第二節 資源の貯蔵及び支持
資源の貯蔵は色々な方法に於いて達せられるのである。地中埋蔵物を平素なるべく消費せざるよう務める事も之である。又は通過として国内にニッケルを保存して置くも同じ目的になるのである。或は綿を布団として常用しおるのも自らの貯蔵の意味となる。工業的に原料を貯蔵する事は、単に経済的問題のみならず、其の取扱いの上にも多くの注意を要する。石炭を多量に永く貯蔵する事は、空気に依り酸化され、甚だしき時は自然発火の危険を生ずるのである。少なくも其の質は永い貯蔵に依って大いに粗悪となる。石油に就いても鋼、鉄、屑鉄に就いても空気に依る酸化は同じく考えられる。
今保存し易きものを言えば原鉱、木材、或は織物、肉類の如きも多少保存に耐える。
資源の貯蔵を永くする事は費用に対する利息のみならず、倉庫料等の経済的費用の加わり来たる事は当然であって、尚防腐防錆のために容器、塗料、化学薬品等を要する事は無論である。従がって国策的に、その貯蔵方法又は保存方法を最も簡便に案出し置く事は当然である。
今戦時において6000万噸の鋼及び鉄を要するとして其れに相応する他の諸資源の貯蔵方法の一つの形式は一般の趣好品等に依りおく事である。例えば金、白金の指輪の如き、銅、ニッケルの器物の如き、之等は何れも何時でも再生し得るのである。ゴム製品、鉄製品同様である。石炭の貯蔵も外国に於いては考えられる。国民の消費力が高い程其の国の貯蔵力が高くなる事があるのである。此の消費力の高い事は廃棄物即ち屑物の貯蔵が増す事になる。
ドイツが一ヶ年の戦争に耐えられるため自給貯蔵力の全需額に対する%を以って次の如き数字を示している。
独逸の1ヶ年需要に対する持久力(%)
マンガン原鉱 35 錫 50 クロム原鉱 80 ゴム 60 ニッケル 50 絹 130 代用品の問題よりも、時としては此の貯蔵品或は屑物についての問題の方が、国家非常時に際して、大いに有効に働く事が少なくないのである。此の貯蔵力の豊富なる事は、非常時に於いて、当然遭遇すべき、労働力の欠乏を緩和することにおいても、此れを見逃す事ができない。
衣服の貯蔵、食料品の貯蔵等が及ぼす好結果も想像に余りあろう。
貯蔵に対しての投資も無論少なくはない。今19種の平時の需要品に就いて、各国の原料需要と其の持久力の%を独逸での調査を示せば次の如し。
投資額(百萬マルク) 自給力(%) 投資額(百萬マルク) 自給力(%) 日本 3.2 40 仏国 7.3 63 米国 48.6 105 ソ連邦 5.8 111 英国 9.6 67 伊国 1.8 27 独逸 8.4 7.8