69号 2005年9月 バージャー病

 

 

由来 

 病名は、1900年代初頭 Leo Buerger によって初めて詳細な報告がなされたことから、英語読みでバージャー病、ドイツ語読みでビュルガー病と名づけられ、閉塞性血栓性血管炎、特発性脱疽とも呼ばれています。

 日本の場合、最近の全国調査では約10,000人の患者さんがいると推計されており、厚生労働省による特定疾患にも指定されています。

 20歳代〜40歳代の青・壮年に多く発症し、男女比では男性10人に対して女性1人と、男性に大変多く発症します。

 

 

症状

 四肢の閉塞性動脈疾患で、手足の動脈で炎症が発症し、それが原因で動脈が閉塞して、血液が供給されないために起こる低酸素状態による症状(虚血症状)が発生します。手足の冷感、しびれ感、冷たいものに触れると指が蒼白になる症状が出て、ひどくなると長い距離を歩くと足が痛くなり、ひと休みすると再び痛みが収まり歩行できる(間欠性跛行)ようになったり、何もしなくても激しい痛み(安静時疼痛)が出現します。さらに閉塞がひどくなると、四肢の皮膚に潰瘍を形成して、ついには壊死におちいることもあります。かつて、昭和の喜劇王と呼ばれたエノケンこと榎本健一が、この病気のために下肢の大切断を受けたのは有名です。

 

 

原因

 明らかな原因は不明ですが、その発症・悪化に喫煙が強く関与していることが知られています。患者さん本人が喫煙していなくても、周囲の喫煙者によって間接的に喫煙状態になる受動喫煙を含めると、患者さんのほとんどすべてに喫煙歴があると言われています。

 なお、遺伝性の病気ではないとされています。

 

 

歯周病との関連性

 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科の血管・応用外科学および歯周病学を中心としたバージャー病共同研究グループが、2005年7月に発表した研究成果です。

 喫煙歴を有する男性で、50歳以前にバージャー病を発病した患者さんの、口のなかと足の患部の動脈を調べて、歯周病とバージャー病との関連について検討しました。

 その結果、すべてのバージャー病患者さんが歯周病と診断され、その歯周病の程度は中等度から重症でした。もちろんこれらすべての患者さんの口のなかの歯垢唾液から、歯周病菌が検出されました。そして、ほとんどの足の患部の動脈からも、歯周病菌が検出されました。なお、対照として調べた正常な動脈からは、どれも歯周病菌が検出されなかったとのことです。

 この結果から、バージャー病の原因や悪化が、口のなかの細菌、特に歯周病菌の慢性感染によるという可能性が強く考えられるのです。

 

 

治療法

 治療の基本は禁煙です。この病気の発症・悪化に喫煙が強く関与していることが知られていますので、喫煙を継続していてはどんな治療も効果がありません。

 手足の清潔を保ち、寒いところでは保温に気をつけ、保護することで靴擦れなどの傷をつけないように予防します。

 血液の循環を改善して血栓ができることを予防するために、抗血小板製剤や抗凝固剤などの薬を服用します。重症の患者さんでは、バイパス手術のような血行再建手術を行うこともあります。壊死が進行してすべての治療が無効な場合には四肢の切断となることもありますが、禁煙を厳守すればかなりその可能性は低くなってきています。

 

 

 

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