彼女の腕をひっぱって止めた。
「きゃあ!」
しまった!
見えない俺にいきなり腕をつかまれたみどりは、さっきと同じように、濡れたスリッパを滑らせて転んでしまった。
……俺が、転ばせてしまったんだ……。
今度は、美樹本がゆっくりと近づいてくる。
そして……彼女のすぐ近くで立ち止まる。
「あなたが……田中さんでしょう」
倒れ込んだままの彼女が怯えた口調で言った瞬間……俺は見た!
美樹本が体の後ろで拳を握り、今にも彼女に殴りかかろうという体勢を作っているのを……!
このままじゃいけない!
B 俺はみどりの前に立ちはだかり、とにかく彼女を守ろうとした。