第2回熊本塾レポートTOP 1
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1、椿原正和氏の「向山型一字読解10の原則」をこう変える。
椿原正和氏は、「第1回向山型国語教え方教室IN大阪」の講座で、「向山型一字読解」の分析を述べている。
その中で、次の「向山型一字読解の10原則」についてこのように述べている。
向山型一字読解指導10の原則(椿原氏)
【前提条件】
原則1:目的は、「問い」と「答え」の基本定着、基礎読解力育成の2つである。
原則2:問いは、見開き2ページで100の発問づくりの中から選び出せ。
原則3:テストの解き方基本(15)パターンに配慮せよ。
原則4:学期に1,2度程度の実施で十分である。
【授業】
原則5:易しい問題をたたみかけるように(テンポよく)出せ。
原則6:1問ずつ答え合わせをせよ。
原則7:間違ったらその場で正しい答えを写させよ。
原則8:「ワンポイント説明」を重視し、「話し合い・説明」は絶対にするな。
原則9:教材文の流れにそって問え。
原則10:言語技術を問う場合には、板書・ノートチェックを行え。
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すごい分析である。納得できることばかりである。
しかし、椿原氏は、「向山型一字読解B型10の原則」としていない。
私は、最後の「原則10」は「向山型一字読解」のA型であるように思う。(「その日」という三字を読解するから、正確に言えば、三字読解であろう。)
そのようにするより、椿原氏が述べているように、「向山型指示語指導法」として、「向山型一字読解」とは別にした方がすっきりする。
私は、「向山型一字読解B型」に限定して「10の原則」を述べたい。
そうなると、「原則10」は変えたい。
更に、他に2つ修正したいところがある。
「原則3」「原則5」である。
以上のことから、私は次のように修正する。
「向山型一字読解指導B型」10の原則(椿原氏の改正 東田)
【前提条件】
原則1:目的は、「問い」と「答え」の基本定着、基礎読解力育成の2つである。
原則2:問いは、見開き2ページで100の発問づくりの中から選び出せ。
原則3:テストの解き方基本(15)パターンにある程度配慮せよ。
原則4:学期に1,2度程度の実施で十分である。
【授業】
原則5:易しい問題をテンポよくリズムよく出せ。
原則6:1問ずつ答え合わせをせよ。
原則7:間違ったらその場で正しい答えを写させよ。
原則8:「ワンポイント説明」を重視し、「話し合い・説明」は絶対にするな。
原則9:教材文の流れにそって問え。
原則10:教師が説明したいことや詰めは、リズムをくずさないようにするために、次の問題にせよ。
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以下に解説する。
「原則3:テストの解き方基本(15)パターンにある程度配慮せよ。」
遠藤真理子氏による、テストの解き方基本(15)パターンは、次の通りである。
A 内容に関する問題
1、 書き抜き問題
2、 要約する問題
3、 理由、目的を問う問題
4、 「どんな〜」「どういう〜」「どのような〜」と問う問題
5、 「どのように(して)」「どうやって」と問う問題
6、 述語を問う問題
7、 設定を問う問題
8、 文章構成に関する問題
B 文法に関する問題
9、 指示語の問題
10、接続詞の問題
11、書き直し問題
12、文の組立てに関する問題
C 言語に関する問題
13、言葉の意味に関する問題
14、熟語や文字に関する問題
15、漢字・文字の読み書きの問題
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椿原氏が述べるように、このテストの解き方基本(15)パターンに配慮しなければならないことはよくわかる。
しかし、この(15)の中には、「向山型一字読解B型」を授業する上で、リズムが狂ってしまう問題がある。
「向山型一字読解B型」は、「1学年か2学年下の簡単な問題」を出すことが前提である。そうでないと、リズムが狂う。
そうなると、最初から「向山型一字読解B型」の授業には入れない方がよいと考えられる問題がある。「1、書き抜き問題」「2、要約する問題」「15、漢字・文字の読み書きの問題」である。
以下に理由を述べる。
1、書き抜き問題
「書き抜き問題」は、文字の使い方、句読点に至るまで、一字一句違わないようにそのまま書き抜けていないと正解ではない。
授業でこれをやるには、ノートチェックが必要である。
子どもたちが答えを書いたら、「教師に見せに来て1人1人のノートを教師がチェックする」、「となりどうしで確認する」、「全員で句読点まで含めて読ませる」。このような評価が必要である。
いずれにしても時間がかかる。
書き写すこと自体、時間がかかる。リズムが悪くなる。
「書き抜き問題」に関しては、原則として「向山型一字読解B型」の授業ではなく、別に取り扱った方がよい。時間をかけて行った方がよい。
ただ、子どもが「書き抜き問題」に慣れてきて、「向山型一字読解B型」の中でやってもリズムが悪くならなければ、入れてもよいだろう。
2、要約する問題
遠藤氏は述べる。(向山型国語教え方教室 呼びかけ号 明治図書)
賛成である。
「向山型要約指導」も、やはり「向山型一字読解B型」の授業とは別に扱った方がよい。
「段落を20字以内にまとめる。」「『何がどうした話』とまとめる。」このような授業は、時間をかけて行った方がよい。
「ノートに要約文を書けた子どもが黒板に書く。それを検討する。」
このように授業を組み立てるべきである。
15、漢字・文字の読み書きの問題
「漢字指導」は、無論「赤ねこ漢字スキル」の指導を中心に行うべきである。
以上の理由で、私は「原則3」に「ある程度」という言葉を入れた。
「原則5:易しい問題をテンポよくリズムよく出せ。」
「法則化社会ネットワーク」NO.9で甲本卓司氏は、向山洋一氏にリズムとテンポの違いをうかがった時の話を紹介されている。
向山先生は、次のように言われた。
「リズムは、流れるように。テンポは、区切れよく。」 |
「向山型一字読解B型」の向山氏の授業のイメージは、「区切れがよい」というより、「流れるように」というイメージである。
ブチッブチッと切れるような感じではなく、優しく流れるようなイメージである。
もちろん、次から次に、20問や30問の問題を出すわけだから、テンポもよくしなければならない。それ以上に大切なのが「リズムのよさ」であろう。
私は、直接向山氏の「一字読解B型」の授業を見たことがないから、断言はできない。
しかし、「向山型国語研究セミナーIN大阪」での向山氏の話や、椿原氏の話を聞いていると、流れるようなリズムこそが大切であると感じる。
以上の理由で、「テンポよく」とともに、「リズムよく」という言葉を入れた。
「原則10:教師が説明したいことや詰めは、リズムをくずさないようにするために、次の問題にせよ。」
2000年8月18日に行われた「向山洋一DEEP教え方教室」で、向山氏は「吉四六話」の「一字読解B型」の模擬授業を行った。
参加者は、シビレたらしい。
どこにシビレたのか。
それは、「発問7」から最後の「発問8」に移るときである。
以下に引用する。
発問7 「家のもん」を普通に言うと何になりますか。 |
C:家の人。
C:家のもの
発問8 「家のもの」、「家の人」どちらがいいんですか。 |
C:家の人です。
T:どうしてですか。
C:家のものがなまって「家のもん」となったからです。
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これは芸術である。向山氏が天才である所以である。
私のような普通の教師はどうするか。「発問7」の後、一体どうするだろうか。
説明するのである。
「家の人より家の者がいいですね。家のもんは家のものがなまったからですね。」
このようになる。
当然、リズムが悪くなる。子どもが楽しいと感じなくなる。だらけた空気になる。
教師が「説明したい」「もう少し詰めをしたい」という時に、くどくど説明してはいけない。向山氏のようにリズムをくずさず、次の問題にするのである。
これは、「向山型一字読解B型」の生命線の1つであると考える。
以上の理由で原則10を付け加えた。