今日の宿泊地である角館までは17kmほど離れているので田沢湖線で移動.このあたりは「こまち」は1時間に1本ほど走ってはいるものの普通列車は滅多になく,次の上り列車である「こまち23号」まで30分ほど時間があった.外は小雨ではあるものの風が強く,いよいよ台風のお出ましといった感じだった.また,午後5時を過ぎているために田沢湖駅前は人気も少なかった.時間が来るまで駅前の物産館「田沢湖市(たざわこいち)」へ.ここまでろくにみやげ物も買っていなかったので何点か購入.私は山菜類のコーナーに「ミズ」という聞きなれないものが並んでいることに興味を持ち,味付きの「ミズの芽」を購入した.後日帰宅して食べたところ,山菜に特有のぬめりが私好みだったが,味付けは少し甘さが足りずショウガがきついように感じた.今度もし生か水煮のみずの芽が売っていたらぜひとも自分の味付けで調理してみたいと思う.あとはいちおう秋田に来たということで瓶詰めのとんぶりを購入.
18時03分,秋田行き「こまち23号」に乗車.田沢湖駅のホームにはその13分後に発車する大曲行きの普通列車(標準軌に改軌された701系5000番台)が入線していたものの食指が動かず.みちのくフリーきっぷは秋田新幹線にも乗れるスグレモノなのでせっかくなので威力を発揮してもらう.14号車9Aに着席.途中,連休による増発の「こまち88号」とすれ違うため途中,神代(じんだい)駅に運転停車.そのため角館到着は通常時より6分遅い18時23分.日本海側に移動したことで,再び台風から遠ざかるかたちとなり,見るとここではまだ雨は降っていないようだった.どうやら天候にはぎりぎりのところで恵まれているようだった.
角館駅は観光名所にもなっている武家屋敷の外観を模した平屋の駅舎で,黒板塀が特徴的に使われている.この街の見所である武家屋敷通りは駅から徒歩20分ほどあり,駅前に止まっているタクシーが私の挙動を固唾を呑んで見守っている気配を感じたものの武家屋敷以外の普通の町並みも見てみたかったので歩いて武家屋敷通りそばにあるホテルまで行くことにした.とても静かな雰囲気で,新しめの商業施設が極力排除されているように感じた.たどり着いたホテルはスーパーマーケットに隣接するところにあったものの,そのスーパーの営業時間が19時までであることにびっくり.地元の食生活に興味があって魚売り場などを見ているうちに閉店の「蛍の光」が流れてきて,最初は棚卸しかなにかかと思ったらそれが平常の閉店時間と知って再びびっくり.
ホテルにチェックイン.LANの使えるシングルルームで,通されたのは明らかにかつては2人用の部屋だったと思われる広いスペース.ベッドが1人用しかないのに3人がけのソファが置いてあって,それでもまだ部屋ががらんとしている感じ.ホテルの部屋というより友達の家の客間みたいな空間だったけど,私はこれはこれで得した気分だ.ホテルをとるときは食事はつけないのが基本なので,外へ食べに行く.もうかなり暗くなっていたけれど,明日は朝手短に武家屋敷通りを見物したいので下見と時間の見当をつけに歩いてみることにした.
20分ほど歩いて距離を把握したものの,武家屋敷は暗くてよく見えず.しかし驚くべきは展示品のような武家屋敷作りの家に普通に電気が灯って人が生活しているところもあること.明日朝を楽しみにしつつ適当な店で夕飯にする.凝った郷土料理が希望だったものの叶わず,結局昼も食べた稲庭うどんに.しかも観光地の値段設定で値段に味が伴ってなかったのは残念.ホテルのまわりにコンビニまでも見当たらなかったのは誤算だった.そんな立地条件も含めての強気の価格のような気がした.ホテルに戻り,ほどなく就寝.
明けて7月16日.連休の最終日であり,私の旅も最終日.今日はギリギリまで観光するもののその後はひたすら帰りを急ぐという日程.アラームをかけた午前4時半,角館は雨雲らしき雲に覆われながらも地面は濡れておらずなんとか降らずに持ちこたえてくれていた模様.すでに明るくなりはじめていて,武家屋敷通りはうまく散策できそうだった.天気をチェックしたところ,台風は太平洋側へそれていったようで,これから行く青森県も雨の心配はないようだった.シャワーを浴び,身支度を整えて6時05分にホテルをチェックアウトした.おとといの晩に釜石のコンビニで買ったカサは荷物になるのでホテルに置いてきた.
まずは桜の季節には屈指の名所となる桧木内川(ひのきないがわ)えん堤へ.桜の時期になると植えられた桜の花によるトンネルが見事だという.それから武家屋敷通りへ.まだ早朝で見学可能な屋敷もまだ門が閉ざされているところが多かったけれど,雰囲気は十分に伝わってきて満足.むしろ下手に観光客がいないほうが味わい深い気もする.
武家屋敷通りを堪能し,そのまま角館駅へ徒歩で向かう.