新たなる世界へ! 火烈将軍のドラゴンランド

 脚本:三条陸 演出:えんどうてつや 作画監督:角銅博之
★あらすじ

 その日、闇に一条の赤い光が奔った。

 覚悟を決めてやってきたタイキとシャウトモンを迎えたものは、意外にも静かな花畑でした。
 しかし、美しいのは外側ばかり。ほとんどが要塞化された大地から、山から、龍デジモンの軍団が溢れ出します。
 その目的は小さな龍、ドラコモンでした。

 さらに、出逢った最初の知り合いであるリリモンが恐ろしい事実を語りはじめます。
 デジタルワールドはバグラモンを頂点に再統合され、七つの国として生まれ変わったというのです。
 第一の国、邪悪な龍の巣窟であるドラゴンランドは、他のデジモンたちを叩きのめすための戦士を育ててもいました。
 しかし、力のない者の痛みを知るドラコモンはこれを拒否。脱走していたのです。

 放っておけず、止めに入ったタイキたちですが何故かシャウトモンが進化できません。
 そこへ現れたのは、キリハ率いるブルーフレアでした。反乱軍となってずっと戦い続けていたのです。
 が、ドラゴンランドの支配者・ドルビックモンの力は圧倒的でした。デッカーグレイモンでも歯が立ちません。
 絶体絶命に陥ったキリハ。タイキたちはドラコモンの掘っていた通路を使い、かろうじて彼を救出します。
 
 ところが、ドルビックモンは部下のファンロンモンを使い、地下通路に溶岩を流し込んできます。
 一転して逃げ場がなくなったタイキたちを庇って、その命を張ろうとするドラコモン。思わず飛び込んだとき、
 シャウトモンに再び進化の力が生まれました。オメガシャウトモンと共に一気に脱出する一行。
 オメガシャウトモンは漲る新たなパワーと奇策を織り交ぜた戦いにより、ファンロンモンたちを圧倒してゆきます。

 そして、遂にドルビックモンが現れました。
 七人のデスジェネラルの一人であり地形をも自在に操る彼に、果たしてタイキとシャウトモンの策は…!?




★全体印象

 心機一転、31話です。
 根底からガラリと変わったデジタルワールド、ダークネスローダーを得てますます圧倒的になったバグラ軍、
 これに立ち向うクロスハートとブルーフレアの連合軍という、非常にシンプルな物語形式となりました。
 心配していましたが、クロスハートの面々自体はそのまま続投のようですね。

 で、一番手はいきなり強面のドラゴン軍団。新生バグラ軍の力を示すにはまたとない顔ぶれでしょう。
 そこへ原種的存在でありアニメ初登場のドラコモン、改めてレギュラー入りのリリモンを交えることで
 デジタルワールドの現状をスンナリと理解することができるようになっています。
 これだけのアウェーからであれば、オメガシャウトモンの存在も割と受け入れやすいかもしれませんね。

 そしてそのオメガシャウトモンをもってしても苦戦するであろうデスジェネラルが据えられていることで、
 さらなるデジクロスを煽ろうという流れです。味方が強いなら敵も強くなって然るべき。
 恐らく、オメガシャウトモンとジークグレイモンは切り札として扱われることになるのでしょう。
 X5も登場するみたいなので、デスジェネラル以外は集団戦で何とかしてゆきそうです。

 そのためにはまず、自分を見失いかけているキリハがいかに立ち直るかからですね。 
 もはや覇権争いをしているような状況ではないわけで、あとはいかに共闘へ落とし込むか。見どころです。




★OPと挿入歌

 こちらも一新されました。
 新主題歌は海外でも活動している双子の女性シンガー、トゥワイルが歌う「New World」。
 まさかの女性ボーカル、そして激しさよりも静かに切々と盛り上げる曲調と、デジモンOPとしては新機軸。

 並んで飛ぶタイキ&ネネとキリハに、状況と路線の変化をまざまざと感じますね。
 新メンバーと思しき巨漢の女性型デジモンも非常に気になります。どっからどう見てもミネルヴァモンですが、
 そのわりには随分と育ってますな。いったい何があったんでしょう。
 ラストカットでベルゼブモンと並んでるのは、何か関係があるという示唆なんでしょうか?

 これで声が白石涼子さんだったら、さもありなんと頷くところですけど。
 何故って、アカリとゼンジロウがワンカットも出てねえ。わかってはいたけど、なんてこった。
 まあOPに出てない味方は少なくなかったので、希望を捨ててはいませんが…どのぐらい続くのかな。
 1クールじゃ足りなさそうだし、かといって2クールでは多すぎる気もしますし。

 挿入歌は「Evolution&DigiXros ver.TAIKI」です。
 こちらは和田氏が歌い上げる熱血ソング。よく考えてみたら、別に前と図式は変わってません。
 OPがかなり思い切った変わり方をしてたんで戸惑っていました。



★各キャラ&みどころ


・タイキ

 新章への導入ということで聞き役に廻る描写が多く、見せ場もシャウトモンへ多めに譲る形ですが、
 相変わらずブレない男です。彼のような、現状へ途中から参加する立場だからこそわかることもありましょう。
 そして彼の登場が屈しかけていたキリハを救い、ネネの希望を繋いでゆくことになるのだと思います。
 誰かを救う姿がバグラ軍へのお披露目とは、なんとも彼ららしいではありませんか。

 そんなタイキですが、咄嗟のネーミングセンスと笑いのセンスはいまいちのようです。
 クロスハートのように良い名前も考えていることを思うと、じっくり考えてからならいけるのでしょうけど。


・シャウトモン

 予告で感じていた通り、最初は進化ができませんでした。
 戦うためというより誰かを救い、決して誰も泣かせない最強を誓ったそのハートに呼応した結果です。
 人間キャラじゃない方から発動可能が宣言されるのは、実はデジモンシリーズじゃ非常に珍しいこと。
 そういう意味では前回よりクロスウォーズらしい展開といえるかもしれません。

 タイキとシャウトモン。
 この二人はたとえ仲間がいなくても、バディとして充分な存在感を確保しているのです。
 体当たりで夢をぶつけるシャウトモンに、一歩退いた視点から冷静かつ決然と語るタイキと役割分担もバッチリ。
 どちらかがどちらかの描写に偏りすぎることなく、ベタな展開も混ぜつつ積み重ねられてきました。
 タイキのような男の相方は、シャウトモンのような男でなければ務まらないでしょうね。

 ほぼ一ヶ月ぶりに登場のオメガシャウトモン。
 実質ゼロからのリスタート状態になるので、前回ほどのいきなり感はありません。安心して見てられます。
 己の肉体のみで大軍を薙ぎ倒す姿は風格すら感じ、未来の先取りという言葉にも説得力を感じました。

 とはいえ、恐らく三元士をも遥かに凌ぐであろう七将軍には単体じゃ厳しいでしょう。
 そこでキリハの出番となるわけですが、次回冒頭はひとまず撤収ということになりそうです。


・キリハ&ブルーフレア

 タイキがいない間、ずっと一人で戦い続けていた彼ら。
 力のみを信じ、強さに拘り、ゆえに強い者には諂わないキリハにとってバグラ軍はずっと壁みたいなものです。
 ここへ来てますます厚くなったその壁を前に、弱音を漏らす珍しいシーンが見受けられました。

 彼の理想とバグラ軍の理想、その違いは今回までで何となく把握できた気がします。
 弱者を救う者はいないけれど、それは皆が独りでも生きてゆけるようになるため。悪意をもってその邪魔はしない。
 そして這い上がってこれる力を持つ者ならば、決して差別はされない。謀略はおそらく否定されます。
 悪く言えば脳筋、マシな言い方をすればプリミティブな理想というやつじゃないでしょうか。

 何の策もなく、真っ正面から力で挑む戦い方はそれをよく表しているように感じます。
 が、デスジェネラルには全く通用しませんでした。叩きのめされる展開が多いのは、意図されたことかもしれません。
 倒れても落とされても這い上がり、前よりもさらに強くなる、強くなろうとするのが彼の生き方ならば。
 Z旗を背負う新たなグレイモンがどのように現れるかは、彼の今後を占う事象となるでしょうね。

 そんなわけで、デッカーグレイモンらは今回完全にやられ役です。
 もともと、クロスハートと組んだ時以外は目立った活躍をしてませんでした。巻き返せるかどうかも注目ですな。
 サイバードラモンを除く他のメンバーがどうなったかは不明。普通に戻ってるのか、全滅したのか…


・ドラコモン

 いまのところ、既存キャラを除けばドラゴンランド唯一の味方。アニメ初登場です。
 力がないゆえ蹂躙される痛みをよく知っており、屈することなく戦い続けていたブルーフレアに憧れていました。
 しかし実際には嫌なものは嫌だとハッキリ拒絶し、体をも張ってタイキたちを助けようとする勇気があります。
 力がなくてもそれができるということで、自分よりも強いとあのシャウトモンに言わしめました。

 おそらくドラゴンランドの抑えとして、仲間にはならずに残ることになるでしょう。そういう者も必要です。
 最終決戦に駆けつけてくるぐらいは期待していいかもしれませんが…いや、ぜひ来てください。
 たとえその際に声なしでも構いませんよ? 贅沢は言えませんからね。

 声といえば、中の人は懐かしの浦和めぐみ氏です。アルマジモンと伊織の間ぐらいの演技。
 この調子だと、まだまだ過去の声優さんが登場してきそうですね。純粋に楽しみ。


・リリモン

 ここへきて大逆転ホームラン。なんとレギュラー入りです。
 しかもさりげなくシャウトモンの幼馴染という立場までゲットしてました。華が増えますね。
 何よりもまずタイキの存在を知られないように動くあたり、状況への即応力もあります。賢い娘さんだ。

 まあ漫画版と同じく、本質的には賑やかしにしかならないでしょうけど…
 あれ、そういえばレオモンはどこに行ったんだ。まさか死んでました扱い?


・テイルモン@デジメモリ

 地下通路のマグマから逃れるため、タイキが穴掘りに使ったメモリ。
 でも溶岩のスピードのほうが早く、あんまり役には立ってません。デジメモリは柔軟な運用ができないので、
 「マグマを防ぎつつタイキたちを抱えて脱出」という器用な芸当はできないのが弱点ですね。実体も意志もないし。
 オメガモンはあくまでも例外ということでしょう。


・新生バグラ軍

 七つの国に七将軍、そして七つの軍団と綺麗に再統合されました。
 個性あふれる将軍たちとその属性に則った部下たちはミケーネ帝国のようでもあり、魔王軍六大軍団のようでもあり。
 ベタですがこれで燃えないはずがないという、三条氏が昔から大得意にしている設定です。

 その上、前半にはゴーストバンクさながらの顔合わせまでやるというサービスぶり。
 さらに中の人には実力派やベテランばかりを揃えているので、すでに錚々たる顔ぶれというイメージです。
 ちいぃっ、狙ってやがる。ピンポイントでこの私を正確に狙っています。

 悪辣さも敗者には死、失敗には死、弱者には死、反逆には死とさらに磨きがかかり、近年稀に見る徹底ぶりです。
 それでいて最初に見えたのが花畑だったり、バグラモンはもと天使型というだけあって秩序を好むようですね。
 メガテンでいえばDark-Law。まあ、自分の悪の軍団を揃えて楽しんでるようにも見えなくはありません。
 各ランドから負の力を吸い上げて大計画を練っていたり、他にもいろいろ企んでそうではありますが。
 やっぱり次は人間界進出?

 魔軍司令魔殿提督がダークナイトモンというのはまた、えらい身内人事ですね。
 でもダークナイトモンは寝首をかく気まんまんなんですが、バグラモンはどこまで承知しているのかしら。
 それに、ユウがどんな立場なのかも、どういう状態にあるのかもまだ謎。ネネとの再会は盛り上げてきますね。

 アポロモンがいるのも非常に気になります。あの中にあっても人格者という扱いなら嬉しいところ。
 

・ドルビックモンと邪龍軍団

 さて、そんな邪悪大軍団のひとつが火烈将軍ドルビックモン率いる邪龍軍団です。
 文字通り苛烈な性格のドルビックモンは実力もこれまでの敵以上であり、デッカーグレイモンを一蹴する強さ。
 デジクロスでフレアリザモンを剣とするなど、X4のお株を奪うようなこともやってのけます。
 中の人も堀秀行氏なので、いきなり手強そうな風格がありますね。
 うーん、ポッと出の悪役を印象づけるのにベテランを使うのはやはり有効だ。冥府十神もそうでした。

 それにしても意図してるのかしてないのか、デュナスモンによく似てますよね。
 グレイドモンやマッドレオモンらという前例があるからなぁ…前は別のデジモンだったとか?

 部下は特性どおり、ドラゴンタイプばかり。メガドラモンやフレアリザモン、ダークティラノモン、ブラキモン、
 デビドラモン、サラマンダモンと強そうな連中が目白押しで押し寄せてきます。
 この中ですと、サラマンダモンとブラキモンがアニメ初登場ですね。

 しかし何よりも噴いたのは、やっぱりファンロンモンでしょう。
 し、四聖獣のさらに上、太極の頂点にも立てるほどの存在が馬! 単なる馬! イトケンとはいえ馬役!
 クロスウォーズには毎回いろんな意味で衝撃を受けるんですが、今回もかなりのもんでした。
 事実上No.2な上ドルビックモンも一目置く存在らしいというだけ、ガイオウモンあたりよりはマシですが…

 いやあ、びっくりした。でも、この程度で驚いてたら到底乗り切ることはできますまい。


・もと三元士のみなさん

 七将軍の台頭により、すっかり閑職に追いやられてしまった方々。ブラストモンは戦闘不能なので実質一元士です。
 権力から完全にドロップアウトしつつあるあたり、リリスモンは今や女ザボエラというところでしょうか。

 真面目な話、どう扱うんでしょうね。残したってことは何かやらせるつもりなんでしょうけど。
 悪役っぽいところがあまりなかったブラストモンはどさくさに紛れて味方になる可能性がありますが、
 リリスモンの方はそうはいきません。悪さだけなら三元士随一だった女です。
 何もできずフェードアウトする線はないにしても、何とか権力を得ようとして自滅するぐらいしか考えられません。

 だからむしろ、自滅した後が重要です。それによって彼女の扱いが決まるでしょう。
 まあブラストモン以外は一度死んだあと、タイキの活躍を受けて綺麗になって復活する線がいちばん無難かもですが。




★名(迷)セリフ

「イヤだっ! オイラも今叩かれてすごぉく嫌な気持ちがしたもん!
 こんなこと他の子にしちゃ駄目だ! そしたら、もっともっと嫌な気持ちになる!」(ドラコモン)


 大のアニキなら「よく言った! お前は男の中の男だ!」と肩を叩きそうなセリフです。
 たとえ力がなくても理不尽には屈しない。彼が憧れていた当のキリハに今、もっとも欠けているものです。
 これがあるからこそ、後半の行動にも説得力が生まれてきます。
 死なせては負けだと、シャウトモンに思わせるほどに。


「え、あ、オレは… ! オ、オレは、オハナモンだ!」(タイキ)

 デビドラモンに名を聞かれて。シャウトモンにもドン引きされる壊滅的センスです。
 つうかタイキって基本、どうでもいい場面ではかなり天然で外しまくってる気がしますね。


「どこに胸があんのよ! この顔だけ男がっ!」(リリスモン)

 オレの胸でお泣きと、すっかりブラストヘッダーになってしまったブラストモンに言われて。
 予想がついていたとはいえ、思わず笑ってしまったやり取りです。凸凹コンビになりつつある。


「てめえの目は節穴かよキリハ! こいつはオレたちなんかよりずぅっと強ぇ!
 たいした力がなくても、ここまで頑張ってくれたんだぜ!? ハートの強さはオレたち以上じゃねぇか!
 オレも負けねぇ!」(シャウトモン)


 弱い者に力を借りた報いと毒づいたキリハに。
 ドラコモンの勇気を振り絞った拒絶がシャウトモンに繋がり、シャウトモンの奮起がドラコモンに繋がり、
 そのドラコモンの行動がシャウトモンの進化に繋がる。まさにクロスハートです。

 世界が変わっても、誰かがいなくなっても、これだけは変わらない。ブレない。
 だからこそ、路線が変わってリストラキャラが出ても意外に安心して見ていられるのかもしれません。


「こ、この感じ…! 今ならできる! タイキ!」(シャウトモン)

 世にも珍しい、「デジモン側」が条件クリアを認識する場面です。大抵は人間側が「できる!」でしたから。
 最も顕著なのは心臓の音うんぬんなジョグレス進化あたりですかね。同時に発動はしてたんですが、
 フィーチャーされていたのはあくまでも人間側でした。


「一番強いヤツに向かってくのは、オレ流だぁっ!」(シャウトモン)

 ドラコモンの抜け穴戦法を応用して敵を油断させ、大将首のファンロンモンを下から急襲して。
 守りとみせた攻めの姿勢です。ふたつの流儀を合わせた、これもまた一種のデジクロスですね。




★次回予告

 キリハの一大奮起。鍵になるのはドラコモンでしょうか? 彼自身の過去も関わってきそうです。
 X5も出るみたいなので、ジークグレイモンと2体で立ち向ってゆく構図でしょうか。
 レギュラーが大量復帰しますから、一気に賑やかになりそうです。
 これでアカリとゼンジロウについて誰も言及しなかったら、ちょっと悲しい気分になりそう。