TOSSランドへ TOSS熊本HPへ

[算数][4年][わり算]
[6年「比例」の授業記録]6年「比例」の発問・指示][「分数のかけ算」の授業記録][「立体の体積と表面積」の授業記録]

         
授業技術の30のパーツ、
「向山型算数」と「我流」はこんなにちがう!

 「教室ツーウェイ」誌(明治図書)2000年6月号の巻頭論文で、向山洋一氏は次のことを述べている。

 算数の授業を45分やると、授業技術のパーツは、30くらいに分解できる。               
 我流の教師は、その「30のパーツ」がすべて我流である。


 向山氏は45分の授業を「30のパーツ」に分解できるとしているが、その授業技術について具体的に言及していない。
 そこで、私は「向山型算数」と「我流」(かつての東田の授業)のちがいを自分なりに明らかにしたいと考えた。
 4年生「大きな数」の1単位時間の授業を通して述べていく。

 このページに限定して、「向山型算数」で授業するとすれば、次のようになると考える。

 授業技術の30のパーツ

 1 学習の構えをつくる。
 2 例題を読ませる。
 3 例題の意味を理解させる。
 4 ステップ問題(☆1)を読ませる。
 5 式を書かせる。
 6 答え合わせをする。
 7 できた印をつけさせる。
 8 この時間の基本形(275×139の計算のしかた)を知る。
 9 ステップ問題(☆2)を読ませる。
 10 ステップ問題(☆2)をさせる。
 11 式と答えをノートに書かせる。 
 12 式と答えを読ませる。
 13 「3点セット」を確認する。
 14 定義を理解させる。(「かけ算の答えを積と言う」)
 15 練習問題のやり方を予告する。
 16 練習問題を解かせる。
 17 教師にノートを持って来させる。
 18 1人1人に教師が○や×をつける。
 19 早く終わった子どもにやることを指示する。
 20 黒板に書いている問題を発表させる。
 21 ○つけをさせる。
 22 やり直したり、写したりさせる。
 23 できた印、まちがえた印をつけさせる。
 24 計算スキルをさせる。
 25 ○つけをさせる。
 26 まちがえた問題のやり直しをさせる。
 27 計算スキルのやってない問題をさせる。
 28 もう一度○つけをさせる。
 29 できた問題に赤ねこシールを貼らせる。
 30 終わりのあいさつをする。


 ちなみに、これは1つの例である。
 教科書によって、また、単元によってちがう。1時間単位でもちがう。
 次に、「向山型算数」と「我流」(かつての東田の授業)とのちがいを明らかにしながら、1つ1つのパーツを具体的に述べていく。

1 学習の構えをつくる。

 「向山型」 → いきなり授業に突入し、誉めまくる。


 例えば、「フラッシュカード」。
 チャイムが鳴るやいなや、「5のだん、さんハイ。」と教師が「5のだん」と書いたカードを見せる。
 (ごいちがご、ごにじゅう、ごさんじゅうご・・・・・・・。)と子どもたちが言う。まだ全員そろっていなくてもいい。
 「6のだん」「7のだん」とやっていくうちに子どもたちはそろう。遅れてきた子どもは、ばつが悪そうに席に着く。
 ずっと続けていると、そのうち遅れなくなる。
 私の担任する4年生は、九九を完全に覚えていない子どもが3名いるので、この授業開始はいい。
 例えば、「簡単な問題を解かせる。」
 その日の授業でメインとなる問題の、伏線となる簡単な問題を解かせる。
 この時間のメインは「275×139」である。
 「5×9」をやらせる。
 「75×9」をやらせてもいい。
 とりかかりが早い子ども、できた子どもを誉めまくる。
 「よくできた。天才。早い子は賢い。3重まるをつけなさい。」という具合に。
 「できた人はノートを持って来なさい。」と指示し、「1位。今日帰ったらおうちの人に誉めてもらいなさい。」「2位。すごい。」など誉めながら順位をつけることもある。
 続けていれば、そのうち、子どもたちはノートを開いて待っているようになる。
 日付を書いていないと○をつけないようにすると、次からノートを開き、日付を書いて待つ子どもも出てくる。
 「向山型」では、子どもたちに授業をがんばろうという構えが自然とできるのである。

 「我流」  → 「気をつけ。今から○時間目の授業を始めます。」


 全員がそろってからあいさつをする。
 ひどい時は、授業開始が5分以上遅れる。(実際、かつてはそうだった。)
 待つことがいいことだと思い、遅い子どもに合わせてしまう。子どもは遅れても困らない。授業の用意をしていなくても困らない。
 授業の開始からのんべんだらりとした雰囲気が漂う。
 挨拶なんていうのは、やらせるならばきちんとやらせるべきである。それを毎時間毎時間、徹底してやらせることは難しい。教師がかなりのエネルギーを使う。やり直しをさせていると、それだけで時間が過ぎてしまう。

2 例題を読ませる。

 「向山型」 → 指で確認をする。問題をしっかり読ませる。


 「四角の1を指で押さえなさい。となりと確認。問題を読みます。さんはい。」
 「問題をしっかり読めない人は、算数ができるようになりません。」
 このように趣意を説明して、声がそろうまでやり直しをさせる。
 全員を授業に参加させるためにもそうする。

 「我流」  → 問題をしっかり読んでなくてもOK。


 問題をしっかり読んでなくても、全員が参加していなくても気にならない。
 こういう「やるべきことをきちんとやらせていない」ことから授業が、学級が崩れていく。

3 例題の意味を理解させる。

 「向山型」 → 問題を一言で言わせる。問題を読みながらストップをかける。


「全員起立。この問題は一言で言えばどんな問題であると言えますか。言える人は座りなさい。」
子どもを指名する。
(スケッチブックの代金を求める問題です。)
文章題を要約させることで、問題の意味をとらえさせるのである。
また問題を読ませるときに途中でストップをかけて、大切なことを聞くこともある。
このようにする。
(色紙が87まいあります。)「ストップ!色紙が何まいありますか?」(87まい。)(この色紙を1人に21まいずつ分けると、)「ストップ!1人に何まいずつ分けるのですか?」(21まい。)
文章題の意味が理解できるようになる。

 「我流」  → 文章題を計算問題に変えてしまう。


 「これは何算ですか?」(わり算。)「何÷何ですか?」(87÷21)
 このように教師が勝手に計算問題に変えてしまう。これではいくらやっても文章題ができるようにはならない。

4 ステップ問題(☆1)を読ませる。
5 式を書かせる。
6 答え合わせをする。
7 できた印をつけさせる。

 「向山型」 → 教科書の先を読ませる。


 「この問題はとっても簡単ですね。なぜですか?」
 (教科書に書いてあるからです。)
 教科書の先を読むのも、算数の大事な力である。常に教科書を見るようになる。予習である。これから勉強することがよくわかるようになる。
 5の「式を書かせる。」については、次の指示で子どもを追い込む。
 「全員起立。教科書の四角に式を書いたら座りなさい。」
 6の「答え合わせをする。」教科書に書いてあるから、全員できる。3重まるを教科書にきれいに書かせる。力強く誉める。
 7の「できた印をつけさせる。」教科書の問題にできたら「できた印」まちがえたら「まちがえた印」をつけさせる。
 まちがえた問題は単元の終わりにもう一度やらせるのである。

 「我流」 →  教科書を見せない。


 私がかつて問題解決学習をしていた時は、教科書をほとんど使わなかった。
 「教科書を見せると、式や答えが書いてあるので、子どもたちが自分で考えなくなる。」と考えていた。教科書を使うのは、練習問題の時だけであった。
 無論そうなると、子どもたちは教科書を見なくなる。
 この時間は、いわゆる自力解決の時間にしていた。苦手な子どもには酷な時間であった。能力が高い子どもはそれでも理解できるが、教科書を見ないと、どう考えればよいかわからない子どもが出てくるのである。
 たるんだ、よどんだ空気が流れる時間である。そして、この時間で授業の大部分を費やす。
 「向山型算数」ではこんなことはやらない。
 教科書は、できるようになるためのステップが細やかに書いてあって考えやすい。その通りにやっていくのである。
 子どもたちは考えないわけではない。教科書に書いてある問題を、自分で考えるのである。
 尚、我流では「できた印」「まちがえた印」などつけない。

8 この時間の基本形(275×139の計算のしかた)を知る。

 「向山型」 → ノートにそっくりそのまま写させる。読み方も教える。


 「『275×139』を筆算の形で書きます。」
 「まず何をしますか?」(275×9です。)
 このように子どもたちと問答しながら、基本形の「275×139」の計算の仕方を教える。
 教えると言っても、教科書をそっくりそのまま写させるのである。
 説明はしない。

 「我流」  → 出された子どもの解決方法を強引にまとめた後、ぐちゃぐちゃくどくど説明する。 


 子どもたちは、絵、図、数直線などを使って、自分なりに解決しようとする。何人かの子どもに黒板で説明をさせる。
 「一番便利な方法は筆算である。」というように強引にまとめ、「275×139」の計算の仕方を説明する。

9 ステップ問題(☆2)を読ませる。
10 ステップ問題(☆2)をさせる。
 

 「向山型」 → 隣どうしで説明をさせる。


 問題を一斉に読ませた後、次の指示をする。
 「全員起立。隣の人とお互いに説明できたら座りなさい。」
 教師が説明するならば、10秒以内にする。次のような説明である。
 「これは275ではなく、27500です。0が2つ省略されています。」

 「我流」  → ぐちゃぐちゃくどくど説明する。あるいは子どもに説明させる。


 かつての私は、「説明すればするほど子どもはわからなくなる。」「長い
 説明は授業が下手な証拠。」「説明はない方がいい。」などという意識が全くなかった。
 だから長々と説明していた。前ページのような短い説明ができなかった。
 子どもに説明させるということも考えものである。教師が短く説明できないものを、子どもにできるはずがない。

11 式と答えをノートに書かせる。 
12 式と答えを読ませる。
13 「3点セット」を確認する。

 「向山型」 → 文章題は、「式」「計算」「答え」の「3点セット」をノートにきちんと書くことを教える。


 読み方も教える。
 「式は275かける139です。計算すると38225になります。答えは38225円です。」
 そして、「3点セット」を確認する。
 「文章題は、このように『式』『計算』『答え』の『3点セット』を書きます。」

 「我流」  → 「3点セット」という言葉を知らない。よってとりたててやらない。


14 定義を理解させる。(「かけ算の答えを積と言う」)

 「向山型」 → 定義は説明をしない。読んで確認するだけ。


 「かけ算の答えを積といいます。」
 まず教師が読む。そして一斉に読ませる。更に次のように確認をして終わりである。
 「かけ算の答えのことを何といいますか?」(積です。)
 「積とは何ですか?」(かけ算の答えです。)

 「我流」  → やはりくどくど説明をする。


15 練習問題のやり方を予告する。
16 練習問題を解かせる。


 「向山型」 → 「ミニ定規を使うこと」「問題と問題の間は指2本か2行あけることを予告する。また、できていなかったらやり直しということも予告する。
 「我流」  → 予告をしない。


17 教師にノートを持って来させる。
18 1人1人に教師が○や×をつける。

 「向山型」 → 教室に列をつくらないようにする。


 列をつくらないようにするために、次のことをする。
・ 教師の方に向けて、両手でノートを出させる。
・ 1問めだけ、○をつける。(3問めの場合もある。)
・ まちがえていたら、×をつける。(説明をしない。)

 「我流」  → 教室に列ができる。あるいは教師に持って来させることをしない。


 次のことをするために列ができる。
・ やってきたすべての問題に○をつける。
・ まちがえた問題をその場で説明する。
 あるいは教師に持って来させることをしない。あとで答え合わせをするからいいと、チェックをしない。
 これではノートの書き方の指導ができない。そして何よりも子どもの間違いを早期に見つけられない。
 また、子どもが教師にノートを早く持って行こうとすることで集中を生むのである。それをやらないということは、全体の集中力がとぎれる。

19 早く終わった子どもにやることを指示する。

 「向山型」 → 8人の子どもが黒板に答えを書く。


 練習問題が4問ある。黒板を8等分し、1問につき2人ずつ書かせる。
 終わってない子どもたちを待つための時間調整になる。
 全体に次のように話し、空白の時間を生まないようにする。
  「終わった人は、黒板と比べてごらんなさい。まだ終わってない人は黒板を参考にしながらやりなさい。」

 「我流」  → 友だちに教えに行かせる。


 かつての私は、しょっちゅうこの「教え合い」をやらせていた。
 「自分だけわかっていてもだめです。わからない友だちに教えましょう。」
 これがいい時もある。しかし、今の私は次のように考える。
 子どもどうしの教え合いは、教師の指導の反映である。 
 本来、教えるのは教師の仕事である。子どもの教え方は教師のようにできるのであろうか。
 否である。子どもどうしの教え合いは、答えを教えているのに等しいことが多い。
 自力で解こうとする意欲を、できる子どもが奪ってしまうことも考えられるのである。

20 黒板に書いている問題を発表させる。

 「向山型」 → 黒板に書いている8人全員に言わせる。


 わからない子どものためである。何回でも聞かせる。

 「我流」  → 1問につき1人、発表させる。


21 ○つけをさせる。
22 やり直したり、写したりさせる。
23 できた印、まちがえた印をつけさせる。

 「向山型」 → 必ずすべての問題をノートに書かせる。


 「全部できた人?すごい。よくできた。小さくきれいな花丸に植木鉢を書いてちょうちょを3羽飛ばせなさい。」
 「まちがえた問題は直しておきます。終わらなかった人は写しておきます。」
 「写すのもお勉強のうちです。一番いけないのは何もしないことです。」
 このように言って、空白の時間を生み出さないようにする。
 全員がノートにすべての問題をやっていることになる。
 前述したが、まちがえた問題は単元の終わりに再度やらせるようにする。

 「我流」  → 「終わらなかった人は写す」という発想がない。


 ○つけとやり直しはさせるかもしれない。
 しかし、「終わらなかった人は写す」という行為は「向山型算数」を知る前は全く考えていなかった。
 「写しているうちにわかるようになる」ということなど考えてもいなかった。

24 計算スキルをさせる。
25 ○つけをさせる。
26 まちがえた問題の○つけをさせる。 
27 計算スキルのやってない問題をさせる。
28 もう一度○つけをさせる。
29 できた問題に赤ねこシールを貼らせる。


「向山型」 → 計算スキルは、向山氏と同じ使い方をする。


@ コースを選択させる。
A 最低時間(2〜3分)で問題を解かせる。
B 答えあわせを最後の問題からやる。
C まちがった問題、まだやってない問題を1分間でやる。
D 自分で答え合わせをさせる。
E 早く終わった子どもは、早く終わったらやってみよう問題をさせたり、シールを貼らせたりする。

 「我流」  → ここまで時間的にたどり着かない。


 自力解決に時間を割いているので、ここまでたどり着かないであろう。
 たどり着いても、通常の計算ドリルのように、自分のペースでやらせてそれぞれに答え合わせをさせる。

30 終わりのあいさつをする。

 「向山型」 → 教師が言う。「終わります。」


 すっきりと終わる。子どもの休み時間を奪わない。

 「我流」  → 「気をつけ。これで○時間目の勉強を終わります。」


 始まりのあいさつと同じ。のんべんだらりとした雰囲気が漂う。
 子どもの休み時間を奪う。

 向山氏は前掲書で、次のように述べている。
 我流の教師というのは、最初から最後まで、ぜーんぶ我流になっている。
 「どこか部分的にいい」などということはほとんどない。
 「向山型算数」と「我流」(東田のかつての授業)をまとめてみて、このことがよく理解できた。
 これからも基本を学んでいって、我流を打破していきたい。


第7回「向山型算数研究セミナーIN熊本」研究発表原稿

文責  東田昌樹

TOSSランドへ

このサイト及びすべての登録コンテンツは著作権フリーではありません