「西ノ宮」が「西宮」へ変わる!
JR東海道線の「西ノ宮駅」が市名と同じにするために、開業130年にして「西宮駅」に変更されるそうです。このニュースを聞いてとても面白いと思いました。
なぜなら・・・
日本語ではその昔は、「の」はなくても通例は読んでいただろうからです。読み方というのは残っていない場合が多いので、どちらかわからない場合も多いのですが・・・
例えば「平清盛」は「たいらきよもり」ではなく、「たいらのきよもり」と読みます。「土佐日記」の作者「紀貫之」を「きつらゆき」と読む人はいないでしょう。「きのつらゆき」です。「枕草子」を「まくらそうし」とは読まず、「まくらのそうし」と読むでしょう。では、「源氏物語」はどうでしょう。今は「げんじものがたり」と通例言いますが、当時の人は「げんじのものがたり」と読んでいたと思われます。「御成敗式目」も今は「ごせいばいしきもく」と習いますが、当時の人たちにとっては「ごせいばいのしきもく」のほうが普通だったかもしれません。
何が言いたいかというと・・・。現代、私たちは『公用文の書き表し方の基準』なるものが国の政策として決められていますので、正式には「の」を入れて読ませたいのなら、「の」を書くほうが自然なのです。
しかし、今回は「にしのみや」と読むにもかかわらず、「西ノ宮」から「西宮」に変更したのです。つまり、時代がさかのぼってしまったわけですね。まあ、「西宮」にしても「にしみや」とか「さいぐう」とか読む人はいないと思いますが、日本語を習っている外国人にとっては、難しいですね。ま、固有名詞ということで一つ一つ覚えてください。
そういえば、韓国で日本語を教えているとき、この表記されていない「の」は入れないといけないのか、テストで「の」を忘れると間違いになるのかと質問されました。「の」があるほうが普通とごまかしてしまいましたが、世の先生方は採点されるとき、どうされているのでしょう。何か基準があるのでしょうか・・・。日本語の難しいところですね。
2007.3.20
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「肉蒲団」って何のことでしょう。耳にしたときの印象は、肉の蒲団だから、余分な肉、つまり、「贅肉」のことだと思うかもしれません。
『肉蒲団』は中国、清代の艶笑小説なんですが、日本で遣われるときは、共に夜を過ごす女性を蒲団にみなして、ののしっていう語です。あまり、いい言葉ではありませんね。
『新潮現代国語辞典』第2版によりますと、『金色夜叉』にこんな例で遣われているようです。
「姦婦なるよ!銅臭の肉蒲団なるよ!と且は驚き、且は憤り・・・」
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今日のニュースによると、赤ちゃんの名前を「稀星(きらら)」で出生届けを出そうとしたら、最初の役所では、「星」は「らら」とは読まないという理由から受理されなかったそうです。それで、生まれた場所にある別の役所に届けを出し、無事、受理されたんだそうです。
最近の名前はいろいろな読み方をしますね。そうでなくても、人名は難しいんですが・・・。学生に名前の読み方を質問されても、有名人じゃないと本人に聞かないとわからないと答えています。
日本語だけじゃなく、世界にも目を向けると大変です。例えば、私は「ジン」という響きが好きなので、男の子どもが生まれたら「仁(ジン)」にしようかなと、カナダ人(フランス語圏)の友達に話したら、「ジンは欧米言語では女の名前だ」って言うんですよ。あら・・・・。
あるいは、中国語、韓国語でも、女用の漢字、男用の漢字というものがあるらしく、例えば中国語では、「芳」は女用、なんですって。その字を名前に持つ男性教授が話していました。
また、私は「凌晨(língchén)」「黎明(límíng)」(中国語で明け方の意)という言葉が好きなので、「凌(リョウ)♂」「晨(シンorジン)♂」「黎(レイ)♂♀」「明(メイ)♀」がいいなと思っていたのですが、先日、会った韓国の学生は「晨娥」さんで、やはり「晨」は女性のほうによく遣うということでした・・・。
万国共通の名前を付けるのは難しそうです。じゃあ、女の子に「シン」「ジン」をつければ解決?でも、やっぱり、日本語では、「シン」「ジン」は男性のほうが多いでしょうね・・・。
追記
「稀星」で思い出したんですが、「月明星稀」は曹操の「短歌行」の一節です。「短歌行」は、曹操らしい漢詩だと思います。兄弟が生まれたら「月明」で「ひかる♂」「ひかり♀」、「星稀」で「せいき♂」「せいら♀」、あるいは4人姉妹で「つき」「あかり」「ほし」「まれ」とか面白いな、なんて考えてみました^^
2007.8.21
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宇多田ヒカルの愛称は「ヒッキー」のようですが、英語では、'hickey' で、これって
「キス・マーク」
の意味があるんですよね。' kiss mark'という英語はおそらくないんだろうと思います。同じく、「Kinki Kids」ですが、日本人からすれば、「近畿」地方出身ということで、何も感じませんが、発音を聞いた英語圏の人はびっくりするようです。
' Kinky Kids'
つまり、「変態、性的異常者の若者」という意味になるそうです。別に、日本語でそういうのだし、固有名詞なのだから、問題ないと思いますが、こういった言葉って結構多いですね。
よく知られている商標では、「ポカリスウェット」は'sweat'が「汗」だから、飲み物に「汗」という名前なんて信じられない、とか、同じく「カルピス」は虫か何かの'piss'、つまり「おしっこ」をイメージさせるとか、コーヒーに入れる「クリープ」は、'creep'で、「おべっかをつかう嫌な奴」という意味だとか・・・・
日本語として使っているということで、もともとの意味までさかのぼる必要はないでしょうね。でも、やっぱり外国語で変な意味がある言葉は、あまり遣いたくないなあ。イメージって大切ですから・・・
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300系の新幹線「のぞみ」が登場してから、もう随分経ちました。始めはなんかごく普通の名前だなと思っていましたが、今では、しっくりとなじみ、鉄道列車の名前として十分に溶け込んでいるのではないかと思います。
「のぞみ」の名付け親は作家の阿川佐和子さんだそうです。「つばめ」「きらら」「希望」などの候補がある中で、「こだま」「ひかり」よりも速いのに「つばめ」はどうかなとか、「きらら」はお米みたいとか思ったそうです。阿川さんが悩んで、父である阿川弘之さんに相談すると、「国鉄の鉄道列車の歴代の名前は『大和言葉』であることを忘れないように」というアドバイスをくれたということでした。
さて、「大和言葉」というのは「和語」のことでして、日本固有の言葉です。それに対して、「漢語」というのは中国から伝わったときの読み方、すなわち「音読み」する語のことです。また、その他の国から来た言葉「外来語」(主にカタカナで書く)、これら3つを組み合わせた「混種語」というのがあります。これらを語種といいます。
和語・・・山(やま)、宿(やど)、星(ほし)、仕事(しごと・・することの意)
漢語・・・山脈、旅館、星雲、勉強、学校
外来語・・・マウンテン、ホテル、アンドロメダ、スクール
混種語・・・アンドロメダ星雲、海外ニュース、夏服(和語+漢語)
「外来語」は比較的わかりやすいのですが、「漢語」は日本に入ってからの歴史が長いせいか、ちょっと考えないと、「和語」との違いがわからなくなっているものも多いです。(「菊」「肉」は漢語です)
先ほどの300系新幹線の名前に話が戻りますが、JR社員の中で人気が高かった「希望」がほとんど決まりかかっていたようです。そこで、阿川さんは父親のアドバイスを思い出し、
「希望(漢語)」を「大和言葉(和語)」で言うと、「のぞみ」ですね。
と言って帰ったそうです。結果的に、それが採用されました。
和語というのは日本語の歴史の最初からあるものなので、新しく斬新な感じはしません。「宿」「旅館」「ホテル」を比べるとわかります。また、「漢語」が日本に入るまでは、少ない語数でたくさんのことを表現しないといけなかったので、示す意味範囲がかなり広いです。
「のぞみ」には決して、洗練された新しいイメージはありませんが、「こだま」「ひかり」よりも速く、人々の希望をたくさん乗せて走るという意味でいい名前なのではないかと思います。
さすが、阿川親子^^ですね。
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昨日、大リーガーのイチローがオールスター戦でMVPをとりました。本当に素晴らしいことですね。大胆な発言が多いイチローですが、それも当然だと思わせる結果を彼はしっかりと出していますから、批判する人はおそらくいないでしょう。
「出た」のではありません。「出した」のです。
これは、インタビュアーの「ランニングホームランが出ましたが」という質問に対する答えだったと思います。
「出る」は「犬が小屋から出る」で、自動詞
「出す」は「犬を小屋から出す」で、他動詞
ランニングホームランは勝手に自然に出た、生じたのではなくて、自分が出そうと思って、自分で意識して出した、というのです。自分の力だ、運などでは決してないということでしょう。
大きな違いがあるから、間違えないでくれというイチローの気持ちが伝わってきました。
自動詞、他動詞の違いは留学生が難しいと感じるところです。その概念を理解するのも難しいようです。イチローは世界的なプレーヤーですから、自動詞他動詞の概念がわかってきたころに、応用編として、この話を出すのもいいかもしれませんね。
2007.7.12
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「おんどら、おんどら、どこ見て走っとんじゃ。ちゃんと、はしっこ走らんかい!!!」
なんとも、品の悪い言葉で始めてしまいました。これは忘れもしません。私がまだうら若い女子高生のころの話です。自転車で下校中、なんと前に住むおっさんに、このように怒鳴られたのでした。
「おんどら」というのは「おのれ」と同じ意味で、『日本国語大辞典』第2版の「おのれ」の項目によると、感動詞としての使い方があり、「相手に激して強く呼びかける時のことば。下略」と説明してあります。つまり、私はおっさんに激されて(?)2回も強く呼びかけられたのです。この用法は古く、『今昔物語』にも見られるようです。
ちなみに、「おんどら」というのは、先述の辞書の方言欄によると、「兵庫県」で用いられ、似た語形の「おんどれ」は、福井県、滋賀県大津市、大阪市、中河内郡、兵庫県加古郡、奈良県南大和、和歌山県新宮、山口県大島などで使われるようです。
しかし、いくら古い用法だとしても、このように怒鳴られた私は、気が悪くて悪くて、その後、前に住むおっさんに挨拶をしなくなったのは言うまでもありません・・・・。
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商品名ですぐ思いついたので「アタック」や「ボールド」などを挙げましたが、皆さん、洗濯のときに入れる、あの粉状のものを普通名詞で何と言いますか?
「洗剤」ですか?「洗濯粉」ですか?
私は、悩むことなく「洗濯粉」なんですが、まわりの人が「洗剤」と言っているのを聞いたり、あるいは、私が「洗濯粉」と言ったとき、「え?」という顔をされたりして、もしかしたら「洗剤」のほうが多数派かもしれないと思い、この記事を書きました。
だって、「粉」じゃないですか。液体だったら、私も「洗剤」って言います。それに「洗剤」だったら、食器を洗うときの「洗剤」と区別できないじゃないですか。
しかし、歯を磨くときに使う「クリアクリーン」とかは、練状(ペースト)ですが、「歯磨き粉」という。ああ、統一性がない・・・・
それはともかく、皆さんは「洗剤」ですか?「洗濯粉」ですか?
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助数詞は難しいですね。
動物はどのように数えるのでしょう・・・「匹」「頭」「羽」
『記者ハンドブック』には次のように書かれています。
動物は「匹」で数えるのを原則とする。ただし、鳥類は「羽」で数え、大型の獣類は「頭」で数えることもある。魚類を数える「尾」はなるべく使わない。
基本的には「匹」と使えばいいようですね。しかし、この「匹」がなかなか厄介な発音変化をします。そこで、なぞなぞ。
「ちょうちょが3匹飛んでいます。そのうちの『なんびき』かが花にとまりました。さて『なんびき』とまったでしょう?」
・・・・・・・・・・・・答え 3匹
「ちょうちょが3匹飛んでいます。そのうちの『なんひき』かが花にとまりました。さて『なんひき』とまったでしょう?」
・・・・・・・・・・・・答え 2匹
なぜかはもうおわかりですね。留学生泣かせの助数詞です。
「匹」・・・いっぴき、にひき、さんびき、よんひき・・・・
おなじ読みの言葉でも意味が変われば発音の変化も違います。
「遍」・・・いっぺん、にへん、さんべん
「辺」・・・いっぺん、にへん、さんぺん
「回」・・・いっかい、にかい、さんかい
「階」・・・いっかい、にかい、さんがい(さんかいも言う)
ああ、こんな不規則変化・・・外国語として覚えるなら大変ですね。
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体の部位を指す言葉は面白いです。
さて、日本語で「指」といえば何本でしょうか。日本語では「手」の指も「足」の指も「指」ですね。だから20本です。足の「指」にも親指、小指がありますね。でも人はさせないし、薬もぬれないから、人差し指と薬指はないですね。中指はどうでしょう?あるような気がします。
では、英語では何本でしょうか。'finger' が指すのはどこでしょう?
一般的には 'thumb' は'finger' と別に数えます。足の指は '
toe' (発音注意、/tou/) で単語が別ですから、8本ということになりますね。
韓国語でも手の指と足の指は違いますし、中国語も手の指は「指」、足の指は「趾」で字が違います。
一口に指といってもいろいろですね。
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私は化粧が苦手で、ファンデーションと口紅だけで済ますことがほとんどです。最近は、アイシャドウを少しだけしていますが、それ以外は全くしません・・・
しかし、先日、化粧品売り場でお姉さんに、メークをしてもらったら随分雰囲気が変わったので、ちょっとやってみようかなと思い、引き出しに眠っていた「ほお紅」を取り出して、少しつけてみました・・・
で、その日、授業の後、短大生と話をしていたら、化粧の話題になって、
「最近は『ほお紅』に目覚めたんですよ」
と言ったら短大生たちは二人で目を合わせて
「・・・・・・・『チーク』のこと」
あああああ・・・・やってしまいました。最近は「チーク」というのね。確かに、赤やピンクだと「ほお紅」でいいですが、茶色(これもブラウン?)とか、オレンジ(これは橙とは言わない・・)系だと、「ほお紅」は変ですね。
でも「口紅」は「口紅」で「ルージュ(フランス語)」とか「リップスティック(英語)」とか言わないじゃないかー
体力の衰え以外で、年齢を感じたのでした・・・
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