第21号 2001年9月 親知らず どうして親知らずっていうの?
親知らずとは、第一大臼歯(6歳臼歯)、第二大臼歯(12歳臼歯)の奥に生える第三大臼歯のことで、智歯(ちし)ともいい、英語でもwisdom tooth(知恵の歯)といいます。原始人では、おそらく上下左右4本とも生えていたようですが、硬いものを食べなくなった現代人は、あごの骨が退化して小さくなってしまったため、4本すべて、きちんと生えている人の方が少数です。多くの人はあってもきちんと生えず、前方に傾いて斜めに生えたり、横向きの状態で、歯の大部分が骨や歯肉(歯ぐき)に埋まっていることがあり、なかには、存在しない人もいます。 (ちなみに私の場合、下の2本の親知らずは、まっすぐ生えたものの歯肉に覆われた状態、左上の親知らずは完全に骨の中に埋まり、右上の親知らずは存在しませんでした。 私も現代っ子?) 親知らずの名の由来は、きちんと生える場合でも、生える力が弱く、だいたい20歳前後になって生えるため、「親も、こどもの歯の生えることに関心がなくなった知らないうちに生えるから」というのが最も知られている説ですが、「昔は寿命が短く、智歯が生えてくる頃にはもう親は亡くなっていることが多く、親を知らずに生えてくるから」という説が有力なようです。 智歯周囲炎 うまく生えてこない親知らずは、歯肉を少し突き破って頭を出しても、それ以上はなかなか出てきません。このとき多くの部分が歯肉で覆われているため、歯と歯肉の間に深い袋状の隙間ができてしまいます。ここに食べカスや口のなかの細菌(バイ菌)が入り込み、それらの細菌が繁殖していくと、その周りに炎症が起きます。これが、親知らずの痛みとして代表的な智歯周囲炎です。 智歯周囲炎の初期症状は、親知らずの周りの歯肉が腫れて、食事のときなどに痛む程度ですが、炎症が広がっていくに従い、口が開きにくくなり、大きく開けるときに親知らずの周りに痛みを感じるようになってきます。さらに炎症が周りの筋肉やあごの骨に広がると、耳の下の顔面やあごが腫れ、口が開かなくなったり、痛くて物が飲み込めなくなり、38〜40度くらいの高熱を出す場合もあります。 智歯周囲炎は、高校生から大学生くらいの年頃に多く見られ、下の親知らずの方がまっすぐ生えにくく、不潔にもなりやすいため、頻度が高いです。治療方法としては、炎症を起こしている部分をきれいに消毒し、抗生剤で炎症を抑えます。その後、まっすぐに生えそうな場合は、覆っている歯肉を取り除いて、スムーズに生えるようにしますが、まっすぐ生えそうにない場合は抜歯になります。 その他のトラブル 歯肉に覆われて生えにくい親知らずは、その歯の質が弱く、しかも不潔な環境のため、むし歯になりやすいです。
親知らずの抜歯 親知らずの抜歯の困難度は、その歯の生え方によりさまざまで、まっすぐに生えた親知らずは10秒もかかりませんが、横向きの状態で、歯の大部分が骨や歯肉に埋まっている親知らずは、覆っている歯肉を切開し、骨を削り、歯を分割して抜かなければならないので、30分以上かかることも多いです。残念ながらこの場合は、抜いたあと3日〜1週間程度、腫れや痛みが続くため食事もしづらくなります。たかが抜歯とあなどらず、小手術と思って計画的に抜歯してください。 絶対に抜かないとダメ? 親知らずが生えるだけの十分なスペースがあってまっすぐ生え、噛み合う歯がある場合は、決して抜歯する必要はありません。また、噛み合わず、役に立っていなくても、ブラッシングがきちんとできる場合は、後に、他の抜いた部位に移植することができる可能性もあるため、残しておいても良いでしょう。しかし、それ以外の場合は、第二大臼歯の歯周炎やむし歯をふせぐために、歯並びや噛み合わせを悪くしないためにも、抜歯したほうが良いでしょう。 しかも、痛くなってからでは、麻酔も効きづらく、抜歯後の腫れや痛みも長く続くことが多いので、できるだけ早くに抜歯しましょう。特に女性の場合は、できたら妊娠中に抜歯や薬を飲むことを避けた方が良いため、結婚前に抜歯しておいたほうが良いでしょう。 |
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