陽気な海賊、登場! ゴールドランドの航海!!
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脚本:三条陸 演出・絵コンテ:細田雅弘 作画監督:八島喜孝 |
★あらすじ
第五の国。それは黄金の海が広がる世界、ゴールドランドでした。
現れたデスジェネラル、オレーグモンは語ります。次の国への入口は海の中であり、そこに行けるのは自分の船だけだと。
そのためにも自分の「金賊団」に入れ。オレーグモンのこの要求を連合軍は拒否し、戦いが始まります。
が、オレーグモンと金賊団は恐ろしい敵でした。
「ガッポガッポ、ビバ、オレーグナ!」──この奇妙な言葉を聞いたシャウトモンたちが何故かオレーグモンに従い、
タイキたちに敵対しはじめたのです。連合軍は残りのメンバーを掻き集め、撤退するしかありませんでした。
オレーグモンはタイキたちに賞金をかけ、手当たりしだいに捜させ始めます。
バリスタモンには敵のあの言葉が効かなかったことから、彼と機械に限りなく近いサイバードラモンを前衛に立てて
反撃に出るタイキたちですが、オレーグモンの前にサイバードラモンさえも操られてしまいます。
ドルルモンも敵の手に落ち、進退窮まったとき、バリスタモンがシャウトモンへ必死に語りかけました。
微笑みの里に傷つき迷い込んだ自分を救い、修復してくれたシャウトモンは彼にとってかけがえのない親友なのです。
親友とオレーグモンの呪縛の板挟みに苦しむシャウトモンは、苦し紛れに武器を投げつけます。
それが偶然オレーグモンの角に当たり、ワイズモンが術の原理を見抜きました。
オレーグモンは角を音叉とし、音でシャウトモンたちのデータを書き換えて操っていたのです。
バリバステモンの技によりすぐさま呪縛は解除され、怒りに燃えるシャウトモンが超進化して立ち向かいました。
ところが、その間にバリスタモンが金賊団に捕まってしまいます。オレーグモンの真の狙いは彼でした。
さらに衝撃の事実が語られます。バリスタモンを造ったのは、もともとオレーグモンだというのです!
果たして、金賊団の細工によりバリスタモンの姿が異様な変化を遂げてゆきます。その名をダークボリューモン。
連合軍は、シャウトモンはオレーグモンを討ち、バリスタモンを取り戻すことができるのでしょうか?
★全体印象
40話です。すでに41話が放送してますが、敢えてそれを見ずに書きました。
脚本は三条氏。氏がデスジェネラルとの戦いを描くのは、32話以来となります。
作画の八島氏はほとんど描いてるんじゃねえかってぐらいに色を全開にしてますが、持ち前の動きの良さと
演出自体の良さで充分にカバーしています。昔からそうでした。
さて、このゴールドランド篇はなにかと意外性が連続で襲いかかってくるエピソードのようですね。
オレーグモンが見かけより遥かに頭脳派で剣呑な手を使う敵将だったのも意外でしたが、
その術にかかったシャウトモンたちがあっさりと金賊団に入ってしまったのも私にとっては意外でした。
さらに、バリスタモンがここへ来てこのような形での脚光を浴びたのも意外だったのです。
終盤の前の仕込みと思えばスポット自体は意外じゃないんですけど、ああ来るとは思ってませんでした。
戦いは最悪の事態こそ回避したものの、そのバリスタモンがダークボリューモン化したところで終わります。
どのような力があるのか、オレーグモンが彼を造った狙いは何なのか、彼を救う糸口はどこにあるのか。
相変わらず三条氏は引きが上手いと言いますか、ざわざわした気持ちで視聴を終えたものです。
上にも書きましたけど、この気持ちを重要視して放映済みの41話はまだ見ていません。
フタを開けてみたら的外れな結果に終わることばかり書くかもしれませんけど、それも生の醍醐味です。
★各キャラ&みどころ
・タイキ
初見殺しにもほどがあるオレーグモンの反則技を前にして、さすがに唖然とする場面がありました。
その後もどっちかというと精彩を欠いており、仲間というものが彼にとってどれほど大事か逆によくわかります。
ある意味で、オレーグモンほど彼の天敵になり得る存在はいないのかもしれません。そう感じてしまうほどに。
ワイズモンが敵の手に落ちずに済んでいたのは、ですから不幸中の幸いというところでしょう。
翻れば、オレーグモンの最初の敗因はそこらへんかもしれません。
・クロスハートの仲間たち
大半が金賊団に引っこ抜かれてしまい、今回ばかりはガタガタの状態。
あの術はクロスローダーの中にいる時には効かないというか届かないみたいなので、ワイズモンが無事だったのは
たぶんそのおかげでしょう。メルヴァモンらが無事だったところからみると効果の早さには個体差がある他、
何回直撃を食らったかにもよるのかもしれませんね。
シャウトモンは話の流れ上、久し振りに単体でオレーグモンと戦います。
前半から一戦やり合ったデスジェネラルというとネオヴァンデモンがいますが、その時は進化してませんでした。
進化した上で二話構成の一話めから戦った相手はオレーグモンが最初です(ドルビックモンとはまだ戦ってません)。
超進化をしても押し切れず、別の危機が頭をもたげたところで引く構成により、敵の強大化をよく示唆していました。
やはりジークグレイモンとDXの力が必要ですが、出るとしてもだいぶ詰まってからでしょう。
その他、リリモンに久々の出番がありました。ポジションが不明過ぎる娘さんですが、かわいいから許す。
また、ベルゼブモンが要所で渋く脇を締めています。こっちは相変わらずいいポジションにいる。
・バリスタモン
寡黙な縁の下の力持ちであり、ともすると空気になりがちだった彼ですが、ここにきて実は敵方の血を引いていたという
何処のヒロインだ君はな設定が付加され、いきなり輝きはじめました。
こんなこと言ったら怒られるかもしれませんけど、俄然面白いキャラになったと思います。
今回の昔話とオレーグモンの証言により、機械系の彼がなぜグリンゾーンの微笑みの里にいたのか
その理由もハッキリしましたね。恐らくゾーンが生まれた時にもともとの主とはぐれ、グリンゾーンに落ちて来たのです。
デジタルワールドがゾーンに分かれたのがいつなのかハッキリしないので、時期については断言できませんけど。
暴れてたときのシルエットが違うので、見る人が見ればそこである程度彼の本当の出自がわかりますね。
今の彼が明らかに持っている意志が事故によって生まれたものなのか、もともと備わっていたものなのか、
その点もちょっと気になります。前者でも後者でも一定のドラマになりますね。
一番敵に回りそうにない仲間が敵に回り、逆説的に脚光を浴びるという流れは「キン肉マン2世」を思い出しますが、
あちらの場合は一時期とはいえかなり徹底的にヒール化していたのに対し、こちらはほぼ強制力で敵にされています。
似ているようで全然違うわけですが、それでも意外性は確保できていますね。
・ダークボリューモン
バリスタモンが金賊団に何かのスイッチを入れられ、変化させられた本来の姿。
…なのですが、デザイン上はどう見ても「真」というより「裏」な姿です。君は何か、ショックウェーブ参謀か。
能力はむしろサウンドウェーブなのでしょうけど。
名前の通り、音を操るオレーグモンの補助をする力があるといいます。どのような力かはまだ不明。
単純な破壊か、それとも支配音波の強化か。前者もヤバいですが、後者はもっとヤバいですね。
それにしても、彼を修理したのがシャウトモンだとは……言い方は悪いけど、これも意外でした。
説明書の類はあったみたいですけど、そんなに器用な方には見えんのですが……アレですかね。根性かな。
周りに誰もいなかったし、シャウトモン以外は怖がって誰も近づかなかったのかもしれません。
だからたとえ良くわからなくても、根性でなんとか修理を進めていったんじゃないでしょうか。
ひょっとしたらその過程で間違いをしでかしていて、それで今のバリスタモンになったのかもしれません。
でも間違いかどうかを決めるのは、今ここにいるバリスタモン自身なのでしょう。
・ネネ
一応、自分の髪型について気にしてはいたのか……
クール系を標榜しているわりにあのヘアスタイルというギャップが序盤の持ち味だった人物ですが、
最近はすっかり面白いお姉さんですね。私は今の彼女もけっこう好きですけど。
序盤のネネと今のネネ、どちらが本来の彼女かと言えばたぶん今の方が本来に近いのでしょう。
どっちに魅力を感じるかは私たち次第ですね。漫画版は漫画版でまた違いますし。
・キリハ&ブルーフレア組
熱血漢でありつつ、戦術眼はタイキよりドライなためか撤退の音頭を取る場面がありました。
ネネはおろか、タイキでさえ珍しく軽いパニックに陥っていたので、彼ひとりが冷静だった恰好です。
仲間を大事にするゆえ、それが弱点にもなり得るクロスハートとは別のスタンスを持つゆえでしょうか。
グレイモンが操られてしまっていたので、メタルグレイモンは登場せず。
ジークグレイモンの登場が遅れたのは、メイルバードラモンと距離が空いていてタイムラグが出たからでしょう。
その一方、デッカードラモンが34話以来の登場を果たしています。フロートモードも披露。
キリハとのちょっとしたやり取りもありました。
登場が派手だったわりにはあんまり目立ってなくて気の毒ですが、それだけに出番があると嬉しいものです。
そしてやっと出番があったと思ったら、あっという間に操られてしまったサイバードラモンの明日はどっちだ。
・オレーグモン
第五のデスジェネラル。黄金の鎧を纏った海賊のような姿をしています。
オレーグというのはロシア系の男性名ですが、古代ロシアのキエフ公オレーグが由来なのでしょうか?
さて。
登場がずいぶん後のほうになったので「大丈夫なのか、こいつ?」と思っていたことを白状せねばなりません。
正直、あまりにも下っ端っぽい姿だったので勝手にデスジェネラル最弱かもしれないとイメージしていたのです。
しかしフタを開けてみれば、見るからにイケメンで強そうだったスプラッシュモンとは真逆の印象を持つことに。
あちらが残念だった分、こちらのクレバーぶりと芸達者ぶりがよけいに引き立つ結果となりました。
おまけにスプラッシュモンでは微動だにできなかったクロスハートを簡単に分断へ追いやってしまっているので、
二重の意味で「こいつ凄ェ」と感じることに。キリハの言葉通りの強敵です。
角を媒介に敵を味方に引き込んでしまうあのものすごい力技は、同時に繊細なチューンが必要と思われます。
わずかな狂いで大きく乱れてしまったのがその証拠。しかも本質を気づかれないようにしないといけません。
豪快に見えて、実は相当の策士且つ器用者なのでしょう。
私、こういう外見と中身に少々ギャップがあって且つ陽性の悪役が結構好きなんですよね。
プラス傾向で見るのはたぶんその影響もあると思います。このへんもスプラッシュモンとは真逆でした。
・金賊団
オレーグモンの部下たち。バグラ軍というよりは、オレーグモンの私兵というイメージが強い連中です。
というより、金賊団そのものがバグラ軍お抱えの傭兵集団みたいなもんなのかもしれません。
その証拠に、正規メンバーには操られている様子がありません。昔からの部下もいるのでしょう。
ルカが言っていた「バグラ軍につけばデスジェネラルに〜」という話は、あながち出鱈目じゃないのでしょう。
バグラモンが各地の実力者を見出し、味方に引き入れてデスジェネラルの任を与えた側面もあるはずです。
全員がそうだとは思えませんけど。
顔ぶれとしてはデプスモンにマリンデビモン、アノマロカリモン、そしてマーメイモンの姿が見えます。
マーメイモンは体格とタイプの近いメルヴァモンと火花を散らしていました。どのような決着であれ、
この二体は次回も激突するものと思われます。
・スパーダモン、ルナモン、コロナモン
シャウトモンたち同様、金賊団に引っ張り込まれてしまっていた方々。
コロナモン=アポロモンという線はこれで消えました。消えてなかったら面白いけど、話がややこしくなるので
そんな設定にはならないでしょう。たぶん。
一応今回で正気に戻りましたが、仲間入りするかどうかは微妙です。
・ゴールドランドの住人たち
デジタマモン、ピチモン、ビットモンらの姿が見えます。ビットモンは映画に出てますが、TV版は確か初登場。
立場としてはただの住人で蹂躙される役ですが、それでも他の国よりはマシな状況に見えますね。
・バグラ城
序盤にチラリと登場し、迫りつつある決戦を煽っていました。
ですが、どうやら邪悪な力は弱まっていないようです。やっぱりデスジェネラルの死も計画のうちなんでしょうか。
問題は、デスジェネラルたちの何人がどのぐらいそれを認識しているか、ですが……さて。
★名(迷)セリフ
「フン…お前は強いが、口うるさいからあまり使いたくない」(キリハ)
血迷ってこのごく普通のセリフをエントリー。
「お前は強いが、声優が大御所だからあまり使いたくない」と言い換えてはいけません。
「ネネは怖いからここでおさらばさ。前から思ってたけど、髪型もヘンだし…」(スパロウモン)
操られたときのセリフですが、どう見ても本音が出ています。ネネに脳天直撃セガサターンを与え、戦意喪失に追いやりました。
まあ、本来のスパロウモンならこんなことは思っててもまず絶対言わないでしょうけど。
「そうそう。なんたって一番のお宝は、仲間だもんな。こんな金塊だらけの世界じゃ、仲間以上のお宝なんかねェ。
おめぇもそう思うだろ、タイキ? オレたちゃあ、きっと気が合うぜ? な?」(オレーグモン)
あくまでも陽性なのが逆に恐ろしいセリフです。
気になるのはタイキを揶揄ってこんな言い回しをしているのか、それとも実は本当にそう思っているのか、ですが…
そこらへんは次回でわかるでしょうね。
「しゃうともん、必死ニおれヲ止メテクレタ。ソシテ直シテクレタ。しゃうともん、おれノ恩人!
おれモ同ジコトスル! 友達ダカラ!」(バリスタモン)
ここぞとばかりに喋りまくり。漫画版もそうですが、伝えなきゃいけないことがある時は実に雄弁です。
26話でもさり気なく示されていましたが、この二人の間柄はタイキとはまた違う深みと年期があります。
タイキにさえ話せないことでも、バリスタモンになら話せる。よけいな言葉がなくても理解しあえる二人でした。
その意味では、この状況にもっとも相応しい取り合わせのひとつかもしれませんね。この後の逆転状況も含めて。
★次回予告
さあ、次はシャウトモンの番です。バリスタモンをいかにして救い出すか、見せてもらいましょう。
オレーグモンの隠し技がどのように作用し、ダークボリューモンがそこにどう関わっているかも見逃せません。
果たして戦いの結末は。