創刊号 2000年1月 歯 からだの健康は 歯の健康から
歯は、単に食べ物を噛み砕く道具のように思われがちです。けれども、歯の働きはそれだけではなく、さまざまな形で私たちの日常生活の健康を支えているのです。 歯や歯肉(しにく:歯ぐき)が健康で、ものがよく噛めれば、胃や腸に負担をかけずに、全身にバランスよく栄養を行き渡らせることができます。また、会話がスムーズにできるのも、歯がそろっていて、はっきりと発音できるおかげです。このほか、歯ざわりや歯ごたえを楽しみ、味覚を豊かに保つ、美しい顔の形や表情をつくる、脳を働かせるためにボケを防止するなど歯の働きはさまざまで、しかも、健康的な生活をする上で欠かせないものばかりです。
美しい健康な歯は 一生の財産です。 歯は、すべてそろっていてはじめて正常な働きができます。例えば、大臼歯が1本なくなっただけで、食べ物を噛み砕く能力は、約40%も低下するといわれます。また、上の前歯が抜けるとサ行、奥歯が抜けるとハ行・ラ行が発音しにくくなって言葉が不明瞭になったり、顔の輪郭が変わって表情が老けて見えるなど、さまざまな影響が出るのです。 大切な歯を守るためには、日ごろからのケアが重要です。歯はもともと、人間のからだの中でも丈夫な器官。自己管理しだいで、一生使うことができます。ブラッシングのわずかな時間を惜しんで、その寿命を縮めてしまってはもったいないですね。 歯はこんなふうにできている
口のなかに見えている部分の歯を歯冠(しかん)、あごの骨のなかに埋もれていて見えない部分を歯根(しこん)といいます。歯根の長さは歯冠の2倍くらいあり、歯の根元は歯肉(歯ぐき)におおわれています。歯はまず歯冠から作られ始めます。初めはやわらかですが、歯冠が十分に育つと徐々に硬くなり、歯根が作られます。やがて歯は口のなかに顔を出してきますが、歯根は歯が生えてからも成長し、完成するまでに乳歯で1年、永久歯で3年くらいかかります。 歯冠の表面のエナメル質は人のからだの中でもっとも硬い部分で、神経が通っていないので痛みは感じません。 その内側の象牙質(ぞうげしつ)は歯の中心で、エナメル質よりもやわらかく、黄色っぽくて弾力があります。歯の芯には血管や神経の通った歯髄(しずい)があり、むし歯や冷たさ・熱さなどを痛みと感じます。 セメント質は根元の象牙質をおおう部分で、歯根膜(しこんまく)はそのセメント質と骨との間でかむ衝撃を和らげ、痛みを抑えるクッションの役割をします。歯はそれぞれの歯根の形にあったくぼみに入っていて、その部分のあごの骨を歯槽骨(しそうこつ)といいます。 Health begins with your teeth.―健康は歯から― 有名なハムラビ法典の言葉に「目には目を、歯には歯を」があります。これを英語では“An eye for an eye, a tooth for a tooth”といいます。 他にも英語で、歯にまつわるおもしろい表現がいろいろありますので、いくつかあげてみましょう。 “Tooth and nail”、直訳すれば「歯と爪」ですが、これで「力一杯」という意味になります。日本語にも「歯をくいしばる」という言い方がありますが、爪を立て、歯を噛みしめることは洋の東西を問わず、体に力をみなぎらせることです。 “Pull teeth”を直訳すると「歯を引き抜く」ですが、これは「武器を奪う」、つまり「骨抜きにしてしまう」という意味に転じます。 では、歯がなくなったら?“Toothless” 「歯がない」、つまり「非力」。 そうならないためには“To the teeth”、直訳すれば「歯に至るまで」、つまり「完璧に」。 お口の健康は完璧に。 |
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