45号 2003年9月 

 

「べろべろばぁー」の「べろ」、「牛タン」の「タン」のことです。

 

構造

舌は、上縦舌筋・下縦舌筋・横舌筋・垂直舌筋という筋肉と、それを覆う粘膜で構成された器官、つまり筋肉のかたまりです。これは、「牛タン」をみればわかりますよね。

舌の先端を舌尖(ぜっせん)、舌の前方2/3を舌体(ぜったい)、舌の後方1/3を舌根(ぜっこん)といいます。舌尖と舌体の上面を舌背(ぜっぱい)、下面を舌下面(ぜっかめん)といい真ん中に舌小帯ぜつしょうたい)があります。

舌尖と舌背の粘膜表面は滑らかでなく、舌乳頭(ぜつにゅうとう)とよばれる小突起が密生しザラザラしています。舌乳頭には、糸状(しじょう)乳頭・茸状(じじょう)乳頭・葉状(ようじょう)乳頭・有郭(ゆうかく)乳頭があり、糸状乳頭をのぞいた舌乳頭には味蕾(みらい)があります。ひとつの味蕾の中には多数の味細胞があり、味を感じているのですが、亜鉛の摂取量が減少すると味細胞の形成が抑制され味覚障害を生じます。

味蕾

舌の粘膜には、痛みを感じる痛覚、触れられたりおされたりしていることを感じる触覚・圧覚、冷たさや熱さを感じる温度感覚などの感覚受容器が存在するきわめて敏感な臓器です。なかでも痛覚受容器の数が最も多く、特に舌尖部はその数が多く最も敏感です。

 

舌苔

 舌にある細い糸状の小突起である糸状乳頭に、お口の中の粘膜から剥がれた細胞、細菌(バイ菌)や食べカスなどがついて舌苔(ぜったい)になります。通常は白色ですが、時間が経つにつれ舌苔の量が増え、色は黄色や灰白色へと変化していきます。感染症や高熱となると、糸状乳頭から黒色の細胞が出てきたり、真菌と呼ばれるカビが増え硫黄化合物が生じ、これと血液中のヘモグロビンが結びついて黒色になってきます。こうなると口臭の原因になります。

 

の清掃(歯垢除去:プラークコントロール)はもちろん大切ですが、舌の清掃(舌苔除去:舌ケア)も大切です。最近は、要介護者用に舌ブラシや舌ベラというものがありますが、健康な方は通常の歯ブラシでかまいませんので、1日1回は、舌の前後方向に軽くブラッシングしてください。ただし、強く何回も行わず、もし舌から出血するようでしたらただちに中止し、出血が続くときは歯科医院を受診してください。

 

 

溝状舌

 

舌背表面に多数の深い溝のあるものを溝状舌(こうじょうぜつ)いいます。本来は先天性異常によりますが、慢性炎症などによって後天的に発現することもあります。

健康な方は特に自覚症状もありませんが、深い溝に舌苔が入り込むことにより不潔になりやすく、慢性刺激によって炎症を起こし、痛みや軽度の味覚障害を伴うことがあります。常に、軟らかめの歯ブラシで舌ケアするようにしましょう。

 

 

地図状舌

 舌背表面にさまざまな大きさの円形、半円形の淡赤色斑を生じ、このような斑の周囲には、1〜3mm幅くらいのふやけた感じで、白色の帯状のふちどりを伴うことが多いため、癒合するとまさに地図状模様となります。このような変化を、日によって位置と形を変えるのが特徴です。

 原因はわかっておらず、症状がないことが多いですが、ときにはしみるとかヒリヒリするといった場合もあります。舌ケアは、やはり軽い力で行いましょう。

 

 

 

 

正中菱形舌炎

 正中(せいちゅう)とは、左右方向に対する体の真ん中を意味します。舌背後方部分の真ん中にできる、ひし形(ないし楕円形)の赤色斑を、正中菱形舌炎(せいちゅうりょうけいぜつえん)といいます。“炎”という文字がついていますが、実際は炎症ではなく、舌の先天性発育異常によるものと考えられています。

 

 

黒毛舌

 

 糸状乳頭が著しく伸びて、まるで舌背に毛が生えているように見える状態で、その多くが黒色ないしは褐色になるため、黒毛舌(こくもうぜつ)といいます。

 抗菌剤やステロイド剤の長期服用により、お口の中の細菌のバランスが崩れることが原因と考えられています。

 

 

舌小帯短縮症

 舌の裏の真ん中と歯肉(しにく:歯ぐき)をつなぐ小帯を舌小帯といい、胎生4週〜10週に発生します。この付着異常を、舌小帯短縮症とか、舌強直症、舌小帯癒着症といいます。詳しくは第22号をご覧下さい。

 

 

舌癌

 お口の中にできる癌である口腔癌(こうくうがん)は、世界的にみて10大癌の1つにあげられ、その発生部位は、舌が最も多く62,9%を占めます。

その原因として強く関係しているといわれているのがタバコで、そのほかに、舌に歯が常にあたっていたり誤って噛んでしまう癖がある場合や、お口の中を不潔にしていることなどが考えられています。

 

 

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