿が全く出ないのはそういうわけでしたか。でも残念ながら、ジジモンとの絡みは無し。
だがゼンジロウ、彼女の正体はロゼモンかもしれないぞ。ひょっとしたらだけど。
・バグラ軍のみなさん
夜襲メンバーを選りすぐりすぎたせいか、城がメチャメチャ手薄だった方々。
手勢そのものもなんだか非常に少なく、零細地方軍という印象を受けます。なんせ門番の一人がコテモンです。
精鋭たちも実はいまいち弱く、X5が出るとたいした抵抗もできずに倒されてしまいました。
でも、それはモニタ城の面々も似たようなものなんですよね。
要するに空洞化したシノビゾーンはあまり重要な場所ではなく、バグラ軍もマイペースにやっていたのでしょう。
上が超マイペースなブラストモンなので、むしろ放置気味だったのかもしれません。
夜襲組にガイオウモンがしれっといて死ぬほどビックリしました。
しかも弱ェ。ナイトモンに強いイメージがあるとはいえ、互角に斬り結べる程度とは……
これがアニメ初登場とは思えないほどの扱いです。単に剣を持ってて和風だから選ばれただけなんでしょう。
設定だけならブルーフレアにいてもおかしくないヤツなんだぜ……どうしてこうなった。
そのガイオウモンと並んで、イガモンやアシュラモンもいます。アシュラモンは2度目ぐらいのアニメ出演。
特にこれという活躍をしないまま倒されてしまいますけど、賑やかしにはなりました。
門番のチャツラモンはいかにもという感じでしたね。あっというまに死んだけど。カブキモン以下の扱いか…
・ところで
モニタモンズは何を根拠にシノビゾーンでネネを休められると思ったのでしょう。
単に地元だから場所を確保しやすく、バグラ軍も大物は来てないので比較的安全だと判断したのでしょうか。
まあ、そういうことなのかもしれません。
あと、よく考えてみたら先にコードクラウンを手に入れた意味がほとんどありませんでしたね。
ネネに持たせてゼンジロウを前に出させるための方便としては機能してましたけど。
それにまあ、切り抜けたぜ! あ、コードクラウンだ! よりはマシか。これを2度もやってるのが、かの米村氏です。
★名(迷)セリフ
「やめておけ。お前には無理だ」(ドルルモン)
端的なセリフ。少なくともタイキに比べたらいまいち頼りない認識を抱いているはずで、反証の術もありません。
直後、どこまでも素なタイキに救出班入りを依頼されてヤブヘビとなりますがお陰でかなり目立つことができたため、
ドルルモンファンの人はむしろゼンジロウに感謝したいところでしょう。
「オレたちはお前を信じているぞ!」(タイキ)
ゼンジロウの心に突き刺さった一言。
いいところを見せたい、というだけで志願した今の自分に、その期待へ応えることなどできるのか……
違う、そうではない。まだ何も始めていない。今駄目なら、今から応えられるようになればいい。なるしかない。
インターバルと書きましたが、この回はゼンジロウにとって一つの大きな分岐点だったかもしれませんね。
「フ…ちったぁ、やるじゃねぇか」(ドルルモン)
ひさびさに漢スイッチを入れ、その勢いでコテモンを倒したゼンジロウに。
彼の対応いかんによっては印象が良くなるどころかますます悪化する可能性もあったわけで、
ひいてはクロスハート全体に波及する問題になりかねませんでした。ゼンジロウはそれを未然に阻止したことになります。
他の誰でもない、彼自身の心意気で。
ドルルモンは斜に構えていますから、これでもかなり褒めているほうでしょう。その後の行動で、より強く示すこととなります。
カブキモンとの戦いではダメージを受けたように見えますが、あの程度では蚊に刺されたみたいなもののようですね。
「オレには、タイキみたいな力もない……デジモンたちのようにも戦えない…
でも、オレにも何かできるはずだ! それが今、ここで戦うことなんだ!!」(ゼンジロウ)
似たようなセリフを丈先輩や純平が言っていたのを思い出します。
でもパートナーデジモンやスピリットという自分の力がある彼らとはまた違った切実があるのは、彼が一般人だからですね。
スターソードがあるとはいえ、ムシャモンとは実力も体格においても差は明らか。
そんな彼が体を張ってギリギリの戦いをしている瞬間に吐くからこそ、最大の説得力を持つ言葉なのかもしれません。
そんなゼンジロウの本気が落ちこぼれモニタモンズを動かし、ネネの「ほっとけない」に火をつけたのでしょう。
クロスハートの一員になったのは、そのおかげですかね。
「ありがとう……今度は、わたしが頑張るわ」(ネネ)
ゼンジロウを救出した直後。何に対しての「ありがとう」なのか、いろいろと込められていそうな一言です。
クロスハート全体へのようでもあり、ゼンジロウ個人へのようでもあり、両方のようでもあり。
そしてこれは、劇中で彼女が初めて素直に利他的行動を為した瞬間です。クロスローダーはその心に応えたのでしょう。
コードクラウンもタイキに託したので、実質「あんたが大将」と認めた形になりました。
立場的には副将ということになってゆくわけですが、弟の件が片付くまでは落ち着きが悪そうな気も。
★次回予告
これは……プリズムゾーン、かな?
いつのまにかぼっちになっていたキリハと、いよいよ直接対決になるのでしょうか。
でもバグラ軍は出てくるわ、デジクロスは何故か解けるわと色々大変なことになるようです。何が起きるんだろう。
キリハはいつになく凶暴ですが、はしゃいでるようにも見えますね。