142号 201110月 歯科口腔保健法

 

国の歯科口腔の基本法として、第177回国会の衆議院本会議で「歯科口腔保健の推進に関する法律(いわゆる歯科口腔保健法)」が、82日可決・成立、810日公布・施行されました。

 

 

経緯

歯科口腔の基本法成立は、2008年から具体化してきました。20086月に、当時野党であった民主党によって、「歯の健康の保持の推進に関する法律案」が参議院に提出されましたが、廃案となりました。2009年には、4月に民主党によって「歯の健康の保持の推進に関する法律案」が提出、7月に自民党によって「歯科疾患の予防等による口腔の健康の保持の推進に関する法律案」が提出されましたが、いずれも審議未了により廃案となりました。その後、「口腔の健康の保持の推進に関する法律案」、そして今回の「歯科口腔保健の推進に関する法律案」へと名称を変え、幾度となく与野党折衝が行われ、修正が重ねられました。

この間、地方自治体の条例が先行制定されていきます。歯科口腔保健に関する条例は、新潟県を皮切りに、長野県歯科保健推進条例を含めた20道県、5市、2町で制定されていきました。

そして第177回国会において、歯科口腔保健法は参議院先議で行われ、727日に参議院で、82日に衆議院にて、いずれも全会一致で可決・成立されました。

 

 

目的(第1条)

歯科口腔保健法では、口腔の健康を「国民が健康で質の高い生活を営む上で基礎的かつ重要な役割を果たし、国民の日常生活における歯科疾患の予防に向けた取り組みが口腔の健康の保持に極めて有効」と明記されています。その上で、法律の目的を、基本理念を定めるとともに、国および地方公共団体の責務等を規定し、歯科口腔保健の総合的な推進により、国民保健の向上に寄与することとしています。

 

 

基本理念(第2条)

@国民が生涯にわたって日常生活で歯科疾患の予防に向けた取り組みを行うとともに、歯科疾患の早期発見・早期治療を推進する、A乳幼児期から高齢者までの口腔とその機能の状態及び歯科疾患の特性に応じて、適切かつ効果的に歯科保健を推進する、B保健、医療、社会福祉、労働衛生、教育その他の関連施策の有機的な連携を図りつつ、関係者の協力を得て、総合的に歯科口腔保健を推進するーの3項目を定めています。

 

 

責務(第36条)

 責務として、国は基本理念に則り、歯科口腔保健の推進に関する施策を策定し、実施することを規定しています。地方公共団体は、国との連携を図りつつ、地域の状況に応じた施策を策定し、実施するとされています。

 歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士等は、歯科口腔保健に資するよう、医師その他関連業務の従事者と緊密な連携を図りつつ、適切に業務を行うとともに、国及び地方公共団体の施策に協力するよう努めるとされています。

 国民に対しては、生涯にわたって日常生活で自ら歯科疾患の予防に向けた取り組みを行うとともに、定期的に歯科検診を受け、必要に応じて歯科保健指導を受けることを責務に掲げています。

 国・地方公共団体、歯科医師等だけでなく、国民にも予防・定期検診の責務があるのです。

 

 

歯科口腔保健の施策(第711条)

 国及び地方公共団体は、@歯科口腔保健に関する知識等の普及啓発等、A定期的に歯科検診を受けることなどの勧奨等、B障害者等が定期的に歯科検診を受けるための施策等、C歯科疾患の予防のための措置等、D口腔の健康に関する実態の定期的な調査及び研究の推進等ーについて必要な施策を講じるとしています。

 

 

口腔保健センターの設置(第15条)

 歯科医療業務に従事する者等への情報提供や研修の実施などの支援を実施する機関に、口腔保健センターを位置付けており、都道府県、保健所を設置する市及び特別区は任意に設置することができることを定めています。

 

 

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