5号 20005月 歯石

歯垢は細菌のかたまり  これが歯の大敵

 

歯の表面や歯と歯の間、歯と歯肉(歯ぐき)のさかい目などをよく見ると、白いものが付いていませんか? それが「歯垢」です。

歯垢は、口のなかの水分・温度・栄養などによって繁殖した細菌(バイ菌)が、ねばねばしたデキストランという物質とともに歯に付着してできた汚れで、いわば細菌のかたまり。わずか1gの千分の1の歯垢に、なんと1億個以上のさまざまな細菌が生息しているというから驚きです。

物を食べた後ブラッシングをしないと、歯垢は数時間のうちに歯の表面をびっしりとおおってしまい、むし歯歯周病など、さまざまな歯の病気を引き起こすもとになり、また口臭の原因にもなります。

この歯垢のなかの 細菌の出す毒素や酵素などが、歯を支えている土台である歯周組織を刺激し、炎症を引き起こします。

 

 

歯石って・・・

たまった歯垢をそのままにしておくと、唾液中のカルシウムやリンと結びついて石灰化し、やがて「歯石」になります。この歯石の表面はザラザラしているので、その上にさらに歯垢がつきやすくなります。歯石は歯垢と違って、ブラッシングだけでは落とすことができません。そのため歯科医院で取るしかないのです。せっかく痛い思いをして取った歯石がまたついてしまうのは、「みがいているけど、ちゃんとみがけていない」からです。ですから、また歯石がつかないためには、正しいブラッシングを身につけ、歯垢のうちに確実に落とすことを心がけて、口のなかをいつも清潔に保つことが大切です。

 

 

歯みがき剤は必要?

歯みがき剤には、細菌の働きを抑える殺菌剤、歯肉のはれ・出血を予防する消炎剤、また歯質を強くするフッ素や、甘味料:キシリトールなどが配合されているものがあります。しかし、主な成分は研磨剤。乱暴に横みがきをしたり、力を入れすぎるなどの間違ったブラッシングの仕方によって、歯や歯肉を傷めてしまう場合があります。強くみがかなくても、歯ブラシの毛先がきちんと当たれば歯垢は落とせます。正しいブラッシングを教わって、それを心がけることが大切です。

ただし、歯についてしまった、コーヒー・お茶といった飲み物や食べ物の色素などは、歯みがき剤を使わないと落ちづらいのも確かです。仕上げに少量使用するようにすると良いでしょう。

 

 

年に1度は定期検診を

歯や歯肉に自覚症状があっても、忙しいなどの理由から、歯科医院への受診はつい後回しにしがちです。

しかし、治療は早ければ早いほど簡単なため、痛みも通院回数も少なくすみ、費用も低額です。ひどくなるまで放っておけば、その間苦痛をともなうことは言うにおよばず、後の治療が長引き、費用も多くかかってしまいます。

進行したむし歯は削る部分が多くなるため、以前つめたり、かぶせたところのすき間から、むし歯が再発する可能性が高くなります。また、歯の神経をとってしまうとしみることがないので、再度むし歯になっても気づきにくく、木が枯れ木になるともろくなるのと同様に、歯ももろく折れやすくなってしまいます。むし歯の治療の繰り返しが、歯の寿命を短くしているのです。

むし歯や歯周病の原因となる歯垢は、熟成されると歯の表面にネバネバしたバイオフィルムと呼ばれる膜様のものを作ります。こうなると粘着力が強く、うがいはもちろん、洗口剤(うがい薬)程度では効かないので、機械的に丁寧に除去(ブラッシング)するしかないのです。そうはいっても、家庭でのブラッシングだけでは完全に除去できるわけではないので、専門家である歯科医師による清掃も必要となります

早期発見・早期治療を確実にするためにも、半年〜1年に1度は定期検診に行くことをおすすめします。歯科医の治療やアドバイスを受けながら、自分の歯と長くつきあっていきたいものですね。

 

 

「生涯医療費」は 歯の健康がカギ

歯の定期検診を受け、きちんとケアをすると、年間の総医療費が低くなる傾向にあることが、トヨタ関連部品健康保険組合の調査でわかりました。歯の定期ケアをする人を増やすと、医療費削減に役立つというのです。

 

35歳以上のトヨタ関連部品健康保険組合員52,596人の医療費と受診歴のデータを分析し、歯科医院で年に2回以上、定期ケアを行っている602人を抽出し、総医療費を調べました。

 調査結果によると、歯科の定期検診を受けている人は、48歳までは総医療費が定期検診費用で年間2万円ほどプラスされるので平均より高くなってしまうのですが、49歳を過ぎると平均を下回る結果になります。歯の健康と密接な関係がある生活習慣病などのリスクが下がることが要因のひとつと考えられています。さらに65歳を過ぎると総医療費平均が35万円に対し、定期受診の人は20万円以下とその差がだんだん広がっていきます。

健康保険組合は、「歯が悪いと食事が偏ったり、歯並びが悪くなったりする。それが糖尿病骨粗鬆症などを招き、からだ全体の健康にも影響を与える」と分析しています。歯と歯肉が健康であれば医療費が下がり、歯科の費用を含めても、「生涯医療費」が低くなると結論づけているのです。

歯の寿命を延ばすことは、健康で明るく元気に過ごせる健康寿命を延ばすことにもつながります。平均寿命が延びる日本においては、歯と全身の健康のこの深い関わりに、もっと関心を高めていきたいところです。歯は健康の窓口であることを意識し、年に1度の定期ケアを実践していきましょう。

 

 

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