デジタルワールドの未来のために! デスジェネラルとの友情!
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脚本:米村正二 演出・絵コンテ:土田豊 作画監督:梨澤孝司 |
★あらすじ
デジクロスを果たして気魄の戦いを見せながらも、次第に追い詰められてゆくタイキとシャウトモンたち。
キリハたちが成否を待つ中、ついにトドメの一撃がタイキを捉えようとしたその時、オレーグモンが割って入ります。
仲間の大切さを知る彼にとって、ダークナイトモンや他のデスジェネラル達よりもタイキの方が心の近い存在でした。
その心が今日この魂の牢獄で、遂に通じたのです。
オレーグモンの合流で奮起し、X3が再登場。手痛い反撃を受け、ウィスパードの心も動揺しはじめます。
すると、今度はアポロモンの心が復活。ウィスパードを討ち、己を殿としてプリズンランドの突破口を拓きました。
これによってアポロモンは消滅し、オレーグモンも心を取り戻しますが、グランドジェネラモンは二人を欠いても圧倒的。
ですが、オレーグモンが命を懸けて復活の礎、リバイブストーンを破壊します。合体将軍の再構成はこれで封じられました。
そして力では上回っていても、デスジェネラルたちの心はバラバラ。その影響は肉体にも現れ、勝利の女神が背を向けます。
かくて、グランドジェネラモンは倒れました。後退してゆくダークナイトモン。
二度目の死を迎えたオレーグモンを看取り、クロスハート連合軍はいよいよ最終決戦へと向かいます。
残す敵は……全ての元凶、闇の兄弟のみ!
★全体印象
51話です。脚本は前回に続いて米村氏。演出は土田氏のため、テンポ良好です。
といっても本作は作画同様に演出スタッフも頑張りを見せており、かなり穴が少ない仕上がりになっているのですが。
回によっては、より予算が多いはずの他番組を上回る時があるほどですし。
さて、今回は先週を順当に受けての内容となっています。
真っ先に離反するのがオレーグモンというのも順当なら、アポロモン復活→ウィスパードへリベンジも超展開ながら順当。
その二人が同じ回であっという間に死んでしまうのも、とりあえず順当といえば順当でしょう。
たとえ生き残ったとしても、ここまで来たらもうやることが何も残っていませんし。
その意味ではアポロモンの死を軽めに流し、オレーグモンの方に重点を置いた描写なのも順当だったと愚考します。
穿った見方をすれば「何をしてくるのかわからなかったけど、別に何もしてこなかったぜ」なダークナイトモンや
上で書いたように少々無理矢理なアポロモンの魂復活、謎技としか言いようがなくなったソルブラスター、
やる前に封じたとはいえまたまた無限再生などツッコミどころは多数ありますが、どれもあまり重要な要素ではなく。
復活しまくり二度死にまくりでしたけど、それも将軍たち自身にツッこまれては二の句を継ぎにくいです。
で、よく考えてみるとこの二話だけ妙に浮いてる感もあったり。
そう、デスジェネラル復活と再消滅までの流れはこの二回で完結していて、後に与える影響が無いように見えるんです。
放送回数がちょっと延びたという噂もあるので、それならと突っ込んだサービス篇というヤツかもしれませんね。
味方になってくれたかも、という連中を一瞬とはいえ本当に味方につけ、協力して事態を打破するという。
★各キャラ&みどころ
・タイキ
オレーグモンを説得して味方につけ、アポロモンまで復活させました。バグラ軍にとってはまさに超危険人物。
やはり、彼にデスジェネラルたちの心と接触する機会を与えたのはダークナイトモンの致命的失敗だったようです。
心と心の繋ぎを取ることに関しては、常人とかけ離れたスペックを発揮するのが工藤タイキという男なのですから。
時折に魔性とまで表現されるほど。
そんな彼でも救いきれないもの、守りきれないものはあります。特に命は意外とよく取り落とす。
でもタイキと心を通じ合ったものの多くが、納得のゆく生きざまを遂げられたのもまた確かだったのです。
・キリハ&ネネ
倒れたタイキの直近で出番待ち。彼の体に危害を加えられないよう、監視する役目でもありました。
ダークナイトモンが余裕ぶっこいていたから物理的には楽だったものの、精神的にはしんどかったでしょう。
タイキたちが戻ってくるまでは、生きた心地がしなかったに違いありません。
・クロスハートの仲間たち
前回に続いて今回もオレーグモンとアポロモンに譲る形となりましたが、戦意回復してウィスパードを殴り飛ばすX3など
心の強さという要素を活かしての活躍も要所で見せてくれています。
最後のせめぎ合いを制したものもその心、そして絆の強さでした。くっきり明暗が分かれていましたね。
・オレーグモン
もともとタイキの器に惚れ込んで仲間に引き込もうとしていたり、デスジェネラルらしからぬ男でした。
どう考えても、バグラ軍への忠誠度が高いとは言えません。確かにクロスハートの方がまだ彼の性分に近い。
そんな彼がアポロモンのような処理を受けていなかったのは、たぶん基本的に悪党を標榜していたからでしょう。
バグラ軍と取引をし、ゴールドランドの支配権を与えられて好き勝手やっていたというところですかね。
今回で初めて他の将軍たちとやり取りがあったわけですが、動揺を差し引いてもだいぶ浮いていた印象。
タイキに目をつけたのも、あまりに纏まりの悪い魔殿会議にうんざりしていたせいもありそうですね。
ゴールドランドではやり方を間違えていましたが、いろいろあって吹っ切れたようです。
ビジュアル的にクロスハートにも馴染んでましたね。扱いに困るのですぐ再退場しちゃいましたけど…
ところで、アポロモンとだけは不思議と息が合ってたように見えました。
彼にとっては数少ない「話の分かるヤツ」だったのかもしれません。酒を酌み交わさせたら面白そうです。
・アポロモン
こっちも二度目の死を迎えていますが、49話から間がないのであまり目立たず、オレーグモンに譲る形でした。
どこまでもお人好しで自己犠牲に溢れた人です。それだけに苦労性というか、損な役回りが多いわけですが。
魔殿会議では毎回胃に穴があく心地だったに違いありません。調子を合わせているのなら尚更。
もっとも、実際の会議は全部ウィスパードがやっていたのかもしれませんが……無意識的丸投げ?
譲ったとはいえ、バトルではウィスパードを一撃のもとに葬る強さを発揮したりしてます。リベンジの王道ですね。
その後に出したソルブラスターに至っては、プリズンランドをブチ抜いてタイキたちを帰還させる出鱈目ぶり。
もう何でもありです。なんだかんだで、やっぱり七人中最強だったのかもしれません。
どのみち一人ではバグラモンに勝てないし、さすがに同僚レベルが数で押してくると分が悪すぎたようですが。
・その他のデスジェネラルたち
ドルビック、ネオヴァンデ、ザミエール、スプラッシュ、それにグラビモンと、みな筋金入りの悪党ばかり。
ゆえに、タイキと本当の意味で心が通じることは遂にありませんでした。まあ、当然の成り行きではあります。
戦う人形とされたことを嘆いてましたが、彼らに関してはあまり同情できません。特にそこの水虎将軍、お前だ。
ウィスパードはそんな彼らをリーダーとして従わせようとしていましたが、全く纏めきれていませんでした。
いくら個々が強くても、これでは話になりません。ダークナイトモンもそれが解っているからこそ、
肉体のみを使った強制デジクロスという冷酷にして手っ取り早い方法を採ったのでしょう。
手段としてはある意味正しいのかもしれませんが、何とも寂しい話です。
初のそろい踏みとあって、七人同士の掛け合いという非常にレアな場面を拝むことができます。
考えてみれば、人数の多さのわりに軋轢や確執、それぞれの関係性がさっぱりわからなかったんですよね。
順番に出てくる上、それぞれの居場所が隔絶しすぎているところから生まれた弊害でしょう。
構造上仕方の無いこととはいえ、組織としてそーゆーのはもう少し欲しかったかもしれません。
・グランドジェネラモン
オレーグモンの離反とアポロモンの消滅により、今回は五体合体での登場。
それでもX7の動きを一時ながら封じ、オレーグモンに致命傷を与える暴れっぷりを発揮しています。
さすがに大幹部級同士のデジクロスだと、これほどの強さにも説得力がありますね。
たぶん、パワーにおいてはラスボスに次ぐものがあるでしょう。
しかし心を切り離しているとはいっても、そのリンクまでが切れたわけではないようです。
その証拠にプリズンランドのアポロモンが死ぬと、大魔殿エリアのアポロモンも消滅してしまいました。
ウィスパード自身もそう証言しており、はからずも彼とアポロモンで最初に実証したことになります。
それに最後でドルビックモンたちがいじけてテンションを下げまくった際には肉体へモロに影響が及び、
パワーがダダ下がり。オレーグモンの援護で態勢を崩されるほどに弱体化していました。
倒れても前より強くなって立ち上がったシャウトモンたちと、あまりに好対照をなしていますね。
その上、ドルビックモンらは敵であるはずのタイキではなく、ダークナイトモンに呪詛を投げて逝っています。
結果としては、クロスハート連合軍に塩を送った形になるでしょうか。褒められた話ではないですが。
・ダークナイトモン
余裕ぶちかましてたらまたまた事態を引っくり返された人。
意外と前線に立つ機会が少なかったためか、タイキという男への認識が甘いとしか思えぬ事態が続いてます。
正直、タクティモンあたりの方がよほど理解をしていた気さえしてきてしまう。
しかし、それも詮無いことかもしれません。
誰も信じておらず、良い部下にも恵まれていない彼にはどうしても理解できないものがあるということです。
知ってはいても、理解も実感もしていない。情や心というものは弱点にしかならぬという考えの持ち主なのですから。
この闇の騎士にとって心とは、ただ利用するだけのものでしかないのでしょう。
あれだけの力があったグランドジェネラモンが、なぜ倒れたのか……
その理由を、彼が実感することは永久にないのでしょうね。少なくとも、完膚なきまでに敗れぬ限りは。
・フットモン
公募デジモン第二弾。サッカーモチーフです。青いボディは日本代表を意識したものに相違ありますまい。
しかし実際にはベルゼブモンが何かの間違いでイナズマイレブンの世界に紛れ込んだようにしか見えません。
公募イラストの方ではそこまで似ていないのに、クリンナップ画像の方の顔が激似。
★名(迷)セリフ
「我々は仲間などではない。敵でないだけだ」(ウィスパード)
ミョーに印象的だったので書き出しておきます。デスジェネラル同士の横の関係を表すのには最も簡潔で適切な表現でしょう。
タイキの説得に文字通りの説得力を付加し、オレーグモン離反を決定づけた一言でもありました。
仲間への軽視が招いた、これも致命的ミスのひとつでしょう。もっと大きなミスはこの後にやってきます。
「礼には及ばねェさ。最初からこっちの方が、オレの性に合ってたんだ!」(オレーグモン)
クロスハート側についた直後、タイキに礼を言われて。
様々な状況証拠から、戦う前にバグラ軍の配下へ収まった可能性が高い彼。ゆえに、見えていないものがあったのかもしれません。
悪党を標榜し、好き勝手に暴れ回っていても心の奥底までは腐っていなかったということなのでしょう。
それに海賊を気取る以上、物語的には権力者にケンカを売るのが専売特許のようなものです。
自分で言っている通り、性分的にもデスジェネラルの間よりはタイキ側の方が水も合うでしょうね。
「私は日輪のアポロモン! 燃えたぎる太陽は、黒点をも焼き尽くすのだ!」(アポロモン)
こちらはアポロモン復活直後、ウィスパードを討った時のセリフです。
心と肉体の両方を縛られていた生前はともかく、同じ条件でのガチンコならばこういう結果になるというわけですね。
こんなのに勝ったバグラモンへのハードルが、なにげにまた少し上がったような気がします。
ところで「日輪」と今も自分で名乗っているということは、その二つ名はバグラ軍入りする前からのものですかね。
「生き返ったり、死んだり…まったく忙しいぜ。ワハハハ…」(オレーグモン)
「…ダークナイトモンめ、しくじったらしいな…」(グラビモン)
「いい気味だぜ…!」(ザミエールモン)
「まったくだ…!」(スプラッシュモン)
「死んでよみがえり、また死ぬのか…巫山戯た話だぜ」(ネオヴァンデモン)
「願わくば…今度こそゆっくり眠らせてほしいものだな……」(ドルビックモン)
アポロモンを除いた6人の今際というか、最後のセリフです。
オレーグモンとその他とで立場が全然違いますが、はからずも似たような達観した散りざまでした。
そして立場は違えど最終的にはみなバグラ軍を憎み、闇の兄弟の打倒を願ったことになります。
クロスハート連合軍の味方をするか否かは重要じゃないのもポイントでしょう。
世界すべてを手に入れてもなお、結局は世界すべてに憎まれるしかなかったバグラ兄弟。
こうなると、信じられるものは互いだけというオチになるんでしょうか。
★次回予告
ようやくというか、遂にバグラモンとの直接対決。まずは皇帝陛下の手並みを存分に拝見するターンですね。
閉じ込められたユウの処遇が気になります。やはりD-5のカギとして重要な位置にいそうですな。
最終決戦三部作、刮目して見届けたいと思います。
そして祝! アカリとゼンジロウ再登場! あと、ルークチェスモンも久し振り! 出たの前作だけど!