生か死か、地獄のジェネラル決戦!

 脚本:三条陸 演出・絵コンテ:細田雅弘 作画監督:竹田欣弘
★あらすじ

 アポロニアの塔から奈落の底に落とされたクロスハート。
 通信のきかぬそこは人間の想像した地獄がそのまま具象化したかのような世界、ヘルズフィールドでした。

 奇妙なことに、空っぽの城があります。不審に思う一同の前にユウの立体映像が現れ、挑戦を叩きつけてきました。
 この地獄はゲーム盤、城は連合軍とユウの指揮するバグラ軍双方に拠点として用意されたものだったのです。
 勝利条件は、代表ジェネラルの命。すなわちタイキとユウ、いずれかが死ぬまで戦いは終わらないというのです。
 応えたのはキリハでした。迷いの見えるタイキに代わり、自身が指揮を採るとぶち上げるのですが…

 やがて、東西両軍に分かれての軍団バトルが始まりました。
 緒戦はユウが連合軍側の布陣を完璧に読み切り、圧倒的優勢で戦局の駒を進めてゆきます。
 が、中途でユウやダークナイトモンは違和感をおぼえていました。何かがおかしい、順調に運びすぎている……

 そんな時、突然ユウの城へメイルバードラモンの襲撃がかかります。操っていたのは何とタイキ。
 キリハの立てた作戦は自らがユウのもとへ向かうと見せて囮となり、タイキを城に向かわせるというものでした。
 そして、シャウトモンたちを指揮していたのはネネ。敵の目を欺くため、互いのデジモンを交換していたのです

 絶対の自信をもって立てた戦術を崩され、混乱の中を逃げるユウ。
 ネネのもとへ連れ戻すため、後をメタルグレイモンに任せて後を追うタイキですが、ユウは剣を取り……



★全体印象

 46話です。
 脚本は前回に続いての三条氏。演出は細田氏なので、何度目かの「ガイキング」コンビ。
 作画の竹田氏も一話の時点を考えると、もはや自重という言葉をどっかに置き忘れてきた暴走っぷりを見せてくれます。

 今回のメインは軍団バトル。当初から謳われていたコンセプトに極めて忠実な回といえます。
 タイキたちにとっては不本意な面もある戦いですが、見ているほうから言わせてもらえれば大変面白い仕上がりでした。
 とりわけ秀逸なのは正しく掟破りによる定石の崩し方と、そこからラストへ至るまでの疾走感です。
 登場する多くのメンバーに見せ場が用意されており、極めて密度の高い25分ですね。

 その一方で着地点の見えないアポロモンやユウへの処遇、ベルゼブモン対リリスモンなど次回への引きもいまだ多数。
 この期に及んでもいまだに動かないバグラモンや多分やってくれるだろうデジタルワールドと人間界の根幹エピソード、
 それにD-5の全貌と他にもネタは残っているのですが、そこにどう繋げてゆくかも注目点ですね。
 終盤は人間界になだれこんでいっても不思議じゃないかもしれません。



★各キャラ&みどころ


・タイキ

 最初にまず頭を下げるところから入りましたが、貢献度が高すぎるのであっさりスルーされていました。
 キリハですら、事実上は単に発破をかけただけに過ぎません。日頃の行いがものを言ったといえます。
 やらかしまくってる人でも仲間に加えてきた連合軍なので、この程度は十二分にフォローできるレベルですかね。

 とはいえ、彼が迷っていると連合軍全体の士気に関わるのは確か。
 キャニオンランドの時点でほぼ一枚岩となったのがやはり大きいわけです。それでも仲間が支えてくれるので。
 まさかああ来るとは思わなかったのでビックリしましたけど。しかもキリハの作戦で。

 ですが、事態が収束したわけではありません。
 ユウは抵抗を続けているしブラフを採用した以上、そう長く持ち堪えられるものでもないでしょう。
 すでにアポロモンとセトモンも城へ向かっており、一分一秒を争う事態。
 その上ユウを殺すのではなく、ゲームを放棄させなければなりません。実はまだ無理ゲー段階です。

 ですが、そういう戦い方をするのが彼らクロスハート。
 最も困難なイバラの道を進み、乗り切ってきた仲間です。その団結はいまや鋼へと至りました。
 タイキ独りではできなかったことですが、彼抜きで成し遂げられはしなかったでしょう。


・キリハ

 また指揮権を主張してる…大丈夫なのか? と思わせておいての大胆な戦略を披露してくれます。

 しかも今までの負けパターンを逆手に取った形なので、デジモン交換と合わせて裏をかいてくれました。
 少なくとも、この男が大将首を他に譲るなどつい先日までは考えられなかったことなのです。
 ともに戦うという決意をした分、より柔軟な戦術が立てられるようになったといえるでしょう。

 彼の役目はもうひとつあり、アポロモンやユウとの戦いを躊躇うタイキへの激励に似た叱咤がそれ。
 二、三発ブン殴らなければわからないという荒っぽい意見も、タイキへの遠慮のない言葉も
 今の連合軍にあってなお、彼以上にそれを口にできるものはいないと言えます。
 太一に対するヤマトのように、良い意味での存在感が大きくなりました。


・ネネ

 しばらく控えめでしたが、こちらもじわじわと存在感を増してきました。
 なにしろ事がユウ絡みなので、少しでも目立ちはじめてなかったら詐欺みたいなもんなんですが。

 ただし、作戦においてはユウに直接干渉する役ではありません。
 そのかわり、シャウトモンX5のデジクロスと指揮を任されるという大役を担ってます。
 本人が後方にいるのは「彼女だけ出てきて、タイキがいない」というような違和感を減らすためでしょうか。
 両方出てこなければ、向こうは両方とも城にいると思い込んでくれますからね。事実その通りでした。

 というか、X5にはスパロウモンが入っているのですからデジクロスできても不思議じゃないんですね。
 血の池に沈められたとき何故かスパロウモンが反応したのは、それを示唆する現象だったのでしょう。

 作画では、八島氏など「特定の誰かに注力して描かない」人の後なので余計に竹田氏の暴走が目立ちますね。
 富田氏に触発されたのかなんなのか、とうとう胸だけじゃなくて腋まで露骨に意識して描きはじめました。
 誰か作画陣を止めてください。今さら遅いけど。


・連合軍の仲間たち

 今回はバトル主体なので、戦闘要員としての側面が高い仕上がり。
 目に見える担当としてはX5とベルゼブモン、メルヴァモンがネネで、タイキがグレイモンとメイルバードラモン。
 そしてキリハがサイバードラモンです。Xローダーの中身が本当にまるごと入れ替わってるかどうかは不明。

 互いのデジモンを交換してる状態だと、充分なパフォーマンスを発揮できないようですね。
 スパロボ的に言えば基本能力は同じだけど、そこに懸かる補正が弱くなるといったところでしょうか。
 たとえばマジンガーを甲児が使う場合とさやかが使う場合で、攻撃力や防御力に差が出るような。
 ダークナイトモン的には「あれ? なんかダメージ通りやすくね?」「あれ? こっちのダメージが3割も低い…
 と違和感を肌で受けたのかもしれません。多分そうだ。

 そのような具合ですから、連合軍的にはあの布陣がたぶんベストだったのでしょう。
 X5BではなくX5なのはそこまでは無理だったというより、単純に手数の問題。数で負けている以上、固めるよりも
 ある程度バラけて多方向をフォローした方がいいという判断ですね。長丁場ならなおさら。
 バランス的にはX4Bとジェットメルヴァモンが最良なのでしょうけど、やっぱり手数が足りなくなる。

 ならばX5の脇をメルヴァモンとベルゼブモンで固めるのが最も良い、という判断は間違ってないと思います。
 ユウもそう読んでましたし、同じ状況ならタイキでもそうするということなのかもしれません。
 ただ、この布陣だと一番ワリを食うのはベルゼブモンということになりますが…計らずも、か。
 さすがに基本能力がX5と同等とは思えない(たぶんX3レベル)ので、補正が弱いとキツそうですね。

 とまあ色々と並べてはきましたが、要はベルゼブモンとリリスモンをぶつけるための方便でもあるのでしょう。
 彼とメルヴァモンのコンビであれば、戦力的にもそれほど不足とは思えません。
 漫画版ならいざ知らず、アニメ版のリリスモンは本人の戦闘力が発揮されたケースがほとんど無く
 強制デジクロス状態になってやっとまともに戦うようになったぐらいですし、それも今や圧倒的じゃないですから。

 ここまで書いてきて、クロウォはむしろSRPGを出しても良かったのではと思い始めました。
 自軍の戦力が相当偏ったことになりそうですし、ターゲット的に受けが悪いでしょうから厳しそうですが。

 …でもアノード&カソードテイマーはSRPGっぽかったような……
 いや、あの時とは状況が違うから一概には言えませんか。タッグテイマーズからはシステムが変わってますし。


・ユウ

 ついに直接対決の時を迎えました。
 が、その天才的戦術で意気揚々と連合軍を迎え撃つものの、一話で崩されるという憂き目に遭っています。
 いったんは拍子抜けしたんですが、考えてみればこんなものかなと思わなくもなく。

 どこまで正気なのかわかりませんが、彼はやはりジェネラル最年少だけあってまだ幼さが強く残っているのです。
 それに読みは鋭いながら、いささか戦いを杓子定規的に捉えすぎています。もっと言えば、連合軍の進軍を
 能力や戦術でしか判断していません。今回の結果をもたらしたものが何なのか、これでは予想できるわけがない。
 タイキは確かに優れたジェネラルですが、彼だけに注目しすぎたのも敗因のひとつでしょう。

 ぶっちゃけ、キリハとネネを嘗めてんだと思います。ネネはともかく、キリハの今までの猪武者ぶりを知っていれば
 そう判断するのも仕方ないところですが…ここへ来て、ある種壮大な釣りに引っ掛かったようなものですね。
 私だって、三条脚本のキリハはやればできる男だと忘れかけてたぐらいですから…すまん、蒼沼。

 わからないのは、ダークナイトモンともあろう者がなぜ彼のご機嫌を取っているのか、ということです。
 まさか、その戦術眼だけを買って味方に引き入れたわけじゃありますまい。
 ダークネスローダーを作ったのもユウを誘ったついでではなく、明らかに最初から狙ってやったことです。

 だから他にも何か狙いがあってしかるべきだと思うんですが…やっぱりD-5絡みなんでしょうか。
 あるいはもう喚んだ目的は果たしたけど、適当におだてて指揮官面をさせてるだけなのかな。
 邪険にして、敵側にジェネラルを増やすメリットは無いわけですから。


・ダークナイトモン

 デスジェネラル篇では意外と影の薄い魔殿提督様。
 ジェネラル補正が弱いとはいえX5を圧倒するなど、その戦闘力はやはり高いものがあります。
 反面その本調子じゃないX5に足止めされてたりするので、実はそうでもないのか? と思ったりも。

 上で書いた通り、まだユウを側に置いてる目的が見えません。
 どう転んでも外道っぷりを強調する結果しか予想できませんけど。ユウを切るのは彼の役でしょうし。
 少なくともツワーモンじゃない。それは今回でハッキリしました。

 そもそもこの人、まだ最終目的が読めないんですよね。
 絶対バグラモンに対して下克上を企てていると思っていたんですが、今のところそっちでは動いてませんし。
 それにもし仮にそうだとしても、どうやってバグラモンへ反旗を翻すのでしょうか。うーむ。

 ただ漫画版はともかく、アニメ版のバグラモンはラスボス的存在感に欠けるところがあります。
 ダークナイトモンがバグラモンの体を乗っ取り、真ラスボスとなる展開が自然な気はしてきましたね。


・ツワーモン

 ここへ来て、急速にフラグを立てはじめています。
 極悪非道なダークナイトモン旗下でありながら、ちゃんと移すだけの情を持っていたんですね。
 ユウをどう思っているかもこれでハッキリしました。彼なりに可愛がっていたようで。
 と同時に、ユウの我侭に振り回されるケースもあったことでしょう。

 彼自身は邪悪というより、忍者らしく非情に徹しているだけなのかもしれません。
 バグラ軍がデジタルワールドを平定すると見越し、ダークナイトモンとバグラモンのパイプ役を申し出たとか。
 姿や能力からみてシノビゾーン出身と考えるのが妥当なのでしょうけど、ハッキリしたことはわかりませんね。

 ともあれ、彼の役割はどうやら決まってきました。
 ユウを庇って命を落とし、この戦いがゲームではないと理解させるための役です。もうそれしか無い。
 いや、彼自身は最悪バグラモンに復活させてもらえるかもしれませんが、人間であるユウはそうはいきません。

 だから心配なのかもしれません。死んだらそれっきりなのに、本当にこのままでいいのかと。
 本当に何も知らないまま、タイキを殺させていいのかと。
 死と隣り合わせだったであろう彼にとっては、どうもそこが引っ掛かるのかもしれませんね。

 そーいえば、チューチューモンとはやっぱり別個体っぽいですね。
 ユウに情を移しつつあるツワーモンに警告したりしてたので、こちらは割り切っているか
 何かの仕込みかもしれません。


・リリスモン

 ヘルズフィールドで強力な地形効果を手に入れ、テンションまでモリモリと上昇させての出陣。
 心なしかあちこち増量してる気もしますが、これは作画のせいでしょう。

 自身が前線に出張ってきたことで、ベルゼブモンとの直接対決を迎えるチャンスが生まれました。
 すっかりお笑いに転向しているので忘れがちですが、彼女は女神の戦士団の仇。本来は邪悪で残忍な女です。
 その悪党っぷりはタクティモンやブラストモンと比べても際立ってました。そのはずです。
 本人のキャラ幅が広すぎるんで、いまいち憎めないんですけどね。

 どうやら、そろそろ退場のときが近いのかもしれません。
 せめて最後ぐらいは、本来の悪辣を取り戻して逝ってほしいものです。


・ブラストモン

 なにやら決戦ムードにトラウマがある模様。無理もありません。
 大一番にしくじって、文字通りここまで身を持ち崩したんですから当然といえます。

 ところで彼、人気があるから死ぬことまではなかったと噂に聞いたことがあります。
 もしそれが本当で、且つそーゆー方針がまだ生きているなら、しぶとく生き残りそうな気もしますね。
 なんせ今や、生きてても死んでても大筋には関係ないわけですし。

 まあ、生暖かく見守るとしましょう。


・バグラ軍のみなさん

 あ、やっぱりセトモンは敵側に廻りましたか。
 ウィスパードを肯定するあたり、アポロモンにはやはり不満があったようですね。
 デスジェネラルになってからの部下という推測は、たぶん当たりだ。アポロモンの真意も知らなかったでしょう。
 弱くはないのでそれなりに頑張りそうですが、こうなると流れの中であっさり倒されそうです。

 そのウィスパードはというと、ユウが出張ったのですっかり埋もれてます。
 タイキたちもユウばっかり気にかけはじめたんで、このまま事情スルーで倒されそうな気さえしてきました。
 48話のタイトルを考えると「穴埋め」の形で仲間入りする可能性も少しありますけど…どうなるかな。
 上ではああ書きましたが、さすがに何も無いまま退場するとも思えませんし。

 他、グリズモンとドーベルモンが引き続き出演しているのに加えてレッパモンとゴートモンの姿が見えます。
 それにユウの直衛として、ゴリモンの姿も。上二種はともかく、これはユウが連れてきた子飼いでしょう。
 個々は大した事はありませんが、軍団で来られるとやはり無視はできません。戦いは数だよ、兄貴。



★名(迷)セリフ


「ふん…そういう事だ。お前の多少の甘さなど、計算のうちさ」(キリハ)

 かなりの意訳が必要ですが「まあ気にすんな」という事だそうです。翻訳担当はネネ。
 自分がちょっと前にどでかい失敗をしてますんで、あんまり責められた義理でもないでしょうし。
 それにタイキの失敗は彼が彼であるゆえのことですから、その意味ではブレていませんね。


「ここは…デジタルワールドは夢の国だよ!
 ここなら何をしても、誰も死なない…! 傷つかない…! 何をしてもいいんだ!」(ユウ)


 知らぬが華、無知は罪といろんな言葉がありますが、とにかく背筋の寒くなるセリフです。
 誰も傷つかないと思い込んでいたら、どんなに優しい人だろうといくらでも残酷になれるというものです。
 傷つけるということに極端に敏感っぽい彼にとっては、なおさらのことでしょう。

 その一方で、あまりの現実感のなさに違和感をおぼえたりもしますが。
 罪の意識をすっかりマヒさせているせいか、細かいことが目に入らなくなっているのかな。思い込みって怖い。


「戦えタイキ! ユウを…そしてお前自身の迷いを、打ち払ってこい!」(キリハ)

 グレイモンとメイルバードラモンをタイキに託し、囮を買って出て。
 敵の裏をかくと同時に、これはタイキへの荒療治でもあったようです。良くも悪くも、今タイキにこんなことを言えるのは
 確かにキリハぐらいでしょう。ライバルの面目躍如といえる、よい檄ですね。
 何かこの流れだと、アポロモンもフツーに倒しちゃいそうです。他に手があるわけじゃないけど。


「オレでも行けるか、二人とも!?」(タイキ)
「ああ、当然だ」(メイルバードラモン)
「キリハの信じた男だからな…!」(グレイモン)


 熱いやり取りですが、お前らホントにキリハが良ければなんでもいいんだなぁと思うことしきり。
 なんだかんだで、やっぱり蒼沼さんは大人気のようです。


「オレへのお返しとやらがまだだぞ、リリスモンっ!!」(ベルゼブモン)

 流れに乗ってこちらも熱さを発揮しています。
 あらためて予告を見たら次回で決着がつきそうな雰囲気なので、注目したいところですね。



★次回予告

 まだまだ混戦を極める模様ですが、いよいよユウとの決着のようです。
 実はバグラ軍有利に変わりはないので、こっからが正念場でしょう。X7が出るまでの辛抱というところ?