笑う狩人! 木精将軍ザミエールモン

 脚本:吉田玲子 演出:角銅博之 作画監督:直井正博
★あらすじ

 イグニートモンの情報から、ザミエールモンがデジハニーを摂取して小さくなっていたことがわかります。
 今のままでは小さすぎて戦いづらい相手ですが、的が大きくなればやりようも出てくるはず……
 タイキは一計を案じ、別行動のキリハにデジハニーの確保を頼みます。

 ザミエールモンからの招待をあえて受け、奇妙な遊技場・ハニー遊園地へ乗り込んでゆくタイキたち。
 そこは、ザミエールモンが獲物を徹底的に痛めつけるための狩猟場でした。
 姿すら捉えられぬまま、その矢が四方八方から情け容赦なくクロスハートを襲います。

 その間にキリハがイグニートモンの案内を受け、首尾よくデジハニーの貯蔵庫を破壊。
 ザミエールモンのデジハニーも効力が切れかけ、これで形勢逆転…と思いきや、彼は嘲笑を飛ばします。
 次の瞬間、山のような背丈に巨大化するザミエールモン。より狩りを楽しめるように力を抑えていたのです。

 想定外の事態に浮き足立つクロスハートでしたが、そこへキリハが合流。
 態勢を立て直し、シャウトモンDXで挑むのですが、ザミエールモンの速さは巨大化しても健在です。
 しかし、捉えることができれば当たる。ジェットメルヴァモンが一瞬の隙を作り、
 そこをシャウトモンDXの爪が穿ちました。かくて牙城とともに、ハニーランドの支配者も滅びてゆきます。

 新たにメルヴァモンという仲間を得て、戦力を増強させた連合軍。
 が、キリハが見かけたという謎の金髪の少年の存在がネネの心に一抹の影を落としていました。
 無邪気に、そして残酷に笑う少年の正体は、そう──



★全体印象

 36話です。気づけばもうこんなに話数が進んでいたのか。
 脚本は前回に続いて吉田氏。作画が直井氏で角銅氏が演出ですから、デジモンアニメ初期からの定番メンバーですね。

 内容的にはざっくりと言って、ザミエールモン攻略とユウの前フリ。
 でも、ぶっちゃけ低調な演出とユウ以外は順当と言える流れもあって、実はけっこう地味な回です。
 クロスハート組のパートが途中まで実質敵が見えないというのも大きいかもしれません。
 キリハが別行動した意味をきちんと消化したり、細かいところは良かったですけど。

 37話がアレですから、どうやら将軍のうちで最初にワリを食ったのはザミエールモンのようですね。
 次回にはリリスモンとブラストモンがもっとひどい目に遭いそうなので、それでもずっとマシな方でしょうけど。



★各キャラ&みどころ

・タイキ

 作戦がものの見事に空振りし、珍しく動揺するシーンが見られました。
 しかしまあ、ザミエールモンのアレは反則みたいなもんですからまだ唖然としてたのかもしれませんけど。
 ああいうのを「知略をトンデモで引っくり返される」って私は呼んでいます。
 「ガッシュ」で、罠に填めて海溝に沈めたと思った巨人兵器ファウードが突然泳ぎ出した時も同じ気分になりました。
 どないせーっちゅーねん。

 そこで彼を激励するのがキリハというのは、関係の微妙な変化を窺えて興味深いところ。
 今回は今まで以上に正統派ライバル同士という感じでした。


・クロスハートの仲間たち

 シャウトモンたちは今回もそんなに目立ってません。出番といえばザミエールモンの矢に追い立てられる程度で、
 X4になってもあまり貢献できず。敵のインフレ具合がよくわかります。ナイトモンらもあんまり意味なし。
 というか、ハニーランド篇は全体的にネネ周辺とキリハ周辺以外が割と貧乏籤ですね。
 キリハと一緒に行ったベルゼブモンですら、働いてた割には地味です。

 シャウトモンDXの一撃必殺っぷりは相変わらず。
 でもよく見るとジークグレイモンで一撃→DXで一撃→ジェットメルヴァモンに助けられて勝利、と
 実は描写的にちょっとずつ苦戦度が上がっています。ドルビックモンの言葉は嘘じゃなかったようですね。
 デザインや技の派手さ、重量感、イメージなどからいまだに彼の印象が強いですけど。

 
・ネネ

 前回かなり目立ったせいか、今回は控えめ。特筆するようなこともやってません。
 でもキリハの言葉を聞いて浮かべた怪訝な表情をはじめ、やはりハニーランド篇の主役は彼女、
 という印象を刻まされるカットが結構ありました。まあ次回もたぶんタイキと半々で主役ですけど。

 デジクロスのバンクは相変わらず無駄にエロいです。あけすけなメルヴァモンよりも何故かより一層。


・メルヴァモン→ジェットメルヴァモン

 実は彼女も控えめで、持ちネタを前回で使い切ったかのような状態でした。
 それでも驚くべき怪力で観覧車をひっぺがし、投げつけることでザミエールモンに一瞬の隙を作る役割を果たしています。
 DXが出たあとも飛行可能な戦力が増えるのはメリットといえますね。

 まあ、最終的にはベルゼブモンのように強めだけど支援キャラ、になってゆく気がします。
 ネネのデジクロスにおける事実上の要に収まったというアドバンテージはありますが。


・キリハ

 今回はやたら素直でカッコいい場面が目立ちました。32話をより強く受けてのキャラ作りという印象です。

 驚いたとさえ言えるのは、タイキを激励したシーン。もともと個人としては互いを認め合っていた二人ですが、
 ここへ来てまた違う何かを築きつつあるようにも見えます。タイキに応える笑顔が妙に爽やか。
 吉田氏はそんなにキリハを描いてはいないのですが、どっちかというと柔和な面を描くことが多いですね。
 どっちかというと二枚目らしく、カッコよさげに描こうという配慮を感じます。
 
 彼にはもうひとつ、ユウを目撃するという重大な役割がありました。
 見たというだけで、それが誰だったのかという具体的な推測は丸投げというあたりも何か彼らしいです。


・ブルーフレア組

 グレイモンにメイルバードラモン、メタルグレイモンと、一体ずつに短いながらも見せ場があります。
 シャウトモンたちが矢に追われてヒーヒー言ってる間に、かなりの点数を稼いでいました。
 というか、実は最強でありながらジークグレイモンの出番が一瞬しかなかったりします。ピンポイントだ。

 ドラコモンは今回も出番なし。
 うっかり存在を忘れそうになりますが、中の人がレギュラーじゃないのでは仕方ありません。


・イグニートモン

 同行無しですか。うーん、残念。
 彼のあの特技はかなり役に立つと思うんですが……まあ、そりゃ加入しても出番はあまり望めないですけど。
 今回もほぼ案内役以上のことをしてないですし、戦闘力が高いわけじゃないんです。
 あのメルヴァモンの弟ですから、育てば彼女以上の戦士になるかもしれませんけど……時間が足りませんね。


・元フォレストゾーンのみなさん

 同じく同行せず。みんなまず養生が必要なレベルなので、仕方ないんですけど。
 HPじゃなくLP吸われてる状態でしかも残り1か2ぐらいしかないと考えると、危なくて連れて行けません。
 そうなると当然、元気なイグニートモンに頑張ってもらうしかないわけで。

 他のゾーンに比べてわりと人数が多かったのは、そうして生かさず殺さずにおかれたからでしょう。
 ドラゴンランドやヴァンパイアランドは……ああ、チョコモンたちがいましたね。
 彼ら、ロップモンが逝ったことを知ってるんでしょうか?


・ザミエールモン

 獲物に反撃すら許さず一方的に責め立てるばかりか、わざわざデジハニーで体を小さくして
 己の攻撃力を下げ、獲物の苦しみを長く延ばして悦に入るその残忍な性格は前回以上に強調されています。
 ユーモラスで奇矯な表情と矢尾氏の声に緩和されてますが、いっそ清々しいほどのド外道。
 前にデジアドにおけるピノッキモンタイプと書きましたが、こいつは大人(?)な分だけより醜悪です。

 そんな彼ですが、最後はひどくあっけないものでした。
 シャウトモンDXの大技を食らったと思ったら、一撃で沈む有様。ムゲンドラモンに匹敵するあっけなさです。
 攻撃を避けて避けて避けまくるスタイルのお約束か、それが逆に弱点だったようですね。
 限界まで体を絞っているためでしょう、防御力のパラメータは最低レベルなのかもしれません。
 ただし、そういう戦法ゆえ持久力は逆に恐ろしく高いようですが。

 でも、攻撃を受ける場面は正直あんまり演出が良くありません。
 避けた後にタイキの説明と攻撃が入る流れなので、ビックリしてる間にやられちゃったように見えます。
 あんたは獅子のアイオリアか何かですか。

 せめてまず避けた本当に直後の時点で着地点インターセプトが入り、そこで初めて説明を入れて
 トドメのブレイブビートロック・ダブルクロスに至った方が良かった気がします。
 全体的に演出がイマイチなんで、この場面に限った話じゃないけど。
 

・新生バグラ軍のみなさん

 ハニービーモンに加え、フライビーモンやブロッサモンらの姿が見受けられます。
 スパイラルフラワーが飛来回転ノコ花じゃなくて何故かトゲミサイルでした。
 それスパイラルフラワーちゃう。デッドリースティングや。

 ヴァンパイアランドといい、彼ら一般兵からはゾーン集め篇以上に指揮官の駒というイメージがありますね。
 何かと強制デジクロスされたり、ぶっちゃけ単なるゾンビだったり、判断力が鈍そうだったりするせいでしょう。
 何体かはバグラモンによって直接生み出された、絶対に裏切らない兵士なのかもしれません。

 だから、デスジェネラルもその殆どは各ランドが出来た時、同時に創られた存在と見ています。
 ダークナイトモンがユウを手元に置いてるっぽく見えるのは、部下の大半が兄の子飼いだからですかね。
 問題は彼がいつ下克上をかます気なのかということですが……さて、どうなりますやら。

 つうか、親玉のわりにバグラモンの影が意外と、あるいは意図的に薄いのがどうも気になります。
 ダークナイトモンが帝国を乗っ取るからなのか、それともバグラモン自身が仮の姿なのか……



★名(迷)セリフ


「可愛くケツ振ってるけどよ、オレたちを刺してパワーを吸い取ったんだぜ?」(シャウトモン)

 どういうわけか印象的だったので入れてしまった一言。
 ハニービーモンは一応「可愛い」ということらしいです。やってることはこのセリフ通り、全然可愛くないけど。
 OPのキュートモンといい、尻振りダンスはやっぱりアレの影響でしょうか。アレ、あんまり好きじゃないんだけどな。


「私はすごーく楽しんでるぞ? このハニー遊園地をな!」(ザミエールモン)

 ザミエールモンらしい、と思わされたセリフを一献。
 ユーモラスで甘く包んではいるけれど、隠しようもなく隠す気もない残忍と醜悪が醸し出されています。


「想定外だったわね…」(ネネ)

 いきなりヴェノムヴァンデモン並みの大きさになったザミエールモンを見て。
 別になんてことないセリフですが、微妙に応用範囲が広そうです。


「どうした、タイキ! 自分の作戦を信じろ! お前の狙った通り、ヤツは大きくなってるじゃないか!
 大きくなるのも計算のうちだろ! とにかく今のヤツなら、攻撃すれば当たる!」(キリハ)


 やり取りなど多少略。非常に珍しい、キリハからの応援メッセージです。
 状況がそうさせたとはいえ、二人の関係の変化を最初に強くアピールしたといえるセリフかもしれません。
 同時に、キリハらしい前向きさがうかがえるセリフでもありました。的がでかけりゃ当たる。

 実際、パワーが増すとはいえ調子に乗って巨大化したのはザミエールモンにとっても失策だと思います。
 的が大きいということは、シャウトモンDXほどの強者が出てくると見切られる危険が出てくるのですから。




★次回予告

 ついにユウとネネが対面。ヒロイン度数の上昇がとどまるところを知りません。
 ユウが操られているのか、それとも自分の意志で行動しているのかでだいぶ話が変わってきそうな節目です。
 姉弟の過去も本格的に明かされそうなので、楽しみにしときましょう。

 ところであの手と札、もしかしてタオモン? どんな風に登場するんでしょう。
 味方なら何かと便利キャラになりそうですが……