ゾーン崩壊!火花散るタイキとキリハ
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脚本:三条陸 演出:土田豊 作画監督:八島喜孝 |
★あらすじ
次なるゾーン、ディスクゾーンにやってきたクロスハート。
そこではキリハの軍とバグラ軍が熾烈な戦いを繰り広げていました。キリハは新たなデジクロス、デッカーグレイモンで
三元士ブラストモンとも互角に渡り合ってみせます。しかも、コードクラウンはすでに彼の手の中。
その上ディスクゾーンは老朽化が進み、崩壊の危機を迎えていました。
止めようとするクロスハートでしたが、どういうわけかデジクロスが解けてしまいます。そこへ起きた崩落に巻き込まれ、
シャウトモンがグレイモン及びメイルバードラモン共々下層へ転落してしまいました。
二体にデジクロスを支えられなかったのは自分のせいだと指摘され、愕然とするシャウトモン。
コードクラウンを使えば、ゾーンの崩壊を止められるのですがキリハはこれを拒否。
タイキの目指すものとの相容れなさが改めて浮き彫りになったとき、ブラストモンが撤退ぎわに残していった
巨大デジモン・バルブモンが乱入してきます。デジクロスの中心が不在のため、苦戦するクロスハートとブルーフレア。
そこへシャウトモンとグレイモン、メイルバードラモンが駆けつけます。
シャウトモンはまたも落ちかけたグレイモンらを助け、共に上層へ戻ってきたのでした。
これ以上の崩壊を防ぐため、条件の悪い戦いに不調を押してあたるX4Kを見かねてか、借りを返すためか、
グレイモンが一時加勢します。そのままX4Kが敵を空中へ放り投げ、どうにか勝利を拾うことに成功するのでした。
が、ゾーンの崩壊はもはや止めようがありませんでした。
キリハが去り、コードクラウンは失われたまま。絶望的事態を前に、タイキの決断は……?
★全体印象
25話です。
脚本は三条氏。作監は八島氏ですが、ところどころ露骨に富田絵が混じっています。富田氏も最近、担当が増えたなぁ。
三条氏のここまでの担当回を見てみると1〜3話、10話、11話、16話、18話、19話、22話、そして今回と
次第に頻度が増えてきています。序盤に6話離れていたのは、ライダーの仕事が多忙だったからでしょうか。
それも映画やOVを経て落ち着きつつあるので、今後しばらくは専念するかもしれませんね。
もっとも、これだけ実力を示した今となってはそうそう落ち着いていられないかもしれませんけど。
それに01の頃から構成が6話程度離れるぐらいは当たり前のことでしたし、単に予定通りなのかもしれません。
さて、内容的には予想したとおりのシリアスなもの。
シャウトモンが迎えた謎の不調がまだ解決しておらず、引きもめずらしく絶望的ムードになっています。
これに伴ってキリハも序盤の黒い側面を取り戻しており、今一度クロスハートとの考え方の違いをアピール。
そんな中でクロスハートというか、シャウトモンも意地を見せていてバランスが取れていますね。
それに、ネネと別行動でX5が出せないというハンデがあったのを忘れてはなりません。
タイキがああいうヤツなので、シャウトモンにひとつの試練を与える形になったのは妥当なところです。
タイキ自身もそういう時期ではあるんですが、シャウトモンほど深刻な状態ではありませんし。
相棒同士であれば、鼻息の荒いほうが悩むのは三条脚本のひとつの様式美ですね。
同時にそれはパワーアップフラグでもあるんですけど、次回のX5Bをも越える何かへの仕込みでしょうか?
合間にダメモン=アレの伏線も撒かれており、次回への期待を大いに煽ってくれます。
なお、矢口真里さんはさすがにツボを心得た演技でした。パンパチモンも意外と違和感がありません。
★各キャラ&みどころ
・タイキ
状況とキリハの黒さに煽られてか、いささか余裕のない言動や行動が目立ちました。
それでも真っ正面からキリハに協力を申し出たり、自分の考え方を強調したりとその姿勢にブレはありません。
よく考えてみたらキリハが素直に応じてれば済んだ話かもしれないので、落ち度というほどのものもないのです。
ただ、それでもヤバい状況になるときはあるということなのでしょう。
さて、次回はどんな決断を下すのでしょうか。
このままディスクゾーンの皆を置いて逃げるという選択肢だけは無いので、脱出するとしても彼らを連れてでしょう。
そのために何をするのかが、26話における最初の見どころになるでしょうね。
・アカリ&ゼンジロウ
アカリは意外に珍しいケースとして、タイキとキリハの間に立って諍いを止める場面があります。
日頃からタイキをフォローしてる彼女ですけど、ストッパーになるケースは実は稀。事態の異常さが示されてますね。
ゼンジロウは右往左往してるばかりですが、目立ったばかりだしまあこんなもんでしょう。
・ネネ
いきなり別行動。当然スパロウモンも一緒のはずなので、X5にはなれないことになります。
ダークナイトモンがいない以上、バグラ軍が跋扈しているデジタルワールドで固まらずに行動することは
彼女にとってかなりのリスクです。そのリスクを取っても弟を放っておけない姿勢は、ある種クロスハートの典型。
まあ、彼女のクロスローダーにも隠し玉があるのかもしれませんけど。
いずれにせよ、モニタモンズがいるので連絡と合流は楽でしょうね。
思えば、前話はそのために落ちこぼれモニタモンズを仲間入りさせたといえます。
・シャウトモン
最近肩が凝るなんて言い出したと思ったら、いきなり謎の不調を訴えはじめました。
次回で解決するものなのか、この先に繋がる何かへの仕込みなのか、それはまだわかりませんが……
乗り越えたとき、たぶん彼はより大きくなっていることでしょう。
加えて精神的にもひとつの楔を打ち込まれているのですが、これについては傍から見るぶんなら
「いや、お前さんはよくやってるよ」と言ってあげたいレベル。本人がどう考えるかはまた別問題です。
まあ、精神的重圧を考えたら一番よくやってるのはタイキかもしれませんが。
半分意地になってのこととはいえ、誰かのためにとてつもない力を出す側面も今回のポイント。
グレイモンやメイルバードラモンの心理に何かを印象づけたのは確実です。
真っ先に行動で示したのがグレイモンで、これは今後への布石ともなりうる流れでしょう。
なんだかんだで、後へ繋がるものを残すのがクロスハート。今回もそうなので、視聴後感は悪くないのです。
そういや、X3GMなんてのもあるんでしたっけ。ゲーム限定か、それとも……
もっと驚いたのはX3SDの存在ですが。バグラモンがラスボスなら、まああり得ない話でもないですけど…
・クロスハートの仲間たち
スパロウモンが不在でベルゼブモンもいないので、ピンチヒッター気味にナイトモンとポーンチェスモンズが奮闘。
22話といい前回といい戦闘力、特に守りが高めなせいか、ナイトモンは地味にあちこちで存在をアピールしてますね。
これもタイキが寒中水泳してまで助けたおかげでしょう。「ほっとけない」が輪を作っているわけです。
まあ本人はあとでたぶんそれが原因でぶっ倒れるんですが別の話。
当然のように、戦闘で目立っていたのはX4K。
恐らくこういう事態のために、アニメ企画側が用意しておいた姿なのでしょうね。
X5やX4B→X5Bほどではないけど、素のX4より強いイメージがあって且つ離脱のリスクも無いという。
加えて今回はなんだかんだで白星をあげているため、繋ぎで終わらせる気はなかったようですね。何より。
…そういえば、サンドゾーン編では噛ませ形態としても機能してましたっけ。汎用性あるなぁ。
・ディスクゾーンの住人たち
ついにルナモンがと思って見始めた次の瞬間、いきなりメルキューレモンが登場してアゴが外れました。
言われてみれば、あの世界にこれほど似つかわしい存在はありません。しかも悪いヤツじゃなかった様子。
アッという間に死んでしまったので、いい扱いとは言えませんでしたけど。
ルナモンを演じるのは今野宏美氏。なにげにネコ娘です。一人称はなぜか「ボク」。
タイキが鬼太郎なので、顔合わせとしてはすっかりお馴染みということになりますね。
ただでこんな配役をしたとも思えないので、何かしら役割があるのかもしれませんが…仲間にならないかな。
単に「弱いものの代表」として出しただけとも取れますけど。
その他、シーホモンが目立っていました。声は山田真一氏。
「勇者王ガオガイガー」で一人8役の大車輪を披露した、あの山田氏です。配役理由は不明。
でも、ひさびさに名前を見たんでなんだか嬉しくなってしまいました。
そしてパンパチモン。デザイン自体はデジモンとして浮いてるとは思えませんがゾーンからは浮き過ぎ。
ただし、矢口真里さんの演技は並みいる声優さんの中にあっても浮いてません。それだけでも立派です。
これで仲間入りしたら破格の待遇といえますが……なんせバステモンという前例があるし。
その他、トゲモグモンとサーチモンの姿も見えます。人選理由はなんとなく察知できますね。
ってかこのゾーン、大半がアニメ初登場デジモンばかりではないですか。
・キリハ
コードクラウンを手に入れてノリノリなのか、すっかりハイになってました。
しかも今回は鍵が手元にあって有利な立場なので、久々に黒い側面を前回にして上から目線を放ちまくりです。
瞳がまんまブルーフレア状態になっているのは笑っていいところなんでしょうか。
……ネタキャラ面で伸びてたせいか、かなりのテコ入れなはずなのについ生暖かく見守ってしまいます。
まあ同じ加減を間違える展開でも、黒くしすぎてライバルというより悪人になってしまうよりマシかもしれませんが。
それに彼は弱い者を放置はしてもトドメを刺すことに拘りが無いので、そこがバグラ軍と一線を画すところです。
よーするに自分の身は自分で強くなって守れということですね。今はまだ「放っておく」人なので。
ただメルキューレモンの例からわかる通り、立ちはだかる者は誰だろうと容赦しないのもまた事実。
改めて、根底にクロスハートとは相容れない考えを持った男だということは示されています。少なくとも今は。
そんな彼が愛深き戦士というのは不思議ですが、コレ本人は否定してないんだよなぁ。
少なくとも、デッカードラモンにとっては「ほっとけない」ヤツのはずです。実際かなり危なっかしいし。
特に、力よりも知恵を絞る必要のある局面にはものすごく弱そうだ。
・ブルーフレアの皆さん
雑兵の立ち位置としてガオスモンが登場。漫画では早くから出てましたが、アニメでは確か初めて。
少数精鋭のイメージが強いブルーフレアにこういう連中がいるのは意外なようですが、数がものを言う局面もあります。
特に大物が混じってるときはグレイモンらがかかり切りになるので、そういうケースにこそ出番があるのでしょう。
そして新デジクロス「デッカーグレイモン」も登場しました。
またまたタイキではなく、バグラ軍との戦いで見せたことになりますがこれは彼らがライバルだからでしょうかね。
互いの手のうちを見せた上で正面からぶつかり合うというのは、ひとつの潔さですから。
戦術や謀略を展開する悪役・バグラ軍との明確な差がここにもあるわけです。
彼らの繋がりは強さ。互いが互いを頼らず、生き残った者だけが前に進め、また認め合える世界のようです。
だから意識して助け合うこともなく、デジクロスするのは目的が一致しているから、ですか。
摂理に則っているようでいて、実はかなり効率の悪い生き方です。生き物が摂理に縛られているのは当たり前で、
乗り切るためのものが社会性や智慧だというのに、それをあまり重視していないのですから。
ただブルーフレアのポイントは、彼らの多くがおそらく納得の上で参加していることでしょうか。
少なくとも、切り捨てられたことを酷いと泣いて縋り付くような者は初めからあそこにはいない気がします。
ある種シンプルな考え方ですから、実際に底力を示したシャウトモンに感じるところがあったのかもしれません。
・バグラ軍の皆さん
そんなブルーフレア以上に脳筋なのがブラストモンです。
必要とあれば積極的に前線へ出向くという、あまり部下へ頼らない戦い方。短絡的な性格もあるのでしょうけど、
やはり自分の強さに絶対的な自信を持っているからですね。キリハにとってはある意味好敵手といえます。
部下そのものもタンクモンにマンモンと、重量型ばかりなのが「らしい」ところ。
ただ、キリハ的にはあまり脅威の対象じゃないみたいですが…デッカードラモンを仲間に入れた今は尚更に。
実際、彼にとってはリリスモンあたりの方が遥かにやりづらい相手でしょう。
で、置き土産に出してきたバルブモンもパワーしか能のないデカブツでした。なんかもう徹底しています。
本来は前線へ兵士を運ぶための役割もあるはずなのですが、そんな描写は欠片もないので戦闘特化の模様。
ドルルモンが本来の大きさと違うかのようなセリフを吐いていたので、特化改造されてるのかもしれませんね。
リリスモンの側に控えるダメモンは、どうやらそろそろ本性を現しそうな雰囲気。
それ込みで、次回は話がけっこう動きそうです。
・テロップ
なぜか今回、右上に出ていたもの。状況の変化をしなくてもいいのに説明しています。
なんせ矢口さんが出る回なので、途中から見だした人のために入れてるのでしょうが……不思議な感覚です。
まるでバラエティ番組を見てるかのよう。まさか常態化しないよね?
★名(迷)セリフ
「オレ様22個ー! 足したら、おいくつー!!」(ブラストモン)
登場場面。
オレの方が多いぜとアピールしつつ計算を相手に丸投げし、且つ語尾がオネエ気味という完璧なブラストぶりです。
律儀に34と答えるキリハはこういう時だけクールすぎて可笑しい。
次回で退場しそうな流れなんですが、消えたらちょっと寂しくなりそうです。いわゆる憎めないタイプですし。
回想シーンでのナイトキャップに歯磨きといい、スタッフからも愛されている印象を受けますね。
しかしよく考えてみたら彼、クロスハートとは全然戦ってません。少なくとも本人はキリハとばかり戦りあってる。
「最低のネーミングセンスだな!」(キリハ)
ファイナルスパゴーンパンチを評して。
しかし大人の事情とはいえ、デッカーグレイモンの安直さも相当な気がしてなりません。
「お前にはデジクロスを支える体力も、精神力もない」(メイルバードラモン)
「仲間の中心になる器じゃないということだ…」(グレイモン)
予告でも類似が流れていたセリフ。シャウトモンの胸に楔を打ち込みます。なるほど、このふたりの言葉でしたか。
まあ、確かに彼らから見るとそんな印象でしょうね。戦いぶりを間近で見たのはデジクロス状態でだけですし。
まして、メイルバードラモンは当初から完全にシャウトモンを見下していた過去があります。
しかし漫画版でやたらキャラが立ってたせいか、グレイモンの喋りになんか違和感をおぼえてしまいます。
「弱者の泣きっ面は吐き気がする!!」
「憶えておけ、タイキ。オレはデジタルワールドを自分の望む世界に再生させるために、
コードクラウンを揃えているんだ…!
それは、選ばれし強者だけが集う世界! 負け犬は邪魔だ!
強い者だけ生き残ればいい…たとえグレイモンたちでも、自力で上がってこられなければそれまでだ!」(キリハ)
ディスクゾーンの面々を見て。
ひさびさにライバル節が炸裂しています。まるで弱いことが罪であるかのような物言いですが、
恐らくそういう体験をしたのでしょう。それでいて人々に手を出すことはなく、一顧だにしないだけなので
弱者に興味がない、という姿勢はある意味徹底しているといえるでしょう。そこが彼のギリギリの一線です。
ただこういう考えの持ち主の不思議なところは、自分が弱者になると微塵も考えていないことです。
そういう意味で、弱肉強食というのは結局のところ強者の論理でしかないのでしょう。
ついでに言えば、プリミティブすぎて社会性の中では暴論でしかありません。ある意味では退化とさえ言える。
もっとも、鈴原冬二あたりなら衒いなく賛同しそうですけど。
この言葉や彼の目指すものに直感的な否定を抱きつつも、タイキはキリハ本人をさほど嫌ってはいません。
たぶん生き方や戦い方が良く言えばひたむきで、悪く言えば不器用だからなのでしょう。
「無理じゃねぇってっ…言ってんだろぉぉおぉっ!」(シャウトモン)
グレイモンとメイルバードラモンの巨体を引っ張り上げた場面で。まさに火事場のクソ力です。
これが人間だったらよほどの設定がないかぎり「いやいやいや」となるだけですが、彼はデジモンですからね。
ある意味、どんな無茶な描写でも納得できてしまう下地があることになります。
そしてグレイモンも、メイルバードラモンでさえ、シャウトモンがある局面において想像を絶する力を出すと
認めざるを得なくなりました。なんせ目の前で見たんですから。
「命令するな! …だが、どうしてもというなら協力してやらんでもない」(グレイモン)
バルブモン戦にて。思わず割って入った直後にこのセリフとは、ものすごいツンデレ(限定的使用法)です。
ここまでベタな言い回しは昨今ちょっと見たことがありません。人外だからネタにできるけど。
そのうえ後に「借りを返しただけだ」のオプションが完備されています。タクティモンのセリフではありませんが、
まさにパーフェクトといえるでしょう。
「…なら、オレを止めるしかないな。力で……」(キリハ)
去りぎわ、強いものと弱いものが共に助けあう世界が一番いいと言われて。
集めているものは同じでも、考え方も手段もまるで違う。再度の訣別を象徴するような言葉です。
どのような結果になるにせよ、やはり一度は直接対決をしないと収まらないところでしょうか。
おそらく、バグラ軍がそこに便乗してくるのでしょうが……
★次回予告
久々にベルゼブモン登場。ずいぶん出てませんでしたが理由は明かされるんでしょうか。
どうやらシャウトモンが人知れず特訓する流れになるみたいですけど、そこからどうタイトルの内容につながるのかな。
とりあえず場所が違うので、ゾーンの住人を纏めてクロスローダーに入れて脱出は確定というところでしょうか。
ブラストモンはX5Bの最初の獲物になるのか否か、果たして。