第2号 2000年2月 むし歯

 

むし歯の大きな原因は砂糖

むし歯の原因となるのは歯垢しこう:プラーク)の中にいる「ミュータンスレンサ球菌」という細菌。この細菌は、砂糖が少しでも口のなかに入ってくると活発に働いて酸を作り、エナメル質を溶かし始めるのです。こうして、歯の表面から徐々にむし歯が進行していきます。

むし歯を防ぐためには、砂糖の量を減らすこと、食べたらすぐ歯をみがき、歯垢(細菌)を減らすこと、だらだら間食しないこと、これがなにより大切です。そのほかにも、フッ素を利用して歯の質を強くしたり、キシリトールを利用することも良いでしょう。

 

 

むし歯に自然治癒はない

むし歯は、ごく初期のものを除けば、絶対に自然には治りません。ガマンして放っておけばますます悪化して、象牙質や歯髄(神経)に達し、最後は歯根だけになってしまうこともあります。治療も痛みを伴うだけでなく、時間がかかり、治る成功率も低くなってしまいます。また、歯髄をとってしまうとしみることがないので、再度むし歯になっても気づきにくく、木が枯れ木になるともろくなるのと同様に、歯ももろく折れやすくなってしまいます。ですから、痛みを少なく簡単な治療にするためにも、歯を長持ちさせるためにも、費用を低額にするためにも、早期発見・早期治療が大切です。

また、一度治療した歯も、厳密には治ったわけではなく、限りなく見た目が歯に近いものを代用しただけなので、油断は禁物です。「二次う蝕」といって、以前つめたり、かぶせたところのすき間から、むし歯が再発する場合もあります。

 さらに、「根面う蝕」といって、歯周炎(歯槽膿漏)などが原因で、歯肉(歯ぐき)がやせて歯根の部分が出てしまい、そこにむし歯ができてしまうこともあります。歯根の表面は、歯冠部よりもやわらかくむし歯になりやすいので、特に注意が必要です。

 水がしみたり、少しでも痛みを感じたら、歯科医院を訪ねましょう。

 

 

古代から受け継がれる 歯みがきの大切さ

古今東西、歯にまつわる言い伝えや記述は、いろいろな形で残されています。

例えば、古代エジプトのパピルスには、すでに歯みがきの処方について記述がありました。

古代インドでも、あのお釈迦様が、「朝早く起き、虫食いのない木を使って歯をみがきなさい」と啓蒙していた痕跡があります。お口の中をきれいに清掃することによって、五つの功徳(利益)があると教えています。「一つは口中の臭気を除く、ニつには食物の風味がよくなり、三つには口中の熱を除き、四つには痰を除き、五つには目がよくなる」と。「歯をみがく」という考えは、仏教徒の守らなければならない大切な戒律のひとつであったのです。日本での歯みがきの思想は、仏教の伝来とともに伝えられたようです。

このように、歯みがきは時代を超え、民族を超えてその大切さが伝えられてきたようです。

 

 

お歯黒はすばらしい文化!?

 日本には「黒の化粧文化」ともいえる時代がありました。その代表的な例が、歯を黒く染めるお歯黒です。お歯黒は、平安時代に女性が成人した印として始まったとされています。明治の頃まで約1000年もの間続き、女性だけでなく男性もお歯黒をした時代もあったそうです。今から見れば美意識の判断としては争いのあるお歯黒も、歯の健康にとっては大変良かったそうです。というのも、お歯黒をつける前に歯の汚れ、つまり歯垢を取らなければならず、またお歯黒の成分であるタンニンに、むし歯の予防効果があったからです。事実、昭和51年当時、お歯黒を日常的にしていた最後の人といわれた96歳になる女性には、むし歯がほとんどなく50歳代の歯齢であったと伝えられています。

 

 

後悔歯がたたず!

 映画「キャスト・アウェイ」では、トム・ハンクス演じる宅配業者の敏腕エリートが、仕事の途中、飛行機事故で無人島に漂着します。なんとか生き延びようとしますが、出発前から気になっていた、むし歯がズキンズキン。歯科医院に行っておけばよかったと悔やんでも、時すでに遅し。ついに耐え切れなくなった彼は、なんと漂着した荷物の中に入っていた、スケート靴のエッジを使って歯を抜いてしまうのです。

 そして、4年間の無人島での壮絶なサバイバル生活を経て、愛する彼女の元に帰り着いてみると、彼女は5年前にトム・ハンクスの歯を治療した歯科医師と結婚していて、今度は心がズキン!というさらに痛いおまけつきのストーリーとなっています。

 むし歯ができて痛い思いをする前に、予防することが大切だとわかりますよね。むし歯のせいで何をやっても歯がたたないなんてことにはならないように、毎日の歯とお口のケアに気をつけてください。

 

 

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