おかしな日本語「・・・。なので~・・・」
前から気になって気になってしかたがない言葉があります。「なので」ですが、これを接続詞のように遣っている人がとても多いと思うんです。前は割と中年女性に多いと思っていたのですが、最近では中年男性アナウンサーまで遣っていてびっくりです。
「今日は日曜日です。なので人が多いです」
こういう類ですが、これは絶対に
「今日は日曜日なので、人が多いです」
じゃないとだめでしょう。「ので」を遣って文を一つにするとき、「ので」の前は連体形がきます。だから、「です」を「だ」の連体形である「な」に活用させて一文にします。日本語学習者には難しいポイントの一つです。「です」の連体形である「です」を使って「日曜日ですので」にしてもいいのですが、一般的には「日曜日なので」の形を教えます。
前置きが長くなりました。何が言いたいかと言うと・・・
「なので」は「だ」を活用させた「な」をくっつけたものなので、「な」の前で切るのは変だと思うのです。活用させるということは、それで密接しているという感じを出したいからなので、それを切り離すなんて・・・
おそらく、この「なので」は「だから」や「それで」の代わりに用いられているのでしょう。「だから」も、もとはといえば、助動詞「だ」に助詞「から」がついたものですが、「だ」は活用していません。だからまだ許せます。歴史的にも江戸時代ごろから見られる新しい用法なんです。「ので」は江戸時代にはまだあまり用いられていないようです。「ので」のほうが歴史が浅いんですね。
『日本国語大辞典』第二版によりますと、このような文例がありました。
「無頼の青年であった。ので高木は母とともに・・・」(『それから』夏目漱石)
おっと、漱石は「ので」を接続詞的に用いていたようです。なるほど。珍しい例ですね。今では遣われていませんが・・・・でも「な」はくっつけていません。
「だから」は江戸時代から用いられ、現代では接続詞として定着しました。では、前文の活用した形がくっついた「なので」も、あと何十年、何百年かしたら、「接続詞」として認定され、辞書に載るのでしょうか。はぁぁぁ。そうかも・・・。言葉は変わるものですから、しかたありませんが・・・。
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私が、韓国にいたときのことです。某地方のテレビ局でレポーターまがいのことをしたことがあるのですが、そのとき、自分が話したことを後で振り返って、「あれ?」と思ったことがありました。
「日本人の方ですか?」
「方」は「人」を丁寧にいうときの表現です。『日本国語大辞典』第2版によりますと、「方角を示すことによって、間接的に人をさしていう。敬意をもった表現で・・・(下略)」
北の方、東の方、御かた、あの丸髷に結った方
という例が挙がっています。そうでしょう。どう考えても「日本人の方」は変で、「日本の方」が正しいでしょう。しばらく外国にいると、日本語がおかしくなるので、そのせいかと思っていましたが、実はそうでもなさそうです。
「社会人の方はわかるでしょうが・・・・」「学生の方はこちらへ・・・」「恋人の方、手を挙げてください」
こういう例をよく聞くのですが、これって正しいんでしょうか?私はなんとなく違和感を感じます。私の解釈としては、「学生はこちらへ」「社会人ならわかる」というと、なんとなくぞんざいな感じがするから、「の方」をつけて丁寧に言っているのではないかと・・・・
つまり、もうパスタなのに、「パスタになります」とか、初めて聞くにも関わらず、「ご注文のほう、よろしかったでしょうか」と変な敬語を使うのと同じ心理で、「学生」や「社会人」のように人を表す言葉であっても、それだけだと失礼な感じがするので「~の方」をつけているのではないかと・・・。
どうでしょう?あるいは、「社会人」「学生」は人そのものを指すのではなく、「男の方」と同じように、その属性を指すものと解釈し、「社会人の方」は正しいとするほうがいいのか・・・。なんでもかんでも間違いとするのはよくないから、正しいとするほうがいいかもしれません。
じゃあ、「日本人の方」も正しい?これはやっぱりおかしいでしょうね。
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今日は、指導教授と共に、語彙調査をしました。教授の研究室で作業をしていたのですが、そこで、茶色い封筒のメモが目にとまりました。どうやら、学部生が体調不良で発表ができなかったので、後でレジュメを提出したようです。そのメモに・・・
提出が遅くなって、すいませんでした。
と書いてありました・・・。びっくりしました。
「すいません」は、もちろん、「すみません」の/m/が落ちた語形なんですが、書き言葉で「すいません」を遣うなんて・・・・。しかも、大大大教授への、謝罪文のメモに遣うなんて
「『すいません』は話し言葉だから、書き言葉で遣うのはおかしい」という話を教授にしたら、なんと、最近のレポートには、接続詞風「なので」も「原則・・・(原則としての意)」も頻繁に出てくるということでした。
ああああ、嘆かわしい
くだけた場面での話し言葉ではまだ、いいとしても、書き言葉ではやめましょうよと私は言いたい・・・。
今からもう何年前でしょうか。中学校に教育実習に行ったときのことです。フレンドリーな授業を心がけている私は「すいません」を研修授業で連発しました。(教材が挨拶を扱った内容でした)
後で、見学に来てくださった先生から、注意を受けました。
国語の先生なんだから、「すいません」じゃなくて、「すみません」と言いましょう。
と・・・・。
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夏休みが近づいてきました。さて、どこに旅行しようかなっと・・・。しかし、また、気になって仕方がないCMの文句が・・・・
航空運賃のおかげで、オーストラリアをあきらめていたあなた
日本語の授業では、文型を教えるとき、接続の仕方や使い方、類似表現との違いなどを説明し、文を作る練習をします。「~おかげで」は原因理由で、「おかげさまで」からもわかるように、「~の助けがあったので、よい結果になった」というときに遣う表現です。要するに、後ろの文はいい結果じゃないとだめなんです。
もちろん、「君のおかげで帰るのが遅くなっちゃったよ」のように皮肉の意味を込めていう場合は例外としてありますが・・・。
し、しかし・・・。航空運賃が高いからあきらめたというのは、明らかに、理由と悪い結果じゃないか・・・
こういう言い方がどんどん増えていっているように思います。日本語を教えるのがますます難しくなります。だって、テストでこういう文を書いた学生がいたら、ネイティブが遣っているのに、✖にできないじゃないですか・・・。
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株が「電子化になっても」・・・・・???
ああああ、ついにCMでこんな言葉が・・・・。「~化」って日本語の授業でもよく説明するんです。私は、「~化」にはそれ自体に「~になる」という意味が含まれているから、
「~化になる」←✖(馬から落馬する、頭痛が痛いみたいなもの)
「~化する、される」「~化が進む」
と教えているのに、CMで「電子化になっても」と言っていた・・・。日本語教師泣かせの日本語だわ・・・・
正しくは「株が電子化されても」「電子株になっても」だと思うんですけど、みなさん、そう思いません?
✖「映画化になる」「高齢化になる」「悪化になる」
❍「映画になる」「映画化される」「高齢化が進む」「悪化する」
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