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[AM10:40 若駒寮・長瀬健一の部屋]

……残された俺は、またしても自己嫌悪だった。
いくら篠崎を出かけさせないためだって、あんな「人生の先駆者」みたいな言い方しやがって。
健一、お前はそんなに偉いのか? ええ?
それにしても、携帯が騒がしい。出たくないんだ。とっととあきらめろ。

……しぶといな。
仕方なく、電源を切ってやろうと携帯に手を伸ばす。
ディスプレイには「高遠厩舎」と表示されていた。俺の所属厩舎。物わかりがよくて温厚な高遠敏久先生が経営する、居心地のいい厩舎だ。
先生や厩舎の人には、今日は休養日としてゆっくりしていいと言われている。遠慮なく休ませていただこうじゃないか。
俺はこれ幸いと電源を切り、またゲームの世界へと戻っていった。

 

 

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