[PM0:30 若駒寮・片山伸の部屋]
俺は、長瀬の後を追うように寮に帰ってきた。
……自分の部屋。俺だけの場所。しかし、ここにいてもなお、俺は古傷から身を守らなければならない。それを考えるとき、決まってやりきれない気持ちになるのだった。
ベッドに横になると、今朝の夢を思い出した。
いや……今朝のかどうかわからないほど何度も何度も見ている夢の中のひとつ、と言うべきか。
篠崎……。
3年前、サマーキャンプ先の海で溺れたときの、あいつの顔が蘇る。
真っ青で、息か脈がなければ死んでるんじゃないかと疑われそうな顔。
……あいつがああなったこと自体は、俺のせいではない。いくら俺でも、そんなことは絶対にしない。それじゃ殺人未遂だ。
そこだけは、夢とは違っている。
でも……。
あのときの俺の行動が、もともと少なかったあいつの自信をさらに失わせ、その後の人生を悪い方へと変えさせてしまった。
やはり俺はあのとき、やつを一度「殺して」しまったんだ……。
……いや、あいつだけじゃない。
俺が人生を狂わせた相手は、もうひとり……。
俺はベッドから下り、戸棚の前まではっていって開けた。
……左に篠崎、右に真理子ちゃん。
そのふたりを取り出すと、奥には罪深い輝きがある。
それに手を伸ばす。……伸ばした手を、そのまま引く。
……どうしよう……。