生保セールスの傾向と対策
━━ 業態別のお勧めパターンを知ろう ━━
生保のセールスは、そのセールスが所属している会社、業態(例えば、漢字生保、カタカナ生保、ひらがな生保、FP)によって、お勧めのパターン(商品)が異なる傾向があります。この傾向を知っておけば、セールスの落としどころも予め見えてきますので、一時の感情でいらない生命保険の契約をしてしまうリスクは小さくできるのではないでしょうか。
「納得したつもりで、ただ説得されただけ」にならないために、理論武装は必要です。
とはいえ、耳年増にはならないでください。「イワシの頭も信心から」というように、最後はどれかの理屈を信じて保険に加入することになるのですから・・。
1.漢字系生保のパターン
漢字系生保は、従来型の生保レディーによるセールスが中心となっています。
したがって、高額保障のセット商品(主に定期付き終身)をお勧めします。
毎年2月と11月が生保月なので、この時期に激しいセールスが行われます。
もちろん、何年かに一度「転換」のお勧めがあります(営業所長がリストアップし、おばさんに「そろそろ転換のお勧め時期じゃないかな」なんて声をかけるらしいです)。
GNP(義理、人情、プレゼント)に代表されるように、職域セール(会社に張り付くセールス)を行っています。・ 高額な保障の必要性を強調
とにかく、高額な保障をお勧めします。もちろん商品は定期付き終身。いろいろ新商品が出てきていますが、原則はすべてこれです。
したがって、遺族年金や団体信用保険、グループ保険で確保されている保障額を念頭に、自分にはいくらの保障額が必要なのか、十分に考えなければいけません。
一般には、4000万円(30歳代、子供2人、サラリーマン、住宅ローンあり)もあれば、十分でしょう。
なんせ、定期付き終身の最大のデメリットは、保険料のほとんどが「掛け捨ての保障」に充てられるわけですから(たとえば、60歳までに1500万円払って、それ以降に残っている終身保険の金額が200万円だったら、どう考えてみても1300万円は二度と自分に返って来ないお金です)。・ 働き盛りの年代のリスクを強調
とにかく、保険料の払込が終わるまで(つまり60歳とか65歳)の保障が手厚いのが「定期付き終身」の特色です(それ以降は、驚くほど保障が小さくなってしまいます)。
したがって、働き盛りで亡くなっても遺族は遊んで暮らせます(奥さんにとっては大きなメリットかも?)、若いうちにガンになったらお得です、若いうちに要介護になったらお得です、若いうちに三大成人病になったらお得です、透析をするようになっても大丈夫です、というてんこ盛りのセールスとなります。
しかし、冷静に考えると、人間はなかなか60歳までに死にません、入院もしません。
確率で行くと、100人のうち10人も死にません(保険に加入できる健康状態の方の場合は5人以下)し、ガンにかかる確率なども当然、60歳を超えたところからグーンとアップします。
心配を人質に、感情に訴えるセールスといえるでしょう。
ちなみに、入院の給付金日額についても「ガンで入院すると○○○万円必要です。したがって、1日○万円の準備が必要です」という資料がパンフレットに出ていますが、小さい文字で「自己負担額とは異なります」といった但し書きが付いています。
これも、
入院にかかった費用-健康保険からの給付=自己負担額
ですから、資料のとおりにする必要はないわけです。・ 今の負担額の安さを強調し、大きな負担は後回しに
定期付き終身の場合、10年(または15年)の更新型が普通の設計です。
これは、加入時点での負担を小さく見せかけるためのテクニックです。
更新の度に、掛け捨て部分の保険料がアップしていき、2回更新すると保険料は当初の3倍〜4倍というように、年をとるほど保険料はグングンとアップしていきます。
さらには、入院の保障や三大成人病の保障、介護の保障など特約でつけている保障は、保険料の払込が終わった時点でいったん80歳まで自動更新されるわけですが、それにはこれまで払ってきた保険料とは別に保険料の支払い(一括払いまたは年払い)が必要になります。
つまり、入院の保障は80歳まで続きますと説明されていた場合でも、実態は「60歳(65歳)からあらためて保険料を支払えたら」と言うことになります。結論からいえば、漢字生保の場合、設計書を丸ごと信用してはいけません。
「得そうに見える設計書なんだ」と予め頭にインプットしてご覧ください。
メリット=デメリットであることをお忘れなく。
2.外資系生保のパターン外資系生保は、従来型の生保レディーによるセールスを反面教師にセールスを行っています。
大卒の男性がパソコンを持って理路整然と保険を説明するというのが、おおかたの共通するイメージです(ただし、このパソコンはそれほど信用できません。数値は、いかようにもシミュレーションできます)。
したがって、GNP(義理、人情、プレゼント)に代表されるように、とは違い、紹介セールスが中心となっています。
特に、会社によっては「家族に対する愛」に訴えかける「愛の伝道師」に徹しているところもあり、ほろりとしたついでに契約してしまうなんてセールスもあります(ということは、理路整然と言うわけでもないんですね)。
中心となる商品は「終身保険」で、とにかく厚い終身保険を売ることがセールスの最終到達点だと思ってください。
■厚い終身保険をお勧め
とにかく、厚い終身保険(あるいは、これまで以上の大きな保障額)をお勧めします(ちなみに、厚い終身保険が悪いということではありません。保険料負担が大幅アップするような「厚さ」という意味です。ある意味、終身保険は唯一「掛け捨てにならない」生命保険ですから、きちんと確保することはいいことです)。
これまでは無配当の終身保険が保険料の合理化に最適と言って設計していましたが、今は金利が底の時期ですから、利率変動型の終身保険か変額の終身保険を「インフレに強い」ことを強調してセールスしています。
また、予定利率が高いことをうたい文句に「外貨建ての終身保険」をお勧めしているようです(外貨建てとか変額を勧めるのは、単に、手数料がいいということだと思います。銀行の窓販も同じことですが)。
しかし、現状は無配当より安い利差配当のつく終身保険もありますし、利差配当付きの終身保険ならインフレに、利率変動型終身保険と同じように対応できますから、外資系生保の話がこれまでの生保と違って目新しいとしても、それだけですべての話を鵜呑みにする必要はありません。
また、外貨建ての場合、確かに予定利率は高いのですが、それはその通貨を使用している国のインフレ率に反映していますので、その通貨で見た場合、価値が増加するわけではありません(インフレ率に応じて、将来の価値が目減りしてしまうため、予定利率も高い)。
そもそも、予定利率は預金金利とは全く違うものですから、その点にも注意が必要です(保険料から必要経費を差し引いて、残った金額を予定利率で運用するだけのことなので、預けた預金をすべて運用する預金とは違っています)。
あとは、為替の変動によって、円安に振れれば為替差益が得られるというメリットもアピールするでしょうが、円高に振れれば為替差損となります。
とすれば、外貨建の終身保険が必要な人というのは、将来、その通貨を使用している国で生活すると決まっている人、くらいになるのではにでしょうか(もっとも、外貨を通貨として払い出す場合、外貨預金のように、別途、手数料が必要なこともありますので、注意が必要です)。
私は、終身保険は、死ななくても老後の生活費(資金)を確保できる点で、とても有効な保険だと考えていますが、まずは老後資金の土台を作るのであれば、「投資」(元本が減るリスクがあるもの。別途、手数料が必要なもの)ではなく「積み立て」(中途解約をしなければ元本が確保されるもの)から、始めた方がいいと思います。
なぜなら、「投資」はそれこそ、うまくいけば1年あれば増やすことが可能ですが、「積み立て」には10年超の時間が必要となるからです。
まず始めるなら「積み立て」からが、セオリーといえるでしょう。
■保険料を搾れるだけ搾り取られるかも
言葉は悪いのですが、これまで払っていた保険料よりも多い保険料を払ってしまいたくなるようなセールス・トークが得意です。
とくに、家族に対する責任や老後の生活費を人質に、お涙ちょうだいとくるのですから要注意です。
必要な保障額を大きくしたうえで、終身保険も厚めにして確保するのですから、保険料がアップするのも当然です。
でも、この保険プランが自分にとってベストだと信じ込んでしまったあなたにとって、保険料の負担が2倍、3倍になっても当然と思えるのです(定期付き終身にこのまま加入していても、総額は同じくらいになってしまいますよ、言われるとそうだなあなんて思ってしまいます)。
でも、そうそう保険料を負担できるわけではありませんから、結局は何年かして減額や解約してしまう、なんてこともあり得ます。
ぶっちゃけていえば、外資系セールスの方は2年間さえ保険料を払ってくれればOKなので、その後のことはどこまで真剣に考えて設計してくれているのか、千差万別、玉石混淆といった状態ではないでしょうか。結論からいえば、カタカナ生保の場合、これまでの生保セールスとは全然違うといった点が味噌です。
これまでの生保セールスに不信感をもっていた方には、カタカナ生保の方のお話は非常に共感できるところです。
でもです。すべて漢字生保の商品が悪いわけではありません(生保のおばさんは悪くても、その商品全部が悪いわけではありません)。
また、生保のおばさんの説明に信用がおけなかったとしても、きちんとした説明を受ければ自分のニーズに合っているものかもしれません(たとえば配当の話ですが、おばさんたちは配当がどんどん増えると説明したので、おばさんセールスにうんざりした人はみんな配当が嫌いになりましたが、配当はインフレに対応して保障額の目減りを防ぐために必要な機能という説明を受けたら、本当に無配当の保険に加入したでしょうか)。
冷静になって一度考えるのも一案です。
3.FPのパターンFP(ファイナンシャルプランナー)の方は、とにかく保険と貯蓄を別々にするのが好きです(保険料と貯蓄ではないことに注意が必要です)。
それがお金の有効活用だと信じ込んでいます。
FPのことを金融の専門家と思いこんでいるみなさんは、そういった話を疑うすべを知らないでしょうから、その通りなんだと思ってしまうかもしれませんが、それはあくまでも一つの考え方で、唯一絶対ではありません。
保険は掛け捨て、浮いたお金で投資信託や外貨預金で運用を勧められますが、そんな考え方もあると、聞き流してください(保険や年金なら変額保険も好きです)。
そういってお勧めしているFPの方にしても、FPの参考書を丸暗記した結果をはなしている場合がほとんどですから、鵜呑みにしてはいけません。■保険は掛け捨てで十分
「保険料はコストですから、あくまで保障だけを買うべきです」というのがFPのスタンスです(一部の外資系の人もそうかも)。
保険に貯蓄性を求めるのは、その原則から見ると、邪道となるようです。
でも、考えてください。
私なんかは、保険料で強制的に引き落としでもされない限り、お金を貯めることができません。
したがって、掛け捨てでいい人もいれば、そうでない人もいると気楽に考えてください。■浮いたお金は運用で
とにかくFPは運用好きです。
だから元本保証なんてものには興味がありません。
だって、定期預金にどうぞなんてお勧めしたら、せっかく習った蘊蓄で相談者を唸らせることができないじゃないですか。
でも、リスク分散、ハイリスク・ハイリターン、ポートフォリオなんていわれると、そうしないと損みたいな気がしますが、最終的には労力の無駄である場合がほとんどです。
なんと言われようと、大切なお金は元本保証で。
余裕資金なら、FPの言うことでも聞いて、運用してあげてもいいでしょう。
<まとめ>
簡単に以上の特色をまとめると
- 生保のおばさんは、自社のお勧めプランにお客様のニーズを無理矢理にでも当てはめようとする傾向があります。
もちろん、学生だろうが、OLだろうが、家庭の主婦だろうが、3000万円以上の死亡保障からのお勧めになります。- 外資系のセールスは、終身保険の保障額を、それも「投資商品」で、厚くすることをまず考えます。
あるいは、掛け捨ての保険の場合でも、保障を手厚くすること(困らないように以上になるよう)に、一生懸命、あれこれを家計や収入を聞き出そうとします。- FPは、習った知識を総動員して原理原則に当てはめたプランを作ろうとします。大がかりであればあるほど、複雑であればあるほど、達成感があるわけです。実はシンプルな発想で対応が可能だったりするのにわざわざ複雑にして、そのうえ、人生の途中で起こるちょっとしたアクシデントで前提条件が崩れると、思ったとおりにいかなくなることも。
あるいは、保険は安いものにして、浮いたお金を投資話に振り向けさせるなんてことも。
でも、皆さんのニーズって、本当に考えた末のニーズですか。
結構ニーズ自体が、誘導されて思い込まされてしまっている場合もあります。
そこをきちんと、いろいろな人の話を聞くことで確認してみたらいかがでしょうか。
結論からいえば、FPの方がどれほど生命保険のことを知っているかがポイントなのではないでしょうか(あまりに当たり前ですが)。
試しに、投資と投機の違いは何か聞いてみてください。
商品によって区別をしようとする人は、まだまだ甘いといえるでしょう(金融商品としての保険の機能が十分に分からない人は、この質問の答えも分からないでしょうね)。
あるいは、「一生あなたの保険プランの面倒をみます」といいながら、例えば自宅の電話番号が名刺に記載されていない、なんてことで信用(安心)できますか?
もちろん大雑把な括りですから、みんながこんなセールスではありません。
これ以上の話は、直接コンサルティングにお出でいただいたときにでも。
最終更新日:2009年06月19日