[PM4:00 福島県東部の海岸・岩場]
……孤独な時間が、長く長く続いた。
でも、永遠はこの世に存在しない。その流れの果ては、ついにやってきた。
気配に振り返ると、そこには……。
「あ……早かったのね」
……なんて現実的なセリフなのかしら。もっといい言葉で迎えたかったのに。
でも、本当に早かった。どんなに早くても夜になると思っていたのだ。この時間なら、パーティーのお誘いを受ける前に来てしまったか、あるいは断って来たのか。……片山くんとの関係を考えると、やっぱり後者なのかな。
「そうかな……遅かったくらいだと思うけど」
謎を含んだまま、篠崎くんはつぶやいた。
「……それより、聞いてほしい話があるんだ」
そして彼は私の隣に座り、そう切り出した。……何かそれは、今までにない「決意」のようなものを含んだ言葉に聞こえた。
「何かしら?」
「……ぼくは今までずっと、弱気なまま生きてきた。どうしても強くなれなかった。その理由が、たったさっきわかったんだ」
「まあ……」
あなたは弱くなんかない、と言いたかったけど、水を差さずに素直に続きを聞こう。
「それは……君に優しくしてもらいたかったからだった」
「え……!」
それは、胸の奥の情熱に触れる一言だった。
「君は優しい人だ。弱い存在には、無条件で手を差し伸べてあげる。昔のぼくは、それを受けて嬉しくて……結果的に、いつまでも弱いままでいたいと思うようになってしまっていたんだ」
「じゃあ……私のせいだったの?」
「いや、せいとかいうんじゃない。それが、ぼくの望みだったんだ。君に構ってもらいたかったんだ……」
「……」
何も言えなかった。
私に構ってもらいたかった。それが、彼の望みだった……。
「……でも、それじゃいけないんだって、ぼくにもようやくわかったよ。だから、ぼくは決めた。君にひとつ、頼み事をしようって」
「頼み事……」
「……もしぼくが誰の助けも借りないで生きていけるほど強くなったとしても、ぼくのそばにいてほしいんだ。勝手かもしれないけど、君のそばにいたいんだよ……」
……情熱は、私の胸に広がって燃え上がった。
『君のそばにいたい』
そんな言葉を、彼の口から聞ける日が来たなんて……!
「嬉しい! もちろんよ! あなたがどんなに変わっても、私、あなたのそばにいる!」
「よかった……」
私は彼を見つめた。
彼も私を見つめていた。
……不意に、私の心に寂しさが落ちた。
「ねえ……あっちの砂浜に行かない? ここは、何だかせつなくなるの」
「そうだな……。じゃあ、一緒に行こうか。あの日はできなかったけど、今ならできる」
「そうよね、ふふっ」
私はいたずらっぽく笑ってみせた。
過去は消せない。でも、大切なものは現在や未来にある。
彼のおかげで、私はようやく本来の自分を取り戻せたように思った。