琵琶の種類
お能と歌舞伎は、共に舞台芸能ですが、まったく違うものです。
同様に、平家琵琶も薩摩琵琶も、共に「琵琶」と呼ばれる楽器ですが
成立年代や背景、用途、楽器の構造の特徴などが、まったく違います。
実は、琵琶には いろいろな種類(ジャンル)があるのです。
代表的なものを、以下の表に示します。
楽琵琶 : 空洞が小さく、楽器はずっしりと重い。素朴な響き。 | ||
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楽琵琶 | 奈良〜平安時代に成立。
宮中や寺社で演奏されている「雅楽(ががく)」に用いる琵琶。 主に「管絃(かんげん=合奏)」の伴奏楽器として用いられる。 かつては男性用・女性用・子ども用など、いろいろな大きさがあったが、 現代、管絃には大きなもの(7〜8kg)が好まれている。 |
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平家琵琶 | 鎌倉時代初期に成立。
平家詞曲を語るための琵琶。 音程を確めるためにしか弾かないので、音は素朴である。 柱の数と位置、調弦、撥面に「月」を貼りつけることを除いては 楽琵琶とまったく同じ構造。 (「楽琵琶と盲僧琵琶の折衷」とするのは俗説) 小さな楽琵琶(4kgほど)を用いることが多い。 |
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盲僧琵琶の仲間 : 空洞が大きく、楽器が軽い。響きが良い。 | ||
盲僧琵琶 | 琵琶を弾く盲人は、平安時代には存在したようだが、
「盲僧琵琶」の成立は延宝2(1674)年以降と考えたほうが良い。 かまど祓いの「地神経」を唱えるときなどに使用。 持ち運びに適した、小さくて軽いものが好まれたようである。 |
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薩摩琵琶 | 幕末の薩摩藩士が、士気を高揚させるために軍記物を唄った。
現行の薩摩琵琶は「薩摩盲僧琵琶」から生まれ、20世紀に入ってから流行。 大きく尖った撥が特徴。勇壮な効果音を奏でることができる。 錦琵琶は、近年、薩摩琵琶をもとに派生したジャンル。 |
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筑前琵琶 | 明治時代に成立。
筑前盲僧琵琶に三味線音楽を採用したもの。唄。 腹板に輪郭線があることが特徴。華やかな音。 宝塚出身の上原まりさんが有名。 |
平家琵琶の各部の名称 写真(65KB)
1.海老尾(えびお or かいろうび)…転手がつき、先は海老の尾のような形をしている。
2.転手(てんじゅ)…糸巻き。4絃(絹糸)なので転手も4本である。 3.鶴首(つるくび or かくしゅ)…柱(じ:ギターで言うフレット)が五つ付く。 4.腹板(ふくばん)…手前側の、枇杷の実型の木。「半月(はんげつ)」という穴がある。 5.撥面(ばちめん)…撥が当たるので、腹板に牛や鮫の皮を貼りつける。 6.月(つき)…撥面に銀や象牙や柘植で作った、満月・半月・三日月をつける。 7.覆手(ふくじゅ)…糸を結び付けてある。覆手の陰に「陰月」という穴がある。 8.槽(そう)or 甲(こう)…後ろ側の、枇杷の実型の木。 9.磯(いそ)…厚みの部分。撥面と同じ材質の細長い皮「落帯(らくたい)」を貼る。 10.撥(ばち)…三味線の撥のような形で、柘植の木を使う。 |
平家琵琶には、いろいろな大きさがあります。
おそらく、演奏する人の体の大きさや声の質に合わせたのでしょう。
ここ
に、私が所有している琵琶の一例を紹介しております。
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