46号 2003年10月 エプーリス

 

歯科特有の病名

 エプーリス(epulis)とは、ギリシャ語のepi(上)oulor(歯肉:歯ぐき)がラテン語化した、歯肉の上という意味で、歯肉上のこぶ状の形成物はすべてこの名称で呼ばれていました。しかし現在では、歯肉に生じた良性の限局性、こぶ状形成物の総称名をさします。多くは、炎症による反応性の増殖物で、真の腫瘍は除外されます。

 エプーリスは、歯周組織の間から、つまり歯肉・歯根膜・歯槽骨骨膜由来の線維性組織が増殖したもので、それ以外の粘膜に生じる炎症性増殖物はポリープと呼ばれます。つまり、エプーリスとは歯科特有の病名なのです。

 

 

原因

 炎症による反応性の増殖物なので、局所に加わる、合っていないつめものやかぶせもの、入れ歯による機械的な刺激、歯石などの慢性炎症性刺激が重要な原因と考えられていて、このほかに、女性ホルモンの変調が影響するといわれています。

 20歳前後から50歳代までに多くみられ、女性が男性のほぼ2倍をしめます。

上あごと下あごでは上あごの方が多く、歯の内側(舌側)より外側(唇側・頬側)で、特に歯間乳頭部(しかんにゅうとうぶ:歯と歯の間のすぐ下の歯肉)にできやすいです。つまり、上の前歯の外側(唇側)の歯間乳頭部にできやすいのです。歯と歯周組織の間から生じるので、歯のないところにはできません。

 

 

症状

 エプーリスが、歯肉に生じた良性の限局性、こぶ状形成物の総称名のため、さまざまな状態があります。

 健康な歯肉とは明らかに区別できるこぶで、右図のように根元がくびれていることが多いですが、そうでないこともあります。また表面も、滑らかな球形または卵形のものが多いですが、凸凹したものもあります。硬さや色は、歯肉と同じものが多いですが、軟らかで赤みがかったものは、触ると出血することもあります。

 でき始めは比較的急速に大きくなりますが、その後はゆっくりで、大豆くらい〜小指くらいの大きさにしかなりません。しかし、まれに親指くらいの大きさにまでなった場合は、根元の歯槽骨が吸収されたり、歯が押されて倒れてきたりします。

 

 

治療法

すべて外科的に切除します。エプーリスは、歯肉・歯根膜・歯槽骨骨膜由来の線維性組織が増殖したものなので、発生場所である歯肉や歯槽骨表面も徹底的に除去します。しかしその後も再発するようであれば、歯根膜から発生したエプーリスのため、残念ながら抜歯とともに再び切除しなければなりません。

 また原因となった、合っていないつめものやかぶせもの、歯石も除去し、合っていない入れ歯は調整する必要があります。

 

 

妊娠性エプーリス

 妊娠性エプーリスは妊娠腫とも呼ばれ、通常の原因に加えて、妊娠によるホルモンバランスの変化が影響していると考えられています。

 妊娠3ヶ月ごろに発生し、比較的急速に大きくなります。根元がくびれ、表面が滑らかな球形または卵形、軟らかで赤みがかり触ると出血するタイプが多いです。気になるようなら切除しますが、出産後縮小し、なかには自然に消失することもあるので、妊娠中は刺激となっているものを除去したうえで経過観察を行い、出産後消失しない場合は切除します。

 

 

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