タイキの決断! 最強のアポロモンを越えろ!

 脚本:三条陸 演出:三塚雅人 絵コンテ:えんどうてつや 作画監督:高橋晃
★あらすじ

 ベルゼブモンという犠牲を払いながらも、ブライトランドに戻ってきたタイキたち。
 連合軍やダークナイトモン、ユウに至るまでを始末したと思い込んでいるウィスパードの隙を衝き、
 一気に反撃の狼煙を上げました。総崩れとなるブライトランド勢。

 驚くウィスパードでしたが、アポロモンの姿を盾に攻撃を仕掛けてきます。
 しかし、もはやタイキに迷いはありませんでした。アポロモンとウィスパードを切り離す術がない以上、
 勇者の魂をこれ以上悪の思い通りにされぬため、手を下す決意と覚悟を固めてきたのです。
 それは、ユウとの戦いを経て得たものでした。

 が、ウィスパードは最強のデスジェネラル。X7の動きを封じ、巨大な黒い太陽球をもって国ごと消し去ろうとします。
 なんとか縛めから抜けて立ち向かうX7でしたが、黒陽球のあまりの大きさに押されそうになります。
 その時、ウィスパードの動かぬ右腕が残る左腕を抑えつけました。アポロモンの意志が肉体の支配を超えたのです。
 一瞬の勝機。セブンビクトライズマキシマムが決まり、ついに最後のデスジェネラルは敗れました。
 最後に勝機を取り戻したアポロモンは、感謝と激励を残して消えてゆきます。あとは大魔殿のみ。

 その頃、ユウの側にいたダメモンもまた力尽きて消滅していました。友の死という現実を突きつけられ、ユウは……



★全体印象

 49話です。最終的には01と同じ話数になるのかな?
 脚本はまたまた三条氏。五連続となるノンストップです。このまま最後まで突っ走る予定なのでしょうか?
 作画と演出も安定の顔ぶれ。富田氏は相変わらず、隙あらばネネを描き込んできます。

 お話のほうは後始末というか、やや消化試合めいた内容。ある意味予想通りです。
 45話の裏人格登場からすぐに畳み掛けるならともかく、間にユウとの戦いやベルゼブモン、リリスモンらの退場など
 波乱の展開が挟まった後なので、そっちにかまけていて放置されていたようにも見えますし。
 タイキがアポロモンを倒すであろうことも、予告を見るまでもなく予想はできていました。

 ただ、あれらの流れが無いままだったらタイキの決意が軽いものになってしまっていた恐れもまた多分。
 ユウとの戦いで相手のためを思うなら鬼になることも必要だということ、そしてベルゼブモンの死で
 生命を守るだけが救いではないということを知ったのでしょう。
 ブライトランドのお話はタイキにとって間違いなく最大最後の試練(少なくとも、その一つ)であり、
 アポロモンはその発端と結果だったのです。

 これで残るは大魔殿のみなんですが、9月いっぱいまでやるんだとしたら後5回くらいあります。
 まあ、ラスボス周りとの対決に使うのには充分な期間でしょう。



★各キャラ&みどころ

・タイキ

 考えてみれば、彼の「ほっとけない」は常に相手の命を救うこととセットでした。
 シャウトモンに始まりナイトモン、ネネ、キリハと。彼に命を救われた者は多数に及びます。
 まず命を救い、ともに戦おうと手を差し伸べるのが彼のやり方だったのです。

 それは、もしかすると過去に同級生の生命の危機を見逃した悔恨によるものだったのかもしれません。
 命を守ってあげられなければ救ったことにはならないと、どこかで思い込んでいた可能性があります。
 それ自体は間違った考え方とはいえませんし、今でもそれは変わらないと思います。

 しかし戦いの苛烈、敵の悪辣が極まり、どうにもならない事態が起きたのもブライトランド篇でした。
 「誰かを救う=生命を救う」という考えは、この段階で行き詰まったといえます。
 迷いが生まれたのは、命を救う手だてがないならどうすればいいのか? その答えを出せなかったからでしょう。

 でも、だからといって手を出さずウィスパードに倒されたとして、それでアポロモンが救われたでしょうか。
 いえ、決して救われはしないでしょう。裏人格とはいえ、希望を摘んだ我が身を呪い、永久に苦しむはずです。
 自分を倒してくれなかったタイキを恨みさえするかもしれません。その上、自殺することもできないのです。
 そして遠からず、ブライトランドの住人はウィスパードに皆殺しにされるでしょう。今回そうなりかけたように。

 パラドックスですが、アポロモンの命を守ることは仲間の命と民の命、そしてアポロモンの生きざまを殺すことです。
 逆に、アポロモンを倒せば彼の誇りだけは守ることができ、仲間も民も守ることができるのです。
 タイキにはその覚悟がない…というより、上で書いたとおり命を救う事を第一に考えすぎていたのかもしれません。
 生命を救うことが誰かの生き方を否定することになるなど、そうそう至れる境地ではありませんが。

 最後の後押しをしてくれたのは、ベルゼブモンでした。
 彼は確かに死んでしまいましたが、同時に自分の生き方を満足のゆく形で貫くことができたのです。
 バグラ軍にいた時のままでもしリリスモンを暗殺したとして、それは女神の戦士団に誇れる生き方だったでしょうか。
 たとえ生きながらえたとしても、孤独の中で一生ジレンマを背負ってゆかねばならなかったかもしれません。

 タイキが、ベルゼブモンの生き方を変えたのです。
 言葉は少なくとも信頼し合い、共に邁進できる新しい仲間をくれたのです。感謝こそすれ、恨んでなどいないでしょう。
 逆に教えてくれたのです。俺は生きたと。信じる道をまっとうすることもまた、生きることなのだと。

 だからタイキは悟ったのです。
 勇者アポロモンの生きざまに応えてやるためには、何を放っておいてはいけないのかということを。
 ワイズモンの言葉は単なる確認にすぎません。まあ、可能性があったら一度だけ賭けてみたかもしれませんけど。


・キリハ&ネネ

 前回はベルゼブモン、今回はタイキのウェイトが強い回なので、さすがに二人とも影が薄い状態が続いています。
 が、それもここまでに培ったものがあるゆえ。いろいろ見なかったことにしたい過程もありましたけど。
 そしてネネというか富田作画が事あるごとに腋をアピールします。なんかもう感覚が麻痺してきました。


・連合軍の仲間たち

 悲しみながらも立ち上がるメルヴァモン、そんなメルヴァモンを励ましたシャウトモン、ドルルモンの信頼、
 弱者を苦しめる誇りなき強さに義憤するメタルグレイモン、最小限の力でX7を救ったドラコモン、
 キュートモンの後方支援に声援と、全員の一致団結が描かれます。かくて、クロスハート連合軍の結束は完成に至りました。
 残酷な宣言をしながらも、情あるコメントを残したワイズモンも印象的です。

 久々にリリモンやジジモン、ドンドコモン、チビカメモンの姿も見え、大勢を目立たせようという配慮がうかがえました。
 姿は見えませんでしたが、たぶんナイトモンリボルモン、バステモンたちも民の救出に奔走していたと思います。

 ってか、うっかり流しそうになりましたけどバリスタモンがアルティメットスピーカーを出してますね。
 さすがにオレーグモンの声を媒介にしていたときほどの威力はないみたいですけど。


・アポロモン

 たぶん、タイキがアポロニアの塔に再突入してきたのを知った時から何となくわかっていたのでしょう。
 彼は勇者であり、雰囲気的にもタイキより老成しています。
 ヘルズフィールドの戦いで何を掴んできたのか、目を見ただけで「きっとそうだ」と思ったのかもしれません。
 確証を体で受け止めるまでは、それでも内心ヒヤヒヤものだったかもしれませんけど。

 もちろん、喜んで死んでいったとは思いません。できることなら共に戦いたかったというのが、きっと本音です。
 デスジェネラルまで任せられた彼がクロスハート連合軍に加わっていれば、まさに百人力だったでしょうしね。
 けれどタイキも、視聴者も他に手が無いと知っており、そのための段階も踏んでいる以上、
 ああするのが結局は最良なのでしょう。その勇者の誇りを全うさせることだけが。

 最後の瞬間にタイキと通じ合い、意志の確認をしあったカットが心に残ります。
 そう。たとえ死すとも、彼はすでにクロスハート連合軍の一員だったのです。ウィスパードをその全身全霊で
 内側から抑えて隙を作り、タイキたちに勝利の道を拓く熱い絆の仲間として。

 死に瀕した顔は勇気ある戦士として、何より仲間として看取ってくれたタイキへの感謝と満足に占められていました。
 彼はその命を賭け、バグラ軍からデジタルワールドを救う希望を守り抜いたのです。かつてのレオモンのように。
 勇気とは、希望を後に託してこそ意味を持つのでしょう。


・ウィスパード

 誇りたかきアポロモンを際立たせるがごとく、ひたすらに残忍且つ卑劣な戦いを繰り広げます。
 その上最大の技を出せば、X7でも全身全霊をもってせねば打ち倒せないほど強いのですから始末に負えません。
 アポロモンの手助けがなかったら危なかったでしょう。ヘルズフィールドでは力を抑えていたようですね。

 でもすでに書いた通り、彼が悪党であればあるほどアポロモンの高潔さが強調される構造になっています。
 ウィスパード単体はそんなに掘り下げられていませんが、お話の流れを語る上ではなくてはならない存在。
 デスジェネラルとしてのアポロモンはウィスパードと表裏一体、切っても切れない関係なのです。
 まさに光をより輝かせるための闇だったといえるでしょう。

 まあどのみち、たとえ首尾よくタイキたちを始末できていたとしても彼の末路は悲惨なものだったでしょうね。
 少なくとも、バグラモンに隷属する以外の生き方を許されてはいないと思います。


・バグラ軍のみなさん

 アポロモンの命令にもウィスパードの命令にも従い、ただ唯々諾々と動くだけの者たち。
 僅かにマルスモンが心ある男に見えましたが、早々にウィスパードによって始末されてしまっています。
 もはや、そこには絆も誇りもありません。命令を聞くだけのロボットと戦っているのと変わりがない。
 そして罪なき民が危ない以上、連合軍にも情けをかけている余裕などないのです。


・ブライトランドのみなさん

 トゥルイエモンに加えてミケモンの姿があります。アニメ初登場。
 出ただけといえばそれまでですが、後半ではクロスハートへ声援を送る場面がありました。
 彼らにとってのアポロモンが悪党でしかないという事実には、一抹の寂しさをおぼえます。


・ユウ

 より幼い頃にダメモンやスカルナイトモンに出逢い、デジタルワールドで会う約束をしていた事実が明かされます。
 そしてやはり、肉親の死が彼の心に影を落としていたようですね。両親ではなく祖母でしたけど。

 誰も死なないでほしいのに…という想いが、そのときから少しずつ、誰にも気づかれないまま歪んでいったのでしょうか。
 けれども結局、デジタルワールドの出来事も「ちょっと違う現実」でした。死から逃れられてはいなかった。
 ダメモンの死が、それをもう一度情け容赦なく彼に突きつけることになります。

 タイキがモノローグしていた通り、己の弱さに目を背けていたキリハにはユウのことが解ったのでしょう。
 同時に、タイキに唯一欠けていたものも見抜いたのかもしれません。


・ダメモン

 今回でこちらも退場です。数話で急激にキャラを立てつつ、冷徹な印象を引っくり返しての顛末でした。
 消える直前にユウを騙していたことを詫び、辛い現実から守るためだったと明かしています。

 もっとも、事ここに至ってはそれが間違いだったと悟ったのかもしれません。でなきゃ謝らない。
 どんなに辛くても、どんなに悲しくても、乗り越えて生きていかなければいけないのが現実というものです。
 ユウよりも遥かに数多くの死を見てきたであろう彼に、そのことがわからなかったはずはありません。

 いや、だからこそ…なのでしょうか。
 だからこそ、ユウがその現実に堪えられないと思い…何も言えなかったのかもしれません。
 戦乱のデジタルワールドはユウのいた日本より、ずっと死が身近に存在していたわけですし。

 結局、彼はユウの心を守ることができず…それどころか、やり方が間違っていたことも恐らく悟り、
 詫びながら後悔の中へ消えてゆきました。アポロモンとの対比が窺えます。
 そして、あの状況でダメモン=ツワーモンに撤退ではなく攻撃を指示し、死に近づけたのはユウなのです。
 果たして、ユウは今後どうするのでしょう?


・チューチューモン

 こちらの死は確認されていません。
 それどころか仮にもダメモンの相方だというのに、その死に何ら心を動かした様子はありませんでした。
 どうやらこちらは本物の悪党のようです。というか、回想シーンではスカルナイトモンの側にいますね。
 残ったということは、まだ何か役割があるのでしょう。


・ダークナイトモン

 たぶんユウの心を守るためではなく、そのほうが都合がいいからウソをついていただけの人。
 いつの間にかダークネスローダーを持って行ったことから、ダメモンのことももう見捨てているようですね。
 それでもユウを側に置いているということは、やっぱり他に何か理由があるのでしょう。
 回想シーンでのやたら優しげな語り口が、むしろ胡散臭さを煽ります。

 ユウに今後見せ場があるとすれば、ネネと共にこのダークナイトモンと対峙する展開でしょうか。
 パートナーはもういませんが、ダークネスローダーを分捕って浄化するぐらいはやってくれるかもしれません。
 さすがに、このまま終わりはしないでしょうから。

 さて、これでラスボスはダークナイトモンとバグラモン、いずれかに絞られました。
 前者はたぶん下克上する気まんまんなので、その結果しだいでしょう。



★名(迷)セリフ


「…残念だ」(ワイズモン)

 探求者として力が及ばなかった無念とアポロモンの命を救えそうにない無念、そしてタイキへの気持ちが同居した一言に思えます。
 あくまでも声色はクールですが、抑え切れぬ何かを感じました。


「…答えはひとつだ。
 ユウと戦った時から決めていた…そして、ベルゼブモンの最期を見て…さらに決意は固まった!
 ……行こう!」(タイキ)


 シャウトモンも、キリハも、ネネも、そして視聴者も、もうタイキの答えを知っています。
 ゆえに、言葉は弄されませんでした。簡単に言葉にして良いほど、軽い決意でも覚悟でもありませんでした。
 溜めてウィスパードへ一気にぶつけるという、演出的意味合いもあるのでしょう。

 静かに合わされるクロスローダーと見上げるシャウトモンの横顔、揺れるタイキの瞳が印象的です。
 この時からすでに、タイキの心は猛烈に痛んでいたのでしょう。ですが、それを越えねばならない時が来たのです。


「…なぁ、メルヴァモンの姐さんよ。俺ぁ…その……こういう時にカッコいいこと言うの、苦手なんだけどさ……
 オレたちも全員、あいつが…ベルゼブモンが大好きだった。
 二度とこんな悲しいことが起こらない国を作ってみせる。絶対だっ! だから笑ってくれよ!
 それが一番ベルゼブモンの喜ぶことだからさ…!」(シャウトモン)


 ベルゼブモンの羽根を見つめ、悲しみにくれていたメルヴァモンに。

 最初は敵で、得体の知れないヤツだと思っていたけれど、本当は優しい、熱い心を持っていて、仲間を求めていた。
 タイキは間違ってなかった。ちょっと無口だけどクロスハートの仲間に相応しい、頼りになるヤツだった。
 それがきっと、シャウトモンのベルゼブモン評でしょう。個人的にやり取りしたこともありますしね。

 それに彼は、メルヴァモンが急速にベルゼブモンへ惹かれていたことにも気づいていました。
 ちょっぴり照れていたのは、事がたぶん単なる仲間への気持ちからくるものではないと慮ってのことでしょうね。


「ちっこいくせに、でっかい漢だな…」(メルヴァモン)
「まぁな。そこだけが取り柄だ」(ドルルモン)


 シャウトモンの頼みを受け入れた直後のやり取り。
 ドルルモンの表情に合わぬ斜に構えたコメントが、かえって全幅の信頼を窺わせます。


「悪の王に、神を名乗る資格などないっ!」(キリハ)

 バグラ軍の暴虐に反撃のひと矢を撃ち込んで。
 熱いながらタイキとは違う意味で芝居がかっており、今の彼にふさわしいセリフです。
 絶対的にはそんなに目立ってない彼ですが、これや後に紹介するセリフだけでも収穫といえるでしょうね。


「不愉快なヤツらめ! こういう外道を見ると血が燃えるぞ!」(メタルグレイモン)

 メタルグレイモンも熱い熱い。
 連合軍に合流する前でも、彼らブルーフレアは決して敗者や弱者に鞭は打ちませんでした。強者の誇りです。
 力も罪も、体の自由さえもない者たちを殺すことは彼らのもっとも嫌う外道でしょう。
 誇りなき力に意味などないと、身を以て知っているのですから。


「アポロモンを倒してやれなかったのは、オレの甘さ…弱さのせいだ!
 オレは、アポロモンのためにも…彼を倒すつらさに耐えなきゃいけなかったんだっ!
 ヘルズフィールドでユウと戦い、オレはそれに気づいた…!
 オレは耐える! そして戦うっ!!」(タイキ)


 甘さと弱さ。ユウは自分が傷つくのを恐れるあまり、現実から目をそむけて戦っていました。
 自分にもどこかにユウと同じところがなかっただろうか。タイキはそう気づいたのです。
 タイキの考え方からすれば、仲間になれるはずのアポロモンを討たねばならぬのは痛恨の現実でしょう。

 しかし、彼は理解したのかもしれません。辛いのは、一番苦しいのは他ならぬアポロモンではないのかと。
 その苦しみを超えてまで、彼は誇りを守ろうとしている。なのにオレは自分が傷つきたくないがために、
 彼の誇りまで傷つけようとしている。それを防ぐため、彼にしてやれる事は、もう一つしかないのだと。

 それがきっと、ネネに言ったような「痛みを分かち合う」ことなのかもしれませんね。
 命だけではなく心を、誇りを守り、希望をつなげてゆく。それが彼のなすべきことなのでしょう。


「掴んだな、タイキ! 優しさだけでなく、厳しさも加わった本当の強さというものを!」(キリハ)

 強さと愛、両方が揃っていなければならないと彼に教えてくれたのは、亡きデッカードラモンとタイキでした。
 そのとき、彼にも見えたのでしょう。伝えたいと思ったのでしょう。タイキに足りないものを。彼なりのやり方で。
 そう、強さは愛であり、愛は強さであると。そして愛とは、ただ守るために振るうものではないということを。


「天下を取ったはずなのに……ま、まいったぜ…!」(ウィスパード)

 ウィスパード最期の一言。三日天下どころか三時間天下、それも勘違いという三重オチでした。
 幸いなことは、死に方が思ったほど不様ではなかったことでしょうか。弱くもなかったし。
 先に消えたのは、基本があくまでもアポロモンだったから…ですかね。


「いいんだ……君さえ憶えていてくれれば。本当に…ありがとう……」(アポロモン)

 民は悪の王が倒れたと思って喜んでおり、アポロモンの本当の心を知る者はないとタイキに言われて。
 最期のセリフではありませんが、採り上げるならこっちかなと。
 たとえ大勢に感謝されなくても、勇者がいたことをひとりでも憶えていてくれるならそれで充分。
 見返りをただ笑顔にのみ求めていた太陽の戦士は、こうして苦しみから開放されたのです。

 それだけではなく、ちゃんとD-5について知る限りの情報を提供して逝ってくれました。敬礼。
 次回に再生怪人化されるみたいですが、魂はもうそこにはいないでしょうね。


「ユウ様…いや、ユウ……ごめんね、ウソついて…
 でもそれは、君を守るためだった……君を………守りたかった…! 残酷な、現実から…!
 でも…守りきれなかった……ごめんね…ユウ……!
 ……これからは…一人で戦うんだ……! 負けちゃ…ダメ……ダメ…ね…!」(ダメモン)


 こちらはダメモンの今際。
 最後のフレーズからも、自分たちの嘘がユウを守るどころか、苦しめることになった現実を噛み締め、
 ひたすら詫びと後悔を並べての退場でした。どちらもX7にやられた結果なのに、アポロモンとはえらい差です。
 けれど、彼は信じて逝ったのかもしれません。ユウがきっと死の待つ現実を乗り越え、強くなることを。
 それだけの底力がある子だと。命令ではなく、自分の意志で守ろうと思えた子なのだからと。

 ユウは非情の中に生きてきたであろう彼が、最後に掴んだ大切なもの……守りたい対象だったのかもしれません。
 守るためなら命を賭けてもいいと、理屈でなくそう思えた初めての存在だったのではないでしょうか。

 ダメモンを事実上見捨てたことで、ユウとダークナイトモンの確執は決定的なものとなりそうな気がします。



★次回予告

 再生怪人にして合体という、デジモンシリーズ終盤としては極めてベタな展開になるようです。
 個々に自意識はなさそうですし、あんまり強くもなさそうですが…合体するとなると話は別ですね。
 ラストカットでシャウトモンの目から光が失われているのは……まさか!?