パワーが吸われる!ハニーランドの狩人たち
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脚本:吉田玲子 演出:細田雅弘 作画監督:八島喜孝 |
★あらすじ
次なる国、ハニーランドにやってきたタイキたち。
緑と花々に覆われた一見美しい国ですが、ここでもデスジェネラルは暴虐を働いていました。
デジモンたちのパワーをハニービーモンが吸い取り、恐怖と絶望の塊であるデジハニーに変えていたのです。
思わぬピンチに陥ったタイキたちを救ったのは、女戦士デジモンのメルヴァモンでした。
ザミエールモンを倒すという目的では一致したものの、メルヴァモンの性格は強引そのもの。
反発したキリハが別行動を取ってしまい、ネネも反感をおぼえます。
タイキがこれを何とか纏め、ザミエールモン打倒の作戦が開始されました。
ところが、バグラ軍についていたイグニートモンはメルヴァモンの弟だったのです。
デジタルワールドを支配したバグラ軍を恐れるあまり、他のデジモンたちを襲う走狗の側に廻っていたのでした。
ザミエールモンはこれを利用して姉弟を対決させ、メルヴァモンの怒りを煽って極上のデジハニーを絞ろうとします。
これに激怒したのは、同じように弟をバグラ軍に奪われたネネでした。
イグニートモンを救出し、メルヴァモンとスパロウモンがデジクロスを果たします。押し返されてゆくバグラ軍。
メルヴァモンは詫びるイグニートモンを赦し、ともにザミエールモンを倒すべく誓いを新たにします。
しかし、怒れるザミエールモンはその真の力を発揮しようとしていました……
★全体印象
35話です。
脚本は24話以来となる吉田氏。そして演出は細田氏と安定株ですが、作画は八島氏の色がかなり強く出ています。
そのためメルヴァモン初登場回にも関わらず絵があっさり味という、不思議なことになっていました。
まあ、バンクでは富田氏がムッチムチのガッキンガキンに仕上げていますけど。
お話ではそのメルヴァモンとネネとが互いの境遇を知り、ともに戦う仲間となるまでを描いています。
いささか駆け足でしたが、その分余計なことはあまりせずに焦点を絞っている流れでした。
その「余計な要素」として早々に蚊帳の外へ放り出されてしまったキリハは少々気の毒でしたけれど、
普段が普段なのでなんかもう仕方ないかなぁと思う自分がいます。いるとややっこしくなるし。
予告にチラッとユウが出ていることからもわかる通り、この回は前フリでもあります。
彼女が弟を捜していることをメルヴァモンを通して改めて強調し、そう遠くない対面へ備える狙いですね。
直接対決がすぐに37話から始まるのか、それともまだ引っ張るのかはわかりませんが、どちらにせよ
一瞬目撃するか気配を感じるぐらいのことは最低でもやるでしょう。
姉と弟。再会の、そして対決の日は近い。
★各キャラ&みどころ
・タイキ
実は、31話からずっと他のキャラに見せ場を譲りっぱなしです。
それなのに存在感は衰えないというあたり、相変わらずですね。彼らしいとさえ思えてしまう。
メルヴァモンとネネの間に立って「とにかくやろうぜ」という方向へ持っていったのも彼で、ネネも従ってました。
正論を冷静かつ柔軟に語れるのが彼の良さです。本当に必要なとき以外は滅多に感情的にはなりませんしね。
キリハがなんだかんだと理由をつけてしょっちゅう別行動を取るのが、せめてもの反発に見えてきました。
タイキはいっつも正しいことしか言わないし、もともと口じゃかなわないので時折独りになりたくなるのかもしれません。
なし崩しというか、長いもんに巻かれるのは絶対イヤでしょうから。
・クロスハートの仲間たち
メルヴァモンに話を絞っているため、シャウトモンはおろかスパロウモンでさえあまり目立ってません。
X2以上にさえならない徹底ぶり。弊害として、棒立ちバトルの気がちょっとだけありました。
・ネネ
メルヴァモンに苦言を呈する場面がありました。彼女にしてはやや珍しい行動です。
でも考えてみればタイキよりは感情的になる場面が多いので、別に不思議ではないのかな。
こと姉弟が関わってるとなるとスイッチが入るのは予想するまでもなく当然で、それがデジクロスの切欠でした。
メルヴァモンへの助力をことさら強調する形で彼女にやらせたのは、言わばシナリオの都合です。
ただ上のようにネネにはそれをやろうという強い意志があり、大将であるタイキには度量があります。
なので、裏付けについては問題ありません。問題はむしろちょっぴり間延びしてたあの場面です。
いいから山田の心配をしろよ、と一瞬いらんツッコミをしたくなりました。山田って誰だ。
富田与四一氏によるデジクロスの新バンクは、太腿を強調しながらくるっと一回転までする気合の一品。
上述のように本編の作画があっさり味なので、よけいに濃く見えるというものです。
しかし富田氏は何故こうも彼女の腋に拘るのでしょうか。前からあちこちで言われてたことですが、
なんかもう私も黙ってられなくなりました。
いえ、別に文句があるわけでは全然ないんですけどね。ハイ。
・キリハ
序盤控えめにしてたと思ったら、メルヴァモンに反発してあっさりと別働隊に志願。というか別行動を取ります。
この際のセリフはその全てにたったひとつの言葉しか頭に浮かばない、ある意味ものすごいものでした。
後半にはぜんぜん出てきませんが、決戦となればどこからともなく戻ってくることでしょう。
冷静に考えてみると勝手な行動を取った彼よりも、なぜかメルヴァモンの方が責められてた恰好なんですが
なんせキリハはああいう性格です。なんかもう皆そろそろ「いつものことだ」と思いはじめているのかもしれません。
つまりこの場合、わざわざ別行動を誘発するような行動をしたメルヴァモンが良くない、という結論になるわけだ。
…書いてて頭が痛くなってきました。そりゃあ、メルヴァモンの方にもかなり問題はあるんですけどね。
・メルヴァモン
ハニーゾーンでザミエールモンと戦い続けていた女戦士デジモン。たぶん神人型です。違うかもしれないけど。
なぜかミネルヴァモンに酷似していますがその巨体と巨乳から「しばしば同一視される別個体」
というヤツなのかもしれません。神々にはよくあることと言えば、よくあることですね。
3メートルはあろうかという巨体、鍛え抜かれた肉体、それでいて爆発的な胸囲と、強烈なデザインです。
その筋の人にはたまらんものがあるでしょう。姉御肌すぎて暴走しがちな性格もポイント。
自分についてこられるヤツだけ来ればいい、という考えは思いっきりキリハと衝突するものですが、
彼女の場合はちょっと天然を感じますかね。ガキ大将のまんま進化したかのような。
それでいて不慮の事故で怪我をしたネネをごく自然に気遣うなど、どこかしら母性も感じさせてくれました。
声は白石涼子氏。アカリが出なくなった分を補うかのような配役です。まさか本当にそう来るとはね。
でも私事ですが、クレジットを確認した瞬間に内心でガッツポーズを取ったのも確か。
それにもともとハスキーボイスな氏ですから、メルヴァモンとの相性は抜群。ハマり役と言えます。
というか、アカリと同じ人が演ってるとは思えません。声優さんってすげえ。
・ジェットメルヴァモン
スパロウモンとのデジクロスで登場した形態。合体バンクはいろんな意味で圧巻です。
地上戦で力を発揮するメルヴァモンに飛行能力が付与されることにより、立体的戦術が可能となりました。
実力の程はまだ未知数なところがありますが、X4と同等かそれ以上の力がありそうに見えます。
あのビームが自前なのか、デジクロスしないと使えないのかはまだ謎。
野性的なメルヴァモンに硬質且つ丸っこいスパロウモンの要素が合わさった姿は実にアンバランスで、
それが最大の魅力といえます。このデタラメ感、まさにデジモンならではのものでしょう。
玩具再現がどうあがいても不可能という問題はありますが……
問題といえば、この姿が出るとX5になれないという弊害もあります。
X4BならX5に及ばぬながら飛行はできると思うので、そっちで補うしかないかもしれません。
・イグニートモン
メルヴァモンの弟。
小柄ながら両手の奇妙な剣を旋回させることでデジモンの苦手な波長を生み出し、麻痺させてしまう実力者です。
ザミエールモンはこれに目をつけ、投降してきたであろう彼を実動部隊に参加させたのでしょう。
忠誠心を試す意味もあったのでしょうが、結局はそれが裏目になりました。
性格的にはやや気弱。超強気なメルヴァモンには振り回されっぱなしだったに違いありません。
バグラ軍に下ったのは、そんな時に無茶をする姉に不安を抱いたせいもあるのでしょうか?
もしかすると、自分が投降することでメルヴァモンに反抗を諦めさせようとしていた面はあるのかもしれませんね。
幸運にもと言うべきか、その考えはうまくいかなかったみたいですけど。
そういえば死ぬかもと思ってましたが、この流れだと特に死ぬ必要がなさそうですね。
声優さんがゲスト枠なんで、毎回出てこられるわけじゃないにしても同行することになる気がします。
なお、声は阪口大助氏。「機動戦士Vガンダム」ウッソ・エヴィン役にて、あの富野監督の下で演じ切った男です。
少年っぽい声なので今でもよく学生役を演じてますが、実年齢ではメルヴァモンの白石氏よりだいぶ上。
でも、こちらも結構なハマリ役といえるでしょう。
・ライラモン&スティングモン
19話以来の登場。どちらもパワーを吸われているため、戦闘には参加していません。
最大の功績は、アカリとゼンジロウの存在に言及してくれたことです。ありがとう君たち。ありがとう吉田さん。
スタッフ的にはまだ諦めていないということですね。中の人は二人とも残留してるわけだし。
同行するかどうかはまだわかりませんが、ここまで来たら過去ゲストはみんな連れていくかもしれないなぁ。
クロスローダーという便利設定のおかげで、たまに出りゃ済む話ですし。
・ザミエールモン
ハニーランドのデスジェネラル。
デジモンたちのパワーを吸い取らせ、その際の恐怖と絶望、憎悪を凝縮してデジハニーを作り、
ダークナイトモンへ献上していました。恐らくそれもまた、新生バグラ軍の計画にひと役買うのでしょう。
どうやら大きさを自在に変えることができるらしく、普段はイグニートモンの肩に乗るぐらいの大きさです。
しかしそのスピードは凄まじく、メルヴァモンをも手玉に取っていました。ダークネスローダーも使えます。
その分決め手が無いのか、本気を出すのには準備が要るのか、意外にあっさり引き下がった場面も。
性格は苛烈なドルビックモンや狂気を秘めたネオヴァンデモンとはまた趣が違い、残忍で嗜虐的。
イグニートモンとメルヴァモンの対決を煽り、怒りと悲しみを引き出して悦に浸っていました。
ハニーランドの特性と任務にはこれ以上無いぐらいの適任かもしれません。
声は矢尾一樹氏。デジモン初参加…と思わせて、02にイガモンの役でゲスト出演してました。
近年は特徴的な声質を活かしたエキセントリックな役が多い方で、今回もその例に違わぬものです。
2回限りのゲストとはいえ、毎度ベテランが続きますねぇ。楽しみになってきます。
といっても、これで中の人がわからないのはアポロモンとグラビモンだけなんですね。
個人的には妙に影の薄い後者に曲者の匂いを感じてるんですが…でも、次に戦うのかな? 配下の種族が謎です。
・バグラ軍のみなさん
ザミエールモンの配下はバリエーションが少なく、ほとんどがパワー集め用のハニービーモンで構成されてました。
そんな中でひときわ目立つのが巨体のグランディスクワガーモンで、強制デジクロスによりハニービーモンと合体が可能。
イグニートモン加入まではこの巨漢が敵を抑えつけ、ハニービーモンの能力でパワーを吸っていたのでしょう。
実際、戦闘力は正面からメルヴァモンを抑え込むほどのものがありました。
まともに戦っていればX4であっても苦戦したかもしれません。まあ、バグラ軍には意外とそのレベルがゴロゴロしてますが。
ちなみに、グランディスクワガーモンは岸尾氏でした。毎回出る契約か何かになってるのかな。
★名(迷)セリフ
「そういえば、ラブラブダンスを踊った二人は?」(ライラモン)
5話めにしてようやく言及してくれました。もう一度言おう、ありがとうライラモン。ありがとう吉田さん。
でも、よりによってラブラブダンスで言及とは…この際、贅沢は言えませんけど。
「意気込みだけで作戦もなしか…!」(キリハ)
いちいち挙げるのもなんなので、別行動直前のこのへんからチョイス。
もはやここまで来ると、ツッコミ待ち状態としか思えません。というか、ツッコんだら負けだ。
対するメルヴァモンが余裕の表情というか、やっぱり天然っぽい。キリハの苦手なタイプがまた増えました。
「ネネ。ここはメルヴァモンと協力して、デスジェネラルを倒そう!」(タイキ)
周囲の状況を豪快にスルーしての一言。笑顔が無駄に爽やかです。彼もある意味で強引だ。
しかしキリハが離れた今、選択肢は他にありません。ネネもそこのところは分かっているわけで。
「わからないのなら、張り倒してでもあなたを止める!」(ネネ)
なんと、肉体言語行使の可能性に言及しました。
この一言に、思わずイグニートモンもビックリです。気圧されたというより、疑問が大きかったのでしょう。
何故そこまでできるのだろう、会ったばかりの自分たちのために……と。
それこそが恐らく、タイキから伝わった「痛みを分かち合いたい」という心意気なのでしょう。
いかなる苦境にあっても二度と白い輝きを失わぬと誓った希望こそ、彼女本来の心の色なのだと思います。
「…でも、捜し出すわ。絶対に…!」(ネネ)
というわけでアカリが勇気、ゼンジロウが友情、キリハが誇りならば、彼女は「希望」だと思っています。
あの黒いクロスローダーはいわば絶望の色。闇の使者であるダークナイトモンには心地よい場所だったでしょう。
そしてその絶望は今、恐らくユウの手の中にあるのです。
ところで、ならばタイキの赤は何だろうということになると思いますがこれはいずれ語りましょう。
その機会はそのうちきっと巡ってくるはずです。
★次回予告
ザミエールモンとの決戦。
遊園地が舞台ということで、ギミック満載のバトルになりそうですが…
あんた、でかくなるのは悪手じゃごぜんせんかい。スピードが元のままとはいえ、的のでかさはどうしようもないですよ?
後はユウですね。ネネと対面するのか、それとも視聴者へ顔見せするだけなのか。
こうなると、どっかの時点でデスジェネラルとの戦いに割り込んできそうな気がしますね。誰がワリを食うかな。