この物語の前ページを読む


[PM4:10 福島県東部の海岸・海の家の影]

「ここは……!」
片山の顔には、何とも言えない表情が浮かんでいた。

……寂しい海が、目の前に広がる。
シーズンが終わり、来年の夏まで、海水浴場としての役割を眠らせた砂浜。
車を停めた駐車場には、ただ1台、桂木のバイクがある。
「あっ……」
片山もそれに気付いたようだ。
俺はやつを連れて車から出ると、砂浜へと下りていった。

「……!」

波打ち際のあたりを見て、片山は、慌ててシーズンオフの海の家の影に隠れた。
俺も同じように隠れ、海の家の角から顔を出して向こうを見ると……見えた。砂浜に並んで座っている、篠崎と桂木。

……時が流れた。それはとても長いようでもあったし、ほんの数分のようにも思えた。
その間、片山は持ってきたブローチを眺めたまま、じっと黙っていた。

……さあ、我が親友よ。素直になれ。
長い間の苦しみを持って、あいつらの前に出ていくのだ。
お前にならばできる。
その結果、例えあいつらがお前を激しく責めようと、俺はお前の味方を貫く。
もう、決めたことなのだ……。

……だが、事態は俺の予想とはまるで違う方向に流れた。

 

 

次ページへ               読むのをやめる