第22号 2001年10月 小帯
唇や頬、舌と歯肉(歯ぐき)をつないでいる「すじ」のことを小帯(しょうたい)といい、つながっている唇や頬、舌の運動を制限し、その位置を固定するのに役立っているといわれています。上唇と歯肉をつなぐ小帯を、「上唇小帯(じょうしんしょうたい)」、下唇の場合は、「下唇小帯(かしんしょうたい)」、頬の場合は、「頬小帯(きょうしょうたい)」、舌の裏側にあるのを、「舌小帯(ぜつしょうたい)」といいます。
これらの小帯のなかで、こどもたちに比較的よく見られる異常は、上唇小帯および舌小帯の異常です。
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上唇小帯
上唇の真ん中と歯肉をつなぐ小帯を上唇小帯といいますが、胎生約3ヶ月頃に発生し、生後1歳未満までは、歯の近くに付着しています。しかし、年齢を重ねるにつれ上あごが発育するため、その付着部位がだんだん上方に移動していきます。ところが、その付着部位が上方に移動せず、しかも太い場合は、永久歯の真ん中に隙間が生じる、いわゆる「すきっぱ」になってしまったり、唇の動きが悪かったり、ブラッシングがしにくかったりします。
この上唇小帯付着異常は、幼少時には特に問題にはなりません。1歳半では27,3%も存在し、2歳で14,2%、2歳半で9,3%、3歳半では6,4%と、徐々に減少していきます。しかし、永久歯が生えても、いわゆる「すきっぱ」で、右図のように、上唇を引っ張ったときに小帯の付着部が白く貧血するようでしたら、切除する必要があります。
見た目だけの問題でしたら、ただ切開するだけでもかまいませんが、上記のように白く貧血する場合は、小帯中の筋肉繊維や弾性繊維を切除しないと、「すきっぱ」が改善しないことがありますので、注意が必要です。
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舌小帯
舌の裏の真ん中と歯肉をつなぐ小帯を舌小帯といい、胎生4週〜10週に発生します。この付着異常を、舌小帯短縮症とか、舌強直症、舌小帯癒着症といいます。
この異常により、乳児期は哺乳・咀嚼障害が、幼児期には咀嚼障害や発音障害(特にサ行・タ行・ラ行)があり、右図のように、舌を前方に出させたときに、舌の先がくぼんでハート形になってしまうときには、切除する必要があります。
舌小帯短縮症は上唇小帯付着異常に比べて、新生児では2,5%と頻度が少なく、しかも、0〜4ヶ月児で切除する必要があるのは0,1%程度といわれています。つまり、舌小帯短縮症の赤ちゃんすべてが、うまくおっぱいを飲めないわけではないのです。
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これは、授乳という行為が、赤ちゃんとお母さんの共同作業であることを意味しています。よって、お母さんの乳房の状態や乳頭(乳首)の形、硬さや伸びぐあいなどと、とても関係があると考えられているのです。特に、乳頭の伸びぐあいが一番関係すると考えられていて、赤ちゃんの舌小帯に多少短縮が見られても、授乳を続けているうちにお母さんの乳頭が柔らかくなって伸びれば、カバーできてしまうことがよくあると考えられています。
したがって、赤ちゃんのおっぱいの飲みが悪い場合は、赤ちゃん・お母さんともにトレーニングを行い、それでも変わらない場合は、舌小帯を切除した方がよいでしょう。また、幼児期に咀嚼障害があったり、学童期に発音障害がある場合も、切除した方がよいでしょう。
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