最後の王国、 輝く太陽のブライトランド
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脚本:三条陸 演出:三塚雅人 作画監督:八島喜孝 |
★あらすじ
ついに最後の王国、ブライトランドへとやって来たタイキたち。
そこは一見輝きに満ちた美しい場所でしたが、やはり民が苦しめられていました。
最後のデスジェネラルも悪党に違いないと確信する連合軍の前に、神の使者を名乗るセトモンとマルスモンが出現。
支配者アポロモンの見下ろす中、早々に戦いが始まります。やがて、シャウトモンDXがセトモンを圧倒し始めました。
するとアポロモンは戦いを制止。謁見を許可し、自身の居城であるアポロニアの塔への登攀を許可します。
空からは近づけないこの塔をやっとの思いで登り切ったタイキたち。意外にも、穏やな迎えを受けることに。
アポロモンは語ります。自分はデスジェネラルではあるが、正義の心を持っているデジモンだと。
表向きは忠誠を誓いながら、新生バグラ軍を打ち倒す力を備える者たちをずっと待ち続けていたのです。
共に戦ってほしいと懇願するアポロモンを前に、意見の割れる連合軍。
デッカードラモン復活のためにもデスジェネラルは全員倒すと心に決めているキリハや、疑念を払拭し切れぬネネは
構わず攻撃しようとするのですが、反撃しようとしないアポロモンを見てタイキは二人を止めようとします。
揉み合いの中、誤ってメタルグレイモンの攻撃が及んだタイキを庇ったのはアポロモンでした。
その拍子に包帯が外れ、ボロボロの右腕が現れます。民を苦しめるたび、アポロモンは自らを傷つけていたのでした。
これが決め手となり、アポロモンを信じようと意見が纏まりかけた時です。突然ユウとツワーモンが現れました。
驚くアポロモンの中から、彼自身も知らぬうちに植え付けられていた闇の姿が現れます。その名もウィスパード。
ウィスパードの密告により、アポロモンの叛意は筒抜けでした。ユウたちを導き入れたのも、この裏人格だったのです。
やむなく反撃しようとする連合軍ですが、タイキが戦いを躊躇ってしまいました。一転、塔の最下層へ落とされる一同。
死のゲームが今、始まろうとしていました。
★全体印象
45話です。脚本は三条氏。作画の八島氏は無論のこと、演出の三塚氏ももうお馴染みです。
気づけばもう一年以上やってるんですね。話数はともかく、放映期間ならデジモンシリーズ最長になりそう。
ひょっとして9月までやるんでしょうか?
さて本編ですが、前哨戦がちょっとある他はそれほど派手な戦いはありません。
しかし久々のユウ登場やアポロモンの裏表含めた素性、初登場デジモンの多さなど、見どころはあります。
アポロモンについては予想通り。ある意味でサー・バロンのリボーンと言ってよい仕上がりです。
ましてやデスジェネラルである以上、その死は半ば避けられないでしょう。何か起こりそうな気もするんですが…
29話のような例もありますし。
いずれにせよ、ここに来てこのようなケースにぶつかるとは…
後でじっくり語りたいと思いますが、これはタイキにとって最大最後の試練となるのでしょう。
デジタルワールドの根幹に話が関わってゆくとなると、避けては通れない命題になるような気がします。
★各キャラ&みどころ
・タイキ
最大の長所が裏目に出てしまった回です。
アポロモン自身の言葉にウソはないと見抜いた直感の確かさや、何度騙されても篤いその信義はブレてませんが
さすがにウィスパードの存在までは看破のしようもありませんか。つうか普通わかりません。
疑ってたキリハやネネでさえ、最後には認めたぐらいの相手なんですから。
残念ながら現状、彼に残された手はひとつしかありません。
デスジェネラル最強クラスであろう上に殺る気まんまんな敵へ、果たして手心が加えられるものでしょうか。
できるとは思えません。シャウトモンX7になって初めて勝ちを獲りに行ける相手です。
つまり決断しない限り、今度は仲間たちが危機に陥ることになるのです。
でも涙を呑んで討つという選択は物語的にはアリでしょうけど、タイキ的にはどうなのかなぁ。
いや、それをやった時点で敗北なんじゃないかと思います。戦略的意味ではなく、もっと根幹においての。
アポロモンが死ぬにしても、せめて正義の心を取り戻した上でなきゃ拙いことになるかもしれません。
29話のように何か起こるんじゃないかなぁと思ったのは、この点ですね。
もちろんアポロモンを討つしかできず、それで最後の最後にヘタレる展開もアリです。
さすれば今度は自分たちが、と仲間たちに支え返される流れを作ることもできることでしょう。
今週までは彼がヘタレるなんて考えもしてませんでしたが、ここへ来て結構な確率で芽が出てきました。
どうやら、ここが正念場ですね。どちらに転ぶかな。
・クロスハートの仲間たち
タイキと並んでシャウトモンが目立っていました。
はじめはアポロモンへの糾弾に終始してましたが、途中から急激に態度を軟化させています。
少しでも信じられそうな者には何度痛い目に遭っても手を差し伸べるあたり、ジェネラルとよく似てますね。
あと、やっぱり彼だけじゃなくてタイキの戦意が上がってないと進化できないようですな。
バトルでは、シャウトモンDXがランド到着回Aパートという異例の早さで登場しています。
クロスハートの強さの一端をアポロモンへ印象づけるためなのでしょう。ちょっとばかし強引でしたが。
ってか、DXってX7以上に苦戦描写が無いんですよね…巡り合わせの関係で、クリーンヒットすら受けてない。
なんでしょう。重甲気殿や牙大王よりも大連王のほうが強く見える法則とでもいうのかな。
他、Aパートではベルゼブモンやリボルモンらも交えた乱戦が行われています。
ドルルモンがグレイモンに助太刀したりと、それまではあまりなかった光景が見られるもポイント。
三条氏はリボルモンがお気に入りなのか、短いながらちょこちょこ出番を与えていますね。
バステモンがまともに喋るのも、多くは三条氏の担当回です。まぁ、今回は出てすらきませんでしたけど。
そして後半はこれまた珍しく、仲間同士の揉み合い。
といっても赤・青・白組に分かれての悶着なんで、初期メンバーが割れているわけではなかったりします。
スパロウモンはほぼ白組な上中途参加なので、数には入れられません。
何にせよ、今度は外部から揺さぶられてることになるわけか。
しかもタイキという大黒柱に直接影響が来てます。大将が取りまとめにしくじると、こうもバラけるのか…
連合軍のバランスはやはりタイキあってのもので、依然危ういバランスの上に成り立ってるのかもしれません。
・ネネ
ユウの登場により目立ちフラグは立ってますが、相変わらずジェネラルの中では最も描写が薄いです。
ただ、消極的ながらキリハに賛同したのは自己主張でした。意外なようで妥当でもあります。
ダークナイトモンのもとで非情な戦いをくぐり抜けた経験から、タイキたちを甘いと評したこともありますし
簡単に敵を信じることに抵抗があるのでしょう。いや、あって当たり前なのかもしれません。
タイキがある種規格外なだけで。
それでもあまり強い態度を見せなかったのはタイキへ遠慮があったのと、隣にいたキリハが
非常に強い態度を見せていたせいでしょう。ああなると影が薄くなる。
・キリハ
一見いつもの調子に戻ったように見えますが、よく確認すれば明確な変化が窺える仕上がり。
タイキの申し出を断ったのはデッカードラモンを復活させるため、デスジェネラルは全員倒す気でいると
ハッキリ理由を述べてのことですし、そもそも敵の大幹部を普通そう簡単に信じられるものではありません。
それに一応、きちんとネネにも意見を求めて多数決の形を採ってます。
何より最後には彼もアポロモンの高潔さにうたれ、共闘を受け入れていました。
態度がでかいのは三つ子の魂百までというか、癖みたいなもんなので簡単には直らんでしょう。
タイキがもしもヘタレた場合、どういう行動を取るか気になるところです。なんとなく予想はつくけど。
・アポロモン
恐らく最強のデスジェネラルにして忠誠度最低、そして存在自体が最悪のトラップなお方。
正義の心と高潔な精神を兼ね備えた本物の勇者であり、体を張って連合軍の信頼を勝ち取った男ですが
同時に恐るべき敵でもありました。
口ぶりからみても、自分の意志でデスジェネラルになったわけではないのでしょう。バグラ軍に戦いを挑み、
たぶんバグラモン自身の圧倒的な力に敗れた口です。恐れとも取れる慎重な態度が証拠。
ウィスパードはその敗北のときに仕込まれたものでしょう。たぶん昏倒してる間とかに。
そして仕込みがバグラモン自身だとしたら、ひょっとすると対タイキ用の罠ではと勘繰りたくなります。
アポロモンが高潔であればあるほど、タイキの心には隙が生じる。それで倒せればよし。
もし敗れても、タイキの心をへし折れる可能性が残ります。確信的にやったとしか思えませんね。
でなきゃ、わざわざ叛意100%のアポロモンを部下に配してる意味がなくなります。
まして29話と違い、タイキはコードクラウンを持っていません。
誇り高い表の顔の裏に残忍な別人格、という設定は「冒険王ビィト」の天空王バロンを思わせる人物像。
違うのはバロンの別人格・ザンガが頭に寄生するような形で宿っている全く別の存在なのに対し、
ウィスパードが外部から仕込まれたと明言されているアポロモン自身の裏の姿であることでしょうか。
まあアレです。田中秀幸という時点で美味しいキャラです。
かのギリアム・イェーガーといい、カッコいいおじ様をやらせたら氏の右に出る人は少ないでしょう
(オッサンではなく「おじ様」なのがポイント)。
実際、去就がどうなるかで展開も変わってきそうな人物に一週で収まっていますね。
どっちにしろ九割がた死ぬことになるでしょうけど。
・ウィスパード
アポロモンの光の中に潜む闇の黒点、邪悪なる別人格です。
彼が表に出るとアポロモンの赤い体は青へと変わり、部下をも平気で手にかける冷酷な性格になります。
アポロモン側に変わってる間の記憶は無いようですが、意識を保持させたまま入れ替わることも可能な模様。
名前がデジモンの形式を採っていないのは、モードそのものが名前になっているから…かな?
この姿では喋り方も勇者然としたアポロモンから一転、ざっくばらん且つ剣呑なものへと変わります。
ただ、これを田中氏がやたらダンディーに演じているので何というか、異質な迫力があったりしますね。
冷酷・残忍でもダンディーさは失わないなんて、本質的にはある種アポロモンと同ベクトルかも。
これで彼なりにアポロモンを慮るセリフが出たら、もうまんま天空王バロンなんですが。
(余談:今からじゃ信じられませんが、田中氏はアバン先生とキルバーンを掛け持ちしてたことがあります)
さて、アポロモンがあそこまでやった以上、もっと狡くやれば連合軍をより確実に倒せたかもしれません。
途中まで案内させておいて裏人格に入れ替わる…とか、手はいくらでもありそう。
やらなかったのは、ユウがタイキとのバトルそのものを望んでいるから…というのもあるのでしょうが、
ウィスパード自身もまたそういう性格だからなのかもしれません。
精神的ダメージを受けた相手をじわじわ追い詰めて潰すのが大好きそうにも見えますし。
とはいえ、アポロモンが連合軍に「D5」の情報を洩らしてしまったのは少々拙かったかもしれませんね。
でもブライトランドが最後の国だったのは、つまりそういう意味でもあったのでしょうか。
辿り着ける者がいればアポロモンは迷いなくD5のことを教えてしまうのでしょうけれど、
もうその段階では阻止に間に合わないだろうという目算なのでしょうね。
とことん信頼されてないなあ、アポロモン。始めから信じる気なんて無いのだから当たり前ですが。
まあ、D5についてはデスジェネラルでさえどの程度知ってるのか怪しい感じでしたけれど。
・新生バグラ軍のみなさん
セトモンとマルスモンを筆頭に、グリズモンやドーベルモンなどの姿が見えます。
兵士連中はともかく、トップ2に関しては明らかに神人型・神様系つながりというやつでしょう。
マルスモンはオリンポス十二神ですし、セトモンはエジプトの有名な神・セトの名を持っています。
本来、両デジモンの強さにはかなりの開きがあるのですがクロスウォーズでは以下略。
この二体、実はアニメ初登場。
しかも声は竹本英史氏に大友龍三郎氏と、過去のシリーズで印象を残したキャラの中の人です。
その上あっさりやられたように見えますが、冷静に見ると相当の強者。特にセトモンは合体後とはいえ、
シャウトモンDXを向こうに回して多少なりとも持ち堪えてます。これってかなり凄くないですか。
で、気づけばマルスモンの方だけがウィスパードにさっくり殺られてるわけですが、何故なのでしょう。
これについては、両者の肚の違いってものが原因なんじゃないかと推察しています。
マルスモンの方はデスジェネラル入りする前からの部下で、セトモンは後からの部下ではないでしょうか。
神話系列が違うし、何よりマルスモンだけがアポロモンの意図を知っているかのようなモノローグを出してます。
つまりマルスモンは今でもアポロモンの腹心であり、ゆえにウィスパードのことも知らなかった可能性が大です。
そして事ここに至り、もう誤魔化す必要はないから行きがけの駄賃とばかりに殺されたのだと思います。
セトモンは我が強そうですし、アポロモンのやり方を内心手ぬるいと酷評していそうです。
次に出て来るとしたら、ガチで敵に回る可能性が高いと思いますね。
・トゥルイエモン
ブライトゾーンの住人。獣系であるということ以外、ブライトゾーンとのネタ的関連性は不明です。
これもアニメ初登場のデジモンなんですが、アポロモンが仕掛けた捌きの楔に囚われてる受難の姿でした。
負のエネルギーを塔へ吸い上げて魔殿に送るためですが、それはバグラ軍を欺くためのアポロモンのお勤め。
実際、動けなくなってるだけで意外と元気そうでした。衰弱してしまう前に開放されているものと思われます。
でも出てきていきなりコレとは、ウェンディモンとの差が開く一方です。
まあウェンディモンもこの前ザコとして大量に出てきましたが。
あと、なぜか自慢の兎角鉄爪が見当たりません。没収されたんですかね?
・ユウ&ツワーモン
ここへ来ての乱入。ただし今回はアポロモン=ウィスパードを教唆し、煽りまくっただけです。
次回はダークナイトモンも来るようなので、本格的なバトルはそれからでしょう。
それにしても、ウィスパードを悪と呼んだり…ユウは「悪役」を楽しんでるんですかね?
ゲームであれば悪役路線で行ってみるのも一興、という思考になったとしても不思議じゃありません。
もしこれが遊びなら、彼のやっていることは単に「ごっこ遊び」「RPG」の域を出ないことになります。
だから「悪役は悪役らしく、負けるときはきっちり負けないと」なんて言い出したりする…のかなぁ。
だって「悪が勝つゲーム」もあるんですよ。
★名(迷)セリフ
「僅かながらの償いだ…国民一人を罰するたびに、こうして自ら傷をつけ…自分の力を奪っていた…!
今では、もう右手がほとんど動かん…
あんなことで罪が晴れるとも思わんが…何かせずにはいられなかった…!」(アポロモン)
右腕の傷を尋ねられて。今回は話の都合上、後半に集中しています。
己の無力への嘆きと、罰するほどの罪をおかしてはいない民を苦しめねばならぬ葛藤が彼を苛み、
このような自傷行為に及んだようです。てっきり別人格でも封じてるのかと思ってました。そっちじゃなかったか。
「…わかった、信じよう。おまえの正義ではなく、気高さ……誇りを…!」(キリハ)
ともあれ、アポロモンの文字通り体を張った証明にはさすがにネネも彼も感服したようです。
口で語ることならばいくらでもできる正義より、それを守り抜こうとする誇りにこそ信義を見たのですね。
そんなに派手な場面ではないですが、キリハらしい良いコメントです。直後にギャグ調になるけど。
「しまった…! オレの…オレのせいで…!」(タイキ)
非常に珍しいセリフ。そして非常に珍しい痛恨のミスです。最後の最後に、いちばん大きな試練が待っていました。
しかし、これを乗り越えられるのもまた主役のみ。どのような流れになってゆくのか注視しましょう。
「ああ…! 楽しもうぜぇ…! クククク…!」(ウィスパード)
ユウの呼びかけに応えて。ラストシーンの最後を飾るセリフです。
悪党らしい残忍でゲスいセリフなんですが、なんせ田中氏なんでこんな時でさえダンディーです。
セリフ全部が宣言同然で高らかに語ることも多かったアポロモンとは逆の、抑えた演技もポイントでしょう。
★次回予告
絵がいきなりメッチャ濃いことになってて噴かざるを得ない。
全篇戦いっぱなしってわけでもないようですが、リリスモンやブラストモンも来るので混戦模様になりそうです。
そーいえば、ベルゼブモンはまだリリスモンを討ててないんですよね。やはり決着をつけるんでしょうか。