そはうたうたう花の天園

時の岸辺に佇みて
彼の人囁かん 耳朶に唇寄せ
うたうがごとく 奏でる如く
君が夢見ゆ 時果つる迄
倶に手をとりて行かん 花霞む春の中を

※※※※※

廃墟は朝の光の中で美しく輝いた。
外壁を残す召喚士の郷。
崩れ落ちた天蓋は青く澄んだ空を映し
風に舞う砂が薄いベールを空にかける。

壁に刻まれた人々の想いと歴史が、
静かに二人の姿を包む。

瓦礫の中を足取り軽く進むジタンは、時折立ち止まり振り返る。
差し伸べられる逞しい腕に、華奢な腕が重なって、
ガーネットの体は軽々と、石の上に引き上げられるのだ。
勢いあまって彼の腕の中に倒れこみながら、
こうしてバランスを崩してもしっかりと抱きとめてくれる胸があることを
ガーネットは感謝する。空に、風に、大地に、時に。
そして、その胸の持ち主に。

自分が彼女の力になれることが何より嬉しかった。
ジタンは傍らを過ぎる黒髪に眼差しを注ぐ。
時が過ぎて二人年老いても、
きっとこうして安らかな気持ちで
彼女の傍らを歩いていよう。

一歩進むごとに
蘇ってくる自分の人生の歩みは
まだ浅い春の日差しそのままに
瞬くような刹那でしかないけれど
走馬灯のように流れゆく
数々の想い出は誰よりも深く溢れ出す。

誓おう
この地に残る古の壁に
降臨せし数多の神獣に
君を生んだこの大地に
風に、海に。
そしてここにいる君に。

愛していると


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