第30号 2002年6月 ベーチェット病 2002年6月4日〜10日は歯の衛生週間で、スローガンは「じょうぶな歯 健康づくりの 第一歩」でした。からだの健康は歯の健康から。大切な歯と歯肉(歯ぐき)を守る正しいケアを、ぜひ今日から始めていきましょう。 今回は、前回ご紹介した全身性の病気の症状のひとつとして口内炎ができる、ベーチェット病についてです。 由来
病名は、トルコの皮膚科医ベーチェットが、1937年最初に報告したことに由来しています。 患者さんは、世界中でも日本で最も多いのですが、そのほかに中国、イラン、サウジアラビア、イスラエル、トルコなどのシルクロード沿いの国々に多く、欧米では極めて少ないです。国内の患者さんは推定約20,000人弱で、北海道や東北に多い、北高南低の分布を示します。20〜30歳代に発症する例が多いようですが、中高年やこどもでも発症する人がいます。男性の方が重症になる傾向が高いようです。 口や皮膚、目などにさまざまな症状を起こし、慢性化する難病のひとつで、放置すると失明することもあります。 症状
原因 今までは、患者さんの半数程度で、HLA-B51という特殊な型の白血球が見つかっており、遺伝的な要因が強くかかわっているといわれていました。 2017年2月6日、横浜市立大、アメリカ国立衛生研究所、トルコ・イスタンブール大学などが共同で研究を行い、遺伝要因および発症メカニズムを詳細に解明した研究結果を発表しました。 ヒトのDNA配列はほとんど共通しているのですが、わずかに個人差(SNP)があり、薬の効き方や病気のなりやすさなどにかかわっています。国際研究グループは、日本、トルコ、イランなどのベーチェット病患者3,477人と、健康な人3,342人のSNP20万個を比べました。その結果、新たに6ヶ所のDNA配列の領域のSNPが、病気のなりやすさにかかわることがわかりました。 ベーチェット病は、細菌などに感染した後に過剰に炎症が起こる病気と考えられてきましたが、結論には至っていませんでした。今回見つかったSNPは、病原体が皮膚から体に入るのを防いだり、炎症を起こしたりする遺伝子にかかわるものでした。そのため、皮膚のバリア機能の低下によって体内に侵入した病原体に過剰な免疫応答が起き、ベーチェット病の発症につながっている可能性が示唆されます。 また、この研究で発見された遺伝子の多くは、炎症性腸疾患の一つである難病のクローン病と共通していました。クローン病とベーチェット病は臨床像に多くの共通点があり、研究結果から、両疾患の遺伝的背景も近いことがわかりました。さらに興味深い事に、発見された遺伝子はハンセン病とも多く共通していました。ハンセン病はらい菌による感染症であることからも、ベーチェット病の発症に病原体が関与していることが強く示唆されます。 体が反応する仕組みがわかれば、治療薬の開発につながることでしょう。 治療法 症状が数多くあるため、内科、皮膚科、眼科、歯科など各科が協力して治療にあたることが多いです。 薬物療法が一般的で、症状に応じて、免疫抑制剤や抗炎症剤などを組み合わせて治療します。症状が繰り返し出る特徴がありますので、長期間薬を飲み続けて、大きな症状が出ないようコントロールすることが必要です。1年程度症状がおさまっているようなら、薬を少しずつ減らすこともあります。多くは、年齢を重ねると、症状がおさまってくる傾向があります。 「再発性アフタ」の予防対策は、前号をご覧下さい。 |
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