創刊号 20001月 

 

からだの健康は 歯の健康から

歯は、単に食べ物を噛み砕く道具のように思われがちです。けれども、歯の働きはそれだけではなく、さまざまな形で私たちの日常生活の健康を支えているのです。

歯や歯肉(しにく:歯ぐき)が健康で、ものがよく噛めれば、胃や腸に負担をかけずに、全身にバランスよく栄養を行き渡らせることができます。また、会話がスムーズにできるのも、歯がそろっていて、はっきりと発音できるおかげです。このほか、歯ざわりや歯ごたえを楽しみ、味覚を豊かに保つ、美しい顔の形や表情をつくる、脳を働かせるためにボケを防止するなど歯の働きはさまざまで、しかも、健康的な生活をする上で欠かせないものばかりです。

 

歯や歯肉の健康が失われると、からだの健康にも大きな影響を及ぼしてしまいます。まず、消化器官に負担がかかり、栄養の吸収も悪くなるという悪循環が生まれます。さらに、むし歯歯周病などが原因で、心臓や腎臓、またアレルギー性の病気など、一見、歯と何の関係もない場所に別の病気を引き起こしてしまうこともあるのです。また、よく噛めないとあごが発達せず、顔の形や歯並びが悪くなり、性格が内向的になることもあるといわれています。

 

健康な歯と歯肉は、健康なからだを支え、私たちに快適な暮らしをもたらします。大切な歯と歯肉を守る正しいケアを、ぜひ今日から始めていきましょう

 

 

美しい健康な歯は 一生の財産です

  歯は、すべてそろっていてはじめて正常な働きができます。例えば、大臼歯が1本なくなっただけで、食べ物を噛み砕く能力は、約40%も低下するといわれます。また、上の前歯が抜けるとサ行、奥歯が抜けるとハ行・ラ行が発音しにくくなって言葉が不明瞭になったり、顔の輪郭が変わって表情が老けて見えるなど、さまざまな影響が出るのです。

大切な歯を守るためには、日ごろからのケアが重要です。歯はもともと、人間のからだの中でも丈夫な器官。自己管理しだいで、一生使うことができます。ブラッシングのわずかな時間を惜しんで、その寿命を縮めてしまってはもったいないですね。

 

 

歯はこんなふうにできている

 

ところで、自分の歯の数を知っていますか? 成人の場合、通常28本。 ただし、“親知らず”を加えると32本になりますが、最近では生えない人も多いようです。

 前歯は、切歯(せっし)と犬歯(けんし)に分けられ、犬歯とは“糸切り歯”のことです。

 奥歯は臼歯(きゅうし)といいますが、前歯から続く2本は小さいため小臼歯(しょうきゅうし)、その奥は大きいため大臼歯(だいきゅうし)といいます。“6歳臼歯”のことを正確には第1大臼歯、“12歳臼歯”のことを第2大臼歯、“親知らず”のことを第3大臼歯といいます。

口のなかに見えている部分の歯を歯冠(しかん)、あごの骨のなかに埋もれていて見えない部分を歯根(しこん)といいます。歯根の長さは歯冠の2倍くらいあり、歯の根元は歯肉(歯ぐき)におおわれています。歯はまず歯冠から作られ始めます。初めはやわらかですが、歯冠が十分に育つと徐々に硬くなり、歯根が作られます。やがて歯は口のなかに顔を出してきますが、歯根は歯が生えてからも成長し、完成するまでに乳歯で1年、永久歯で3年くらいかかります。

 歯冠の表面のエナメル質は人のからだの中でもっとも硬い部分で、神経が通っていないので痛みは感じません。

 その内側の象牙質(ぞうげしつ)は歯の中心で、エナメル質よりもやわらかく、黄色っぽくて弾力があります。歯の芯には血管や神経の通った歯髄(しずい)があり、むし歯や冷たさ・熱さなどを痛みと感じます。

 セメント質は根元の象牙質をおおう部分で、歯根膜(しこんまく)はそのセメント質と骨との間でかむ衝撃を和らげ、痛みを抑えるクッションの役割をします。歯はそれぞれの歯根の形にあったくぼみに入っていて、その部分のあごの骨を歯槽骨(しそうこつ)といいます。

 

 

Health begins with your teeth.―健康は歯から―

 有名なハムラビ法典の言葉に「目には目を、歯には歯を」があります。これを英語では“An eye for an eye, a tooth for a tooth”といいます。

 他にも英語で、歯にまつわるおもしろい表現がいろいろありますので、いくつかあげてみましょう。

 “Tooth and nail”、直訳すれば「歯と爪」ですが、これで「力一杯」という意味になります。日本語にも「歯をくいしばる」という言い方がありますが、爪を立て、歯を噛みしめることは洋の東西を問わず、体に力をみなぎらせることです。

 “Pull teeth”を直訳すると「歯を引き抜く」ですが、これは「武器を奪う」、つまり「骨抜きにしてしまう」という意味に転じます。

 では、歯がなくなったら?“Toothless” 「歯がない」、つまり「非力」。

そうならないためには“To the teeth”、直訳すれば「歯に至るまで」、つまり「完璧に」。

 

お口の健康は完璧に。

 

 

 

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