俺は、今日はこの寮の中で過ごすことに決めた。

……さて、何をするか。
そう思いながら、散らかった部屋を眺めまわす。

まず、掃除はやらなきゃいけないな。
俺は本来外を出歩く方が好きな人間だから部屋はあまり散らからないだろう、なんて思ったら大間違い。その分部屋への認識がおろそかになり、気付けばこのざまだ。
いつだったか、この部屋に入った真奈(女はこの寮の最上階に住んでいる)は「見た瞬間に目を疑ったわ」とぼやいた。相変わらずきつい言い方するなとは思うが、この状態じゃ反論もできない。
テーブルの上には雑誌が散乱し、床には服が脱ぎ散らかしてある。窓は曇って外がよく見えず、窓枠には長年のほこりが積もりに積もっている。
……こいつは、1日丸ごと使っても終わるかどうかだな。
そう思ったとき、俺はふと、1日誰にも会わずに過ごしたことはあっただろうかと考えた。
結論は、ない。
ないし、それにはおそらく耐えられないだろう。
俺は真奈じゃないから、根本的に単独行動には向いてないし、誰かと協力して物事を成し遂げる方が好きだ。
もっとも、真奈に言わせれば「それは責任を分散したいだけでしょう」となるのだが。
ともかく、部屋を掃除するということは、孤独な1日を過ごすのに等しいのだ。

俺は思った。

 

 

A  掃除はそのうちやればいい。1階ホールに下りて誰かの顔を見よう。

B  ……暖房の効きすぎか、頭の回転が悪い。エアコンを消そう。

C  気合い入れなきゃだめだ。あくまで掃除を決行しよう。


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