到底、出かける気分になどなれなかった。
今日は1日、この建物の中で過ごそう。
私はそう決めた。

その気になれば、外に出なくてもできることはいくらでもある。
1階へ下りて誰かと話をするのもいいし、友達の携帯を鳴らして話をするのもいい。あるいはインターネットに接続して、情報収集をしたり友達のホームページに顔を出すのも……。
……。
考えていて虚しくなってきた。
結局、全部誰かに頼るタイプじゃないの。

私は孤独に弱い人間などではない。
いざとなったら、たったひとりでも生き抜いてみせる自信がある。
それなのに、いったい何なのよこれは。

――もしかすると、今自分が置かれている状況は「いざ」というほどのものではないのかもしれない。
周囲のすべてから自分を隔離し、誰ひとり味方にすることなく抵抗を試みるほどには。

私は、テーブルの上に置きっぱなしになっていた自分の携帯を手に取った。
誰かの声が聞きたいと思った。
気分を変える一番の方法は、誰かと話をすること――例え自分がどんな状態であろうと、それを意地で拒むほど私は愚かではない。

 

 

A  話すなら直接誰かに会いたい。1階ホールに下りてみよう。

B  僚の携帯を鳴らしてみよう。

C  隣の部屋で暮らす同期の女の子の携帯を鳴らしてみよう。


読むのをやめる