よみがえる! 七人のデスジェネラル総登場!!

 脚本:米村正二 演出:岩井隆央 絵コンテ・作画監督:八島喜孝
★あらすじ

 ついに最後の関門、バグラ大魔殿へとやってきたタイキたち。
 ところが、城があまりにも静かすぎます。実は現れたバグラモンも含め、全て偽物。ダークナイトモンの策略でした。

 悪辣を新たにする暗黒騎士へ対決姿勢を強める連合軍でしたが、敵の真の策はこれからでした。
 負のエネルギーをコードクラウンに集め、変質させて作りあげたダークストーン。これを使うことによって、
 何と七人のデスジェネラルが復活したのです!

 しかし、個性豊かだったはずの将軍たちは人形同然となっていました。心と呼ぶべきものがここになく、
 魂の牢獄・プリズンランドに封じられているのです。あまりにも非道なやり方に激怒し、X7で立ち向うタイキたち。
 これに対し、ダークナイトモンはデスジェネラルたちを強制デジクロスさせてグランドジェネラモンとします。
 さしものX7も不覚を取り、その上シャウトモンがダークストーンによって心を封じられてしまいました。
 続けてドルルモン、バリスタモンも同様の憂き目に遭ってしまいます。

 一時撤退の後、タイキはシャウトモンらを救うためにプリズンランド突入を決意。
 自ら心を奪われることでこれを成し遂げるのですが、かの地にはデスジェネラルたちの心も…
 そこへシャウトモン、バリスタモン、ドルルモンが合流。魂と魂のバトルが始まろうとしていました。



★全体印象

 50話です。ついに大台突入。放映期間そのものはとっくに最長ですね。
 本来なら60話近くいってて不思議じゃないので、いかに休止が多かったかわかろうというもの。

 内容的には45話からこっちの波乱に次ぐ波乱に比べ、かなりトーンダウンしてる印象。
 デスジェネラル復活やグランドジェネラモンの登場、シャウトモン・タイキ戦闘不能という大ピンチに関わらず、
 最終決戦としては結局オードブルの域を出ない流れと感じてしまいます。しかもまだ一番美味しいところに箸が行ってない。

 だからというわけじゃないんでしょうが、作画や演出にもこれといって語るべきところはなかったりします。
 お話も大きな穴こそ無いものの、二度語られるアレ以外は心に引っ掛かるセリフもあまりありませんでした。
 決戦三部作となりそうな52話以降や次回と比べた時、たぶん大魔殿篇では最もインパクトの薄い回となるでしょう。
 ここから段階的に盛り上げてゆくのなら、そのための最初のステップとしての役割ですね。

 そうそう、シナリオ序盤に改めて仲間の復活が示唆されていましたね。
 皆いい奴になって復活するんだとしたら、それはそれでカオス状態になりそうです。



★各キャラ&みどころ

・タイキ

 安定の無茶振り男。ただし本当に無茶をするのは自分で、万が一の時はと仲間に託すことができる男です。
 彼がいなければここまでは来られなかった連合軍ですが、今となってはたとえ彼がいなくなったとしてもその意志を継ぎ、
 仲間たちが戦いを続けることになるかもしれないと初めて思えました。これは収穫かもしれません。

 ただ、残念ながらそれでもなおタイキ抜きで連合軍が勝てるビジョンは見えてきません。存在があまりにも大きい。
 現実の世界でも、土壇場で求心力を失った集団がどのような末路をたどるかは事例の枚挙に暇がないはずです。
 せめてもの救いは、団結だけはもはや揺るぎそうにないことですが。

 ダークナイトモンも、タイキという男の危険度をもうちょっと考慮したほうがいいんじゃないでしょうか。
 比べたらバグラモンのほうがまだ理解してそうな気がします。


・キリハ&ネネ

 タイキに後事を託され、不利な防衛戦に向かいます。こっちも相当に無茶。
 リーダー代理として白羽の矢を立てられたのはキリハでした。まあ、今の彼なら適任といえるかもしれません。
 タイキに真っ正面から意見が言える数少ない人物ですし、裏を返せばそれだけ互いに認め合う仲ですから。
 ここへ至るまでの経緯がアレじゃなかったらもっと良かったんですが…ね。

 そういう観点で見るとネネは皆を引っ張るより、やはり調整役として働いたほうが持ち味を活かせるのでしょう。
 ただしもう団結力がマックス近くで高値安定してますから、あんまりやる事がなかったりします。
 今回は作画もアッサリしたもんなので、そっち方面の活躍もありません。


・クロスハートの仲間たち

 今回はダークナイトモンと復活デスジェネラルらのターンなので、それほど良い見せ場はありません。
 むしろX7含め、やられっぱなしなカットばかりだったりします。しばらくはメタルグレイモンらが頑張るしかなさそう。
 プリズンランド流しされたのがシャウト、バリスタ、ドルルというのは基本に立ち返った組み合わせですね。
 普通なら勝つのは難しいでしょうが、あの地形効果なら大いにいけそうです。


・ダークナイトモン

 戦略的不利に陥っても余裕を崩さなかった理由が、ようやく理解できた気がします。
 たとえデスジェネラルが倒されても彼やバグラモンにとっては何の問題もないどころか、都合が良かったわけだ。
 なにしろ七人とも我が強いし、忠誠度が低い者も何人かいます。復活させるときに心だけ別にしてしまえば、
 ひとりひとり心を奪う手間が省けることになる。むしろ礼を言いたいぐらいでしょうね。

 クールにド外道を語るその姿からは、久し振りにその本質をかいま見ることができます。
 まさしくシャウトモンの言った通り、誰も信じていませんね。何から何までタイキの逆側にいる男でしょう。
 それが人間でなくデジモンだったのは、ある意味でバランスが取れている事象なのかもしれません。
 デジモンは人々と友達になれる側面だけでなく、彼のような魔の側面も確かに持っているのですから。

 しかしながら、この土壇場に来てもなおタイキという男を軽視していると思われてなりません。
 どのような理由があろうと、どれだけ無謀であろうと、タイキをプリズンランドへ行かせるべきではありませんでした。
 彼の立場なら「断る」の一言で済む話ではありませんか。優位に立ちすぎて油断したとしか思えませんね。
 こうした傲慢は悪役の常です。生まれる綻びも。そーゆー意味においても闇の鑑といえる男ですが。

 誰も信じていないがゆえに、なぜクロスハート連合軍が勝ち抜いてこられたかが理解できない。
 理解できないから思う壷に嵌る瞬間があり、足元を掬われることになるのでしょう。まさにそれが付け目なのです。


・復活デスジェネラル

 負のエネルギーによるコードクラウンの変質で生成された「ダークストーン」の力により、七体全員が復活しました。
 上述の通り、心をプリズンランドに封じられているので戦闘マシーン同然の再生怪人状態です。
 そのため、アポロモンは素の姿のままでした。また、スプラッシュモンも能力開放状態で出てきています。
 前者はともかく、後者はどう考えてもグランドジェネラモンの都合ですね。最初から意図されてたわけですし。

 一斉攻撃の場面はありますが、X7を前にすぐ合体してしまうため個々の出番はラスト間際になってから。
 このとき、スプラッシュモンのヒューマン形態やウィスパードも出てきました。
 予告を見る限り本物のアポロモンも駆けつけてきそうです。


・グランドジェネラモン

 デスジェネラルたちが強制デジクロスにより合体し、一体の巨大な破壊神となった存在。
 姿といい、コンセプトといい、名前といい、グランドマスターガンダムが思い出されてなりません。

 その姿は四つの腕と四つ足を備えた異形そのもので、体の各部に合体前の意匠が残されています。頭はドルビックモン。
 最も目立つ+占有体積が大きいのはスプラッシュモンで、尻尾を除いた下半身の丸々を受け持っていました。
 これは確かにヒューマン形態のままじゃ無理ですね。

 この手の悪の合体形態は正義側と違い、お手軽な印象が強すぎて強さの底が浅いもの。
 それでも戦闘力そのものはやっぱり高いわけで、X7をああも簡単に合体解除へ追い込んだことは大きな評価点でしょう。
 ですが将軍たちが心を取り戻してしまうと、いろいろと大きな不都合が生まれてくるはずです。
 少なくとも一枚岩ではなくなるでしょう。


・プリズンランド

 魂の牢獄と言われる場所。デジタル的な言い方をすれば、切り取られた自律プログラムの保管アドレスです。
 別名をゴミ箱と呼ぶかもしれません。空にできるかどうかは不明ですが。

 さりげにランドと付いているので、大魔殿同様七つの王国に属さぬ、いわば第八の国というべき存在でもあります。
 ただ支配者がいないため、王国と呼びならわすべきかについては大いに疑問が残るところですけれど。
 形のないものの具体化という意味において、逆にデジモンの心の誕生そのものに関わってたりするかもしれませんね。
 ちょうど02終盤に出てきた意志現世界のように。


・エカキモン

 一般公募デジモンです。今回からアイキャッチにより五連続で紹介されるのだとか。
 今ごろになってこんな発表をするあたりから見ても、二期の存在を見越していることがわかると思います。
 ところでこのデザイン、個人的にはアリだなと思いました。良くも悪くも何でもアリなのがデジモンです。



★名(迷)セリフ

「ダークナイトモン! お前は忘れやすい性格のようだから、これから言う事をよぉくハートに刻んでおけよ!
 オレたちは、お前のような悪党には…決して屈しない!」
(タイキ)
「おうよ! それがクロスハートだ!」(シャウトモン)
「そしてオレたちはみな、熱い絆で結ばれている!」(キリハ)


 大事なことなので同じようなことをグラビモンにも言いました。
 見返すと、ネネさんもなんか言ってくださいと頼みたくなる場面です。キリハの物言いがコソバユイ。
 素直に喜びたいところなのに、つい別の意味で微笑んでしまいます。


「無駄だよ。彼らには心が無いのだからな。
 そんなものがあるから、アポロモンのように正義に目覚める不届きものが出てくる…
 私の言うことだけを聞く冷血な戦士には、心など必要ないのだよ」
「いけないのかね?」
(ダークナイトモン)

 いやあ、すがすがしいぐらいに外道なセリフです。ここまで酷いともう笑うしかありません。
 こういう手口を使う悪役の狡いところは自分の意志だけしっかり確保しているところにあると思うんですが、
 それが何か? オレがルールなんだが? と言わんばかり。倒すべき敵というのはこうでないといけません。

 29話でグレイドモンが正義に目覚めつつも、自由意志のままに一時はタイキの前を去った場面が思い出されます。
 あの後結局は助けに来ましたが、それはタイキを放っておけないと思えるヤツになったから。
 考えようによってはそれも改竄に変わりはないのですけど、どうせ邪道なら「真っ当な邪道」を目指すってことですね。
 もちろん、ダークナイトモンの方の言い分も全く別の意味で「邪道の王道」と呼ぶべきものでしょう。


「オレが心を奪われている間、ダークナイトモンが何をしてくるかわからない……
 キリハにはその間、皆を守ってほしいんだ。
 そしてオレが失敗したときは……皆のことを頼む!」
(タイキ)
「…いいだろう。ただし必ず戻ってこい! 失敗は許さんっ!」(キリハ)


 一部略。プリズンランド行き直前のやり取りです。
 キリハの台詞を一部直訳すると「安心して行ってこい、後のことは任せろ」となりますが…訳するまでもないかな。
 ジェネラルとして、タイキが後事を託せそうなのは確かにキリハしかいません。
 そして今のキリハであれば、その期待に応えるために何が必要なのか理解しているはずですね。



★次回予告

 アポロモン、オレーグモンが味方に回りそうなのはわかるとして、焦点は他の六人がどうするかですね。
 彼らとしても、自由意志が奪われてあんなところで過ごすのを心底から望んでいるとはとうてい思えないんですが……
 後をアポロモンとオレーグモンに任せて脱出し、肉体を再度破壊する流れかもしれません。今のタイキならやれるでしょう。
 もちろん二人だけが分離し、残りと戦う展開もアリと言えばアリです。さてどうなるか。