今明かされる! デジモンハントの秘密!
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脚本:三条陸 演出:広嶋秀樹 絵コンテ:広嶋秀樹 作画監督:暮田公平 |
★あらすじ
突然街が次々とデジクォーツと化し、人々がデータにされて取り込まれはじめました。
タギルの家も巻き込まれ、彼の目の前で母がデジクォーツに吸い込まれてゆきます。ツメモンの仕業でした。
しかも、ツメモンは人間の力なしに次々と進化してゆきます。
リョーマと協力して危機を逃れたタギルは、戦いの中でライバルの過去を知り、意気投合することになります。
リョーマはかつてクロスハートとバグラモンの最後の戦いを目撃しており、タイキに憧れるようになっていたのです。
やがて、タイキたちが合流。アカリやゼンジロウ、アイル達やハントに関わったクラスメイトたちもいます。
デジクォーツ絡みの事件に関わると、データ化されなくなるのです。
協力体制を築く一同ですが、裏で邪悪に通じているというハンターの存在が連携に影を落としていました。
時計屋のおやじの挙動が怪しいと睨んだタギルは、ヒデアキと共におやじを捕縛。
問いつめるのですが、そのとき巨大なデータの塔が現れました。街の人々のデータが取り込まれています。
時計屋は黒幕ではなかったのです。
ハンターたちは苦闘を強いられました。敵は攻撃を当てても、瞬時に自らをコピーして再生してしまうのです。
それでもタギルとリョーマの初デジクロスによって一時は優位に立つのですが、敵が正体を現しました。
あの怪物岩です。しかも複数が現れ、集合して巨大なディアボロモンが出現しました。一同はなすすべがありません。
そこへ、海外からキリハとネネ、ベルゼブモンらが駆けつけてきました。
タイキ、ユウ、キリハ、ネネによるグレートクロスで、久々にシャウトモンX7が登場。
その圧倒的パワーにより、ディアボロモンを吹き飛ばすことに成功します。
戦い終わって、疑ったことを時計屋に詫びるタギル。しかし、ディアボロモンが塔とともにさらなる変化を始めました。
あれこそがデジモンハント最後の標的・クォーツモン。時計屋のおやじの口から、全てが語られようとしていました。
★全体印象
77話です。脚本は三条氏。ベツモン回以来の二度目となる広嶋氏は、今回は絵コンテで参加しています。
回によって絵コンテ担当がいたりいなかったりするのは、演出の人が兼任してるケースが多いということでしょうか?
さておき、今回でいよいよ「現実世界のデジクォーツ化」という大状況が展開されました。
終局を感じさせる上で、これ以上のカードはありません。と同時に、いつ起きてもおかしくなかった事態。
逆に言えばいつ起こしても良かったわけで、話を畳もうと思えば2クール目のどこからでも畳めたのでしょう。
思い切った展開ができない代わり、歴代登場というファンサービスを盛り込んだというわけですか。
その一環として用意されたのがX7の登場でしょうが、ここで出すということの意味はなんとなく理解していました。
ここでなきゃ出せなかった、ということなんでしょう。クロスハート単独の見せ場はこれが最後でしょうから。
同時に展開されたものがツメモン系列(アーマゲ除く)のフル展開というのも、やはりファンサービスでしょうね。
そのあたりは後でじっくりと語ることにします。
しかし、リョーマの件についてまだ引っ張るとは思いませんでした。もはやバレバレだというのに。
ただ、これによって「…あれ? もしかして違う? じゃあ誰?」という軽いミスリード効果も出るには出ました。
こっちも後であれこれと考察してみることにします。
いよいよラストが近づいてきました。
後に控えるのが別番組なのは寂しいかぎりですが、また見られることを今から願ってやまぬところです。
件の別番組たる星矢なんて、ほとんど四半世紀ぶりの完全新作なわけだし……
…四半世紀か……(遠い目)
★各キャラ&みどころ
・タギル
いきなり目の前で母がデータ化するという、よく考えてみたら歴代屈指のヘビーな体験をした男。
しかしそれで必要以上にショックを受けることなく、取り戻すことを誓うのは彼らしさです。尺の問題もあるにせよ。
こういう人物だからこそ、急展開にも対応させやすいのかもしれません。
タイキへの憧れという共通項だけで、リョーマへの警戒心を緩めるあたりも彼らしさではあります。
悪く言えば単純ということになりますが、良く言えば相手の美点を素直に認め、歩み寄れるということ。
憧れを負の感情に変えることがなく、憧れに押しつぶされもしないのがタギルという少年なのかもしれません。
あっさり流されてますが、普段から体力づくりをしていることが明確に描かれた回でもあります。
もともと体力の塊みたいな子ですし、体を動かすことが苦になるタイプとも思えません。
ましてストリートバスケをやってるのなら当然なぐらいなんですが、ああいう場面は意外に珍しかったりします。
・クロスアップ・アレスタードラモン
タギルが目立ってる回なのですが、ガムドラモンの方は単体での見せ場がそれほどありません。
どちらかというとデジクロスで魅せている感じです。
前半に出したオーガモンとのデジクロスは、見るからにパワー重視の形態。
同じくパワー重視にシフトしたアスタモンとの連携で、ケラモンに大打撃を与えています。
その場はクリサリモンに変化された上で逃げられてしまいましたが、普段ならアレで決まっていたはず。
後半ではアスタモンとのデジクロスを披露し、連射と攻防スキのない技の乱舞でインフェルモン相手に奮戦。
トドメを刺すには至りませんでしたが、こちらも相当に強力なクロスアップ形態のはずです。
特にプリズムマーヴェリックはインフェルモンの装甲をブチ抜き、そのままビルを二つも貫通する威力でした。
考えてみたら、ここでデジクロスができてるんですよね……リョーマがそれほどまでに演技派なのか、それとも……
あ、今期のデジクロスが割とシステマチックでハートフルじゃないからというツッコミは無しの方向で。
・タイキ
美味しいところを持ってっているわりに、やっぱりタギルに比重を譲っている人。
そう、やっと思い至りましたが、今期の彼にはドラマが用意されてないんです。だからメインを張る回も少ないのです。
数少ない該当である63話ですら、既存キャラであるアカリとの絡みが主体。今期ならではのものではありません。
時計屋のおやじの意図に早くから危機感を募らせてましたが、これはドラマとは言えないでしょう。
結局のところ、主役としてはもうとっくに引退状態だったのでしょうね。あくまでも先輩ポジでしかない。
ほとんど出なくても話が回った70話みたいな話の存在が、それを如実に証明しています。
今となってはキリハのようにここぞという時しか出さず、その分を新キャラに廻した方がよかったのではないか……
そんな気さえしてきました。どのみち、彼ですらタギルを制御しきれはしないのです。
とはいえ、クロスウォーズの顔のひとりである彼をそう簡単に非常勤にするというわけにもいかないのでしょう。
実際はユウがいれば案外なんとかなった気もするんですが、繋ぎ役としてはやっぱり必要でした。
その役割は序盤のみでもよかったとは思いますけどね。
ただまあ、タギルも成長型と見せかけてある意味完成型だったんで、コレ!というドラマに欠けてるんですが。
初期数話にパグモン回、あとはベツモン回くらいかなあ……メインの多さでカバーしてはいたか。
・シャウトモン→オメガシャウトモン
X7までは割といいとこなしでした。他メンバーと十把一絡げ。しばらく壁に埋まってたりするし。
X5Bより強いはずだったのに、その設定?は本当に因果地平の彼方へすっ飛んでいったようです。
いくらなんでも弱体化しすぎ。相手が強いのだろうとはいっても……ねえ。
・シャウトモンX7
キリハとネネの合流により、ひさびさに登場。およそ半年ぶりの登板です。
オメガシャウトモンから一転、久し振り効果で圧倒的なパワーを発揮しました。もはや無体なほどの強さ。
こんなに強かったのか、と私もちょっとビックリしてしまいました。
片手でこんなバケモンを制していた皇帝バグラモンの力が、逆によく再確認できます。
消耗が激しいのかなんなのか、デスジェネ篇の頃からタイマンでの登板が多かったですね。
そのわりに初登場では数を問題にしないほどの無双をしていたりと、意外に評価が安定しない形態でもあります。
スペリオルモードに関しては文句無しのぶっちぎりだと思うんですが……
・ユウ
こういう回になると目立てない人。タイキに比べると今期ならではの側面を出してるんですが、
基本的にタイキへ従順なのがいざという時のストッパーになっている感じです。
タギルは結構タイキを出し抜いたり、言う通りに動かなかったりするので、そこで差が出るんですね。
ダメモンに至ってはX7にくっつくことすらできないので、推して知るべしといったところ。
・キリハ&ネネ
前回でひさしぶりに登場したのを前フリに、今回で合流。
ほぼ合体要員でしたが、それだけに「要素が揃った!」感はかなりのものがありました。
分散して行動してるのも、一種のタメですからね。
・ベルゼブモン
ディアボロモンの顔面に痛打を入れる形で、キリハ&ネネとともに合流。こちらは久し振りの登板です。
あいかわらず美味しいとともに、謎の強キャラ力ですね。なんでアレで敵がスーパーアーマー解除されるのですか。
・アカリとゼンジロウ
こっちも喋る役としては久方ぶりの登板です。ゼンジロウについては完全に64話以来。
今回はいますよというアピールだけで、それなり以上に本格的活躍をするのは次回からです。
・リョーマ
バレバレのまんま、まさかの次回持ち越しをした人。
前回でアレだけ振っておいて、今回でタギルと意気投合してたりすると無闇に不安になります。
その不安はまさに最悪の場面で現実となるわけですが……
ああなると問題は、なぜこのような描写をしたかですね。
彼も一人の人間だと言いたいのか、完璧に味方を演じ切る非凡さを示しているのか、
はたまた実は操られており、それが不意に表に出ることがあるということなのか……
普通に考えれば、冒頭で怪しげな挙動を見せるおやじとタギルとのやり取りを見ていたわけですから
これを利用してタギルの警戒心を緩めさせ、同時に疑念をおやじの方に向けさせる気だったのでしょう。
そう考えると、どのセリフもいちいち白々しく聞こえてくるものです。
ただ、タギルに打ち明けた話が全部ウソだとも思えないんですよね。
タイキに憧れを抱いたのは確かで、タギルとの違いはそこを直接ラスボスに付け込まれただけなのかもしれません。
大局的なラスボスにはなれなくても、タギルにとっては実質的に最後の壁になりそうな気がします。
そーいえば、クォーツモンを見てフツーに驚いたりもしてました。単に生で見るのは初めてだっただけかもしれませんが。
諸々の状況証拠から、実は上記のように二重人格的側面があるのかもしれないという意見も小耳に挟んでいます。
・アスタモン
リョーマ以上になにを考えてるのかわからない相方。
今回ほぼ初めてクロスアップをお披露目しましたが、相変わらず無口を通しています。
最後の最後に色々ぶっちゃけそうな予感もするので、楽しみにしときましょう。
トリケラモンとのデジクロスはアレスタードラモン同様、パワー重視の形態です。
銃は使えなくなる代わり、距離を詰めての打撃においてはより以上の攻撃力を発揮すると見てよいでしょう。
・アイルとレン
協力体制を取ったら最後、もはや埋没するしかないかもしれない方々。
それでもアイルはその自己主張で、レンはデジモンの知識で精一杯アピールしていました。
特にレンに関してはいまや「知っているのかレン!」並に大抵のデジモンを網羅していそうです。
つうか何でインフェルモンまで知ってんねん。
それにしてもチョ・ハッカイモンはともかく、ヤシャモンの空気っぷりは本当にものすごいですね。
今回も「あれ、いたの?」な扱いでしたし。
・ヒデアキ他ゲストの皆さん
ヒデアキを筆頭にムサシ、キイチ、マコト、ショウタ、ヒロヤ、金田の無事が確認されました。
しかしこの回においてはトキオ、ミホ、マサルの姿が確認できません。
ミズキとカオルについては次回で登場するのですが、この三名の安否が気遣われます。
それ以前にマミ、ハルカ、ミドリの安否が全然わからんのですが。
無論学校がデジクォーツ化された以上、タギルママたちと同じ状態に陥ってる可能性が大です。
でも明確にそうなってるという描写があるわけじゃないので、無事という可能性もあるんですよね。
一応デジモンに関わって、デジクォーツに行ったこともあるわけですし……
タギルが彼女たちを気にかけもしないのがまた、なんとも悲しいのです。
街中がああなってしまったのですから、無事でいるという考えに至らなかったと取るべきですけどね。
もちろん尺の問題だってありますし、タギル自身にその余裕がなかったという解釈もできましょう。
・時計屋のおやじ
確かに言ってなかったことは多いけど、黒幕というには無理があるタイプの人。
そもそも何者なのか、本当に人間なのかという謎こそあれ、悪人には明らかに見えません。
タギルが一度は疑ったのも、逆に味方側であることを強調するための流れでしかありませんでした。
あの怪しげな行動の真意は、次回でなんとなくわかるようになっています。
あまりにあれこれと知りすぎているので、正体がシャカモンあたりでも全く驚くに値しません。
もし正体を現すような局面があれば「お前かよ!」というツッコミが全方位から飛びそうです。
・ツメモン→ケラモン→クリサリモン→インフェルモン→ディアボロモン
言わずと知れた名作「ぼくらのウォーゲーム!」でメインを張り、その異常な能力で現実世界を席巻、
オメガモン登場のキッカケともなった極めて重要なポジションのデジモンです。
TVシリーズにこの系列が登場するケースは意外に多いのですが、敵役としてここまで扱われたのは久々。
特に究極体であるディアボロモンとして主役の向こうを張ったのは、実に12年ぶりのことです。
ただし、厳密にはツメモン系そのものというわけではありません。
クォーツモンの能力によって姿と能力のみをコピーされた、ガワだけそれっぽいまがい物の一種です。
レンの言葉からみて、本来この世界では普通種として定着しているとみてよいのですが、
その常識からは考えられぬ能力を発揮していたようですね。
最たるものが自在な形態変化と、自らのコピーでしょう。
しかし、これらは実のところデジアドの世界で最初に現れた、あのディアボロモンの自前能力です。
ひょっとするとクォーツモンの能力自体、このディアボロモンのものを活用している可能性すらあります。
もともとデジタル関係の歪みから生まれたといわれる両者。存在として非常に近いところがあるはずですし。
ディアボロモンの姿からクォーツモンが現れたというのは、ひとつの興味深い事象と言えるでしょうね。
タギルが見た「アソブ?」のメッセージは、ファンサービスの一環でしょう。
パソコンではなく携帯の画面というあたりに、ちょっとした時代の変化を感じます。
・クォーツモン
ディアボロモンの体を媒介にするように現出した、史上最悪のデジモン。
いや、これをデジモンといってよいのかさえ定かではない。そんな空気を纏っていますね。
アポカリモンやデ・リーパーらと似たものを感じずにはいられません。
中央に光る目のようなものを見て、何かを思い出すなぁとずっと考えていたんですが……
それが超時空因果律制御機構・タングラムだと思い至った時には妙に納得してしまいました。さもありなん。
まあ、ここでこれ以上語るのはよしておきましょう。デジモン関係ないし。
とりあえず、設定としては確かにオールスターをぶつけるに値するものです。
後はどう顛末をつけるかですが、まずはオールスターの活躍を見せるところからですね。
・タギルパパとタギルママ
顔が出たのは初めて。ママの方はシルエットと声で出演済みですが、パパは正真正銘の初出演です。
たぶんタギルの行動力と気魄は母譲りで、優しさはパパ譲りなのでしょう。
顔はパパには全然似てませんが、ママには割と似てる気がします。
しかし二人ともせっかくの出演だというのに、あっと言う間にデジクォーツへ取り込まれてしまいました。
家がデジクォーツ化してるのに、何事もないかのようにタギルを出迎えたママが逆に怖いです。
たぶん、何が起きているのかさえわからなかったんだろうなぁ。
★名(迷)セリフ
「今までキザで気に入らないヤツだと思ってたけど、お前のこと、少しだけ理解できた気がするぜ。
同じ目標を持つ男として」(タギル)
リョーマの過去を聞いて。前半も込みで実に正直なセリフです。タギルらしい。
リョーマの方もまんざらでもない顔をしてるんですが、これは素なんでしょうか。それとも……
「うむ……
趣味で〜!」(時計屋のおやじ)
何故ハンターを集めていたのか詰問されて。すっとぼけ方がブロキーナ老師を彷彿させます。
明らかにウソなわけですが、半分はウソじゃない気もちょっとだけしました。
どうでもいいけど確かにくすぐり刑はムゴいです。なにしろ抗う術がない。
「もちろん街のみんなを救う!
ごめん、おっさん! 後でちゃんとあやまる!」(タギル)
おやじが敵ではないと確信し、塔へ向かう時のセリフです。ひと段落ついた後、小声ながらちゃんと詫びました。
タギルは失敗の多い少年で礼儀作法もイマイチですが、こういうところはきちんとしています。
突っ走ることはあるけど、傍若無人ではないということですね。デジモンの主人公は割にみんなそうです。
あの大だって、敬意を払うべき相手にはきちんと払っていました。敬意を払えない相手には容赦しませんでしたが。
★次回予告
もはや言葉は要りません。生きててよかった。
単純に釣られ過ぎと笑いたいだけ笑ってください。逃げも隠れもしないから。