エンリケ・バティス
以前から注目しているメキシコ出身のすごい指揮者「エンリケ・バティス」氏の演奏について、持っているCDをぼちぼち聴きなおしながら特集してしまおう!というコーナーです。いっぺんにたくさん聴いて更新するのはキツイし耳がこわれたり体に変調をきたしたりするといけないので(?)ちょっとずつ更新しようと思います。
CDの解説などからまず経歴を。もちろん英語とかはニガテなので多少まちがい等あるかもしれませんが、おおむね合っているでしょう。(いいかげんな!)
バティス氏は1942年にメキシコシティで生まれています。5歳でピアノをひいて最初の公演をおこない、天才ぶりをみせつけてやっちゃった。らしいです。ジュリアード音楽院を卒業後、なぜかワルシャワ音楽院に行っています。ロヴィツキ氏などに師事し、指揮に目覚めた、らしい。どこでああいう芸風(?)を身につけたのかがイマイチ不明なんだが。地元メキシコをはじめ、現在ではメキシコのオーケストラで主に活動しているようです。また、なんとピアノリサイタルも開くことがあるらしい。日本には2002年と2006年のそれぞれ9月に来日しています(私の知るかぎりですが)。
レコーディングも相当数あるようですが、なかなか日本でのCDの入手は厳しいものがありますね。税関でかなりとりあげられるそうです。嘘ですが。ASVレーベルなどのものが都市部のCDショップにたまにある、のと、ナクソスから出ている3枚くらいが頼りですな。もっとバンバン出してほしい。(あんまり出ても財政的に困るが。)ただ、特に本文に書いてない限り入手可だと思います。といっていたら再発売でけっこう出てきました。
バティス氏の音楽、は、ムラはあるといわれるものの、一貫して「アツイ」ものを感じる音楽です。それがはたして氏がメキシコの出身であることと関係があるのかどうかはわかりませんが、例えばロシア系のオケのあのアツさとは違った独特のアツさが、クラシックに飽食したワタシたちの耳を直撃するのではないかと。なかろうかと?(つれつれ草中のバティスの項もみてください)
そにょ1 リムスキーコルサコフ 交響組曲「シェエラザード」(フィルハーモニア管)
(NAXOS 8.550726)
このCDはバティスのCDのなかでは入手がもっとも簡単な一枚であるといえますね。安CDで有名な香港のレーベル「NAXOS」から出ています。録音はけっこう良いのではないかと。教会での録音ってことで、長い残響が残り、それがまたこの演奏のかくし味になっているかな。と。
演奏は、といえば、こういう曲を振るとやっぱりただじゃあすみません。(この曲あんまり得意じゃないのでこまかくはいえませんが。)冒頭の響きからして地響きの如き音をたて、ワタシたちをびっくりさせます。第2楽章ではファゴットがこぶしをまわしてみたりとかする、のですが、後半が金管群大活躍のスペクタクルとなっています。第3楽章の叙情性はバティスのとくいわざじゃないのでちょっと後退しています。ここってどことなく甘いユーワクの香りがつんくの歌のように(オイ!)してくるところですけんども、もうちょっとすっきりしています。これはこれでヨイ?
第4楽章は当然のごとく、大冒険スペクタクルの展開、といった感じです。スゲー金管の鋭い音に速射砲のような打楽器の強打(参加してみたい)。こんな「千夜一夜」ではなかなか眠ることもできますまい。フィルハーモニア管弦楽団の金管楽器群も大健闘。標準的な演奏ではないとは思うけど、バティス入門としてぜひきいてほしい一枚です。カップリングは「サルタン皇帝の物語」こちらもナカナカ。
こんなよい録音が出来るならナクソスでもっと出してほしいなぁ。
そにょ2 ブラームス「交響曲第2番」(ロンドン交響楽団)
(Concerto Classics OQ0014)
このCDって今ふつうに入手できるのでしょうか。誰か知ってたらおしえてほしいっす。
とりあえず「はずれ」なので早めに書いちゃおう、と思って聴いてみました。録音のレベルが非常に低いうえにもこもこした音で聴きにくい。演奏のせいか録音のせいかはイマイチよくわかりません。いずれにしても苦労してこれを買うくらいならべつのものを買うことをおすすめします。
全体には普通の演奏、っていうかちょっともたれた感じの演奏かな。第2楽章でもりあがるあたりで金管が吠えたて、ちょっとバティスらしい。
第4楽章の最後の最後の部分でやはり金管楽器がきらびやかに響き、「ん?これブラームス?」って感じの世界をつくりあげるあたりがちょっとだけききもの。
(最近(2003)メキシコのオケとのが出てるのとは別です。)
そぬ3 ボロディン「交響曲第2番」(メキシコ国立交響楽団)
(ASV CD QS 6018
)
この曲は、曲自体がかなり個性的であることもあり、どの演奏もそれなりに面白いものとなっています。おかげでいろいろCD買っちゃうんだよなぁ。たぶんいちばんCD持ってる曲じゃないかと。
このバティス盤ももちろん非常に面白いものになっています。第1楽章第1主題の提示はすごい速度です。主題提示後わりと普通の早さになってしまうあたり、あとさき考えてるのか?と思わないでもないけれどもまあよいでしょう。全体的に速いままでどんどん突き進みます。第2主題の提示とかあっさりしていて気が抜けたりする。金管群による主題の交代がおもしろい。スヴェトラの粘着演奏がデフォルトのワタシにとっては異質な演奏だけれども、これはこれで濃いい。あっさりしているのに濃いい。どこぞのラーメン屋のやうな、演奏。チャーシュー多めです。(イミ不明。)第2楽章スケルツォはわりあいあっさりした導入のあと、ホルンの刻みがすごい速さ。おおむねそのままいってしまう。第3楽章は意外とちゃんと歌っている。まんなかへんに出てくる低音金管楽器によるユニゾンがすごくぶっきらぼーにきこえる。第4楽章はご想像どおりのぶっとび演奏。テンポは1・2楽章を聴いて予想するほど速くはナイ。普通のテンポでいくが、金管や打楽器が炸裂するすごい演奏。ただ、この楽章だけなぜかときどき腰が砕けたように力が抜けるところがあるのぅ。
全体的には微妙なテンポの交代などがあって不思議。この交響曲のアヤシサがよくあらわれていやしまいかと思います。
カップリングでイーゴリ公序曲とだったん人の踊りが入っています。どちらも力の入った爆演。とくにイーゴリ公序曲はけっこう名演かもしれないと思います。バティス節全開のぶっとび演奏ですが、歌うところもそれなりに歌っているし、テンポの速いところはすごい勢いでブットバしている。かなりの迫力。メキシコのオケ、だいじょうぶか?と思ったけど金管とかけっこうスゴイ。
いちおう現役盤(2003年3月現在)なので入手はできると思います...。
...最近、ボロディン第2のききくらべをしました。8枚くらいかな。比較していくとこの演奏かなりイイ。第2、第4楽章を崩壊を恐れず速くやっている(比較した中で一番速い。)のですが、これくらいの速さでないと。と唯一納得できるものでした。こういうスピードでやってるのは聴いたことないがあとカルロス・クライバーくらいでは?
その4 チャイコフスキー「交響曲第6番」(ロンドン交響楽団)
(ASV QS 6091)
この曲もトンデモ演奏の宝庫であるからして、さぞかしすごいことになっておろう。と思ったのですが、予想通りすごいことになっていました。日本語変ですね。いまさらわかりきったことながら。
第1楽章、序奏はまあふつう。なんだけどどうもこの演奏、ホルンがヘタレ感が強い。序奏で効果的に使われているんだけど、イマイチこの演奏では印象が薄い。主部に入ると速いテンポでびしびし進んでいきます。金管炸裂(ホルン以外。)状態。第2主題は歌ってるんだけれどウスクチ。第2主題の提示のあとのところが旋律をわざところばせたりしてとくにヘンです。展開部はたいへんなお祭り騒ぎ。
第2楽章はそれなりだがやはり速い。とくに中間部。テンポを落とすのがわりとふつうだと思うがさっさとやってしまう。ティンパニのあじもそっけもない刻みがブキミ。この楽章でもホルンの弱さが目立つなぁ。
第3楽章も速い。ここも当然同じような調子で容赦なくガンガン攻めまくる。後半のもりあがりなどほとんどバカサワギ状態。が、ここでもホルン...。「ぱぱぱぱー!!」が聞こえないのは致命的。
第4楽章、も、速め。最後のところのコントラバスの刻みがものすごい。んががーががー。
かなり異様な演奏。これまできいた「悲愴」の中でもかなりヘンだと思う。演奏時間はかなり短いのでは?面白いのだが、とにかくホルンの弱さが目立つ。録音のせい?
バティスのチャイコフスキー交響曲全集が輸入されるという情報があります。こちらは手兵のメキシコのオケらしいので期待してみたりするのでした。
その5 プロコフィエフ「ロミオとジュリエット」他(ロイヤルフィルハーモニー)
(Concerto Classics OQ0013)
これもまたアヤシイCDです。チャイコフスキーの「ロミオとジュリエット」、R・コルサコフの「ロシアの謝肉祭」などが入っていますが、ジャケットの曲順と入っている曲順がぜんぜんちがう。(それはべつにバティスのせいじゃないけど)まずチャイコが入っていて、次にコルサコフ。この2曲は低音部のもやもやした録音。あんまりバティスらしくない演奏。ときどきとっても体に悪そうな低音が響く。これってワタシのオーディオ環境にも問題ありそうな気がする。
プロコフィエフは4曲の抜粋。これも「バティス?」ってちょっと疑いたくなるがこのブチ切れようはまちがいあるまい。最初「モンターギュ家とキャピュレット家」地を這うチューバの音がすっごい。2曲目が「これがバティス?」って思ってしまう。いわゆる「バルコニー・シーン」なんだけども、とても美しくロマンティックに仕上がっている。あたりまえのことがかえってアヤシイ。3曲目は喧嘩の場面。ここでも低音金管楽器の響きがスゴイ。最後の方は怒りをこめてもりあがる。両家の確執の深さを思い知れとばかりに。えらいことになってまんなぁ。4曲目は終曲。手放しで嘆く。がここもかなり丁寧に仕上げてある。バティスらしくない気がする。全体になんだかよくまとまっている気がする、のにところどころ突然破綻するのがおかしい。これもたぶん入手はかなり困難?
※追加。2003年にメキシコ州立響自主製作盤で再発売。
その6 ドヴォルザーク「交響曲第8番」(ロイヤル・リヴァプールフィル)
(ASV QS 6006)
これはちょっとヤバいCDでした。この演奏をきいた後、普通の演奏はどうだったっけ?と思ってふだんよく聴くドホナーニ/クリーヴランド盤を聴いたら、ものすごく腰のない演奏にきこえてしまった。まあある演奏を聴いて、他の演奏の評価が変わるってことはよくあることなんだけれども。濃厚。
全体にパートのバランスが独特です。この曲は「鳥の交響曲」という気持ちなのですが、この演奏をきくと、静かな中に突然金管が鳴り響く、という、全然違ったイメージになってしまいます。また、かなりノリノリで演奏しているようです。ところどころで唸り声のようなはなうたのような声が聞こえます。第1楽章の最後の方とか。第2楽章の中間のもりあがるところもすごいもりあがりをみせます。ぎらぎらする。やっぱり金管が強いので、ベートーヴェンの交響曲第5番かなっ?と思わされるところもあり。圧巻は予想どおり第4楽章ですね。ラッパのファンファーレのあと、ものすごくねとねとと歌います。あんまりこういう歌い方はしないのかと思っていたのですが。で、そのあとはいつもどおりの大爆発。「こんな曲じゃあないだろう!?」とツッコミをいれたくなること必至。ドヴォルザークが汽車好きだったから汽車の描写を盛り込んだのだ。というよくわからない解釈でもしたのかな?と思わせるようなパワー。アヤシイ!そしてまたネットリと歌う。この楽章はこの、「ネットリ」と「暴走」の対比がスゴイ。あまりにネトネトしているので速いところはかなり速いにもかかわらずたとえばジョージ・セル盤やドホナーニ盤より演奏時間がながい。最後は再び手加減なしの大暴走機関車状態になっちゃいます。なんてオソロシイ。
その7 ストラヴィンスキー「ペトルーシュカ」(ロイヤルフィル)
(ASV)
おととしくらいに秋葉原の石●で買ったCD。ケースががびがびになっていてとても怖い。
バティスのストラヴィンスキーなんていったいどんなんやろワクワク!!
と聴いたわけですがこれが普通の演奏でした。ぶっ飛んでいるところとかナシ。
ストラヴィンスキーの音楽の特異さにバティスの演奏が負けたのだろうか...?
しかしこれなかなかいい演奏。激しいところははげしく、静かなところは静かに。爆演というよりは名演に近い方にあるなーっと思う。打楽器の思いきったアクセントがなかなかキイている。いい演奏ですね。
2003年にメキシコ州立響自主製作盤で再発売。
その8 チャイコフスキー「交響曲第4番」(メキシコ州立響)
(メキシコ州立響自主製作)
以前、ロンドン響などと、後期3大交響曲の録音があったのですが、これはバティスの勝手知ったメキシコ州立交響楽団との新しい全集録音です。勝手知ってるという強みか、やりたい放題。交響曲全6曲のほか、スラヴ行進曲、イタリア奇想曲、フランチェスカ・ダ・リミニなどが入っています。とりあえず第4について書きますが。
2回も録音するあたり、チャイコは得意としているのかもしれませんが、共感している、とすれば、なにかマチガッタ方向で共感しているとしか思えません。(秋に来日するそうな。絶対無いと思うけどこの文章が本人の目に触れないことを祈る。)
というのもこれ、ほんとトンデモナイ演奏なのです。こんなチャイ4は聴いた事がありません。全体的には、ウルサイ!!あと、速い。こんな速いのはワタシは知らない。ワタシの持っている数枚のCDと比べてみましたが、各楽章、全曲とも演奏時間は一番短いです。それもかなり。
まず第1楽章。運命の主題とかなんとかそんなの知らんもんねわし。とばかりに爆裂するファンファーレ。凱旋行進曲かいな。と思ったぞ。トランペットが耳をつんざくように鳴る。
第1主題の提示もテンポは速く、全体にきびきび(?)と進む。とにかく
「この楽章こんなにウルサかったっけ?」
と思うことウケアイ。
第2楽章も速い。冒頭の歌も、速いテンポでやるが、ソコソコ歌いこんでいるので、ロシアのおっさんの歌みたいな気もする。チャイコがこれを狙っていたのかどうかは不明。中間部もひとあじチガウ。
第3楽章スケルツォ。ぼそぼそしたような雰囲気。
中間部の木管の主題が速くなって出てくるところで、すごい速さでやるため、木管がついていけなくて転んじゃってる。アジワイぶかい。
第4楽章
バティスにこういうのを振らせたらスゴイだろうなって楽章だけあってスゴイ。アタマの下降音形から予想通り大爆発。金管による主題のふきならしなど、誰がいちばんデカイ音がでるか競争みたいな感じ。最後の音はちょっとダレちゃったのか金管の音があまりきこえませんが、そこまではすさまじい音がしています。
全体にアンサンブル等はかなりアラっぽいと思いますが、いかにもバティスらしいぶっとんだ演奏です。この演奏を聴いて、改めてこの人ってどういう指揮をするんだろう(これで冷静な指揮をしていたら楽員は「オニっ!」と思うだろうなぁ。)とか、ナマでこんな演奏ができるものなのかしらん?(金管はバテないのか?など)などの疑問を改めて感じました。2002年秋の来日(オケは国内オケですが)が楽しみです。
その9 チャイコフスキー「交響曲第5番」(メキシコ州立響)
(メキシコ州立響自主製作)
引き続きチャイコ全集から第5番。
これも全体にテンポは速めです。第1楽章はひょっとすると今まで聴いた中で一番速いテンポをとっているかも。スヴェトラーノフが来日したときはここ速くて、「おーナットク!」と思ったのですが、それより速いのでは?手元にあるフェドセーエフ盤もかなり速いのですが、やはりそれより速いです。
この曲はゲルギエフがウイーンフィルとやった爆演が最近評判ですが、ワタシはあれはどうも好きになれません。聴き終ったあとに、ものすごくおしゃべりな人にムリヤリ話を聞かされたような疲れを感じてしまうのです。これもウルサさの点では似ていますが、これは、テレビつけながらインターネットしながらラジオ聞きながらデンワかけてたら携帯電話に着信があって玄関ではインターホンが鳴っている。って感じの雑然とした雰囲気を感じます。アツイ。アツクルシイ!
第2楽章のはじめの歌の部分はじっくりと聴かせる。おーっ。と思って聴いているとクラリネットの旋律あたりからテンポが速まって次第に雲行きがアヤシくなってきてトロンボーンがバリバリ言い出したりします。めちゃ起伏がはげしい。
第3楽章はテンポ速めであっさり。がなるところはがなっている。すごくあっけなく聴いてしまったきがするんですねぇ。速いから。
第4楽章は最初が案外薄めの響きではじまって、あれーっ、ときいているとテンポが速くなるところでびっくりさせられます。アンサンブルが崩壊するのも一向に気にせずに突き進むさまはものすごい。この交響曲も運命に打ち勝つ!というテーマだといわれているけれども、勝利というコトバだけではあらわしきれないほどの(なんの計画性もないと思われる)バクハツを繰り返しつつ終わる。テンション上がるわぁ。
このへんまできいてきて案外歌わせるところは歌わせてるなぁと。
その10 チャイコフスキー「交響曲第6番」(メキシコ州立響)
(メキシコ州立響自主製作)
ワタシがちゃいこの後期3大シンフォニーの中で一番すきな曲なので期待してきいたのですが、3曲の中ではそれほどでもありませんでした。
このCDの輸入元のHPには、第一楽章展開部の前をファゴットで吹かせているこだわりの演奏、なぞと書かれていました。ここは音量の関係(ちいさすぎる)でファゴットでは吹きにくいので、代わりの楽器(バスクラリネットだっけ?)で吹かせるところですが、実際に演奏を聞いてみると、楽器替える必要なし!音でかいもん。このことをもちだすまでもなく、全体に「おまえらにはピアノっちゅー概念がないのかっ!!!」ていう感じの、小さい音のところもどんどん出していく演奏でした。第一楽章の序奏のファゴットや、第1主題の提示からして、遠慮のない音量でいってしまう。
第3楽章など、なんだかもう空騒ぎっぽいので、この演奏の聞きどころは第1楽章かなっと思います。特に展開部はすばらしい(別のイミで。)「おいおいファゴットでけーよ...」なぞと油断しているところに壮絶な展開部が爆裂しるのでした。(しる?)
この人の演奏を安易にラテン系とかいう評価をして、サボテン荒野のような例えをするのはキライですが、ここをきいていると、波乱万丈田舎が舞台の西部劇のようなフンイキを感じます。モノスゴイもりあがりかた。音楽が前に前に流れていきます。
第2楽章は2番目に出てくるテーマがフレーズ感まるでなし!っていうのがすごかった。第3楽章は、たまたまきいたときそう感じただけかも知れませんが、脚があがってしまった馬をムリヤリムチでぶっ叩きまくってひーこら走らせてるような感じがした。音は出ているのであろうが...。なぜだろう?
第4楽章はいつもどおり速いのがヘン。銅鑼も陰陰と、「ゴーン...」鳴るのがフツウだが、「ぐわぁ〜ん...」と鳴る。ナマで聞いていたらコケそう...。
その11 ベートーヴェン「交響曲第7番」(メキシコ州立響)
(メキシコ州立響自主製作)
ベートーヴェン全集を1番から8番まで聴いた。中で最ものけぞっちゃった曲。第9と並んでまあ期待はしていたんだけれど、ここまでとは...(汗。
なんちゅうか、よく、B級演奏ってことをいいますが、ここまでやられるとそういう例えもしたくなってくるというものです。
第1楽章、お約束どおりモノスゴイ音量で入る。「お。ふつうのテンポじゃん?」と思っているまもなく速くなってくる。主部に入る直前、オーケストラが静かになってきたバックになぜかオートバイのような爆音がかすかに聞こえるのもご愛嬌?
主部は早いテンポで、アクセントをバシバシキメながら進んで行く。ティンパニも外のバイクにまけじと(?)爆音を撒き散らす!!はっきりいってベートーヴェン特有の光のうつろいのような表情はまったく聞こえない。これがティレーマンあたりだと「きこえそうできこえない」ので気になるのだが、ここまできこえないと「どうでもいいやそんなこと。」って気になってしまう。
第2楽章も速めのテンポ。慟哭、のようなものはほとんど聞こえない。キメのリズムも軽くて「あららっ?」て感じ。いろけもそっけもない。B級のニオイがプンプン。
第3楽章もすごい速さ。と凄い音。ティンパニのリズムが句読点のように響くのが特徴的な楽章なんだけども、あのティンパニすら(かなり強力にぶっ叩いているにもかかわらず。)流れの一部としか聞こえない。
第4楽章も、怒涛のように荒れ狂う。ここでもフォルテとピアノの劇的な交代など一切おかまいなしにガンガン攻めまくる。ううー。クレンペラーに助けに来てほしい気分。このあと第8が入っているんだけれど、「もうおなかいっぱいですぅー」って感じで聴く気になれなかった。
全集を通して速いテンポでガンガン攻めていく演奏(第6番でさえ。)だが、ピリオド系の解釈を想像すると裏切られる。骨太なのに軽い、という不思議な演奏。提示部を律儀にいちいち繰り返すのがちょっとどうなんだろうなぁ...と思うのだが、テンポがめちゃくちゃ速いのでそれほど気にならない。
この全集ウニ、じゃなかった、この全集に関しては、最近ききなおしてちょっとまた違ったような感想も持ったので、そのうちまた書くかもしれません。
その12 ビゼー 組曲「アルルの女」(メキシコ・シティフィルハーモニー)
(ASV QS6134)
このCDからの抜粋盤をたまたまきいたのがバティス好きになるきっかけだった。
「アルルの女」はもともと劇の伴奏音楽で、ぜひいちど全曲版できいたみたいものだ。と思い、このあいだミッシェル・プラッソンの全曲版を買いました。しかし、同じ旋律が何度も出て来たり、ちょっとカッタルイ感じがしました。この、組曲バージョンは実は、よくまとまっているんだなぁ。と、ちょっと感心してしまったような按 配。(余談。)
さて、バティスの「アルルの女」。冒頭の序曲、フランス民謡「王の行進」の旋律で始まるわけですが、やたらとスタカート気味で、ちょっと切れがよすぎやしまいか?という感じ。緊張感のある演奏です。続くメヌエットも例によって早めの演奏。かと思うとアダージェットはすごくゆっくりと歌いこみます。が、オケの実力もあり、とても美しいのうー。とはちょっといいがたい。でもがんばっています。「カリヨン」では冒頭のホルンの突き刺すような響きがスゴイ。この曲の中間部など、ちょっと寂しげになるところがこの組曲の意外にオイシイところなんですが、この演奏ではそういう対比はあまりうまくいっていないかもしれません。ききどころは他にある。と。
第2組曲「パストラール」冒頭は巧いオーケストラで聴くと、油絵のような色彩感を感じることがありますが、この演奏ではそういう感じはしません。そういうものを求めてはいないんだけどもね。
間奏曲ではサキソフォンの音色に難が...っていうかあまり「これは!」って音を出している演奏自体イマイチ記憶にない。録音の加減?メヌエットは速めのテンポでどことなくパサついた感じ。ファランドールは圧巻でおます。最初の旋律はわりとふつう。弦で繰り返されると、冒頭のような切れ味の鋭さが出てきて、スネアドラムの刻み(※マチガイ。)の上に速いテンポのファランドールが始まる。とにかく大もりあがり、なのだが、最後になってもうひと暴れしてくれる。「こんなおバカっぽいぶち切れようをする指揮者はなかなかいませんぜ!!」ってなワケで注目してしまったというワケです。
全体にきくと、フランスの田舎ふうのひなびた味わい、ってものは(別の意味でひなびた味わいはあるかもしれないけど。)期待できませんが、面白い演奏だと思いま す。ファーストチョイスとしてはおすすめしませんが。っていうかバティスの演奏自体ファーストチョイスにはお勧めしないけど。
驚異的に安い輸入盤レーベル「ブリリアント・クラシックス」で手に入るようになりました。カルメン組曲なども入ってたしか2枚組で1300円前後くらいで買えると思います。
※この、「ファランドール」の太鼓は、タンブール、っていうフランスの太鼓でやるのが本当だと思います。この演奏のようにスネア・ドラムでやるのは珍しいですね。タンバリンでやってる演奏はよくありますが。
その13 ラフマニノフ シンフォニック・ダンス(ロイヤルフィルハーモニー)
(NAXOS 8.550583)
これもNAXOSで出ているものの一つです。幾分マイナーな曲なので、「しらんよそんな曲」という人がいるかもしれません。「ラフマニノフの交響曲第4番」などといわれるような曲です。曲の解説は「おきにいりクラシック」の方をご覧下さい。さて、バティス氏の演奏です。
第1楽章、テンポは速めです。この曲はリズムの刻みが特徴的な曲ですが、ここではその刻みがあまりにガシガシしているために管楽器のメロディが時にかきけされたりしている気がします。シャープなカッコイイ曲、というイメージがある曲なのですがとにかくウルサイ。打楽器もバシバシ叩いている。で、中間部、シンプルな泣かせのメロディで大もりあがり!ってところですが、バティス盤では管楽器などの微妙な音色が録音のせいなのかきこえてこなくてここの美しさはイマイチ。弦になってからの歌いこみかたは雑だがすごいかな。後半ふたたび速くなって大もりあがり。最後の遅くなるところでまたえらくテンポを落とす。
第2楽章。ラヴェルの「ラ・ヴァルス」を彷彿とさせるようないくらか退廃的なフンイキのある楽章だが、かなりはっきりとやっていて暗さやオソロシさをほとんど感じない。これはこれでしかしけっこうイイかもしれない...。
第3楽章。いきなり打楽器の強打。バティスっぽいごちゃつきぶり。テンポは珍しくゆっくりめで、キメるところをきっちりきめていく。ピアノ方面のダイナミクス(強弱)のつけかたが弱いので強弱のバランスがものたりないが...。全体にウルサイ。
中間部はこれまたわりあいはっきりしている。木管低音の軋むような音がはっきり出てくる。やはりここで聞こえてくる狂気じみた響きは聞こえてこない。なぜか明るい。でもやっぱりいい。再び速くなるところ、テンポはおそめ。しかしここからの音楽はバティスの本領発揮。とにかくウルサイ。テンポをあおるところはあおりまくる。「怒りの日」のファンファーレのあとの打楽器がカッコイイ。ものすごい響きとともに終わる。
全体的にはウルサイ。熱演ですな。この曲のファーストチョイスにはできません。だいすきな第1楽章中間部がイマイチだし...。でも爆演まちがいなし。
その14 モーツァルト 交響曲第36番「リンツ」(ロンドン交響楽団)
(ASV)
バティスなんだからモーツァルトもひょっとするとひょっとするかも...?と思いつつ買ってみたのですが、まあフツウでした。
第1楽章から第3楽章はわりとゆったりめのテンポ。響きもわりとふつうでこれといってバティスらしさは感じられません。よーく弦の響きに耳を傾けると、ウイーンフィルあたりの弦の音が恋しくなってくる...。第4楽章はキビキビしたテンポでなかなかきもちいい音楽になっています。
全体的にときどき金管の響きが突出したりもするのですが、古楽系オケがバンバンやっている時代にわざわざ聴くほどのことがあるのかどうか...は、ちょっと疑問。
その15 レスピーギ「ローマ3部作」(ロイヤルフィルハーモニー)
(NAXOS 8.550539)
とにかくそこいらじゅうで、「どかん」とか、「ばり」とかいう音が聞こえる演奏。書きはじめたのですが、どうもイマイチうまくかけないので、「お気に入りクラシック」にも書いたので、(←悪文の見本)そちらを見てくださいな。ただ、ここで書いたときとちょっと印象が違って、案外ロマンティックなところも聴かせるかなっと。ただ、響きが明るいのでやっぱり、「イロッぽい」感じはしないのです。
その16 ワーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」序曲(ロンドンフィル)
(ALFA-1035)
メキシコ州立響の自主製作盤として発売されたもののひとつ。このシリーズで今までバティスが出した主だった録音は網羅しているかな?このCD、ケース裏には4曲しか曲目が書いてないけど5曲入っています。(ワーグナー編曲のグルック「アウリスのイフゲニア」序曲)タブン上記のロンドン交響楽団とのブラームスなんかと同じシリーズで出ていた1枚からの再発売だと思います。録音はまあまあなのですが、なぜだか録音の左右が逆。1番バイオリンが右側から聞こえてくるので違和感が...。(サントリーホールのP席だと思えば?)最後のグルックだけたぶん別の録音なのでしょうけど、普通の配置になっています。
ニュルンベルクのマイスタージンガーですが、ロンドンフィルのブラス隊がお下劣な音を出してがんばっています。ゆっくりめのところは多少弦がキンキンいいますけんどもきちんと(?)ワーグナーらしく歌っているのでご安心下さい。(なにが?)テンポはまあまあ平均的ですが、バティスの演奏ですから、もりあがるところはすごいこともりあがっています。
バティスのこの曲は他にロイヤルフィルとやっている演奏があるのですが、こちらの演奏と全く芸風がちがっているのはなぜなんだろう。ロイヤルフィルとのはすごい速さでやっていて、ワーグナーらしく歌う余裕なんてさっぱりありません。どちらの演奏も細かいニュアンスを聴き取るには向かなさそうだ、という点では共通しているのですが。
その17 ムソルグスキー(ラヴェル)「展覧会の絵」(ロンドンフィル)
(ALFA-1028)
これもConcerto Classicsのカタログに載っていてながいこと探していたCDでした。
やっぱし力づくの演奏でして、合わせにくそうだ、と思うところとか、当然合うだろう、というところまでけっこうみごとにずれています。あと、美しい、ってところがないのも特徴。ふだん聞こえてこない音がきこえてきたりするし。聞きどころをいくつか挙げると、「サミュエル・ゴールデンベルグとシュミイレ」のトランペット...こういう歌いかたははじめて聴いたかも。あと、「カタコンブ」の金管はさすがのイギリスブラスのそこぢから!で、普通はそのまんま「ババ・ヤーガの小屋」に突っ込むのですが、ここに休みがあるのはなぜだっ!?元もとの演奏はたぶんこうではなかったとおもうんだけどなぁ。「キエフの大門」は、ここぞとばかり鳴らしまくり。せめて冒頭の金管のコラールぐらいきれいに響かせてくれいっ!と言う注文はラーメン屋さんでスシを頼むような無理な注文と言うものか...?ムチャなバランスで「俺が俺が!」と吹いてしまう。
あと、バティスの特徴である打楽器の強打がスゴイ。大太鼓はたぶん代打で清原が入っていると思う。低音楽器もスゴイ音を出していて問題だが(何が?)(←あ。上とおんなじボケだ。)これはウチのオーディオ環境にも問題があるかも。床がずいぶん共振していたし...。
その18 ラヴェル「ボレロ」(ロンドンフィル)・ブリテン「青少年のための管弦楽入門」・プロコフィエフ「ピーターとおおかみ」(ロイヤルフィル)
(ALFA)
いいかげんだなぁ。ボレロのアタマの1小節くらいが抜けている。どうせわかりゃしねえやと思ったのかオイ!?
このボレロ、テンポは中くらいで、リズムもニブイっぽくて、音色の交代もイマイチでどうにももりあがらない。最後だけ力づくでぐわん!と盛り上げようとするけれど、楽器の音色がうまくブレンドされなくて空騒ぎっぽい印象が残る。あまりよい演奏ではないなぁ。っていうか、はっきりいってダメ。つまんない。
どうもバティスはロイヤルフィルとの方が相性がイイらしい。ブリテンになるとだいぶ変わってくる。それほどバティスらしい演奏とも思えないけれど、金管なんかががんばっているし、弦もきれいな音を出している。フーガのところのホルンなんかキモチイイな。仕上げはいくぶん雑。
プロコフィエフは基本的にそんなに濃いい曲ではないからバティスの本領を発揮するのはむずかしそうだけれど、おおかみホルンとか、猟師のてっぽうとかに特徴が現れているように思う。あと、おおかみをつかまえるところでわりあい邪悪な音を出していて、「おお!プロコフィエフだぁ!」という感じがするが、お子様向けではないかもしれないなぁ。
その19 シベリウス ヴァイオリン協奏曲(フィルハーモニア管 Vn.Justus)
(IMP)
独奏のJustusさんはヘンリク・シェリングなんちょか賞だかをとったメキシコのヴァイオリニストらしい。かなりオン・マイクなのでしょうか、ノイズをずいぶん拾ってガリガリやっています。
バティスは協奏曲の伴奏ではおとなしくしていることが多いようですが、この伴奏では、ヴァイオリンのソロが終わったとたんにまるで手綱をぶっ放された馬のように走り出す場面がかなりみられて、バティスを聞くという楽しみが、いくらかないともいえませんな。これを書いている2003年9月現在、オンラインショップなどでかなり安く買えるので、まあ、スキな方はお買い求めになってもよろしいかと。金管楽器が「ぶわぁ」などというこの曲の演奏はそんなにないでしょう。
その20 ブラームス交響曲全集(メキシコ州立響)
(メキシコ州立響自主製作)
はたしてブラームスでバティスが特色ある演奏が出来るのだろうか?と不安を感じつつ買ったもの。その2で書いたブラームス第2がいかにも精彩を欠くものであったのにくらべ、これはいかにもバティスらしい音楽になっています。だいたい速めのテンポなのでこれは今ハヤリのピリオド系?かと思うとそんなおされなものでは全然ないです。バティス自身もおそらくトスカニーニあたりを目指したものでしょう。ひどくヨッパラった時に小さな音で聴くとトスカニーニっぽく聞こえないこともないかも。
第2番が特に面目躍如といった感じ。第3楽章なんかすごい速さ。第4楽章もとほうもない爆裂ぶり。全集全体を通すと部分的にはびっくりするくらい速いところ(それは物理的に弾けないだろう。ってくらい)もあるわけですが、おおむね少し速めくらいのテンポですね。ただ、かなりキツ目のアクセントや、かなり濃い歌いっぷりなど、いかにもバティスらしい演奏になっています。また、かなり自由にテンポを動かしているのも目立ちます。第4番の第1楽章は、「タンゴですか?」と言いたくなるようなダンサブルな(おいおい)解釈。斬新だ!
ブラームスというとひたすらシブイというイメージがあるわけですが、この全集は今までのブラームスのイメージとはかなり違ったものになっていると思います。ここでのブラームスは、赤いハリネズミ屋さんでいくらかきこしめして、歌を歌ってみたり、腕をぶんぶん振りまわしてみたり、壁にトマトを投げつけてみたりって感じです。バティス好きのかたにはよいものです。
その21 シャブリエ スペイン 他(メキシコ州立響)
(ASV 673)
今回メキシコ州立響自主製作シリーズには入っていなかったかも。新世界レコード社あたりにいくとまだ手に入るのかもしれませんが、いくらか入手は困難かもしれません。
この、シャブリエの「スペイン」は、シャブリエがスペインの民謡を採譜して作曲した曲ですが、華麗なオーケストレーションのせいかフランスっぽいアジワイがいっぱいの楽しい曲で、短いながらスキな曲です。しかしこの演奏では、オケは乾いた音を出していて、そういうしゃれた味わいとはかけはなれたものになっています。はじめのテーマが出てきて、トゥッティで繰り返されるところからもう「いてまえ!」って感じです。そのままほとんどテンポを緩めたりすることなく突っ走ります。いかにもバティスって感じの演奏で、金管はハデな音を出しているし、後半でのバスドラム(あれは気持ち良さそうだ)も、ものすごい一撃です。
ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」も乾いた音色で、まるで天火干しにしたような雰囲気。なんだか「1・2・3・4」と数えながら演奏したような...?サンサーンス「死の舞踏」はやはり頭拍にアクセントを置いたような妙な演奏。後半は爆裂しているし。ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」は、よくわからない曲なのでくわしくはいえないがやっぱりちょっとイロッポさに欠けるなー。バティスは「G線上のアリア」とか出しているがこういうのはどこが聴きどころなんだか困ってしまう。デュカスの「魔法使いの弟子」は、「魔法使いが留守の時に弟子がほうきに水汲みをさせようと魔法を使ってみてんけどな、とめかたわからへんねん。ほうきはいっくらでも水汲むやろー。もうそこらびちゃびちゃになってもーてもう、ほんまさっぱわやですわ。」って感じのノリ。(どんなノリなんだよ)
このCD、メキシコ州立響がバティスと一緒に楽しくやってる感じで、なかなかです。
その22 ベルリオーズ 幻想交響曲(フィルハーモニア管)
(carlton 30336 01232)
以前、この演奏がロイヤルフィルと書いていましたが、フィルハーモニア管の誤りでした。ワタシの持っているCARLTON盤は裏が赤いジャケットでなかなかにハデでよろしい。最近出たAlfa盤は同じもののようです。
第1楽章、異様に遅く間を取った序奏で始まります。ここはバティスにしてはやけに念入りですが、意外なききどころかもしれません。で、そのようにまったりさせておいて、主部に入るといつものバティス節で速いテンポで演奏しています。フォルテは叩きつけるように広がる感じ。あんがいテンポをゆりうごかしたりしてる。
第2楽章のワルツは最初の低音弦が...あとはわりとやっぱりちゃんとテンポを落としたりしている。
第3楽章は最初のオーボエが、でけえよ。おまけになんか入るところにグランドノイズが。なんなんだ?このへん、じつにこうぶっきらぼうというか、よく言うと素朴と言うか。恋人同士の語らい、遠くから聞こえるむぎぶえ。って感じじゃない。恋人同士の語らい、どういうわけだかとなりでオーボエ吹いてるやつがいてなんかうざいんですが。って感じ。まんなかへん、出番が来たとばかりにそれまでおとなしくしていた楽器が...。最後のティンパニも同様。きみたちうるさすぎ。
第4楽章からは、まってましたとばかりに金管軍が吼えまくり、打楽器が強打される。金管楽器なんか、弦にメロディを受け渡すとことか、「受け渡そう」という気持ちがまったく見られないね。
第5楽章も同じ。ここぞとばかりにさわぎまくる。鐘は普通のチューブラーベルだと思うけど、なんでこんなでかい音が出るのだ?よくわからん。普通の演奏だとテンポを落としてキモチ悪くやるところもほとんど速いままでさらっと。
おおざっぱな演奏だがこのウルササはバティスだぁ。あと、クラリネットとかがじつに素朴な音を出していてステキだ。併録の「海賊」序曲も金管がバカ。(←激賞)
その23 ショスタコーヴィチ 交響曲第5番(ロイヤルフィルハーモニー)
(日本クラウン CRCB-98)
メキシコ州立の自主制作で再発売されているものです。
永年レア盤としてさがしまわっていたのですが、日本盤を高くネットオークションで入手した直後に再発売されました(泣
バティスのショスタコーヴィチってすごそうですが、案外ここではバティスは冷静です。第1楽章の主題の提示も遅めのテンポでやっています。展開部もそんなに爆裂って感じではない。全体に少し響きがつぶれ気味で、なにやってるのかよくわからないという弱点がある。
第2楽章も遅めのテンポでじっくりとやっています。バティスだとは思えないくらい。管楽器の表情がわりと前に出てきていてそこがきき所かも。弦の歌わせ方はイマイチどっちにいっていいのかわからない感じ。あまりムチャなテンポのいじり方はしていません。ここいらは強いところは金管がぐっと出てきて若干バティスらしい雰囲気がする。
第3楽章はきっちりしみじみ歌い上げています。頂点のようなところでも抑制をきかせていて、どうもバティスらしい切れ方がたりない。バティスであることを前提としないできくにはいい演奏かも。
第4楽章ではじめてバティスらしさが発揮されます。これがやりたかっただけじゃねえのか?と言いたくもなる。いきなり金管がバンバン鳴らされるし。中間部はやっぱりきちんと演奏しています。
ところどころバティスらしさは見せるものの、全体としては、バティスはこんなもんじゃないだろう。と思う。ぶっとぶ演奏を聞きたければマッケラスやビシュコフをおすすめする。唯一第4楽章がいかにもバティスらしいくらいか。現在もレパートリーとしてメキシコオケの定期演奏会でかけているので(バティスはあまりレパートリーの広い指揮者じゃないらしい)、ぜひメキシコオケと再録音して欲しい。
その24 フォーレ 組曲「ドリー」(メキシコシティフィルハーモニー)
(Alfa Alfa-1030)
ピアノ連弾用にフォーレが書いたのをアンリ・ラボーが管弦楽用に編曲したもの。バティスともあろうおかたがなぜこのようなレパートリーに手を染めたのかよくわからないのですけど、たしかオリジナルのCDでは他にもフォーレの作品を入れてましたね。フォーレの曲のなかでは意外に人気曲のようです。
非常に美しい曲で、バティスがやったところでそれほどむちゃなものにはならないでしょ。という予想どおり、まあ、美しくも素朴な仕上がりになっています。ただなあ。やっぱりちょっと普通じゃないよなあ。「ミァウー」の最後のキメがやたら張り切っていたり、「ドリーのお庭」でチェロがやたらと歌い上げてみたり。「かわいらしさ」ではやや濃厚ながらきちんと歌い上げ(金管楽器が突出したりするとはいえ。)、最後の、「スペインの踊り」で爆裂しています。ここはピアノ連弾だと早めにひくようですが、管弦楽版ではそれほどでもないのが普通だと思います。バティスは管弦楽版でもピアノ連弾版ばりのテンポで押し切ろうとしています。ここまでわりとマトモにやってきたのがわやくちゃでんがな。強力なアクセント、打楽器の強打!・・・・・・って、こんなどハデな曲じゃありませんてば。小澤盤とかに慣れていて、バティスを知らない人がきいたらこれは心臓悪くするよ。
オケの実力もあやしいというか、バティスのあの指揮じゃしかたないかもしれないけど、「かわいらしさ」の最後の音で出のタイミングがバラバラだったりしてアジワイ深い(なにが?)。しかし改めてきいたけどいい曲だなあ。
その24 ビゼー 交響曲 ハ長調(ロイヤルフィル)
(ASV QS6135)
ブリリアントクラシックスに入ってるのと同じものでしょう。こんな曲でどうバティスがぶちきれるちゅうねん。と思うわけですが、さすがにぶちきれてはいませんわ。普通のCDをかけてそのままのボリュームで続けてかけるといきなりデカイ音がするのはもとの音がでかいのか、あるいは録音技師のカルバーハウス氏の好みか?
演奏はしかしこれが意外に端正かつきっちりとリズムの勘所を押さえたいい演奏。第1楽章はこの曲の若々しい感じがよく出ている。第2楽章もきちんと美しく歌っているのであるぞよ。第3楽章スケルツォももう少し美音できかせてくれい!という無理な注文はしたくなるとはいえ、自然なテンポで元気よくきかせる。第4楽章のテンポはきもち速めか。まあ若干強めのアクセントはついているかもしれないけれど、それとて驚くほどのものでもない。全体にあまり無理のない、それでいて元気ないい演奏だと思います。実は私の持っている数枚のこの曲のCDの中では一番の名演のような気がしている。
その25 ビゼー カルメン組曲(メキシコシティフィルハーモニー)
(ASV QS6133)
これもブリリアントクラシックのと同じものだと思います。同じビゼーの「アルルの女」がかなりな演奏なので、こちらも面白いだろうと思ったのですけど、こちらは意外にそれほどおかしなことはやっていません。歌いまわしかたに独特のところはあるけれど、へんにブチキレたりしていないように感じます。テンポの設定の仕方もそんなに速くないし。そんなにもともともウルサイ曲じゃないんですね。メキシコオケのどことなく素朴な雰囲気がところどころ出ているあたりがききどころでしょうか。ところどころ大きな音も出ますが・・・・・・。最後はそれでも乾いた雰囲気でもりあがります。
このCDではむしろ、カップリングの序曲「祖国」のほうがむちゃな演奏です。この曲自体ほかの録音できいたことがないのですけども、ちょっときいただけで、「そんな曲じゃあございますまい?」と言いたくなるような演奏。えらくご立派な「かえるのうた」をきくことができるでしょう。
その26 ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」ほか(東京ライヴ) (東京ニューシティ管弦楽団)
(DCCA-0009)
バティスが2002年に来日したときの演奏がCDで出る!ということで早速販売元から買ってみました。送料やら振り込み手数料やらでえらく高くついてしまった。
曲は、ドヴォルザークの「謝肉祭」序曲、「新世界より」「スラヴ舞曲第8番」というもの。
最初の、謝肉祭序曲はまあまあ騒々しいとは思うけれど、意外にしっとりと美しく歌っていたりしてまあ、バティスとしてはテンション低め?テンポもいくぶんゆっくりめです。後半になって次第に力が入り始める。最後はなかなか。
新世界交響曲もわりとゆったりめに入る第1楽章。ところどころテンポを揺らしています。歌わせ方もちょっと独特ですな。提示部のくりかえしはテンポを上げてる?展開部では金管が鳴っているのですが、どうも軽くて平板な感じ。さすがにCDできくとちょっとアラが見えますねぇ・・・・・・。再現部からはさくさくと演奏していていかにもバティスって感じ。最後けっこうわけのわからないもりあがりかたをした挙句・・・・・・げげ。こんなことしたっけ・・・・・・?
金管もっとがんばってくれーっ!
第2楽章は速めのテンポながらマジメにやってます。ときどきいつもはきこえてこない音がきこえますが・・・・・・。一部むむぅと思うトコロアリ。
第3楽章は速めのテンポでとばしていきます。若干、「そこは間をとるんじゃないのー」って思うくらい。実際に聴いたときも思ったんだけれど、ティンパニの音がかなりものたりない。大事な役割をはたしているのに。もしかしたら東京芸術劇場のあの、オルガン席前の屋根の下は音が広がらないスペースなのかしらと最近疑っている。中間部もあまりテンポを落とさず、すいすいやってしまいます。タメのほとんどない演奏。
第4楽章、ゆっくり始まって、主部に入るとやっぱりどんどん演奏していってしまう。こういう楽章はやっぱり少しはりきるようです。4分30秒過ぎのアクセントなど、かなり。ここはいつもちゃんとアクセントつけて欲しいなあと思いつつ聞くところなんだけど、やりすぎ。全体にやっぱりなんだか平板なんだけど、ときどき金管楽器がグロテスクな音響をまきちらす。
アンコールのスラヴ舞曲はかなり濃厚に爆裂しています。
全体に、録音のせいだかオケの技量のせいだか、指揮者の才能か、どうもいまひとつキレのない演奏に感じる。ただバティスの芸風としてはロンドンフィル盤よりこちらのほうが本来に近いのではないかと思います。
DCCAなんてCD番号だと「デッカ?」と思ったりしますけど(思わない?)デルタ・エンターテイメントという国内の会社で出したものです。2005年4月に発売されたものですが、これを書いている4月28日現在HPから消えているのはなぜだろう。
東京のオーケストラでバティスと相性がよさそうなのは日本フィルだと思うなあ。呼んでくれないかなあ・・・・・・。
その27 ロドリーゴ アランフェス協奏曲 ほか (アルフォンソ・モレノ(ギター) メキシコ国立交響楽団)
(ASV CD DCA 887)
バティスは何回この曲録音してるのかなあ?もう1枚、旧盤を持ってはいるのですが。もう1回くらい録音しているかもね。
このCDには、アランフェス協奏曲のほか、ある貴紳のためのファンタジア、祭の協奏曲が収められています。演奏はまあ、オーソドックスなものといっていいでしょう。基本的にバティスらしい暴れっぷりはきかれません(時々ドギツイアクセントがつきますけども)。オーケストラは多分に素朴な音を出しています。そういう雰囲気を楽しむCDだと思っていただければよろしいのではないかと。アランフェスの第2楽章のギター・ソロのまったりした歌いっぷりには、またなんだか違った意味で郷愁をかきたてられるようにも思います。
貴紳のためのファンタジア、は、曲の小ぶりなイメージと、素朴な音色がうまく合わさって、また独特の雰囲気を出しています。(管楽器が生ナマしい音を出したりしている)また、「祭の協奏曲」は、あまり聞かれない曲ですが、アランフェス協奏曲などになじんだ耳には、すんなり入ってきそうな親しみ易い曲です。
その28 ロッシーニ序曲集 メキシコ国立交響楽団
(ASV CD DCA 857)
確か来日した時のインタビューで、「わしのこのCDをきいちくれ!」と言っていたのはこのディスクかまたはヴェルディの序曲集かあるいは両方かだったようにおもう。私にはこの演奏はよくわからぬ。バティスらしい演奏と言えばそうなんだろうけど。
「ブルスキーノ氏」では、金属の譜面台を「がちゃがちゃ」と叩いているがそれでいいのかしらと思う。セヴィリアの理髪師は、ぶっきらぼうな弱い部分と、とにかく爆裂する部分が交替にやってくる。とにかくうるさくしていいと思うやいなや全楽器(特に打楽器)が鳴らしまくる。あとは、第1主題の前の低音の刻み。それでいいのか?他の曲あんまり知らない。わりとソナタ形式っぽい曲があるんだけど、展開部もなにも混沌としている気がするなあ。それがバティスらしいといえばそうなんだけど。
最後は「ウイリアム・テル」序曲。わりと最初のチェロは歌う。テンポは速めで快適。嵐の部分は「どん・どん、」と鳴らす太鼓にのってわりと落ち着いたテンポで。もちろんウルサイけど。小鳥のうたの部分(なんだっけ)は、ずいぶん自由にほのぼのとしています。最後の部分はやっぱり金管楽器がハデに鳴ります。
その29 「運命の力」序曲他 ヴェルディ序曲集 メキシコ国立交響楽団
(ASV CD DCA 856)
あまりヴェルディの作品については詳しくないです。知っている曲についてすこしコメントを。
「運命の力」序曲(塩?)。全体に速いところは速く、ゆったりのところはゆったり演奏しています。速いところと遅いところのバランスがあまりよくない気がするのです。うるさいところはかなりうるさいし、響きはパサパサしている。最後はかなりテンポをあおっていますね。
「シチリア島の夕べの祈り」序曲でも同じ傾向。最後のところは速くするだろうと思ったら案外ゆったり。全体にやっぱり、メキシコオケのパサついた素朴な音色がきかれます。フォルテになるとここぞとばかりに鳴らす。
オペラが苦手なのでヴェルディはあまりききませんが、こう序曲集で聴くと、ステキなメロディがたくさんでいいですねえ。
その30 オーケストラのロリポップ ロイヤルフィルハーモニー管弦楽団
(RPO RECORDS CDRPO 5006)
これって国内盤でも出てたかなあ?カタログで見た気がするのですけど。
なんちゅうか、小品集みたいな感じです。ただ、ASVとかの録音とかぶってるわけではなく、これはこれで録音したものらしい。1990年2月の録音年月日が入っています。
曲目は、セヴィリアの理髪師、G線上のアリア、シャブリエの「楽しい行進曲」、ベルリオーズの「ハンガリー行進曲」、アイネクライネナハトムジークの第1楽章、チャイコフスキーの弦楽セレナーデの第2楽章、タイスの瞑想曲、マイスタージンガー前奏曲その他14曲という、かなりまあ基準のわかりにくいチョイスとなっています。
セヴィリアの理髪師は、「その28」のロッシーニ序曲集に、マイスタージンガーは「その16」にも収録されていますが、これとは演奏の傾向が違います。ロッシーニは、オーケストラの違いもあるのでしょうけれど、かなり響きは整理されて、聴きやすいです。それに、この演奏はかなりのスピードで激走していて、バティスの演奏の迫力をかなりよくあらわしていると思います。次は「G線上のアリア」が入っていますが、こういう曲ではさすがに強烈な個性を発揮するのは難しいでしょう。次の、メンデルスゾーンの「夏の夜の夢」からの2曲、「ノクターン」はともかく、「スケルツォ」も、速いテンポでやっていてなかなかいいです。で、ノクターンのあとに、シャブリエの「楽しい行進曲」。このあたりが選曲基準がわからん。雰囲気ぶちこわし。この「楽しい行進曲」かなりにぎやかな作品ですからねえ。あまり歌いこむことはぜずに、騒いでいます。ハンガリー行進曲は、キモチ速めで、あまり深い叙情のようなものは感じない。「アイネクライネ」は、けっこう正統的なアプローチでは。といいつつどことなく一本調子かなあ?後半はわりとおとなしめの曲が揃っています。「タイス」なんか、かなりマトモにやっている。最後に、マイスタージンガー序曲です。ロンドンフィルのと違ってテンポはだいぶ速め(途中、ちょっとケイハクなんじゃないの?と思うくらい)で、バティスらしい解釈だと思います。金管楽器の音がイギリスブラスっぽくていいね。最後は立派に終わるけどどことなくリズムの切れが悪いなあ(^_^;)
その31 ファリャ 三角帽子 メキシコ国立交響楽団
(IMP PCD2028)
違うけど、お国ものに近いような感じでカタログに残っているのでしょうか。わりと未だに手に入れやすいバティスのCDのひとつでしょう。これと、恋は魔術師なんかがカップリングになっています。演奏は、メキシコ国立交響楽団との演奏で、素朴なフンイキがただよっています。この曲は私は、デュトワのCDがいちばん気に入っていて、あれはどこかしらやっぱり垢抜けたところがあるのですが、これは、垢抜けないところがいいところではありますまいか。録音のせいもあるのかもしれませんが、メキシコ国立響のどことなくぼそぼそした響きではあるといえ、アクセントのきいた、色彩的でいきいきした音楽です。第2部の冒頭なんか、かなりみんなで必死に弾いてる感じがひしひしと伝わってきたりして。金管が騒ぎ、打楽器が爆裂する最後の盛り上がりようは、この人のトンデモCDのひとつ、ローマの祭のあのバカサワギぶりにも共通するものがあるのではありますまいか。ただしオーケストラの性能の限界か、弦がちょっと聞こえない・・・。全体に、オーボエのソロ(やや痩せた音色)がやけに目立つ気が。
その32 プロコフィエフ 交響曲第1番「古典」 ロンドンフィルハーモニー管弦楽団
(Alfa Alfa-1020)
ゆったりしたテンポの第1楽章。金管楽器のアクセントがかなり強め。弦楽器の音が痩せて聞こえて、メキシコオケとの録音だったっけ?と、確かめてしまいました。第2楽章も弦の音はなんとなくウスッペラ。管楽器が変に歌いこんだり、投げつけるようなアクセントが特徴的。第3楽章は健康的だがもうちょっと微妙な表情があってもいいのではないかなあ?まんなかで聞こえるオーボエもヘンテコ。終楽章は快適な速度、アクセントは強烈だけど、その割にやや前進性にかける気も。最後は金管楽器がすこしがんばります。
古典的な形をとった交響曲なので、もうちょっと全体に微妙なニュアンスやなんかが求められると思うのです。管楽器がずいぶんピロピロしたりするのは面白いのですけれども、あまりバティスで聴く曲じゃないのかも。ただ、これがロンドンフィルとでなければ、また違ったできばえになっていたかもしれませんね。