新たなる旅立ち!! 東京大決戦!!

 脚本:三条陸 演出:三塚雅人 作画監督:八島喜孝
★あらすじ

 ひとまず、それぞれの家に戻るタイキたち。
 デジタルワールドのことを親に話すのですが、当然のように取り合ってもらえません。
 あれだけの大冒険をしたにもかかわらず、半日ほどしか時間が経ってはいなかったのです。
 シャウトモンの姿も誰にも見えず、写真にも映ってはいませんでした。

 それでもデジタルワールドに引き込まれた時の謎の声を耳にし、大空に浮かぶオーロラを目にしたタイキは
 何かが起こっていることを確信し、翌日アカリとゼンジロウに戻る方法を探す決意を伝えます。
 やがて、再び件の謎の声が。それは、デジメモリの姿で人間界に紛れ込んでいた伝説のデジモン「オメガモン」でした。
 オメガモンはデジタルワールドの分裂を阻止しようとして叶わず、デジモンの波長と合う者を捜し続けていたのです。

 もう一度デジタルワールドへ。懇願するタイキですが、オメガモンに残された力ではタイキ一人を送るのが限界。
 それでも向こうの時間の流れを考えれば、手段を選ぶ余裕はもはや残されていませんでした。
 ところが、そこへ何と巨大な姿に膨れ上がったタクティモンが現れます。人間界のエネルギーを受けた影響でした。
 デジクロスできないシャウトモンでは相手になりません。さらに、アカリとゼンジロウが掴まってしまいました。

 絶体絶命の危機。それでも屈しないアカリとゼンジロウの勇気と友情がクロスローダーに反応し、
 シャウトモンに新たな力を与えました。彼は進化を遂げ、未来の姿であるオメガシャウトモンとなって立ち向います。
 そのX5Bすら凌ぐ圧倒的パワーでタクティモンの奥義をも破り、今度こそ打ち倒すのでした。

 かくして人間界の脅威を排除し、シャウトモンと共に単身デジタルワールドへ身を投じるタイキ。
 その行く手には新たな敵、そして──



★全体印象

 30話です。
 脚本は前回に続いて三条氏。演出の三塚氏は27話にも参加してましたが、単独でのクレジットは19話以来です。
 作監が八島氏なのと、クロスウォーズにしては氏の色が強い絵なあたりにいろいろ事情を感じてみたり。

 さて、もはや疑いようもない明確な路線変更回です。
 アカリとゼンジロウの実質的ドロップアウトに加えシャウトモンを除く仲間デジモンの生死不明、
 そして合体に進化によるバトル展開追加と、ハッキリ言ってもはや別番組に近い流れです。
 ここまで露骨なのを見たのは「仮面ライダー響鬼」以来かもしれません。よりによって何てものを思い出すんだ

 何故このようなことになったのか、データの無い私には類推、それも月並みなものしかできません。
 が、意外と落ち着いている自分を発見しています。なんでこんなに冷静なんだろう。
 あまりにも露骨で唖然としているだけなのか、自分で思っていたほど入れ込んではいなかったのか……
 前から噂を聞いていて、ある程度覚悟していたということだけは確かですが、

 ただ、お話はかなり無理矢理ながらもできる範囲で最大限の配慮というか、心意気のみられるものでした。
 あの展開は物語を離れるアカリとゼンジロウへの餞でしょう。そうとしか思えません。
 でなければ、もっとシャウトモン自身を前に出した流れにするはず。ぶっちゃけ三条氏の愛ですね。
 これを感じ取ったために、ギリギリのところで少しホッとできたのかもしれません。

 それにしても超クロスウォーズが出た直後にこれというのは、何ともうまくないなぁ。
 作品現場の頑張りにスポンサーもさることながら、局がまるで連携を取ろうとしていない。
 ここまで来たら最後までしっかり見るつもりですが、今回をキッカケに離れる人も出てきそうではあります。




★各キャラ&みどころ


・タイキ

 どこまでも他人のために動き、他人を持ち上げるのが本当に上手い主人公です。あらためてそう思いました。
 あの異様なハイスペックも自己アピールに使われることがほとんど無く、それ自体がアピールになっています。
 ああ、嫌味を感じないのはそのおかげだったのか。確かにオレがオレがってタイプとは違う。
 その分はシャウトモンがある程度受け持ってましたが。

 しかしこの長所もシャウトモンと二人だけになってしまった場合、どうなるのかが結構未知数。
 明らかに多数の仲間を繋いでゆく存在だと思うのですが、前の仲間が戻ってくる展開にはなるんでしょうか?
 この展開だと何人かは最終話でオーイと出てくるだけになっても驚きませんよ。

 …4月以降の話がどうなるかだなぁ。


・アカリ&ゼンジロウ

 一ヶ月前は考えてもいなかった、まさかの本筋脱落。
 確かにこれまでも戦闘などでは役に立ってませんでしたが、リアクション及び一般人担当でもあったはずです。
 二人がいるからこそタイキが際立ち、逆にその超人っぷりへ人間味を加える役割も果たしていました。

 オメガシャウトモンを誕生させるという過去最大の殊勲を貰ったのは良かったし、上にもそう書きましたが
 逆に言えばアレはもう本筋に絡んでくることはないよ、というメッセージという気もしてなりません。
 だからこそあの大役を振ったのだとも取れるし。

 この二人がいないクロスウォーズは、たぶん予想以上に寂しいものになると思います。
 それを埋めるだけのファクターが用意されていればいいんですが、果たしてどうなるか……
 オメガモンのメモリが残ったりと材料はあるので、まだ脚本的に諦めてはいない側面も窺えますけれど。


・シャウトモン→オメガシャウトモン

 ここへ来てまさかの単独進化。
 進化そのものは予想してたんですが、他のメンバーと一緒に進化して新たなX4を作るのだろうと思ってました。
 よもやこのような形になろうとは……最初っから予定されていたとはちょっと思えません。

 しかもその強さはX5とデッカーグレイモンをまとめて圧倒したタクティモンの奥義、それも裏奥義を
 余裕で打破するものでした。この事実だけで今までは何だったんだと思われてしまいかねません。
 こないだの不調が進化の予兆だよとかそういう明確なサインがあったんならともかく、無いしなぁ。

 いざ単独になったとき、パートナーとしてキャラが弱いかというとそんなことはないと思います。
 でも最初からいないのと、途中まではいたのとでは大違いだからなぁ。やっぱり寂しくなりそうだ。
 みんな何処へ行った。見送られることもなく。

 それにしてもオメガシャウトモンは胴がガッチリしてて手足が細いんで、ちょっと変に見えます。
 何か思い出すと思ったら、昔の100円食玩のロボに体型が似てるんだ。ジョイントロボとか。

 いろいろ書きましたがビートスラッシュを出す時を歌が止まる瞬間に合わせた演出は見事でした。


・オメガモン

 タイキをデジタルワールドへ導いた存在にして、デジタルワールドの守護騎士。
 よくよく考えてみたら、主人公以外で最初から明確に味方なのは映画版テイマーズ以来だったりします。

 しかし、まさか本当にエルドランみたいなもんだったとは……お父さんビックリだ。
 デジメモリ状態だってのにゲートを開くだけの力を持ってるし、本調子だったらどんだけ強いんでしょう。
 彼ら伝説のデジモンたちがこうなってしまったのも、世界の変化に便乗した陰謀だったんでしょうかね。
 今さら新キャラが絡んでくるとは思えないので、既存の悪役が加速させたとか。

 加えて言えば、アカリとゼンジロウがザウルガイザーを出せたのも彼のメモリを持っていたからでしょう。
 二人の想いがメモリを通してクロスローダーに伝わり、ゆえにオメガシャウトモンというわけです。
 オメガモンという存在は、それぐらいの何でもあり感を持ってると思います。まさにジョーカー。
 勇気と友情というところがニヤリポイント

 なお、タクティモンと声が同じなせいで時折噴いてしまうことがありました。
 向こうがああいう別の意味でまともじゃない状態だったのは、差別化を強めるためなのかもしれません。


・タクティモン

 まさかの三元士犠牲者第2号。いや、ブラストモンは生きてるので本当はなんと第1号です。
 状況が状況とはいえ、これはもうアカリたちと同様の実質的リストラでしょう。次回からの展開を見る限り、
 生きていても活躍できる場が残されているとは到底思えません。

 …こりゃリリスモンも危ないな。新展開と同時にもう用はないと消されてても不思議じゃありません。
 ブラストモンも、あのままもう出ないかもしれないですね。

 戦闘ではあれだけの力を発揮した前回と異なり、オメガシャウトモンに一蹴されてしまう体たらく。
 しかも取らんでもいい人質をわざわざ取ったりと小物っぷりが強化されており、見る影もありません。
 まあ普通の状態ではなかったし、そのせいで少々イッちゃってたのかもしれませんけど。
 あるいは本当はもう死んでいて、怨念と人間界のエネルギーで無理矢理蘇生してきたとか。

 あ。
 タイキたちに倒されたということは、そのうち良いデジモンとして復活する可能性もあるのかな。
 でも人間界で死んだから、やっぱりダメかもしれません。こんな不遇な人になるとは思わなかった。

 なお、タイキの名を叫んで追いかけてくる場面でブロリーを思い出したのは秘密です。


・タイキ、アカリ、ゼンジロウの家族

 主にタイキとアカリの母親がメインで登場。アカリの弟たちがまともに出るのも初めてですが、食事の場面だけ。
 かなり勿体ない扱いです。ゼンジロウの家族に至っては登場すらしないし。
 東京に行く展開自体は考えられていたかもしれませんが、こんなに短いものだったとはちょっと思えませんね。
 いろいろと予定が変わったんだろうなぁ。パスタ含め、序盤のネタをちゃんと拾ってたのは好印象なんですけど。


・天野ユウ

 やっとというか遂にというか、ラストで登場しました。
 もうその時点で姉をも凌ぐ真っ黒。顔が無邪気なだけによけい黒いです。それとも正気じゃないんでしょうか?
 あのダークナイトモンが絡んでるんですから、充分考えられる話ですが……あれが素だったら怖いぜ。

 声はなんと沖佳苗氏。キュアピーチです。タイキもシャウトモンもプリキュア経験者なのでもうわけがわかりません。
 ついでに言うとネネの中の人もついこないだまでプリキュアやってました。なんなんだこの状況は。
 ただ、沖氏は前も「アナザーミッション」にサブキャラで出てたので、もともとデジモンに多少の縁がある方です。
 男の子役というのはデジモンに関わらず初めて見ますけど。

 ダークナイトモンは彼の前でちょっと喋っただけです。普通に考えて新たなパートナー関係でしょう。
 ちなみに彼も中の人がキントレスキーだったりします(いや、それ言ったらキリハ…)。



★名(迷)セリフ

「でもオレは知ってしまった…! もうひとつの命のある世界を…!
 その世界でけんめいに生きているデジモンたちが好きだ!
 データのモンスターでも、オレたちと同じ…泣いて笑って…いっしょに頑張ってきた、大事な友達だっ…!
 だから、もう一度だけチャンスが欲しいんだ! デジタルワールドを変える、戦いにゆくチャンスが!
 …もう、決めたんだ!」(タイキ)


 このセリフを外すことはできますまい。タイキという男の、今までの全てが詰まった逸品です。
 アカリの言葉にある通り、彼はもともと人間界の存在です。そして普通なら平穏な生活を捨て、生還の保証がない
 危険な場所へ踏み込んでゆく選択をおいそれとは取れません。たとえ他に誰もいないのだとしても。

 けれど、たまに精神どころか世界のハードルさえも越えてしまう者がいます。人、それをヒーローと呼ぶ。
 タイキという男は、友情と人道だけでそういうことができてしまう少年なのです。1話から示されていました。
 理想のためでも名声のためでも報酬のためでもなく、根本的にはただ自分がそう望むという、それだけのために。

 強いて言うなら「どんなヤツでも頑張り直せる世界」こそが彼の理想なのでしょうけど。
 誰かが困っているとき、自然に手を差し伸べられる世界。それが本当の意味で当たり前になる世界が。


「…だったら! あたしたちだって、タイキのことを放っておけないよ!」(アカリ)
「そうだ! オレたちだって、クロスハートのみんなが大好きだっ!」(ゼンジロウ)


 そんなタイキに比べれば、アカリやゼンジロウは遥かに一般人に近い存在です。
 もともとシャウトモンの「音」を聴くことさえなかったのです。本当は来る予定がなかった二人なのかもしれません。
 タイキと違って、早くも人間界の色に馴染み直しつつありますし。

 だけど、二人だって誰かとの友情のためなら勇気を振り絞って危険に飛び込むことができます。
 それにヒーローと視聴者の橋渡しという、大事な役割があるではないですか。彼女たちがいるからこそ
 われわれもタイキの人物をより強く感じられたと思うのです。
 少なくとも、アカリとゼンジロウにはこのセリフを言う資格がある。オメガモンが何かとフォローしてました。

 これに対する、シャウトモンの感激していいのか困っていいのかわからなさげなリアクションが印象的。


「きみたちの想い、そして決意はしっかり聞いた…!
 よかろう。ただし、戻ることができるのは工藤タイキひとりだけだ!」(オメガモン)


 ドロップアウト宣告です。
 しかしわざわざ前置きをしてから言った事により、本来なら全員の願いを叶えてやりたいという言外が窺えました。
 このことからオメガモンが事実上、シリーズ構成の代弁者を果たしているようにも私には感じられています。
 なんか謝ってましたし。


「…ふたりとも聞いてくれ。
 アカリとゼンジロウがいないのは、チーム・クロスハートにとってものすごい痛手だ。
 アカリは、みんながつらいとき…いつも笑って励ましてくれた。
 ゼンジロウは、オレが倒れたときも…チームを率いて戦ってくれた…! ふたりとも、立派な戦士だ!
 できればオレも、三人一緒にデジタルワールドに還りたいっ…!
 でも、その方法を探すのに手間取っているわけにはいかないんだ!」(タイキ)


 置いていくから追いついて来い。私は先に行く。待っているぞ。

 とまあ、要約するとオレは独りでも行くぜということですが、タイキらしい物言いです。しかもド正論。
 二人がいなくなるのが痛手というのは一見ややリップサービスに見えますが、クロスハートの理念を考えれば
 あながち間違いというわけでもないのではないかと感じています。

 クロスハートが求めているのは力でも単純な勝利でもなく、むしろその先にあるものですから。
 軍団入りの際に求められるものがただひとつ「心意気」のみなのは、これを端的に示している事実です。
 しかもタイキが指す「いいデジモン」というのは単にいいことしかしない者というわけではなくて
 普通に泣いて笑って怒って失敗してと豊かな感情を持ちつつ、けれども本当は優しい者たちということだと思います。
 バグラ軍のみならず、過剰な善をかかげるスラッシュエンジェモンとの戦いも良い材料になりえますね。

 そしてチーム・クロスハートの戦いは、心の繋がりの中から何にも勝る力を生んできたものでした。
 力を求めていないことがより強い力を生むというベタな流れを、真っ正面から描いてきた遍歴です。
 今になってこの展開を迎えてしまうと、理念がややブレてしまうのではないでしょうか。
 いや、まあ…だからこそ、こんな有無をいえない事態を作った…作らざるを得なかったのかもしれませんが。


「…あたしたちはっ…!
 オレたちは…!
 虫けらなんかじゃないっ!」(アカリ&ゼンジロウ)


 敗北者をゴミと罵り、力のない者を虫けらと見下してきたタクティモンに。
 これまでで最強の敵(しかも、人間界に来たことで事実上パワーアップしている)へ、最も力のない者たちが
 その心意気でタンカを切る場面です。その瞬間に力が生まれた事実こそが、チーム・クロスハートの絆なのでしょう。

 直前にオメガモンのメモリが光っていたのは、明らかにそこへ反応していた証。一応裏付けも取れますね。


「一瞬で進化した!? バカな…!
 私がこの姿に進化するまで、どれほど時を費やしたか!」(タクティモン)


 オメガシャウトモンを見て。
 よくよく考えてみたら、アニメでの進化にツッコミが入ったわりと珍しい場面です。
 さらにオメガモンの補足から、あの姿は「未来の先取り」ということがわかります。偶然の一致かもしれませんが、
 単純な進化というより奇跡のデジメンタルと似た現象に見えました。全身金ぴかなのも奇妙な符号です。

 そういえば「Hunter×Hunter」でも未来の先取り現象が起こってましたが、
 アレは裏付けがあるといっても普通の人間、それも主人公がやったので一部で相当の話題になってましたっけ。
 おまけに戻れるかどうかさえわからんというオマケ付き。それ以前に続きがいつかさえ不明なんですけど。


「無念…! わが忠義、人間界に散るーっ!」(タクティモン)

 さらば、タクティモン。あんたは悪いヤツだが、嫌いじゃなかったよ。

 急に小物化したように見えたのは残念ですけど、フォローはできなくもないし色々考えられてますね。
 グレイドモンの件も考え合わせ、いずれ善のデジモンとして復活してもそれはそれで燃えそうです。


「あの人が、戻ってきそうですよ。楽しみだなぁ…タイキさんとのバトル…!」(ユウ)

 そして新たな敵。
 邪気のない顔と桃園ボイスが逆に恐ろしい場面です。
 パッと見相方はダークナイトモンなんですが、単純にそれだけなんでしょうか。



★次回予告

 ああ、直井作画ですね。ひと目でわかる親切設計だ。
 リリモンがいるところを見ると、最初に来るのは元グリンゾーン入りの国ですかね。
 見たところ龍ばっかりなので、最初からハデなバトルになりそうです。ドラコモンの初登場にも注目ですね。

 敵ボスはなんかデュナスモンが変えられてるっぽい姿ですね。これを味方に加える展開になるのかな。
 もしそうだとしたら、どんだけ派手になるのかちょっと想像もつかなくなってきました。

 でも4月からかぁ……このところいろいろと忙しいので、本音を言えばちょっとありがたいですが。