UFO・恐竜大集合! 夢のエカキモン

 脚本:村山功 演出:角銅博之 作画監督:小松こずえ
★あらすじ

 タギルのクラスメイト、ショウタはUMAの絵を描くのが大好きで想像力豊かな少年。
 そんなショウタの想像力にエカキモンが目をつけ、彼の想像力を糧に次々と絵を実体化させてゆきます。
 二人の行為はどんどんエスカレートしてゆき、しまいにはUFOや恐竜、巨人が学校に出没して大騒ぎに発展しました。

 無論、このような事態を放っておく少年ハンターたちではありません。
 追い詰められたショウタはエカキモンの力を借りてデジクォーツに逃亡。誰にも倒されないUMAを描き出します。
 多くのUMAがひとつになったその怪物は、どんなに攻撃しても次の瞬間には再生してしまう厄介な相手でした。
 しかもデジクォーツで実体化したせいか、ショウタたちの命令も聞かずに暴走を始めまてしまいます。

 イマジネーションにはイマジネーションで。タギルの提案により、怪物を止められる必殺のアイテムを描くショウタ。
 それは何と消しゴムでしたが、効果は抜群でした。怪物はあっという間に消え去り、騒ぎは収まります。
 ショウタもエカキモンも大いに反省の色を見せ、一件落着となりました。

 次の日、ショウタの前で楽しそうに話す数名の姿が。彼の絵をバカにしていた生徒たちでした。
 騒ぎに巻き込まれて以来、すっかりUMAに嵌ってしまったようです。
 傍で見ていたタギルもユウも、この顛末には苦笑いを浮かべるしかないのでした。



★全体印象

 72話です。脚本はちょっと久し振りの村山氏。
 作監は今期に入ってからわりと描いてる気がする小松氏で、演出はおなじみの角銅氏です。

 結論から言えば、悪くはないんですが書くことの少ないお話。
 村山氏のお話は割とどれも動かすキャラを非常に絞ってることが多く、それ以外はみんなモブという印象を受けます。
 これまでもその傾向はありましたが、今回はそれが非常に色濃く出ている感じですね。
 ハンターたちも三人とも戦いはしますが、実質的にはタギルとアレスタードラモンが完全にメインですし。

 画面のほうも作画はともかく、演出がいかにも角銅演出という感じでコレはというものがありません。
 図抜けてアレな川田演出を最近めっきり見なくなってホッとしていたら、こっちがだんだんアレになってきました。
 とはいっても、カワタった時のデジモンを知っている身からすればそれでもずっと良いのですけれど。
 本気のカワタはマジで凄いですよ? 正面からぶつかったのに次のシーンで真横にいたりするし。プリキュアの時の話ですが。

 閑話休題。
 ぶっちゃけ、エカキモンを出すためだけの話だったと言っても過言じゃないエピソードですね。
 ガネモン回はヒデアキ登場回でもあったのですが、今回は本当に募集デジモンを出したというだけ。
 それでもまるまる一回を貰えたのですから、エカキモンを描いた人は嬉しがったかもしれません。



★各キャラ&みどころ


・少年ハンターたち

 彼らを含め、ショウタたちのイタズラに学校の全員が巻き込まれた形です。
 事の発覚までがやたら早かったのと、なまじっか三人全員で一緒に動いているせいか一人一人の印象が弱いですね。
 事を収めたのは一応アレスタードラモンですし、適任でもありましたが、単に代表してやっただけという感も。


・ショウタ

 絵を描くのが大好きな少年。
 絵描きはものを正確にとらえるだけでなく、慣れたものはソラでも充分描けるほど鍛えることができます。
 その分感受性が強く、人の言葉を必要以上に深く受け取ってしまって傷つくこともあるのでしょう。
 幸いだったのは、そんな彼に歩み寄ったのが悪意のあるデジモンではなかったことでしょうか。

 途中からはエカキモン以上に暴走し、合体UMAを作り出すなどの無茶な行為もしでかして痛い目をみました。
 おそらく「自分の想像力とその発露を否定されたくない」という気持ちが強くなりすぎたのでしょう。
 大人なら自分は自分、他人は他人と割り切れるかもしれませんが、幼い頃となるとそうもいきますまい。
 私も絵が大好きな少年だったので、彼の気持ちはわかります。

 そんな彼も自らの創造物に襲われて目が覚め、間接的にながら自分の手で始末をつけました。
 消しゴムというのは言われてみれば簡単ですが、ちょっとした意外性はありましたね。収拾手段としてもベター。

 中の人は野田順子氏です。言わずと知れたブイモンの人。
 あっちこっちの番組でレギュラーは張ってたはずですが、個人的に名前を見たのは久し振りでした。
 個性がある声優さんの一人だと思うので、より一層の活躍を見たいところです。ひとまずたしぎ少尉に期待。


・エカキモン

 ガネモンと同じく公募デジモンの一体です。色鉛筆に手足が生えたような姿。
 ショウタの想像力に触れて感動し、それを糧にするような形で次々と彼の絵を実体化させていきました。
 それが唯一にして最大の能力で、自身の戦闘能力は恐らくほとんどありません。

 たぶんショウタの想像力をエネルギーとして受け取り、それを自らの想像力もフル活用して実体化させるのでしょう。
 デジモンに想像力が無いとは思えませんが、強い発露には人間の力が必要になるとか、そんな感じですかね。
 彼自身、実体化させたときの達成感には一定以上のものを自覚しているようです。

 基本的には悪意のあるデジモンではなく、ショウタを利用してどうこうは考えていません。
 冷静に見るとショウタを利用して自分の能力を振り回してることになるんでしょうが、そんな自覚もなさそう。
 単にショウタの想像力の発露を見たい、どんどん実体にしてみたい、という動機で動いていただけだったようです。
 確かにそれがいきすぎて暴走した面はありますが、より暴走してたのはどっちかというとショウタの方でした。

 合体UMAを止める場面では逆にハンターたちの味方へ回り、自らの能力による創造物を打ち消すことのできる
 消しゴムを出現させました。その後はやり過ぎを素直に謝罪し、タギルに捕獲されることとなります。
 …捕獲というよりは完全に間借りですが。まあ、放置しておくわけにもいきませんし。

 しかしながら、条件さえ揃えばあの実体化能力は意外と役に立ちそうな気はしますね。
 ベツモンの能力と組み合わせれば、ターゲットを罠に填めるぐらいは簡単にできそうな気がします。
 以前捕獲したゲストデジモンを使って云々、という例が今期は意外と少ないので、やりそうにありませんが。

 中の人は山口勝平氏です。相変わらず、人外をやらせると普段以上に強いお方。
 デジモンに出演するのは、なにげにデジアドのチューモン以来です。当時は歌も貰ってました。


・UMAたち

 ショウタがエカキモンの力を借りて創造したモンスターたちです。
 三つ目の首長竜に一つ目の巨人、ドラゴン、七色のUFO、ビッグフットなど、古今東西のUMAたちが集合しました。
 デジモンに見慣れている視聴者にとってはそれほど驚くべき状況ではありませんが、当事者の立場に立ってみれば
 学校をこんな連中が闊歩することがどれほど異常な状態か、すぐに想像できることでしょう。

 しかし明確な実体として認識できるのは見た目だけで、ガムドラモンたちの攻撃を受けるとすぐ消えてしまいます。
 人間界ではエカキモンの能力を定着させるだけの要素が足りないのか、希薄な状態でしか形にならないようですね。
 エカキモンもそれを理解しており、非常手段としてデジクォーツへの避難を選択していました。

 どうでもいいんですが、頭から伸びた第三の目がありながら実体化のとき三つ目竜がそれを使わなかったのは残念。
 プールから潜望鏡のように目を出し、そこからガバッと出てくるぐらいの演出は欲しかったところです。


・合体UMA

 ショウタとエカキモンがデジクォーツで実体化させた最強のUMA。
 三つ目竜、一つ目巨人、ビッグフット、ドラゴンと、戦闘力の高いUMAを選別して掛け合わせた存在です。
 ドラゴンの口からは三千度の炎を吐き、攻撃を受けてもたちまち再生してしまうなど、およそ考えうる「最強要素」
 をこれでもかと詰めこんでいます。
 たぶん自らの絵を否定されたくないという想いが頂点に達した結果、生まれた存在なのでしょう。

 しかしデジクォーツで実体化させたのがやはり良くなかったのでしょう、ショウタたちの制御を離れて
 本物の怪物として暴れはじめてしまいました。最後は皮肉にも、ショウタ自らの手で存在を否定されて消滅します。

 というか、ただくっつけただけのものに想像力もへったくれも無い気がしますが…
 それぞれのUMAに込められた想いを束ねた結果なのでしょうか。


・クラスメイト

 ショウタの絵をバカにしていた生徒たち。クラスに一人か二人はこーゆーのがいます。
 なんだとこの野郎と反撃するならともかく、裡にため込むタイプなショウタにはそうもいかず、
 鬱屈されある意味高められた想いが、エカキモンを引き寄せたのかもしれません。

 ラストではショウタとエカキモンが実体化させたUMAを見たことですっかりUMAに嵌ってしまい、
 しばらく想像はこりごりなショウタに目をキラキラさせて迫るオチでした。
 事件を通してショウタの想像力が認められたことになるのですが、ちょっと皮肉も利いています。



★名(迷)セリフ

 今回は特にありません。
 いい意味でも悪い意味でも印象的なセリフが無いというのは、それはそれで寂しいものです。



★次回予告

 海が舞台になるようですね。
 ダゴモンと来るとゲゲッとなってしまうのは、デジアドの見過ぎだと思います。